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2024年01月20日

使い込まれた味 R.シュミット商会(ワーゲン商会扱い、鍵巻き) 21型商館時計 明治20年頃

ネタを溜めていた順で引き続き時計の修理です。

昨年終わり頃からの時計ネタラッシュ、ブログに上げていない個体もいくつか買っていますが、ハズレ率はそこそこ。
技量があれば直せるだろうな…というのもあれば、プロなら不可能じゃないだろうけど金額等々割に合わないなというものまで。
そんな中で自分のレベルでも何とかなった物達を紹介していきます。

今回はこの前にも取り上げた商館扱いの別個体となります。
それよりも少し古いかもしれません。







大き目サイズの鍵巻き式。
ワーゲン商会扱いのR.シュミット製です。



偶々自分の持っている者達がそうなのか、他と違って刻印がなかなか鮮明。
トレードマークが薄いってのは少ないようですが、ホールマークがくっきりしているのは初めてかもしれません。
ケースメーカらしき刻印もあります。
メーカは不明ながら、コインシルバーを示す0.800の上にはライチョウのホールマークがありますので、少なくともスイスの工房で間違いありません。

この個体の年代予想としては、以前の通り取り扱った商館からまずは範囲が決まります。
ワーゲン商会はR.シュミット製時計の輸入を最初に手がけた商館で、期間は明治10年から23年。
そして鍵巻き機構がダボ押しと剣引き剣回しへと移行するのが明治23年あたりから。
商館時計自体が大体明治20年頃からの物を指すという事で、明治20年頃と見るのが良いでしょうか。

R.シュミット商会についても前に書いていますので、今回は省略させて頂きます。
それでは早速、中を見て行きましょう。



機械の取り出し。裏蓋の跳ね上げバネは途中から折れて失われていました。
無くても困らない部分ですので気にしない事とします。

ダイヤルはクラックも無く奇麗そのもの。
鍵巻き時代の通例なのか、ファブルブラントと同様に機械は全面ペルラージュ仕上げです。
龍頭巻きの機構がありませんので、表面から取れるのは日の裏車と筒車。そして筒かな。



裏面です。ここからが本番。

現状で分かっているのは、天真は無事だけど動きが渋く、どうもネットリしている事。
そしてゼンマイが巻きの途中で飛ぶ事。
どちらも軽症の予感。

サイズは地板の実寸をリーニュに換算すると20.99でしたので、21型で良いと思います。



シリアルはケースと機械にあり、今回もマッチしていました。



分解途中、4番車とガンギ車がブリッジにくっついてきました。
テンプのネットリ感と言い、どうも油が固化しているようです。
前回の注油量が多めだったとかもあるでしょうか。

脱進機は商館時計によくあるY型カウンターウェイトのアンクル式で、爪石は挟み込まれている方式でした。



後は香箱を残すのみ。
既に外れている写真ですが、ラチェットのバネを止めるビスを記すべく。



それでは開けてみましょう。
蓋には何やら別のギアが付きそうな箇所があります。
これの意味は後ほど解る事になるのですが、修理していた当時は知らぬままとなりました。
多分…次回かそこらの時計ネタで出てきます。
もう既に原稿があるのですよ。



予想通り、香箱真付近のゼンマイ切れはありません。
アールがきつくなる辺りで切れるのが多いようです。



「飛び」の原因は端部折り返しの破損だった模様。
これなら直せそう。
香箱側の突起も甘くなっているようなので、そちらも具合を見てハンダを盛るか何かしましょうか。



部分品全景。いざ洗浄へ。
今回の機械は15石と立派ですが、2か所が金属で置き換えられているため現状13石です。
まぁ136年ほど生きてきた時計ですから、修理痕があって当然でしょう。
タイトルに載せた「使い込まれた味」の一つです。



洗浄後、まずは香箱から着手します。
ゼンマイの後端処理をやり直し、良い感じに戻せました。
香箱ブリッジは今回も分解できない構造でした。



順次部品を戻して動作確認。
天真の受け石が真鍮に変えてあり、同時にアガキ調整もした模様。
そのためか良い具合での組みつけに少々苦労しましたが、無事元気に動くようになりました。
ゼンマイの飛びも問題なく直ったようです。



機械が直ったならケースへ移りましょう。
いつも通りに酸で洗って磨きます。

なお今回は風防も磨きます。
前側は深めの傷以外に全体がくすんでおり、ダストカバーの方は裏蓋との接触跡があります。
裏蓋がかなり薄く、長年の使用で中央部がやや凹んでいたせいです。

磨きに使うのは別件で買っていた研磨剤セット。そちらで用が無くなってしまったものでした。
酸化セリウムなので、いわばキイロビンの番手違いです。
結果は完成写真にて。


で、組んだは良いのですが…ものすごく進む。
最初の一晩、8時間ほど放置したら20分くらい進んでいてビックリ。
つまり日差+60分。進み過ぎ。

真っ先に怪しいと睨んだひげゼンマイは、傾きが気になっていたので修正しました。
しかしそれでも尚恐ろしく進みます。

そしてよく見てみれば…緩急針のひげ持ちが変。
進み方向へ振り切る前に2番車に当たります。
余りにも自然な仕上がりで気づきませんでしたが、どうやら交換されているようです。
本来の緩急針よりひげ持ちまで距離があると見えます。
それで無理に引っ掛けるとひげ全体が偏ってしまい、大幅な進みが発生していたのです。

試しにひげ持ちを外し「あんなの飾りです」状態にしたところ日差-2分程度に。
ならばと更に調整して、ちゃんと緩急針に引っかけつつ等間隔を保つように何とかしてみました。
すると、やや進み側の位置で日差+1分程に落ち着きました。
ひげゼンマイの重要性と繊細さについて知る事ができました。







という事で完成。
ボウの銀貼りの剥がれに裏面の摩耗具合など、長年に渡って活躍したのが見て取れます。
穴石の金属補修がありましたし、緩急針も合わない物へ変えられていました。

扇風機にしろラジオにしろ時計にしろ、傷の無いほど正直な魅力は増すもの。
デッドストックとかミントコンディションとか、実に良い響きです。
ですがこのような、自然と出来た摩耗や色落ちなどは「味」として捉えたいものです。
生かすために仕方なく生じた部品交換もまた同じ。
それもまた古いモノの魅力なのだと思います。

とはいえ…商館時計は機械を見ないと、どれも同じような外見なのが良し悪しかなぁ…
でもそのスタイルが気に入っているので…



改めて機械です。
地板のペルラージュが奇麗。
直接見るのも良いものですが、グラスバック越しもまた良い。



ガラスの仕上がりはこんなもんでどうでしょう。
深い傷は残るものの全体の艶が復活しただけで大違いです。
ケース裏蓋の凹みもそれなりに修正しておきました。


という事で、今回は状態は悪くないものの、全体的に使い込まれた様子が窺える一品でした。
ひげゼンマイの調整しかり、色々と勉強になりました。

この先もう少し時計ネタが連続しそうです。
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Posted at 2024/01/20 21:09:07

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