
先日、中古ハブのメンテナンスで締めすぎが多いと書いたのですが、同じくして
ばくおんさんが
ハブの調整について書かれてました。
ばくおんさんはハブの調整については、色々とされているので実績があるのは間違いないのですが…。
どうも私が理解できていないのが、ハブベアリングのセンター出しにタイヤが付いていないと出来ないとおっしゃられていることです。
まず、フロントハブに使用されてるのは、テーパーローラーベアリングです。
冒頭の画像はJTEKTの画像の拝借です。
テーパーローラーベアリングについての説明はこちら。
JTEKTは昔のKOYOですね。
で、説明通りテーパーローラーベアリングはアウターレースのテーパーとインナーレースのテーパーに対して、滑らかに動くようにテーパーローラーが入っていて、内輪・外輪の軌道面と、ころの円すい面の頂点が軸受の中心線上の一点で交わるように、設計されています。
で、FCのフロントハブの場合は、大小のテーパーローラーベアリングはそれぞれ向かい合わせ(締め付けるとテーパーで食い込んでいく方)に入っていますね。
さて。
回転物に対するシャフトは究極的には接触してない方が抵抗は無ないので良いのですが、そんな理想的なことは出来ないのでなるべく回転抵抗を無くすのがベアリングの目的です。
じゃあ、フロントハブを取り付けて調整したり、元々ついていたものを調整するのにタイヤの有り無しで変わるのか…。
ばくおんさんの説明では、タイヤがないとベアリングのセンターつまりハブのセンターが出ないとのことでした。
これがわからないんです。
言ってる意味が。
テーパーローラーベアリングは、先程の説明通りであればアウターレースにコロが、そしてコロに対してインナーレースが入り込む(テーパーに食い込む)ことで、コロが内輪・外輪の軌道面(アウターレースとインナーレース)に線で接触して抵抗なく転がる状態で初めてセンターが出ます。
タイヤの荷重をかけるとの事ですが、タイヤの荷重つまり重力方向(下方向)の力をかけた状態であっても、最終的には締め付けることでアウターレースとインナーレース、コロがそれぞれテーパーで収束していきますから、タイヤがない状態でもタイヤがある状態でも変わらないと思うのです。
なぜならば、タイヤの荷重を掛けないとセンターが出ないようなテーパーローラーベアリングというのは、そもそもテーパーローラーベアリングの機能をなしていない、つまりベアリングになってないということだからです。
さらに言うと、タイヤによって重力方向の力が余計にかかるわけですから、テーパーに入れ込む際の力がタイヤ無しの状態よりも力が必要になりますね。
ベアリングを適切に接触し、適切な回転抵抗(整備書でいうところの起動トルク)を与えるという最終結果にフォーカスすれば、タイヤがあろうがなかろうが関係ないということだと思うのです。
もちろん、適切な接触で適切な回転抵抗を得るためには、まずテーパーローラーベアリングをスピンドルに適切に嵌め込むことが必要です。
そのために、まずはスピンドルのナット(ハブナット)をしっかり適切に締めこんで、ハブを回転させてなじませてから緩ませをひたすら繰り返すわけです。
でも、それって構造上入っていくところまで(物理的にベアリングが許すまで。)しかハブナットは入っていかないわけで、タイヤが存在するかどうかは別でしょ?
ベアリングの目的は、回転抵抗を極力無くす…ですね。
そのため、テーパーにしっかり当たっているからと言って、締めすぎてもいけないわけです。
だから、ベアリングに隙間をあけるわけにはいかないけれど、締めすぎないというところが必要ですよね。
タイヤのあるなしで変わる点と言えば、ハブを手で回した時の手が使う力と、タイヤを手で回した時につかう手の力の違いです。
同じような回り方(手で回した時の回転抵抗の感覚)を求めた場合、タイヤが付いている時の方が明らかに回転抵抗が高くなります。
なぜなら、スピンドルからの距離による、てこの原理で回しやすくなるからです。
そう考えると、これくらいかな?と回した時の感覚が同じならば、ハブを手で回して調整した場合とタイヤを付けて調整した場合で締め付け具合(ハブナットの進み具合)は変わり、確かにタイヤを付けた方が締めこむことになります。
もどって、ベアリングに隙間をあけるわけにはいかないけれど、締めすぎないというところを狙うのがハブの調整であり、ベアリングの調整ですね。
ハブ単品で調整した際には、タイヤ付きで調整したときに比べて締め付けが弱くなることになりますので、もしこの時に適切にコロがレースのテーパーに当たっていなかった場合には、タイヤを付けると下向き荷重が掛かってテーパーにより軸方向外側にベアリングが逃げる(移動する)ことになり遊ぶことになります。
そう考えれば、ハブ単品で調整して失敗するよりは、多少回転抵抗がついてもタイヤを付けて締め付けて調整した方が良いというのはわかります。
ただね。
最初にも書いたように、タイヤが付いていようが、ハブ単品だろうが、テーパーローラーベアリングの構造上、しっかりと初期の締め付けと回転させてのなじませがしっかりとできていれば、正直どちらでも良いような気がするんです。
もし、センターがずれるんであれば、タイヤを付けて締めるとタイヤを重力に逆らってテーパーでずるずると持ち上げるために締め付け力を上げることになるわけで。
タイヤを付けて調整することの意味合いがセンター出しではなく、多少回転抵抗を持たせても遊ばせる要因が出てしまいそうな状況を排除するという目的であれば、良く分かるんです。
ばくおんさんには、やってみればわかりますよとは言われましたが、申し訳ないのですが個人的には多分やらないと思います(^^;
理由としては、適切に当たっているのであれば、わざわざてこの原理で回しやすくしてまでする必要は無い(つまり単品で調整が取れている状態で、わざわざ回転抵抗を増やす必要は無い。)と考えます。
もちろん、ばくおんさんがサーキット走行して問題が無いのはわかっていますけれど、遊びがない調整がハブ単品で出来ているのであれば、回転抵抗を上げて温度を上げてしまったり、ベアリングを摩耗させてしまったりをするのはちょっと。
もっともハブ単品で調整できていないのであれば、それは調整してないというのと一緒なので、タイヤの有無の以前の問題になってしまいますし(^^;
やるとしても、タイヤが付いた状態で遊びがないかどうかの確認くらいだと思います。
もちろん大前提として、しっかりハブ(ベアリング)をスピンドルに入れ込むことと、コロをしっかりとレースに当てること、ハブの回転抵抗(整備書でいうところの起動トルクね。)調整が取れていることがあってのことです。
こう考えると色々とめんどいので、読んでめんどいなと思った方は、どこかの信頼できる整備工場なりでやってもらってくださいw