樹３２１５のブログ一覧

夜中に寂しさを間際らわすために友人へ電話している時だった。

隣で寝ていた子供が突然ボーっと起き出した。
「ん？うるさかった？どうしたの？」と尋ねた次の瞬間、
子どもは「オエｯﾂ・・・」と嘔吐した。

「え、なに！？なに？！気分悪いの？！、あ。ごめん電話切る」
電話越しの友人の大丈夫なの？という問いが終わる前に電話は切れ、
子供を急いでトイレに向かわせる。
明かりをつけ、時計を確認すると深夜１時を過ぎていた。
翌日の仕事も控えていたがもう寝不足は避けられなかった。

ツーンと鼻にくるぐしょぐしょになった毛布を
とりあえず風呂場へ持っていった。

肌寒い季節だった。
子供は一瞬落ち着いたが、再び少量を吐き出した。
とりあえず熱はなさそうだった。

「大丈夫？気分悪いの？」
子供は意識がもうろうとするのか、尋ねても立てに首を少し動かすだけで
しゃべってくれない。胃腸炎かな・・・夕飯の時は別に異常なかったのに・・
当時子供は２歳

他の子に比べて無口で意思疎通がうまくできない性格だった。
通ってる保育園の子供の風邪をすぐもらいすぐ具合を悪くした。
なぜ菌を移されるの？って誰のせいにもできない怒りを抱えるも、
たとえ原因がわかっても何が言えるのか。
弱い人間のやり場のない感情は押し殺すしか無かった。

途方にくれる。
でも自分がどうにかするしかない。
こんな時、誰を頼ればいいんだろう。
頼れる人はいなかった。
２人でもやっていける自信があった。
正社員で収入も安定はしていたので夫の養育費がなくともやっていけた。

夫とは数か月前に離婚をしていた。
その夫をなぜかとても慕っていた両親は離婚の原因はお前にあると冷たくされ
疎遠になった。

誰を頼りたいのか・・
一人でなんとかすると決めていたのではないか。
強気な性格が夜の闇に押し潰されそうになっていた。

あれこれ頭の中がめぐるも、
子供の吐き気は一向に収まらず、出尽くしてもなお、３０分置きくらいに
お腹あたりがグルグルとなってトイレに間に合わず、
子供は床にしゃがんではあちこちで吐いた。

「トイレでって言ってるでしょ！」
と片付けにイラつく自分は思わず言った。

子供は言われても泣きもせず、ボーっと蒼白な顔をしながら黙っていた。
眠れないのか横にもなれず座り込んでいた。

何かを口にさせるとたとえ水でもすぐ吐くため、与えず様子を見た。
寝れないようなので、小さくテレビをつけた。
どうでもいい通販サイトの番組の中で笑い声が聞こえた。
良く見る録画していたアニメに切り替え「眠れるまで見てていいよ」と
つけてあげた。

その間にお風呂場で毛布の汚れを取り、洗濯機を回した。
あれこれしてだいぶ片付いてきたので、子供の様子を伺うと、
いつの間にか子供はテレビをつけたまま横になって寝ていた。
顔は青白かったがその寝顔にホッとし、そっときれいな毛布をかけ、
テレビを消し灯りをを小さくした。
冷めてしまったコーヒーの残りを苦みを味わい少し喉を潤した。

嵐のような時間が過ぎ、パッと時計を見ると朝の４時を回っていた。

今日はどうしても仕事が休めなかった。
休めば会社も嫌な顔をするだろう。
でもこの状態で子供を保育園には行かせられない。
かと言って自転車で数分の場所ある実家に子供を預けられない。

頼れる人がいないってこんなにシンドイのか。
自分だけでは子育てがどんなに困難であるか、限界を感じた瞬間だった。

もし、自分に何かあったらこの子はどうなってしまうんだろう。
そんな事を寝る前に良く考えるようになってもいた。
自分が倒れたら・・・
もし、・・もし何かあったら・・・


その後２時間くらいだけ寝て、
会社へ事情を話し遅れると連絡した。
朝一番に行きつけのクリニックへ子供を連れて行き診察をしてもらった。
熱が無く、吐き気も収まっていたので、
風邪薬をもらい保育園へ行かようと思った。

子供は薬嫌いで飲んでくれないことを知っていたので、
もらっても無駄になるだろうと思っていた。

しかしその時、子供が初めて、
「ママ、薬ちゃんと飲むね」と言ったのだ。
驚いた。子供はちゃんと薬を飲んだ。

保育園に着き、「早めに迎えに来るからね」と子供に言った。
子供は不安そうな顔をして涙目になっていた。
必至に訴えてくる気持ちが分かっていた。でも分かっていても
どうにもできず受け止められない・・。
子供は私が居られない事を理解していた。だからジッと黙っていた。

担当の先生に何かあったら連絡をすぐ下さいと伝え保育園を離れた。

急いで自転車を漕ぎ駅へ向かった。
ただひたすら急ぎたくて一生懸命漕ぎ続けた。
なのに鼻がジーンとし、涙が止まらなかった。
急に苦しくなった。
私だけがなんでこんなに必死になっているのだろう。
あぁ、本当に悔しい・・本当に辛かった。

あの子には私ししかいないのだ。
別れの顔が忘れられない。それは一度だけではない。
何度も懺悔したくなるような時間を過ごしてきた。

覚悟を決めて再出発した自分の人生。
なのに何度もピンチが訪れる。まるで試されてるかのようだ。


もし明日休めたら会社にお願いしよう。
愛おしい子供のために・・・。

駅に着く頃には感情を捨てたいつもの自分に戻っていた。
自分の心の中とは裏腹に陽の光がまぶしく背中を押さるような感覚だった。


そして今、
今はまたあの頃には想像もしなかった別の人生の中を駆け抜け、
時間に支配され生きている自分がいた。

ほろ苦いコーヒーを飲むと
時々ふと思い出す事もある今日この頃・・・