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2023年12月10日

商館時計ガチャ? 中身不明で博打購入した2個(の内一個) R.シュミット製(ワーゲン商会扱い) 明治23年頃

結局まだ扇風機のストックには手を付けられていない今週末。
天気が良かったので、溜めていた家周辺の掃除を済ませていました。

で、今回も時計ネタ。
とあるストア出品にて発見した出物でしたが、裏蓋を開けた写真が無いものでした。
そのため商館時計らしい事は分かっても正体不明。
商館時計は飽くまでその時代の様式から派生した日本向け仕様なので、元となった現地仕様かもしれません。

中身も無事かもしれなければ酷いジャンクかもしれない。
当たりを引けば無事な高級機、外れを引けば手の施しようが無い普及機という博打です。

こんな感じで同時に複数出品されていましたので、扇風機で鍛えた観察眼を信じて2個購入。
思った通り格安で落札できました。
後は開けてみてのお楽しみですが…大外れを引いたらどうしようかしら。



来ました。
総額1万なので並品以上なら十分お得なはず。
何…〇番くじ辺りに数万突っ込むのに比べれば安いもんさ…

買ったのはこの2つ。
共にボウに鍔がある事から、商館時計なのは間違いなさそうと判断しました。
針も揃い(短針に飾り石が無いのをよく見るのですが、これってそういうもんなのでしょうか?)でぱっと見大きなダメージ無し。

それでは裏蓋を開けてみましょう。
…と言うか片方デカいな。







まずは右の大きい方。
ワーゲン商会扱いのR.シュミット社製でした。
機械にも錆は無く、振るとテンプが回る。致命傷は無いようで一安心。
石もそれなりに入っていそうです。
龍頭の押しがかなりショートストロークで硬いのは気になります。







ではお次。ダイヤルにクラックが入っていますね。
…って、こっちもR.シュミットかい。
しかも直営なので被り無し。
しかもしかも、残りのへロブ商会扱いは既に入手済みなので、一気にR.シュミットの歴代マークが揃ってしまいました。

で、こっちもテンプは無事そうなのは良かったのですが、よく見ればスネイルカム式の調速機が付いています。
緩急針の微調整ができるので、高級機によく見られるそうです。
調べると戦前頃のロンジンの機種が多く出てきます。
石もシャトン留めですから、ちょっと良いムーブメントなのが予想されます。

気になるのはダボが押せない事でしょうか。
中で何か起きているのでしょう…直せる原因だったら良いなぁ。

そしてムーブメントの刻印は、もう片方がワーゲン商会のイニシャルだったのに対し、R.Schmidと騎馬武者のマークが刻まれています。
そもそもR.シュミットは専業の商社ではなく時計メーカなので、自社の名前がムーブに入っていても不思議はないと思います。
取り扱いはワーゲン商会→ヘロブ商会→直営と変遷しましたが、先に手元に来たヘロブ商会扱いのも後者と同じムーブの刻印でした。
なので、機械に商館名が入るのはワーゲン商会だけorそれが多いという事なのかも。

という事で、現時点ではガチャは大当たり。
まずはワーゲン商会の方から手を付けていきます。



その前に恒例の商館概要。

上記の通り、R.シュミット社(Rodolphe.Schmid&Co.)はそもそも時計メーカですが、商社としても活動しており「R.シュミット商会」とも呼ばれます。
途中で直営にもなりますから、その点でも合っている呼称でしょう。

一方で日本への輸入にあっては取り扱った商館が別に存在しまして、それがまた上記の通りワーゲン商会とへロブ商会に加え、最後に扱ったナブホルツ&ヲッセンブルゲン商会。
二重に商館名を持つ時計と言うのは一つの個性ではないかと思います。

で、今回の個体を扱ったワーゲン商会については、明治10年~23年にR.シュミット商会の時計を扱っていた事が分かっています。
その後明治23~27年がヘロブ商会、同28年以降が直営となり、同42年にはナブホルツ商会となりました。

なお、ナブホルツ商会へ扱いが移る際、懐中時計の販売責任者となったのが中島与三郎氏。
色々あって一時閉鎖されていた尚工舎時計研究所の設立者・山崎亀吉氏と組み、シチズン時計として再出発した際に初代社長となった方です。
中島氏はシチズン時計設立の際に、ちょうど規模縮小するシュミットの工場から部下だった鈴木良一氏を連れ、生産設備も買い取ったとの事。
今日の日本の時計ブランドとも関わりの深い商館なんですね。
ちなみに「シチズン」と言う名称は、シュミット氏が先にスイスでの商標を取っていたとか。
現在も同名の車が違うメーカと国で売っていたりしますが、昔から同様の事があったみたいです。


