前回の続き。
フォード四日市さんにてピューマを試乗させていただきました。
また、Yorupikuさんのフォーカスmk3もご好意で試乗できることになりました。
(書いてるうちに長文になってしまいました…)
ピューマ
1.0ℓエコブースト+マイルドハイブリッドに6MTという組み合わせ。
グレードはST Lineです。
Yorupikuさん、KyOhさんと代わる代わる、お店〜四日市港方面の道を走らせました。
普段は運転のみの試乗が多いのですけど、珍しく助手席、後席も体験できました。
まずは助手席からスタート。
SUVルックというのもあり、着座位置は高めですが一般的なBセグの+α程度という印象。
個人的にはこれぐらいが腰高感なく見晴らしはいい、ちょうどいい感じです。
乗り心地は、路面の悪いところも通りながらですが跳ね感なくまずまず。
車内騒音も、フィエスタmk7.5 エコブーストとの比較では結構静かに感じます(エンジン音も、同じエンジンとは思えないくらい聞こえてこない)。
途中、運転しているKyOhさんがコーナーの曲度を読み違えてちょっとオーバースピード&横G強めで進入していましたが、腰砕け感なく安定しています。
次は後席。
ドアのウェザーストリップと内装パネルとの隙間に指を差し込んで入力による変形度合いを確かめますが、自分の感覚では変形は感じられず…
乗り心地は助手席と違って、結構跳ねる印象。
リアがトーションビーム&シート座面がサスのほぼ真上というポジションだからか、Y軸方向の突き上げが強めです。
シート座面のクッション性で幾らかマシにはなっているものの、ダンパーの縮み側の動きがやや渋い?
あと、シート座面長が自分(身長179cmの足長め)にはやや足りず、膝裏から目測で15cmは短いです。
乗り心地も含め、長時間乗るにはちょっと辛い?
レッグスペース自体は拳一個分以上はありました。
最後に運転。
発進時のトルクはマイルドハイブリッドのアシストのお陰か薄さを感じず十分。
1速と2速のギア比がやや離れているのかシフトアップの時に少し失速する感じがあり、前車フィエスタSTを思い出しました(現車ルーテシアRSは比較的スムーズに繋がる)。
試乗が終わってから思い出しましたが、フィエスタの時はアクセルを煽って回転を上げながら2速に入れてた記憶があります。
メーター内の表示では2,000rpmぐらいでシフトアップを促しますが、もうちょっと回してからアップしたくなります(その意味ではトルク感が少し物足りない)。
車内に入ってくるエンジン音が静かすぎて、回してる感が足りないのもあるかも。
速度を上げてしまえば、流れに乗って走らせるには十分な力感。
走行中、ドライブモードを色々変えてみたものの、エコでもスポーツでも何か(アクセルレスポンス、エンジン音等)が変わったようには感じません。
もう少し色んな道を走らせてみれば分かるのかしら…?
操作感(ステアリングのアシスト強さ、各ペダルのレスポンス)は全体的に軽め。
それでいながら操舵してもロールしすぎず安定しています。
同クラスで経験があるのはマツダのCX-3くらいですけど、同じく操作感軽くロール感もやや強めの印象。
後述しますが、この適度なロール感、ロールスピードが欧州フォードの良さの一つです。
夫婦+小さい子供2名というような家族構成であれば、普段遣いから旅行等レジャーまでアクティブに使えそうです。
後席ドアは車体下部までカバーしており、雨の日に乗り降りしてもボトムの裾を汚しません(フェンダーモールの一部が突出していて、そこはやや気になりますが…)。
ラゲッジルームの床下収納にはドレンコックが付いていて、汚れたものを積んだりその後水洗いしたりするのも便利。
今回の車両は3ペダルMTでしたが、7段DCT車も販売されています。
他人と違うクルマ、日本国内で使いやすいサイズでMTのSUVルックなクルマが欲しい人にはオススメできます。
フォーカス
↑単独での写真を撮り忘れました…
前期型の日本仕様が2.0ℓNA+6DCTだったのに対し、こちらは1.6ℓエコブースト(150馬力仕様)+6MTという仕様。
左ハンドル仕様は6年前に走らせたRS以来です。
座ってみると、実際にはそうではなく視覚的なものでしかないのですが、シート中央線に対してステアリング中央線がオフセットしているように感じます。
各ペダルは全体的に車体中央寄りにセットされており、アクセルペダルが右足を伸ばした先にあり、左足も踏ん張れるだけのスペースが十分確保されています。
操作動線は全体的に大きいですが、大柄な人の多い北米市場まで想定したものであり、これはこれで筋が通っていて違和感ありません。
サイドブレーキはシフトレバーの真横にあり、(そういうクルマではありませんが)サイドターンにも使いやすそうです。
という長い前置きはさておき、ギアを入れてサイドブレーキ解除し、アクセルは踏まずクラッチをリリースして走り始めます(クラッチ操作だけで発進することで、極低回転域での扱いやすさを見ています)。
クラッチの踏力は重いです。
以前走らせた1.0エコブーストは勿論、RSよりも重いような?
