本日は定例のまいこサンこと新舞子サンデーに行って来ました.9時台は入れなくて難儀することがわかっているので,ボロ車集団は遅れ組ということで,9時に自宅を出発…途中でガソリンを補給して,10:30に会場に到着しました.
すでにスギレン社長とWAGON/GLさんが到着されていましたが,いつものメンバーはまだ集まっておらず…しばらく待っていると,滋賀組のイカさんとガリューさん,そして関東人とは思えない頻度で会っている気がするお杉さんの3人が到着しました.
今回の会場で気になったのは,多分まいこサン参加者ではない,釣り客のBHファミリア.まいこサンに参加している人ではないと思いますので写真は控えましたが,艶のない白いボディ,色あせ気味の名古屋75ナンバーなど,いい感じで使い込まれた感じが漂うステキな1台でした.
で,タイトルにもあるように今回もみなさんの車の試乗会になりました.
まず乗らせてもらったのは,イカさんの通勤車のL200ミラ Jターボ.
L200ミラは,バブルの最中に軽自動車が660ccに移行した際,他社が550のMCで660化をしたのに対して,唯一FMCを行って登場しました.スポーツグレードのTR-XXやRV4はソコソコ人気があるようですが,Jターボは普通の外観に,EF-JLというTR-XXと同じエンジンを積んだ羊狼系.ボンネットフードに巨大なエアスクープと,2本出しのマフラー以外は至って普通の5ドアのミラに見えるので,直線番長なミニバン野郎をコーナーで置いていく爽快感を味わえる1台です.このエアスクープだけが目立つ顔に対抗できるのは,HA12SアルトのエポターボやR50ノアのディーゼルターボぐらいなもんだと思います.
今回のクルマは後期型…前やサイドのウインカーが前期に比べ大きくなっているのが目立ちますが,実はヘッドライトやバンパー・フェンダーまで変更になっているらしいですので,とんでもなく金のかかったマイナーチェンジをやっていますが,ヘッドライトが樹脂レンズになってしまって,古くなると曇ってしまうのが残念なところです.
ま,このマイナーチェンジで新設された部品,随分と次のL500にも持ち越されるんですよね〜
さらに,ターボでは羨ましいことに5速.L500Vは4速だったので載せ換えしたかったのですが,結局サニカリさんが手に入ったので手放してしまいました.
さて,前置きが長くなりましたが,試乗レポート.3気筒なので,振動はあまり大きくないですが,さすがに年式経っているせいかプルプルという振動が車内に伝わっています.以前に乗っていたL500Vはもっとスムーズでしたので,経年によるものだと思います.
・低速域のスムーズさ☆☆☆☆
ターボが効かないような低速域のアクセルレスポンスは,キャブ車に比べれば若干の遅れを感じますが,初期のEFI車としては普通のレベル,イマドキの油断するとエンストしてしまうような電スロ車に比べれば,ちゃんと右足の動きに合わせて,微妙なコントロールができますので,発進は非常に簡単です.
・フル加速☆☆☆☆☆
1足のままアクセルを床まで下品に踏み込んでみますと,いきなり盛大なホイールスピンが起こります.FFなので変な方向にすっ飛ぶことはないですが,タイヤ幅145のスニーカーというのが,積極的にグリップするタイヤではないのでこういうことになるんでしょうね.ホイールスピンが起こらない程度の踏み込み具合で加速させていくと,1秒程度のターボラグの後に2ストのパワーバンドに入った時のような加速が始まりました.タコメータは7000r/minか8000r/minのどちらかからレッドゾーンになっていますが,そんなところは軽く通り越して,10と書かれた付近まで淀みなく回ってしまいます.速い…速すぎる…また,このターボが効いている状態での3000r/min〜が,例えるなら4バルブ4A-GEのような回転とともにトルクが盛り上がって8000r/minに向かっていくというような感覚…ただ速いだけじゃない,ちゃんと味わいがあるのがEF-JLというエンジンです.
オーバーレブに関しては,SOHCなので動弁系がDOHCに比べれば軽いのでスムーズなのかもしれません.可変バルブタイミングを使わないのであれば,DOHCとSOHCの差は明確にはなくて,よっぽどカムプロフィールの方が大事ですからね.ただ,タイミングベルトなので,オーバーレブを常用していると,ベルト切れやコマ飛びの恐れはあるので,やらないに越したことはないんでしょうけど.イカさん,ごめんね.