それでは整備に入りましょう。

ワーゲン商会扱いの個体ですが、こちらは明治23年かその少し前位のものと考えています。
そもそもワーゲン商会自体が明治23年まででR.シュミット製の時計取扱いを終えていますし、その一方で時刻合わせがダボ押し式だからです。
ダボ押し式と剣引き剣回し式はちょうど明治23年、つまり1890年頃からの20年程に限られるそうなので、ワーゲン商会の末期頃かなと予想しています。



早速機械を取出し。
この時点である程度テンプが回る状態でした。





ダイヤル分離。
裏面には過去2回と思われる整備記録がありました。
10年と13年ですが…平成なのか西暦なのか分かりませぬな。
まぁいずれにせよ10年以上経過しているのは事実です。





シリアルをチェックすると…今回は揃いでもニアピンでもない微妙な離れ具合です。
しかし凡そ70番違いと然程遠くない事と、ケース・機械ともR.シュミット(ワーゲン商会の銘も有り)である事、あからさまな加工痕も見られない事からオリジナルの組み合わせと思われます。
こんな事もあるんですね。

当時の時計はアメリカなどのしっかり量産体制が整っていた場合を除いて、似ているようで一品物と言うのが普通との事です。
ケースと機械をそれぞれ専門の工房が作っていて、それぞれ沢山あったという事です。
なので規格はあってケースの入替自体はできても、オリジナルのペア以外ではピンと切り欠きが微妙に合わないとか、龍頭の固定方法が違って新たな開口が必要だったとか、リケースの当たっては加工が付き物のようです。



こちらは龍頭ですが、軸と本体が固定されていないものでした。
このため、ケース側と機械側の両方にビスがありました。
ケース側はこれまでに何度も補修されており、現在機能しているビス穴は3か所目か4か所目のようです。



地板の直径を測ってみました。
約50㎜…大きいサイズです。
機械、つまりムーブメントのサイズを測る規格は、現在主流のランカシャーゲージと、古い時代に用いられたフランスの単位「リニュ」に基づくドゥージエムゲージがあります。
恐らくこの時代なら後者なのでしょうけれど…この位の直径に当てはまる一覧とかが見当たらないのです。
精工舎タイムキーパーの初代が20型なので、その出品情報なんかを参考にして適当に言っている状態…
一応、49.76mmをリニュに置き換えてみると凡そ22と出ました。とすれば、この機械は22型となるでしょうか。
もっと勉強が必要です。



さて、日の裏車と続いて鼓車関係を取り外して、さくっと裏へ行きましょう。
特に変わった機構は無いようです。



裏面。ここからが本番。



あっという間にこんな感じ。
アンクル回りはどうなっているでしょう。



オーソドックスな二股のカウンターウェイトが付いたアンクルでした。
ガンギ車の歯に返しがついているのでクラブトゥース式ですね。
この写真では見えませんが、しっかりと爪石も入っており…



テンプの方もダボ石が入っています。
ひげゼンマイは平ひげタイプですが、結構良いグレードじゃないでしょうか。
最終的に数えたら15石でした。



そして香箱。今回も開けます。



ゼンマイが取れました。
特に損傷は無いようで何より。



これでほぼ全バラ完了。
やはり筒かなは抜けませんでしたので、無理せずこのまま進みたいと思います。
その分念入りに洗う事としましょう。









そして組み立てとケース再生を済ませたら一旦完成。
動作確認を行い、何処か変ならばその部分まで分解整備となります
(後から知った事ですが、本当はムーブだけの状態で埃避けをしつつ暫く見るそう…今度からそうしよう…)。

正直に分解清掃だけでちゃんと復活できたので、かなり運の良いパターンと言えると思います。
変わった形のチェーンも付いてきて、言う事無し何じゃないでしょうか。

そして…扇風機の記事と異なり組み立て工程を省いていますが、それは一重に「見た目上の違いがあまり無いから」でございます。
扇風機の場合は埃や汚れの有無でビフォー・アフターが分かりやすいのです。
配線交換も多いので、その意味でも見た目が変わります。
しかし時計の機械は目に見える部分はそうそう汚くはないので、清掃前後を写真に撮っても今一つ分かりにくい。
分かりやすいのはケースや風防の方です。
なのでシンプルに結果だけ掲載としています。
ケースの再生自体も取り立てて言うような事はしていませんし…ぶっちゃけ扇風機の真鍮羽根再生とほぼ同じですから。

そしてこちらの個体は今のところ調子良く動いており、このまま行けそうな感じ。
後は実際に持ち歩いてみて、ズレが出たり調子を崩したりしないかを見ればOKでしょう。

で、ここまで来て気づきましたが、グラスバックのダストカバーはオリジナルではないようです。
カバーのリムには位置決めの切り欠きがあるのですが、ケースの方には対応する凸部がありません。
とはいえちゃんと嵌っているのでヨシ。

矢継ぎ早ではありますが、続いてもう一つ…シュミット直営時代の個体へと参りましょう。
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Posted at 2023/12/10 21:56:59

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