後々考えると、クラッチ交換前の自車ルーテシアRSのそれのような、足裏全体に伝わる重さ、また反力の伴うバネ感は少ない印象でした。
ここからはうちにあるボルボV40(DCTなだけでエンジンは同じ1.6 エコブーストの高出力版・180馬力仕様)との比較が主になります。
発進加速ではV40はクッと動きすぎる印象ですが、フォーカスはあくまで重々しくソロリと走り始めます。
恐らくこれは、V40のDCT(パワーシフト)のクリープ感を出す制御が強めなせいと思います。
日本仕様のフォーカスmk3でも同じ印象でした。
同じエンジンを積むフィエスタmk7.5 STは割と盛大な音がするようですが、素モデルであるフォーカス、V40ともエンジン〜排気音の主張は控えめ。
クルマの性格的にも、オーナー車の試乗であることからも、あまり飛ばす気にはならず、それでいてゆっくり走っていても痛痒は感じません。
アイドリングのままクラッチを繋いで走り出した時でも、そこまでトルクの薄さは感じず。
少しアクセルを踏んで1,500rpm付近でも十分なトルク感です(タービンはちょうどその辺りから回り始めるとのこと)。
ただ回転感はちょっと重いかな?
普通の発進レベルでもアクセル操作に対する反応が鈍い感じで、もうちょっとレスポンスすれば…と思うのは普段スポーツ寄りのエンジンに慣れているせいでしょうか?
クルマとしてのトータルバランスはこれで釣り合っていると感じますが、高速域での加速性などは+αが欲しくなるかもしれません。
あまり慣れていない左ハンドルのクルマ・道なせいもありますが、幅が少し広く感じます。
それでも何てことなく走らせられるのは欧州フォード故か…
乗り心地も、先程のピューマに比べて落ち着きがあります。
タイヤはコンフォート寄りのミシュランプライマシー4でしたが、それだけでなくサス自体がいい仕事してると思います。
プライマシー4自体はややボテボテ感がある乗り心地の印象ですが、このフォーカスではそれほど感じません。
日本仕様(スポーツサス装着)はダンパーの縮み側を締めたような突き上げ感を時折感じましたが、この個体は標準サスでそんなことはありません。
速いペースは全く試していないものの、今まで乗った欧州フォードや日本仕様のフォーカスmk3の印象からすると標準サスであっても十分キレてると思います。
ちなみに家グルマV40(日本導入初期モデル)もスポーツサスですが、突き上げ感を感じないまでもモゴモゴと終始落ち着きない印象でした。
至ってフツーの直線を走っていて気付きました、直進性がいい!