・シフトフィール☆☆☆
ダイハツ車なのに結構良いです.正直,ダイハツ車のMTシフトフィールが良いクルマはほとんどなくて,ガリガリ・ゴリゴリとベンコラのようなシフトフィールがおおいですが,このミラはスルスルと動きますので驚きました.ただ,Hパターンの奥まで押しこむ感覚は,カチャンというチェックボールの感触がないので,日産・三菱・スバルのシフトフィールに慣れていると違和感があります.トヨタやスズキのMTフィールに近いと言えばいいでしょうか…?ケーブルタイプではやはり感触はリンク式には劣るかなというのが正直なところです.
・ハンドリング☆
これは正直残念な部類です.まぁ,年式・走行距離を考えれば,足回りはヌケヌケ,タイヤもヒョロヒョロですが,それよりも根本的な問題で,電動パワステ(EPS)のフィーリングが気持ち悪すぎるんですよね.明らかにアシストしている時としていない時で重さが違い,さらにステアリングシャフトに仕込まれているトーションバースプリングが柔らかい&ストロークが大きいので,ハンドルを回す時の中央付近の無感領域(ニュートラル深さ:N深)が,2〜3degぐらいあるんじゃなかろうか…とにかく,ハイスピードでコーナーに突っ込もうとしても,パワーアシストが効きすぎて曲がりすぎ,戻そうとすると最初は無感領域で戻らないので,更に戻し足すと今度は逆方向にアシストが効いて戻りすぎて不安定挙動に…という,残念な状態です.
私がL500Vに乗っていた時も同じ症状がありましたが,とりあえずアシストの不自然さはEPSのヒューズを抜いてしまうことで解決しましたが,それでもトーションバーの柔らかさからくる過大なN深は解決しませんでした.
・ブレーキ☆☆
うーん,効きが甘いです.ダイハツは奥のほうでペダルが重くなってから効くのがこの時代の特徴ですが,動力性能ありすぎるので,ブレーキ能力ももっとしっかりとしたものが欲しくなります.ただ,現状の足回りではノーズダイブが結構大きいし,ステアリングの感触も曖昧なので,きちんと感覚がわかる状態にしてからでも遅くないと思います.とりあえず,パッドは早々に交換しないと,シャリシャリ言い出しているのでディスク痛めそうです.
・内装☆☆☆
おぞましいプラスチックのインパネです.操作系は普通.特筆すべき点はないですが,かまぼこ型のメーターパネルは,オーソドックスですが見やすくてイイですね.ドアトリムはシート地と同じ明るい柄の布が貼ってあり,イカさんのクルマには似合わない4ドアともパワーウィンドウです.特に劣化して壊れている部分もなく,程度の良い個体です.オーディオは2スピーカーとのこと.リヤトレイがあるので,ここに『MIRA』のロゴが付いた箱スピーカーなんか置きたいですね.
・外装☆☆☆☆
普通のミラJに,ボンネットに穴を開けて2本出しマフラーをつけただけという,全く目立たないデザインがステキです.今はマフラーカッターがついていて,マフラーが目立ってしまいますが,マフラーカッターを外して黒くしてしまえばより地味になりますね.さらに,リヤウインドウにレースのカーテンなんかつけてしまえば,見た感じおばあちゃんのお買い物車という感じ.
5ドアはやはり3ドアに比べれば便利です.特に,フロントのドアが短いことが,駐車場での乗降性に効果ありですね.リヤのドアもアタマが通る部分が四角くなっているので,リヤドアも乗降性は良好です.
・総合評価☆☆☆
軽い車体にパワフルでドラマチックなエンジン,珍しく気持ちいシフト,実用性があり目立たない標準5ドアボディと,とてもいい材料は揃っていますが,ハンドリングの残念さが全てをスポイルしている感じです.直線メインなら我慢できますが,やはりちょっとしたコーナリングでも気持ちのいい『今日はどの道で笑う?』を実現するには,ハンドリング改善が必須です.
・改善案
とりあえず,ハンドリングと足回りの改善が必要と思います.
まずはフロント&リヤともショックの更新…リヤは上下ともアイになっているタイプのショックが使えるので,ハイゼットなどからの流用でいけると思います.フロントは,カヤバとかの純正交換タイプなどで…もしくは車重が重くて背も高いL600Sムーブあたりからの流用でも具合がいいかもしれません.
さらに,ロールを減少させるべく,L600Sムーヴカスタムから,シリーズ最強のスタビライザーの流用.これでロールが抑えられれば,足回りの素性は良くなると思います.
あとは,ハイゼット系のオフセットの浅いホイールで,トレッドの拡大も効果がありそうです.
