
スズキの50ccスクーター・レッツ4のマイナーチェンジの内容を備忘録として投稿する。
レッツ4は、2004年の発売から2015年の生産終了までの間に、大小あわせて、およそ9度にわたって手直しが施された。本記事および表中においては、それぞれの違いを明確にする事を目的に、部品の変更や手直しを受けた順に、レッツ4を10種類の型(1型~10型)に分けて、区別する。
■スズキ レッツ4 マイナーチェンジの歩み 最終版・改
(※表中の価格表示は消費税を含まないメーカー希望小売価格)
メーカーのモデル名に準拠しない独自の区別となるが、ここではレッツ4を次の14種類で区別する。
・通常モデル → 10種類
・上位モデル(レッツ4G) → 4種類
※共に車体色の違い(含む特別色)は除く
記事の内容について、スズキ販売店やスズキ二輪で確認が取れる部分については、確認済み。
しかし、記事の内容および記事に起因する全てを補償するものではないので、念のため。
因みに、文中に登場する独自の便宜名や括り(くくり)の全ては自分自身が勝手に表現しているものであるため、公(おおやけ)の場で意味が通じる事は無い。うっかりどこかで「レッツ4の○型なんですが――」といった発言・投稿をしたならば恐らくは、恥をかく。この点は、ご理解頂きたく。
■レッツ4の価格の推移について
価格表記は発売当時の税込み価格だが、メーカー希望価格とは別に消費税における税率の引き上げが生じている。
・2013年度までの車両価格 → 税率 5%
・2014年以降の車両価格 → 税率 8%
一見して2014年以降のレッツ4の車両価格が(理由もなく)上昇しているように見える点には、注意が必要。
■1型 UZ50/UZ50G K5(CA41A)
2004年10月:104,790円
2004年10月:124,950円(G)
最初期の販売分、初期型中の初期型。
UZ50・レッツ4、そして上位モデルとしてUZ50G・レッツ4Gの2種類が発売された。
主な特徴は図の通り。
モデル名(UZ50/UZ50G)の後に続く英数『K5』は、『2005年度の製品』であることを示すもの。以降のモデルも、2009年まではK○といった表記で、また、2010年以降はL○の表記で括られる。詳しくは、インターネット上で公開されている様々な記事を参照のこと。
レッツ4の大きな見分け方としては、やはりメーターパネルのデザインの違いに着目する方法が挙げられる。速度計の0km/hを示す位置の線画に凹み(へこみ)が設けられている点が、レッツ4の初期モデルの特徴。加えて、距離計(オドメーター)の文字盤が四桁すべて白文字となっているのは、この1型のみ(※詳しくは後述)。
バックミラーの取り付け方法が従来式かつネジ径が8mm(どちらも詳しくは後述)である点もポイントのひとつだが、こちらに関しては後述の3型同様、外見からの判別が難しい。
なお、上位モデルであるGは、次の要素が異なる。
・ボディ左右の装飾ステッカー(レッツ4Gの、「4」の文字が水色、「G」の文字が銀色)
・ボディ前面の装飾ステッカー(進行方向左側に貼付)
・メーターパネルのデザインと燃料計の有無(指針表示式のガソリンメーターを装備)
・ハンドルグリップ(ブラウンカラー)
・シート(ブラウンカラー)
・純正リアキャリア装備
・盗難抑止装置を搭載(施錠状態の車体に傾斜が生じると鳴動するアラームを内臓)
Gと通常モデルとの差額は、19,200円(税別)。
■2型 UZ50/UZ50G K6(CA41A)
2005年11月:104,790円
2005年11月:124,950円(G)
発売から間もなくマイナーチェンジが施された2型。
初期型のバリエーションとしては、判別が困難なモデル。変更内容は以下の4点。
・オドメーターの千の位の文字の色分け化(0~9の文字が白・橙・赤の3色)
・シート下の収納スペースにクッション性のある中敷きを追加
・上位モデルGの装飾ステッカーの「4」の文字の色を銀色に変更し通常モデルと差別化
