
プリウスワゴン vs フィットシャトル!どっちが買い?
2011年3月9日
(↑「ホンダ フィットシャトル」)
本田技研工業(株)ホームページ(
http://www.honda.co.jp/FITSHUTTLE/new/)より
【1】今、話題急騰のハイブリッドワゴン「プリウスワゴン」「フィットシャトル」!
今のクルマの売れ行きは二極分化している。
一部の好調な車種は、1ヶ月に1万台以上を売るが、大半は月販3,000台以下。1,000台に満たない車種も多い。そして、月販4,000~8,000台の中間層が少ない。
こうなると新型車も、虎の威を借るというか、人気車をベースとして開発されるようになる。無名の新人的な投入では、埋もれて不人気車になる心配があるからだ。
3月17日に発売されるホンダの「フィットシャトル」、4月末に投入予定のトヨタ プリウスをベースにした広い室内を持つ「プリウスワゴン」も、まさにその典型。フィット、プリウスという絶大な人気車をベースにつくれば、関心も高まるだろう。
そんな話題の2台を、現時点で分かっている範囲でチェックしてみた。
まずはフィットシャトルだが、成り立ちは「ホンダ エアウェイブ」に近い。空間効率に優れたフィットのプラットフォームを生かし、さらに広い荷室を備えたワゴンへと発展させている。
ただし、フィットシャトルのホイールベースは、ベースのフィットと同じ2,500mmだ。エアウェイブは、ベースとなった先代フィットに対して100mm長い2,550mmとしたから、フィットシャトルはエアウェイブに比べて変更点は少ない。
フィットシャトルのエンジンは、1.5リッターと1.3リッターベースのハイブリッドの2機種が用意される。
ボディの拡大で車両重量が1,100kgを上まわった為、従来のフィットでは売れ筋の1.3リッターノーマルエンジンは、フィットシャトルでは用意されない。
一方、プリウスをベースにしたプリウスワゴンは、今年1月に開催されたデトロイトモーターショーで初披露された。
プリウスワゴンのホイールベースは、従来のプリウスから80mm拡大されて2,780mm、全長は155mm伸びて4,615mm、全幅は30mm広がって1,775mmになる。全高は85mmプラスの1,575mmだ。
プリウスワゴンでは、2列シートの5人乗りと、3列シートの7人乗りが設定される。5人乗りは従来のプリウスと同様、ボディ後部にハイブリッド用のニッケル水素電池を積む。
そして7人乗りは、センターコンソールにリチウムイオン電池を設置。7人乗りは3列目の足元空間を確保すべく、バッテリーの搭載位置を変更したが、ニッケル水素はサイズが大きくフロントシートの中央に収まらない(リアシート側まで大きく張り出すため)。
そこで、リチウムイオンにすることでバッテリーの搭載面積を小さく抑えている。
【2】プリウスワゴンとフィットシャトルを比較!「居住性」「荷室」「動力性能」
ここからは、先日試乗した「プリウスワゴン(プリウス・スペース コンセプト)」プロトタイプについて、フィットシャトルと比較してみたい。
尚、フィットシャトルは試乗会が開催されていない為、ハイブリッドワゴン同士の「仮想対決」となる事をご承知頂きたい。
まずは、居住性。
プリウスワゴンは、フロントシートのサイズが十分に確保されており快適だ。2列目も従来型のプリウスに比べて、座面の奥行を10mm拡大。
スライド機能を装着しながらも、座り心地が優れている。特に2列目の頭上空間は45mm広がり、従来型の少し窮屈な印象を払拭させた。
従って4名乗車時の居住性はプリウスワゴンが勝るが、要注意は3列目。
大人が座れる足元空間を確保するには、2列目を前へ大きくスライドさせる必要がある。それでも床と座面の間隔が不足して、膝が大きく持ち上がり、大腿部が座面から離れる。
座面のボリューム感は相応に確保したが、3列目の居住性はウィッシュと同程度だ。大人6名が乗車して移動するのであれば、片道30分までだろう。
次は、荷室。