一番の大仕事ですが,効果絶大と思われるのが重ステの移植です.コラム内部のトーションバーを溶接固定してしまうのも手かもしれませんが,やはりきちんとした部品があるのであれば,それに交換しておきたいです…普段重ステに乗っていると,EPSのトーションバーのよじれは,いつになっても馴染めないですし,ましてやL200は世界初のEPSですからね…しかもL200Sのパワステコンピュータは壊れると評判ですから,壊れる前に転売すれば高値になるかもしれませんよ?
次に乗ったのは,WAGON/GLさんのSS30アルトです.
いわゆる初代アルト,鈴木修会長が仕切ったプロジェクトから生まれたクルマで,徹底した合理化による低価格化…ばかりが注目されますが,実の所はどんなもんなのか,触れることができましたのでレポートです.
エンジンは,スズキの誇る国産最後の4輪用2スト,T5B 539cc3気筒です.2ストですが,昭和50年度排ガス規制に適合し,他社が4スト2気筒の中,2ストの火を絶やなかった,孤高の存在です.2ストは潤滑のためにガソリンとエンジンオイルを混合して燃焼させますが,スズキはクランク軸受にオイルポンプから直接給油するCCISという方式を用いることで,過大なオイル供給を防止して,潤滑性と排ガス性能の向上を図っています.薔薇の後輪で駆動するオイルポンプ(=止まってアイドリングし続けると焼きつく)や,4ストなのにガソリンにオイルが混ざって潤滑してしまう初代ワゴンRのF6Aとかを作っているメーカーとは思えません.
で,このエンジンを目の当たりにすることができてわかったこと,それは2ストと4ストのエンジンの根本的な違いですが,2ストはカムシャフトがないという事…当たり前といえばそうなんですが,自動車のエンジンって,エンジンルームを開けて見える部分の上半分はヘッドなんですよね.それだけ,重心が上がってしまっているということ.逆に言えば,2ストならカムシャフトがないので,冷却水通路を設けたぶんぐらいしか厚くならず,エンジンで最も背が高い部分は,プラグだったりします.このへんは今回のトップ写真を見てもらえば雰囲気伝わると思うのですが,エンジン自体の高さは,ホンダtoday JW1の2気筒4ストを寝かせたものと変わらない高さです.
当然,ピストンは縦配置で…右にあるミッションとほとんど大きさが変わらないんですよね.エンジンルームの必要な高さは,ラジエーターを除けばバンパー上面レベルという事です.これだけの低重心パッケージングですから,さぞかしハンドリングがいいことでしょう…今回の試乗車は2速AT車です.
・低速域のスムーズさ☆☆
アイドリングでは『ぱっぱっぱっぱ』と小気味よいリズムの音が,アクセルをかるーく踏むと『ららあああぁ』とテンポを早めます.このぐらいでのDの加速は,ヌルヌルと加速する感触…Lレンジなら,結構マトモな加速をしてくれますが,ぎくしゃくしないので乗りやすいです.ただ,トルコンのスリップが多いので,ワンテンポ遅れてクルマが動く感じがあります.
・フル加速☆☆
アクセルを大きめに開けると,エンジンが『ぱーあー』という気持ちいい音に変わると,ワンテンポ遅れてクルマがずいずいと前に出ていきます.この感じ,どこかで感じたことがあるなあと思って思い出してみたら,鉄道のディーゼル車(キハ)の加速感に似ているかもしれません.エンジンの感じからすると,パワーバンドには入っている感触の音ですが,低速からパワーバンドに入るときにも,トルコンに寄る応答遅れが噛んでくれるので,ミラのターボが効いた時のような唐突な加速感はありません.2ストのトリップ感を期待していたのでちょっと物足りませんが,一般的にはこういう普通のフィーリングが大事でしょうし.ガンガン走りたい人は,4MTにチャンバーとかつけてパリパリ言わせりゃいいんですよね.
それでも,長い距離があれば2段階目のパワーバンドに達して高速道路の走行車線程度の速度では流れることができます.ただ,上りがあったらどうなるのかはわかりませんでした.やっぱり坂に負けるのかな?
・シフトフィール☆☆
2ATなので,シフトショックも大きいものを覚悟していましたが,結構低速のうちに2速に入ってしまうようで,ほとんどショックは感じません.それよりも,イマドキのロックアップがあるATに慣れていると,常にトルコンが介在している感覚は異質です.これはこれで面白いのですが,加速の時に『エンジンの回転が上がる⇒ポンプがATFを吐出⇒タービンが回る』というのが体験できますね.トルコンが主変速機,2段変速部が副変速機という位置づけが理解できます.