距離計の色分けは、「メーターの(距離数の)文字の色が変わったらお店に来て(エンジンオイルを交換して)ください」といった、整備の必要性を視覚的に訴求する新装備。具体的な仕組みは、次の通り。
・白:0 (0,000.0km~0,999.9km)
・橙:1 (
1,000.0km~
1,999.9km)新車時 → 初回点検・初回エンジンオイルの交換時期の到来を知らせる
・赤:2 (
2,000.0km~
2,999.9km)
・白:3 (3,000.0km~3,999.9km)
・橙:4 (
4,000.0km~
4,999.9km)新車時 → 2回目のエンジンオイル交換時期の到来を知らせる
・赤:5 (
5,000.0km~
5,999.9km)
・白:6 (6,000.0km~6,999.9km)
・橙:7 (
7,000.0km~
7,999.9km)新車時 → 3回目のエンジンオイル交換時期の到来を知らせる
・赤:8 (
8,000.0km~
8,999.9km)
・白:9 (9,000.0km~9,999.9km)
・白:0 (0,000.0km~0,999.9km)新車時 → 4回目のエンジンオイル交換時期の到来を知らせる
・橙:1 (
1,000.0km~
1,999.9km)
・赤:2 (
2,000.0km~
2,999.9km)
・白:3 (3,000.0km~3,999.9km)新車時 → 5回目のエンジンオイル交換時期の到来を知らせる
・橙:4 (
4,000.0km~
4,999.9km)
・
・
・
当該機能は、車両の受け渡しの際、次のように案内されることがある。
・納車時 → 「メーターの文字の色がオレンジ色になったらお店に来てください」
・1回目のオイル交換時 → 「メーターの色が変わりますので、またオレンジ色になったら来て下さい」
・7,000km走行達成時のオイル交換 → 「次からはメーターの文字が白くなったら来てください」
中古車においては、販売する車両の状態によってエンジンオイルの交換時期も異なるため、上記の目安を根拠とせず、販売時のオドメーターの文字盤の色を基準とした個別の説明が行われる。
収納スペース用の中敷きは「荷物の傷つき防止」を目的として追加された物だったが、実質的にはヘルメット(の収納)を前提とした保護布。後年、この中敷はコストカットの観点から削除されてしまう。
上位モデルGは、この販売分からステッカーの「4」の文字色が銀色に変更されている。素材もメタリック調で、通常モデルの水色と明確な差別化が図られている。
■3型 UZ50/UZ50G K7(CA41A)
2007年1月:104,790円
2007年1月:124,950円(G)
地味ながらも明確な変更が施された車両が、3型に相当するK7。
・バックミラーの変更(8mmから10mmネジ径のターナー付きミラーへ変更)
・速度計の0km/h表示位置のデザイン変更(凹み部分が無くなり、グルリと円形の線画に変更)
・マフラーおよびエキゾーストガードの形状変更(後部取り付けボルトの方向が真上 → 真横に変更)
K7は、2007(平成19)年の新保安基準に対応すべく、10mmネジ径のターナー付きバックミラーを先行して採用したモデル。ミラー取り付け基部のターナーを覆う軟質カバーが特徴的で、既存の車両と比較した場合、ハンドル周辺の雰囲気は大きく異なる。因みに「ターナー」とは衝撃緩和装置、噛み砕いて言うと回転アダプターのことであり、転じて進行方向からの入力を受ける事でミラーの基部が車体後方に向けて回転する仕組みを意味する。
そして見逃しがちな変更箇所が、スピードメーターの0km/h表示のデザイン刷新。
一見すると違いが無いかのような両者だが、それまであった0km/hを示す部分の線画のへこみ(凹み)状のデザインが廃止され、K7からのスピードメーターは速度計の目盛りを描く白いラインが0km/hの位置から途切れる事なく円を描くデザインに変更された。この変更は通常モデルと、燃料計を装備する上位モデルGにも実施されている。
