2013年06月01日
恐怖体験シリーズ 【赤いシルビアのI先輩】 後編
前編だけですと、とんだ胸糞悪いエピソードとしてミスリードしてはいけませんので、急ぎ足で後編もUPいたします。
意中の1年生女子を新歓コンパでベロベロにしてお持ち帰りした、赤いシルビアを駆る軽薄野郎のI先輩が、コンパから1週間経って、やつれ果てた姿で現れたその真相とは、そして、1年生女子は一体・・・
ここからが恐怖体験の本編となりますので、耐性のない方はくれぐれもご注意下さい。
ちなみに、前編はこちら>>>
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クズだと言われたことに対して構う様子もなく、話を続けるI先輩。
「でよ、仕方がないから、少し話しをしようってことで、彼女を落ち着かせた。実は、休憩と泊りが入れ替わる時間帯で、チェックアウト待ちだったりするんだけど。
でもよ、本当に山ん中で暗い道しかなくて、1時間ぐらいうろうろ走っていたら、ベッドライトの先に、大きな鳥居が見えた。スピード落としてよく見ると、砂利道がどうやら本殿近くまで繋がっているみたいだ。
オレは直感的に、ここだと思って、鳥居の下を潜ったよ。
やたらでかい木が並ぶ、歴史ある神社みたいだけど、なんとなく薄気味悪い気もしてたんだ。真っ暗な道を、行けども行けども、本殿らしきものはなく、森の中に入って行くみたいだった。
彼女は『やだやだやだ。』の一点張りだったけど、いつの間にか静かになっていた。
さすがのオレも、ちょっと不安になりかかった頃、ようやく目の前が開け、いくつかの木造の建物が見えた。
ここまで来たらこっちのもの。話しをしようと言ったのは嘘じゃないけど、それ以上も当然ある。
肩を貸した時にどさくさで触った感触を思い出し、オレの下半身はレールガンとなり、照準へとオートプログラムされていたのさ。
オーディオの照明がかろうじて、シルエットを認識できるぐらいで、ライトを消すと、本当に真っ暗になった。
オレは前を向いたまま、さりげなく助手席の彼女の手を握った。すると、なんと彼女も軽く握り返してくれた。しばらくそうした後、彼女の方から、オレの指をつまんだり、撫でたりしてきたんだ。
オレも、お返しにと、彼女の腕を撫でたりしている内に、だんだん、彼女の息が荒くなっているのが聞こえてきた。」
「なんだよ、結局、エロ展開かよ。」T先輩が、話を切った。
「聞け、ここからなんだよ、おかしくなったのは。
彼女の息遣いとともに、獣臭ってヤツ?いや、それに肉や唾液、血とかが混じったような、生々しい臭いがしてくる。
それでも、オレは、森の中だし、彼女がハアハアハアハア言っているから、まあ、いいかって、暗闇にも目が慣れてきたところで、キスしようと彼女のほうを向いた。
そうしたらよう、、、、顔、、、顔が、、、、、異常に長いんだ。暗くて表情は分からなかったけど、長いってレベルじゃねえ、頭が細く尖って、鼻ものっぺりして、顎の先なんか、胸にくっつくぐらいあってよぉ、
目?目なんて、よく見えなかったよ。でも、今考えると人間の目じゃなかった気がする。
うわって声を出したら、下顎が裂けたみたいがバクって開いて、恐ろしく低い声で、『お前。破ったな。』って。」
I先輩は、ここまで話すとブルッと身震いを一つした。
「ヤベェってもんじゃねえよ。車と彼女を置いて行くわけにも行かないし、ヘッドライトをつけて車を転回させたら、古い建物のそこら中に注連縄がしてあったりしてさ、今考えると、神社って雰囲気じゃなかった。その隙間から、子供みたいな影が出てきて追っかけてくるの。
オレの隣じゃ、ガチガチと歯が当る音がしてるわで、訳も分からず、ただアクセル踏んで、鳥居の外に出た。もう冷たい汗で体中がぐっしょぐしょ。
恐る恐る彼女の方を見たら、元通りだったけど、放心状態というか、目の焦点が定まってないような感じだったし、オレが何言っても反応なかったから、諦めて家まで送った。獣の臭いももうしてなかった。」
「おい、顔が長いって、なんだよそれ。マジで怖えし、洒落になんねえよ。」
T先輩は本気でビビっている。
「車も傷だらけだし、Kちゃん送った後もなんか変な感じだった。信号待ちで隣に並んだ車がすっげえ変な目で見てくんだよ。家帰って寝て、次の日、車直しに行ったら、、、、、」
I先輩の顔から血の気が引いている。
「居るんだよ、その顔が長いのが、俺の後ろに。いや、正確には、映るんだ鏡とか、窓ガラスとか、どこかから覗き見するみたいにさ。
誰かに見られている気はしてたんだけど、どうにも怖くなって、近くの由緒ある寺に行ったら、そこの坊さんが、開口一番、えらいもん連れてるなって。呪詛のようなものが憑いていて、平たく言えば、オレがマーキングされて、連れて行かれるらしい。どこにって、そりゃ、多分あっち側だよ。それで、取り合えず清めてもらってから、肌身離さず着ける様にと数珠をもらい、帰ったら、必ず七日間は家の回りに盛り塩をして、家から出てはいけないと言われた。」
「今日で、七日は経った訳だ。」