フィットシャトルの1.5リッターは大容量で、プリウスワゴンに勝てる。ただし、フィットシャトルハイブリッドはバッテリーを搭載するために狭まり、4名乗車時の荷室容量を比較すると引き分けだ。
それでもフィットシャトルはボディが小さく、空間効率は高い。
取りまわし性はボディの小さなフィットシャトルが有利。全長が約200mm、全幅が80mmを下まわり、5ナンバーサイズに収まっていて運転がしやすい。
動力性能はどうか。
プリウスワゴンの性能は、従来型プリウスと等しい。エンジンとモーター駆動を合算したシステム最高出力は136馬力になる。ただし、約130kgの重量増に対応するため、最終減速比はローギヤード化される。
ハイブリッド用の電池は前述のとおり、7人乗りはリチウムイオンが使われるが、バッテリー性能は基本的に同じとみていい。
一方、フィットハイブリッドも性能は従来型と同じ。システム最高出力は98馬力になる。
感覚的には、プリウスワゴンは2.4リッタークラス、フィットハイブリッドは1.6リッタークラスに匹敵する。プリウスワゴンの方が動力性能は高いだろう。
注目されるのは、静粛性。
従来型プリウスは高回転域のエンジンノイズが耳障りであったが、プリウスワゴンは遮音が入念に行われており、気にならない。
【3】プリウスワゴンとフィットシャトルを比較!「走行安定性」「乗り心地」「価格」
走行安定性や乗り心地はどうか。
プリウスワゴンは天井を高めたものの、ホイールベースとトレッド(左右のホイールの間隔)の拡大で、安定性も高められた。
タイヤは16インチと17インチが設定される。従来型プリウスと比べるとサスペンションを柔軟に仕上げ、さらに「ばね上制振制御」も組み込まれる。
タイヤの回転から路面のデコボコを読み取り、モーターの出力を細かく増減させて、ボディの前後方向の揺れを抑える。欧州向けのアベンシス・ディーゼルで採用済みだが、モーターは制御が細かく、乗り心地を効果的に高めた。
プリウスワゴンは、サスペンションの設定も絶妙だ。5/7人乗りの車両重量の違いは30kg程度だから、基本的に同じだが、16/17インチタイヤは変えている。
一般的な手法とは逆に、17インチを少しソフトにして、接地性と乗り心地に配慮した。
フィットシャトルと比べても、走行安定性、乗り心地ともにプリウスワゴンが勝るだろう。以上のように、この2車の違いは、コンパクトとミドルサイズの比較に落とし込める。
ここまでの結論としては、フィットシャトルは気軽に使えて運転がしやすく、プリウスワゴンは、4名乗車時(6名乗車は短距離限定)の快適性と走行性能がメリットだ。
問題は、価格だ。
ディーラーによれば、フィットシャトルのハイブリッド(標準仕様)は185万円と、フィットハイブリッドに対して26万円上乗せされる。
ただし、横滑り防止装置やテレスコピックステアリングが加わっているので、実質的な価格アップは15~20万円に収まる。それでも割安なのはフィットハイブリッドだが、インサイト(Gグレード)の189万円は超えていない。
プリウスワゴンの価格は公表されていないが、7人乗りは上級のGのみに設定される。従来型プリウス(Gグレード)は少々割高な245万円だ。
ミニバン化に伴う価格アップが多めに見積もって25万円だから、270万円以下には抑えて欲しいところだ。
気がかりなのは、リチウムイオン電池のコスト。これが大幅な上乗せになってしまうと辛い。
性能が同じならば、ユーザーにとってはリチウムイオンでもニッケル水素でも何も変わりはないからだ。
バッテリーのコストで20万円も上昇してしまうと、エスティマやヴェルファイアなど高級ミニバンの価格帯へ踏み込んでしまい、ハイブリッド車の経済的なメリットが薄れる。
特にミニバンは節約を真面目に行う主婦層が購入の決定権を握っているので、割高と感じさせてしまうと好調な売れ行きは望めないだろう。
(記事引用ゴメンナサイ)
<オートックワン/プリウスワゴン vs フィットシャトル!どっちが買い?/渡辺陽一郎>