毎回!? サーキットを走る人のオイル交換頻度は?

2023年1月26日

サムアップ

サーキットを走るとなるとエンジンオイルをはじめとした油脂類のメンテナンスは気をつかう部分でしょう。サーキットを走った後は、必ずオイル交換が必要なのでしょうか? また、オイルはエンジンだけでなく、さまざまな部分にも使われています。今回はサーキット走行における油脂類を取り上げます。

サーキット走行でエンジンオイルは劣化するのか?

エンジンオイルは毎回換えた方がいいのか? 答えは「換えたほうがいいでしょう」となります。というのはオイルを換えることでのデメリットが、費用と手間程度だからです。オイルを換えたことによって、クルマに対するダメージはないと言えます。

では、換えないとどうなるか? おそらくどうにもなりません。エンジンオイルは多くの人が思っているよりも長持ちします。交換サイクルはメーカー指定距離や期間で十分でしょう。ただしオイル量だけは、毎回確認しましょう。エンジンオイルは消費されます。

オイル01

エンジンオイルが劣化するのは汚れやエンジン内で削れた金属、水分などの混入とオイルそのもの組成破壊がおもな原因です。

このうち汚れは燃焼によって発生するカーボンなどですが、サーキットを走るような高回転域ではカーボンはたまりにくい傾向にあります。また、高回転で使うことによってカーボンなどが除去されるということも起きます。除去されたカーボンはオイル内にも混ざるので、年に1回しかサーキットを走らないというのであればサーキット走行後に交換するのはいいことでしょう。

サーキットを走ったからといって、摩耗する金属類が増えるわけではありません。燃料に含まれる水素が燃えれば水分が発生し、一部はオイルに取り込まれますが、油温がしっかりと上がるサーキット走行では水分によるオイル劣化は考えなくていいでしょう。

オイル03

サーキット走行でもっともオイル劣化が懸念されるのは、組成の破壊です。エンジンオイルは一般的なものだと110℃を超えると急激に劣化し、120℃で限界を迎えると言われていいます。

一方で、レース用のオイルなどは高い耐温度性能を誇っています。自分の使っているオイルの耐温度性能を把握し、サーキット走行でどれくらい温度が上がったかがわかれば、オイル交換が必要かどうかもわかります。そのためにも、サーキット走行では油温計が重要になってくるわけです。

オイル02

サーキット走行ではオイルの量も大切です。万が一のことを考えて多めに入れておくというのは厳禁です。オイルを入れていいのはレベルゲージのアッパーレベルまでです。オイルが多いと抵抗が増え、エンジンに悪影響を与えます。

かといってロアレベルでいいかというとそうとも限りません。サーキットでは高い横Gがかかってオイルが偏ってしまい、オイルを吸い上げられなくなることもあります。サーキット走行でオイルの偏りが発生する場合は、オイルパンにバッフルプレートという偏り防止のためのパーツを装着する必要性が出てきます。

ミッションオイルやデフオイルはどうするか?

MT車のミッションオイル、AT車のATフリュードともに、指定の距離や期間を守って交換すれば問題ないでしょう。もっとも、MTでギヤ鳴りなどが頻繁に起きるときは早めの交換がおすすめです。

ギヤ鳴りが起きているということは、シンクロナイザーが傷んでいたり、ギヤそのものが傷んでいることが考えられ、それらの破片などがオイル内に存在する可能性もあるからです。

ギア

FF車の場合はギヤオイルとデフオイルが共有されている場合もありますが、FRは必ずデフが独立しているのでデフオイルも独立していることとなり、ミッションオイルとは別に管理が必要となります。

ミッションオイル

一般的なオープンデフやカップリング式LSD、トルセンなどのギヤ式LSDは指定の距離や期間で交換すればいいのですが、クラッチ式のLSD(一般的に言われる機械式LSD)の場合は、クラッチの摩耗によるディスクのカスやイニシャルトルク調整のために使うシムの摩耗したものなどがオイル内に含まれることもあるので、メンテナンスには気をつかいます。

どれくらいの距離、どれくらいの期間という目安はありませんが、異音やLSDの効き具合などに異変を感じたら、オイル交換やオーバーホール、イニシャルトルクのチェックなどが必要になります。

サーキットでもっとも負担の掛かる油脂類はブレーキフリュード

サーキットを走ってもっとも負担が掛かる油脂類が、ブレーキフリュードです。ノーマル車のブレーキはサーキット走行での連続フルブレーキングは考慮されていないことがほとんどなので、まさに想定外となります。

ブレーキ

ハードブレーキによってブレーキフリュードが沸騰し気泡ができると、ブレーキフィールがどんどんスポンジーになってきます。これがベーパーロック現象です。ベーパーロックを起こしてしまったブレーキフリュードはエア抜きという作業が必要で、これは同時に一定量のブレーキフリュードの交換作業を伴います。

コースレイアウト、エンジンの出力、クルマの重さ、ブレーキの性能などによって異なりますが、サーキットを走ったあとはブレーキフリュードのエア抜き作業を行ったほうがいいのは確かです。

オイル

ちょっと変わった話をしておきましょう。クルマのドライブシャフトのジョイント部分には、ゴム製のブーツが被されています。ジョイントにはグリスが塗られていますが、高速回転してグリスが蒸発すると内圧が上がってブーツが破けることがあります。よほどの高速回転でないとここまではなりませんが、整備時にグリスの量を多く塗ると破裂の可能性が高くなります。

オイルやグリスは多めに使っていれば安心と考える人が多いのですが、実は多くしたことで起きる不具合もあることを覚えておいてください。

みんなの自動車部

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写真:アフロ、PantherMedia/イメージマート、WavebreakMedia/イメージマート

諸星陽一
  • 諸星陽一
  • 自動車ジャーナリストとして専門誌やライフ誌での執筆活動をはじめ、安全運転のインストラクターも務める。1992年~99年まで富士スピードウェイにてRX-7のレースに参戦。セルフメンテナンス記事も得意分野。福祉車両の数少ない専門家の一人でもある。

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