今回は、マット塗装/フラット(艶消し)仕上げヘルメットの手入れ方法を紹介している記事
(※)を見つけた記念に、備忘録を投稿。
・バイクのブログ・YSP大分 2008-09-04 22:22:42
ユーザー必見。マットカラーヘルメットのお手入れ法(ヤマハ・YSP大分)
■2018年10月11日 追記~
当該記事(上記:YSP大分のブログ内)は移籍の際に削除された様子で、過去ログを含め、現在は閲覧・確認不可。ここから下の文章においては、引用元の上記ブログが存在していた当時のものと、後日あれこれと追記したものとが混在している点を、ご了承いただきたく。~追記ここまで。
このメモが、自分と同じく艶消し仕上げ(マットカラー)のヘルメットや外装などの清掃・お手入れ・メンテナンスでお悩みの方にとっての後学の種のようなものになれば幸い(※ということで、上記ブログが閲覧できなくなった後も、この記事&メモの投稿は残しておく)。
(1)ヘルメットのお手入れ方法:メーカー推奨のそれは『水拭き』?
大前提として、大手ヘルメットメーカーの推奨するお手入れ方法はズバリ、『水拭き』。細かいところを言えば、[a] 水(ぬるま湯)を固く絞った柔らかい布で拭く、[b] 中性洗剤を含ませた水(ぬるま湯)を固く絞った柔らかい布で拭く、の二択となっている。
化学繊維対応の洗剤・漂白剤・柔軟剤は勿論のこと、様々な樹脂類に対応する家庭用クリーナーは、昭和~平成の時点で一般家庭に広く普及していた。にも関わらず、なぜヘルメットメーカーは徹底して水拭きを指示し続けていたのか?――その理由は、「万が一にも洗剤などの液剤がヘルメットの内部に浸透して緩衝材(EPS)や帽体(Shell/シェル)に影響を及ばせる事態を招かないように」という、メーカーの配慮による。
(1')マット・ペイントの特徴:艶消し仕上げヘルメットの特徴とは?
マット・ペイント製品には製造方法により、いくつかの種類が存在する。多くの場合、その表面は特別な塗装が施されており、きめ細やかなデコボコ面で構成されている。学校などで使用されている黒板を連想すると分かりやすいのだが、このデコボコこそが光の反射を抑制し、果たして艶を抑えている、という仕組み。表面に凹凸がある=良くも悪くも異物(汚れなど)を取り込みがちで、油脂類においてはシミのようになる(&落とし難い)ところも、黒板のそれに通ずる。
そんなこんなで、そういった汚れやアブラ染みの除去方法として何か便利で良いものは無いものだろうか――?と調べようとした矢先、冒頭の引用記事に辿り着いた――というのが、この記事の発端。
(2)アブラ染みにどう対処するか:その答えは『アルコール』?
本当であれば、この項目で冒頭に掲載したブログの記事を紹介(引用)したいところなのだが、冒頭の記述の通り当該記事は削除されており、また、詳しい内容を書くことが出来ない(やったらやったで無断転載になってしまう)ため、ざっくりと勝手に要約させていただくと、次のような内容が紹介されていた。
≪工業用アルコール/燃料用アルコール(メチルアルコール)を製品の表面に噴霧(スプレー)し、布で拭き取ると、マットブラック塗装のヘルメットも簡単に綺麗にすることができます≫
念のために、お断りしておくと、
私たち素人にとってメチルアルコールを含むアルコール類はガソリンなどと同様に相当な危険物であり、かつヘルメットに対するアルコール類の使用は禁忌として広く知られている訳だが、見ず知らずの素人であればともかく、かのYSPが自店ブログで(顧客&同業者向けに)紹介している(いた)のだから、これは間違いなく効果的かつ推奨度の高いケア方法なのだろう――オートバイに関わるプロが提供した情報として。いや、皮肉でなく。
(3)アルコールやシンナーはヘルメットのケアでは御法度の類のはずなのだが――大丈夫か?