日本仕様も同じく直進性はいいものの、どうも電動パワステの制御がニュートラル感(N感)を強く出そうとしすぎて不自然なのが気になりました。
30°ほどステアしていった時にやや段を乗り越える感触があったのを思い出します。
それに対し、このクルマはそうした違和感なく、ステアリングの据わりを感じつつ手を添えているだけで楽に走ります。
(そういえば、フォーカスmk2.5 RSでも電動油圧パワステのアシストをスポーツモードにすると同様の不自然なN感がありました。
日本仕様はサスだけでなく、シャシーもスポーツ寄りのセッティングだったってこと?)
並行の素1.6エコブーストは真っ直ぐ走るし旋回も乗り心地も気持ちいいしと、久しぶりに感嘆しました。
-----ここから脱線-----
同時に、普段乗り慣れているはずのV40も、
実はN感が不自然ではと気付かされました。
語彙が乏しく適切な表現ができないのですが、N付近で不自然な据わり、そこからステアリングを切っていくと抵抗感やや強くタイヤが向きを変えます。
実際走らせていても、「何か真っ直ぐ走ってる感じがしない」といつも感じていて、そこはかとない不安がありました。
一度だけ阪神高速5号湾岸線を走らせたことがあり、法定速度でも直進性悪くリアサスがウネウネ動いてとても高速走行する気にならなかったのは、硬化したピレリP7だけのせいではないはず。
ここからは(シャシーダイナミクスについては専門外で、ホイールアライメント等の違いも読み解けないのであくまで)妄想なのですが、フォーカスmk3を基準に作られたサスセッティング、シャシーダイナミクスの作り込み方は同じプラットフォームを使ったV40ではそのまま反映できなかったのではないかと。
ボルボ基準では曲がりたがりすぎるのを穏やかに均し、また車両企画上セダン(S40)、ワゴン(V50)、3ドアハッチバック(C30)を統合する必要からフォーカスでの高く座らせるパッケージングを削らねばならず、フォーカスでの適正なサスジオメトリーが崩れてしまったのではと考えています。
V40自体、それはそれで実用車としてよく走りますし、既に絶版で、安全が売りであるボルボの「一番小さいクルマ」としての価値は未だあると感じます。
ただ、フォーカスmk3の走りを知っていると「何かが足りない」感は否めません…
-----脱線終わり-----
随分脱線してしまいましたが、この試乗で欧州フォードの「言語化しにくいけど乗れば乗るほど身体に染み込んでいくベンチマーク性」を改めて感じるところになりました。
素モデルはSTやRSといった役モノに比べれば分かりやすく尖ったところは無いのですが、日常的に走らせる実用車としての使いやすさ、それでいて意のままに操れる感覚も両立させているのは欧州フォードならでは。
ピューマでも感じたのですけど、日常域でのコーナリングでも文字通りじわ…とクルマがロールしていくのも欧州フォードの美点です。
現車ルーテシアRSに4年乗っていて、スポーツ性と乗り心地の高度な両立はフランス車ならではと感じていますが、唯一足りないのはロールに伴う荷重の移り方。
欧州フォードと比べて荷重の動きが急峻で、そこだけはやや違和感があります(これも、それっぽく飛ばしてる訳でない日常域での話。もしかしたら、よりスポーツ寄りのシャシーカップなせいもあるかもしれませんが)。
欧州フォードは生理食塩水の如く身体に染み込む自然なロール感が必ずあり、素モデル→ST→RSとスポーツ性が上がるにつれてそのリズム感が上がる印象。
継続して欧州フォードに乗る機会はほぼ無くなってしまいましたが、時たま突発的に乗ることがあっても直ぐ感覚を思い出せます。
今まで素のフォーカスmk3を試乗してきたのは新しくても6年前、古くは9年前まで遡ります(あの当時、公道のみならずサーキットでも走らせられたのは今もって貴重な体験です)。
以前自分で書いたブログを読み返すことなく「そういえばこうだった!」と昨日のことのように思い出せたのは、それだけ欧州フォードが自分の中で浸透している証左だと考えます。
12月の欧州フォード全国オフにかこつける訳ではないですが、改めて欧州フォードの変わらない美点を実感した次第です。
こうした機会を頂けたフォード四日市店さん、Yorupikuさんありがとうございました!