「ああ。おっかなかったぞ、夜中なのに窓の外にあのシルエットが見えたり、防犯カメラの前を影が横切ったり、高校から返って来た弟が、外で兄ちゃんのこと呼んで来てくれって女の人に言われたとか。
もう、存在感が半端ねぇんだよ。なんとか引きこもって、七日間過ぎたら、見えなくはなった。
けど、まだなんか気持ち悪いんだ。」と言って、セカンドバックから数珠を取り出し、握り締めた。
「エロ展開どころか、まさかの恐怖体験とは。」
ラウンジにはヒンヤリとした空気が立ちこめ、誰も口を開こうとしませんでした。
と、突然、
「先輩、実はそのお話、続きがあるんですよ。」
いつの間にか話の輪に加わっていた、Kちゃんと同じ大学に通う女の子が、話を繋げたのでした。
「新歓コンパの後、Kと先輩が抜け駆けしたこと、私たち知ってて、、、、先輩のこといいなぁって思っていたコもいたから、明日、Kから事情聴取しなくちゃってことで、学校で待ってたんです。
3限が終わった頃にKが来たんですけど、なんか元気がなくて、あ、これは、昨日の夜、頑張っちゃったパターン?なんてガールズトークで盛り上がれるかなって。
Kっていままで彼氏とかいなかったんで、たっぷり聞かせてもらおうじゃないのって、Kを食堂でつかまえて聞き出してみたら、すごく酔っ払ってほとんど記憶がないまま、気がついたら帰宅してたんですって。それってもしかして、なにかやばいもん混ぜられてたんなら、大事件ですよね?」
と言って、ちらりとI先輩を見やり、
「でも、Kは、服とか脱がされた跡もないし、なんにもされなかったから大丈夫だと。
私たちも、そんなことないでしょ、ほんとはどうなのって?聞いたら、所々覚えていることがあって、すごく怖かったことがあったって言い出したんです。
気がついたら山の中の真っ暗なところで、先輩の車の中にKは居て、隣の先輩の声が耳鳴りで聞こえなくなり始めると、自分を抑えるのに必死だったとか。」
「なに?自分を抑えるって?」とI先輩。
「自分が先輩を食べたくて食べたくて、どうしようもなかったみたいです。」
「うわ、Kちゃん、意外と肉食。」T先輩の一言で、笑いが起きたが、そのコは笑っていなかった。
「私たちも、そう言って笑っていましたが、違ってたんです。Kは、I先輩の頭を噛み砕きたい自分を一生懸命抑えていたんですって。早く車を出してくださいって言おうとしたら、顎が、お腹の辺りまで開いてて。先輩もKの異変に気がついて、林道みたいなところを走っている間も、どうにも怖くて、顎を手で閉めようと押し上げてたら、助手席の足の下に小さい子供みたいのが居て、Kの体からなにかを引っぺがした後、気がついたら、いつのまにか、家に着いてたって言っていました。」
「なんだ、マジかよ。」I先輩の顔色は真っ青だ。
「Kも怖くなってお母さんに相談したら、朝一で、近くの大きい神社に連れて行かれて、霊験あらたかな宮司さんに見てもらうと、なんでも、そこは不浄だったところが清められた場所で、立ち入るのも禁忌、淫らなことをするのなんてもってのほか。破ったものには禍が訪れるらしく、宮司さんは、注連縄を踏んだのかどうかしつこく聞いてきたんですって。結局、分からなかったんだけど、宮司さんが言うには、どこかが破れているらしく、心配だと。
ま、Kは守られたから大丈夫らしいんですが。ただ、破った上に、邪まなことをしようとしたI先輩には、七日が経った後に、なにかが起こるから、気をつけるようにだそうです。
で、Kに、I先輩に渡しておいて下さいって頼まれていた、そこの神社のお札とお守りみたいなやつ、持って来たんですけど、、、、」バッグをごそごそ探すそのコに、
「早く、それ、オレに渡せ。」今にも飛び掛らん勢いで、身を乗り出すI先輩。
「あれ、おかしいな、、、、、なんか忘れちゃったみたいです。あ、私そろそろバイトなんで、また今度持ってきますね~」
「おい、待て、、、そこの神社って、どこだよ、、、おい!!」と慌てて追いかけるI先輩は、そのままラウンジには戻っては来ませんでした。
これが最後に見たI先輩の姿です。
それ以来、I先輩をサークルでも、学校でも見ることはなくなり、風の噂によると、精神がぐちゃぐちゃになってどこかのメンタルクリニックに入院したとかしないとか。
Kちゃんは別のサークルで楽しくやっていると後輩から聞きました。
私も、次第に軟派サークルから足が遠のき、純粋なメタル生活へと突入。
I先輩が見たものが何だったのか、定かではありません。
ただ不思議だったのは、Kちゃんの同級生と言ってラウンジに来ていたそのコについて、誰一人として知っているメンバーがいないどころか、バイトに行くとラウンジから立ち去った後、ものの数分で、そのコがどんな顔をしていたとか、声や服装すら、誰も思い出せなくなってしまっていたのでした。
(完)
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アンビリーバブル | 日記
Posted at
2013/06/01 19:50:04
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