記事を熟読後(略)、自分でも、その方法を試してみる。用意したものは、工業用アルコール、海外製のマット・ブラックのヘルメット2種類(2個とも安物)、そしてマイクロファイバークロス。お試し清掃の犠牲となるであろう2つのマット仕上げヘルメットは、表層が痛んでも構わない、使い古しの安物。2個ともにブランドはネオライダース、その正体は台湾ブランド(GP-5/ARC)のODMヘルメット。後で重要になる話だが、この頃のGP5/ARCの艶消しヘルメットは、いわゆるラバータイプ(※便宜名、正式な呼称は不明)のフラット・ブラック仕上げ。
ここで言う『ラバータイプ』とは、パソコン向けのマウスやペンタブレットの滑り止め部分や合皮素材の一部に見られるものと同義で、対象の表面をゴム(のような)素材で塗装のごとく(全体ないし一部分を)覆う手法によって製造されたもの、の意味。「滑り止め」という機能性の高さや「艶消し」という優れた質感ゆえ、幅広い分野に用いられる(※海外ヘルメットでは、かのシンプソン・ヘルメットのマットカラーもコレだったりする)製法な訳だが、その半面、年月を経るにつれて徐々にネチョネチョ・ベタベタと変質(劣化)することで悪名高い。閑話休題。
ということで、アルコールvsラバータイプのフラットカラー(艶消し)・マットブラック・ヘルメットの対決だが、いきなりオチを書くと、次のような結果が出た。
・素材の表面を覆っている艶消しラバー素材が、ハゲる。剥げ落ちる。
(4)ひとり反省会:ラバータイプにアルコール類は厳禁であることを学ぶ
結論を急ぐと、どうやら
アルコール式の清掃法でラバータイプ(と、それに似た類)の艶消し仕上げのグッズを拭くと、えらいことになる(ハゲる)ことが分かった。後々になって『ゴム(※ラバーの英語表現)は水に溶けずアルコールに溶ける』という大前提(概念)を知り、なるほど納得、とあいなった訳だが、つまるところ今回の失態は『事前に素材を見極めるべきだった――』という肝心かなめなところを疎か(おろそか)にしてしまったことに起因する。自身の安易・安直すぎた選択と行動を、反省せざるを得ない。
(5)アルコールがマットペイントに有効――そんな風に考えていた時期が僕にもありました
上述のとおり盛大な失敗をやらかした後ではあるが、一応は、アルコール類を用いたヘルメット清掃方法に関するフォローも。
ラバータイプでない艶消し仕上げの製品に限って言えば、アルコール(ケンエー燃料用アルコール)を用いた清掃によって当該YSP記事通りの効果を体感することは、確認できている。実施回数は10数回、その後、清掃を止めてから現在(~2018年)までの経年の変化を観察しているが、見た目で判別できるレベルの変質は、認められない。じゃあどんどんやって良いのか――という話になる訳でもないが「付着した指紋をピンポイントで拭き取る」ような使い方であれば、アルコール清掃にも、それなりのメリットがあるのかも知れない。時に、刹那的な費用効果の意味で。
(6)後日談~某有名ブランドから発売された某万能洗剤(クリーナー)を試す
2011年に作成した当該ブログ記事ではあるが、その後、オートバイ向けのグッズを販売する各メーカーからは、マット・ペイントへの使用が可能案な万能クリーナーの類がいくつか提案されていることを知る。
ひとつは、和光ケミカルのフォーミングマルチクリーナー A402。容量380ml、実売価格は1,000円前後。マット仕上げの素材にも使用可能で、価格相応の確かな品質(≒確かな安全性)が約束されている様子なので、ヘルメットのメンテナンスに対して、よりリスキーなメタノール清掃を行うよりも確かな用途の洗剤を選択した方が賢明である事は、想像に難くない。フォーミングマルチクリーナー(FMC)は、弱アルカリ性の界面活性剤入りアルコールのエアゾール(スプレー)。バイクはバイクでも、自転車の方のバイク乗りの間で広く親しまれるクリーナーの一種、らしい。
この類では、同様のケミカルとして(オートバイの方の)バイク乗りに古くから知られるメンテナンスグッズ・ブランド、TANAX(タナックス)が提供するヘルメット向けのケア用品、シールドクリーナー・PG-211(100ml、1,188円)を挙げることができる。実は、こちらの商品は、気付かぬうちに購入&使用経験済み。デリケートな素材の洗浄をする機会の多いヘビーユーザーであれば、ほぼ同価格帯ながら容量比が約4倍となる前述のワコーズ・FMCの方が費用対効果が高く、買い得感も強い訳だが、タナックスの方も、見た目からくる印象以上に(失礼)優れた利便性を誇る。