・ハンドリング☆☆☆☆
これは良いです.やはりトーションバーが介在しない,合成のあるステアリングシャフトはいいもんです.ゴロンゴロンという感触からしてRB式と思われますが,バイアスタイヤにはこのフィーリングのほうが自然だと思います.中央付近の不感帯(N深)も殆ど無く,かといって過敏過ぎないので,大きく細いステアリングと合わせて,交差点を曲がるだけで楽しくなります.エンジンの定位置による重心の低さは,思ったより体感できるものではありません…というのは,今回はイカさんとの大人2名で乗車しているので,人間の重量の方が影響が大きくて,重心が上がってしまった可能性があります.そもそもエンジンが軽すぎるんでしょうね.
・ブレーキ☆
ブースター無しの4輪ドラムですから,まぁ大して止まりませんが,一定以上踏むと自己サーボ効果でガツン!と効き出します.なので,スムーズかつ強力なブレーキングは両立できず,動力性能の割にブレーキがチープに感じる事実.S65ハイゼットなんか,もっとよく止まったイメージがあるんですけど…毎日乗っていたクルマなので,感覚の問題でしょうかねぇ?それとも,ペダル角度や乗車位置の問題でキャブオーバーのほうが強くブレーキングしても平気だったのかもしれません.
・内装☆☆☆☆
こちらもおぞましいプラスチックですが,非常にコンパクトにまとめられていて,手前側への張り出しが小さいです.実用性第一とはこういうこと.初代アルト名物の手動式ウオッシャーポンプは,押すとぷにゅーという感触でウオッシャー液が水鉄砲ででてくる仕組み.自然と笑顔になります.このゴムを時計回りに回すと,ワイパーが作動します.コラムスイッチはウインカーがレバー式ですが,ヘッドライトはプルスイッチと旧車流儀.2眼のメーターデザインは,ちょっとHi!と似ています.同時代のスズキ車だからでしょうか?
リヤクオーターウィンドウは,フリップアウト式で,換気が出来るようになっています.これはCR系アルトまで維持されていたと思いますが,換気には空気が流れができていいです.
オーディオはFM付のプリセット付きラジオがついていますが,音質はAMと同じような音になっていましたwあと,時計はジェコーの蛍光管式デジタル時計が付いており,サニカリさんと同様,ライトオンで減光機能付き.
・外装☆☆☆
SAE規格の丸型2灯ヘッドライトまわりの枠や,グリルのデザインが70年代のテイストです.リヤの下半分とフロントノーズの逆スラントしており,勢いと寸法効率を向上させています.ハッチの傾斜は規格寸法を生かしていないというデメリットはありますが,ヒンジ位置が前になることで,ハッチを開けた時のバックドアの張り出しが小さくなり,後方が狹い場所での開閉をしやすくしていると思われます.(100系カロバンみたいな感じ)
バンパーは鉄製でグレー塗装.小さなバンパーが70年代の雰囲気を強めていますが,フェンダミラーとのマッチングは良いですね.
・総合評価☆☆☆
やはり,70年代のクルマであることを強く感じます.エンジン,AT,ハンドリング,車体…どれをとっても現代車とは違う味わいがあり,乗っていて楽しいです.楽しいですが,普段使いのただの道具として考えるなら,やっぱりちょっと辛そう…
一方で,これが30年ほど前に47万円で発売されていたと思えば,やはりエポックメイキングなことだったんでしょうね.その時代の同じ価格帯のクルマと言えば,70年代前半製の中古車になるでしょうから,デザインも性能も同水準にあれば,新車というだけで価値があった…そう言うことだと思います.このアルトのライバルは,中古のファミリーカーと考えれば,それらと同じ雰囲気がするのは妥当なのかもしれません.
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ということで,80年代初頭と90年代初頭の軽自動車2台,一応,それぞれ当時のパワフルなエンジン搭載車ということになりますが,片や究極の安さ,片や豪華装備と最高の動力性能を詰め込んでいるので,10年差とは思えないほどの差を感じます.どちらもクルマとしての面白さは存分にあるのですが,やはりアルトでは現代の日常使いには我慢を強いられる感じがします.
一方,ミラJターボは,現代の軽自動車とどう違う?と言われると,そりゃぶつからないセンサーとか,安全装備とか,エコエコ装備とか,室内空間は増えたんでしょうけど,決定的に違う要素はないように感じます.
意地悪な言い方をすれば,現在の軽自動車は660移行後からの進化のペースが決定的でない範囲で留まっているという感じがします.じゃあどこが進化したら良いのか?と言われると,具体的提案ができないことが辛いんですが…