今回はC4ピカソ試乗記3回目になります。
運転席に座ってみて感じたこと
・シートが高くセットされているので乗り込みはセダンより楽でそのまま腰を入れていく感じ、必然、視線はやや上からになる、この辺りややミニバン的ではあるが気になるほどではなく、むしろ運転し易いというメリットのみが期待できる範囲内。
・外からでは目立たなかったが、運転席に座るとフロントガラスは確かに類を見ない大きさで眺めは圧巻。斜め前方の視界も良好。ほぼ全面開口のサンルーフと相まってピカソの最大の特長という主張もうなずける。
・インテリア質感はなかなか良い、ただし、日独に比較して80%くらいのレベルか?
・センターメータ(プリウスみたい)は視認性良好、フルディスプレイでパネルデザインを3種類変えられるのは、まるでPCのデスクトップのようで面白い。そのなかの一つは、ボビンメーターを模したものであり、オールドシトロエンのオマージュであろう。
・エアコンを始め、基本すべての操作はタッチパネルを使って行う。最新のインターフェースでありトレンドだと思うが、使い勝手は実際のところよくわからない。ハンドルに重要な機能をコントロールするボタンが取り付けられており、ここも現代水準。
・安全関連デバイスはフル実装、この辺りも他社に負けていない。加えてフロント/リアビューカメラ、パークアシストや360度ビジョンなども装備しており、国産ミニバン顔負けの至れり尽くせり状態。
・シフトレバーは変なところに生えているが、これは過去のシトロエンDSのオマージュ。機能的には特段のものはない(普通に使える)。この配置によりセンターコンソールは基本格納スペースのみとなり、格納ボックスとしてデザインされているセンターコンソールがまるごと取り外してしまえるのはユニークな点。外せば助手席との間が広々使える。
・ナビはディーラーオプションで、パナソニック製のものが装備される。しかし、昨今、スマホのナビが進化しているので、本当に必要かどうかは不明。自分はといえば実際のところ、最近はもっぱらiPhoneのGoogle Mapのナビ機能を利用している現実がある。ここはナビレスを選択し、25万円を節約するもの一案だと感じる。
以上、インテリアの質感は先代C5よりは格段に向上(10年経つので当然)、S60より少し劣るくらいでしょうか。各種装備は満載、メーターパネルなどが典型ですが、デザインはユニークで他国車に比較すると前衛的なんでしょうかね。あえて類似を探すと日本車に近いように感じました(なので、やはりミニバン的な印象も受ける)。
少し余談になりますが、そもそも昔からフランス車は電子デバイス等の最新技術の搭載には積極的で、ピカソもその伝統に沿っているということなのかもしれません。しかし、各機能の完成度はドイツ車などに比べるとやや低く、おもちゃっぽいものであることも事実で、ピカソも同様の印象を持ちました。3車比較ということでは、先代C5より大幅進歩、S60と同等以上のレベル、ただしどことなくギミック的なものを感じるというのが結論です。なので、この部分は、こういうフランス車的(シトロエン的)な特徴を受け入れることができるかどうか、によると思います。無論、私は受け入れられる訳ですが。
シートについて
冒頭写真にも少し写っていますが、布製ツートンカラーのシートです。オプションで革製も選択できるみたいですが、ピカソには実用的な布製が合っているように思います。この手のクルマには似つかわしくない程にサイドサポートが張り出しています。恒例かどうかは分かりませんが折りたたみ式の肘掛けもあります(C5にもありましたが嬉しい装備)。
座り心地は前後席ともに良好ですが、シートそのものは欧州のミニバンにあるようなクッション薄手のシートです。後席がより顕著で、独立仕立ての小ぶりなシートが3つ並んでいます。独立して前後スライド、リクライニング(一段)できます。子供や小柄な大人であれば問題ないですが、男三人となれば、並ぶとやや窮屈、特に肩まわりが触れるかもしれません。少し座席を前後させることで軽減できると思われましたが、この辺りはビックサイズミニバンではなく5シーターハッチバックの限界かもしれません。あと後席に2名以下で乗る際には、独立シートが良いのか、普通のベンチシートが良いのか、好みの別れるところでしょう。
後席も巨大サンルーフを加えてグラスエリアが広大なため窮屈感や囲まれ感は一切なく、快適です。細かいところですが、Bピラーにエアコンの吹き出し口があったり、下の写真に取手が写っていますが、後席のドア窓に引き出し式のサンシェードが装備されていたりと、この辺はフランス車らしい快適性向上に寄与する少工夫が施されています。
さらに後席の床は完全にフラットで、センタートンネルの出っ張りは一切ありません。何気にここは重要な加点要素で、3座独立シートとあいまって、3名が完全に平等な快適性を持って過ごせる住空間という、ミニバンの持つ強みが、ピカソにおいても実現されていると言えます。この部分はS60やC5にはない、ピカソのみの長所といえましょう。
以上、クルマにおいてとても重要な部分であるピカソのシートについての説明ですが、C5、S60との比較の観点ではどうでしょうか?
まず大きく異なるのはS60のシートです。S60のシートは家具家さんに売っているような立派で大きいシートです。ボルボ車全般に言えるのですが、ある意味、割りと平凡なハードウェアであり、セッティングであり、乗り心地であるクルマに、とても良質のシートを奢ることで他社と差別化を図っているのだと思います。すなわち人とのインターフェースであるシートを重視することで人へインプットされる乗り心地などの情報の質を高める、悪く言うとシートよければすべてよし、人生塞翁が馬作戦です。書き方が否定的に受け取られるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、コモディティ化が進行する昨今のクルマ事情のなかでは割りきった、他社があまりやっていない良い戦略だと思います(ちなみにボルボ車のハンドルもやや小径握りが太く革製で良い感じです、シート、ステアリング合わせての差別化戦略です)。なのでボルボ車のシートは革製が良く合っています。
ではシトロエンは、といえば、これは全く違う方向性であり、すなわちサスペンションとそのセッティングによる乗り心地と快適性の追求がメインで、シートはその努力の中での脇役であり、一部であると言えます。シトロエン車のシートは、ボルボ車のそれほどには重要な役割を持っておらず、それ故にC5は、厚手のクッションのソファー的なシートであり、一方、ピカソは前述したような作りのシートであるという、大きな違いがあるにせよ、シートを通じて入力される乗り心地情報おいて両車に本質的には差異はない、というのが結論です。いわゆるシトロエンの乗り心地、というやつです。
シトロエンとボルボ、それぞれ戦略が違うとして、運転してみて、どちらが好ましいか?
それは次回、走行編に書かせていただくこととして、長くなりましたので今回はこれでおしまいにしたいと思います。
了
Posted at 2016/05/03 11:41:40 | |
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