以下、実際のマットペイントヘルメットの清掃風景の例。
画像は冒頭でも一例として挙げた、台湾製ヘルメットの操作レバー周辺に広がるシリコーングリースの類と思われる液剤の滲み。届いた品物を確かめた時点で、この状態だった。
このような油脂類の滲みも、TANAX PG-211であれば、数秒で清掃できる。PG-211の液剤を吹き付けた眼鏡拭きを用いて、滲んでいる部位周辺を拭うだけ。もちろん、ワコーズのフォーミング(略)でも同様の洗浄は可能。
潤滑剤の脂ぎった滲みが除去され、かつ、余計な艶などが生じることなく、製品本来のマットブラックの質感が取り戻されていることが分かる。シールドバイザーやベンチレーションを操作した際に付着した頑固な皮脂なども、すっきり除去できる。安全、簡単、確実、言うことなし。
非常にコンパクトなスプレー缶であるPG-211ではあるが、シールドバイザーの清掃の他、ヘルメットの縁やチンガードないしベンチレーション周辺などを拭く程度の清掃であれば、100mlの液剤が簡単に底をつくということは、無い。
専門の用品店のみならず一般的なホームセンターでも取り扱いが見かけられるタナックスのPG-211は、マット仕上げのヘルメットに対しては意外なほど重宝する&小型&比較的安価&入手が容易、という点で、おすすめ。
置き場所に困っている人や持ち運び性が重要という方には、コンパクトなPG-211が良いかも。自分は手元のPG-211が、なかなか減らず、FMCへスイッチするに至っていない。
(7)番外:強力クリーナー・プレクサスを用いてマットカラーのヘルメットを清掃するのは――?
正規代理店の公式ウェブログから提供されている(いた)、プレクサス(Plexus)によるマットペイントヘルメットのケア方法について、すこしだけ。プレクサスは、その高い洗浄力と保護艶出しの効果から「これ一本で何でもこなせるのではないか?」と思えてくるくらい優れた使い勝手を誇る便利な製品のうちのひとつだが、大原則として「使う相手(素材)を考慮しなければならない」という制約も、確かにある。
噛み砕いて言うと、「プレクサスには使ってはマズイもの・ダメなものが存在する」。これは、文中でラバータイプのグッズとアルコール類との相性について触れたとおり。はっきり言ってプレクサスは強力すぎるので、うっかりラバータイプのマット製品に吹き付けると、大切なラバー層が、あっさりハゲることもあるのだ。公式の製品紹介にもある通り、汚れの除去&保護艶出しに効果を発揮してくれるとい点で頼もしい商品であることは、間違いない。だからこそ、誤った使い方をすると大事な品物を台無しにしてしまうことも、十分にあり得る(※経験者)。
繰り返しになるが、マット仕上げ・フラット仕上げの製品のうち、いわゆるラバー・コーティングの類が施されている部位へのプレクサスの使用は、とても危険。
グズグズ・ネチャネチャ状態の 表 面 だ け をキレイにしようとしても、その一帯を丸ごと・根こそぎ・ハゲさせてしまう可能性が十分に考えられる(※実体験談)。その特性を理解したうえで、逆に、洗浄力の高さを利用する(例:ベタベタに劣化したPCマウスの滑り止め部分を根こそぎ除去して綺麗にしたいetcために、あえてプレクサスなどのソルベント系クリーナーを用いた清掃を行う)ことも確かに可能ではあるが、そうではない or 素材との相性が確かめ難い場合、プレクサスやアルコールのような強力な液剤を使用することは、なるべくは避けておいた方が無難に思う。
下の参考画像は、玩具の箱の紙シールの糊(のり)を溶解させるために、プレクサスを利用している様子。
なんでもできちゃう不思議な液剤・プレクサスではあるが、これに気をよくしてアレもソレも洗浄しようとすると、痛い目に遭うこと必至。海外の高級グッズやイクイップメントに用いられているフェイク・レザーやラバータイプの艶消し素材などは、いとも簡単に台無しになる(する)可能性があるので、心底、気を付けた方が良い。
■2016年5月4日 一部改訂
■2017年1月17日 一部改訂
■2017年8月1日 一部編集
■2018年5月6日 一部編集
■2018年12月16日 編集
■2019年04月09日 編集
■2020年09月07日 編集