もう一点、まるで間違い探しのような新型32G20マフラーの構造変更は、エキゾーストガードの固定方向。取り付けボルトの位置と方向が改善され、ガードの着脱が容易となった。後のマイナーチェンジで用意された新型マフラー・32G21のエキゾーストガードも、この形状を踏襲する。
■4型 UZ50/UZ50G K8(CA45A)
2007年9月:124,950円
2007年9月:140,700円(G)※ファイナルモデル
2007年12月:124,950円
2008年4月:124,950円
一部の物質について80%減という脅威の削減を強いられた新しい排ガス規制に対応すべく、CDIからフルトランジスタへと点火方式が変更された新排ガス規制モデルが、このCA45A・モデルK8。この型からは排出ガス識別記号の表記がBAからJBHへと更新されているため、書類だけで、そのエンジンがCDI点火かフルトランジスタ点火か、見分けることが出来る。
BA-CA41A
↓
JBH-CA45A
新規制への適合で知られたK8だが、そのエンジンは前年度に市場へ先行投入された最新型(当時)の姉妹車種・レッツ4バスケット(UZ50B)モデルK7のもの。自己主張である触媒内包型キャタリストマフラー・32G21も、厳密に言えばバスケット由来の部品。なお、この新規制向けエンジンの真骨頂は11.7gというウェイトローラーの設定で、翌年度のモデル統合までの期間に生産されたレッツ4/G、およびパレットとバスケットは、11.7g仕様の駆動系調整(※)が施されたエンジンを積んで出荷されている。
車体側面のステッカーの4の文字が水色である初期型モデル達は、毎年のように行われたマイナーチェンジの頻度の割に「見た目の違い」が乏しいのだが、こと、バスケットエンジンを搭載することとなった当該K8は、(1)新型バックミラー、(2)マフラーの排気管に新造された円筒状のO2センサー、(3)上下2つの排気口となった新型ベルト・クーリングダクトという3つのポイントがあり、旧型の中では判別しやすいモデル、と言う事が出来る。
車両価格は、従来の設定から19,200円(税別)の引き上げ。元々の価格帯の低さとカタログスペックの低下が災いしたのだろうか、発売当時は少なからずの批難の声が上がっていたように思う。同時に上位グレードのGも134,000円(税別)という価格変更となったが、こちらに関しては事実上の値下げであり、従来のGよりも価格差は4,000円以上も引き下げられていた。
K5とGK5の価格差=19,200円(税別)
K8とGK8の価格差=15,000円(税別)
この年を最後にレッツ4Gの販売は中止となり、GK8はGのファイナルモデルとなった。以降、“レッツ”という名称と“G”というグレード呼称の組み合わせは、2014年冬の“レッツG”の登場まで待つ事となる。
※11.7g仕様の駆動系調整…
ムーバブルドライブスペーサー&ムーバブルドライブプレート&ムーバブルドライブローラーの組み合わせによる、スズキ純正チューン(プーリーボス&ランプレ&WR)。因みに「約11.7g」というウェイトについて細かく書くと、実はバスケットの前年から新発売となったアドレスV50FI(UZ50X/XG K6~K7)のエンジンが初採用で、2006年のV50(FI) → 2007年のバスケット → 2008年~2009年のレッツ4&パレット&V50(FI)の順で採用されていった。唯一の例外が2008年に新発売となったUZ50Y/YG K8・レッツ5/Gで、このモデルのみレッツ4系のド初期型と同じ約11.3gの設定で出荷されている。
■5型 UZ50D K9(CA45A)
2009年4月:130,200円(初期出荷分)
2009年11月:130,200円(後期出荷分)
レッツ4の転換期がふたつあったとするならば、ひとつは上述のK8における平成19年9月の新排気ガス規制への対応、そして、もうひとつが、この2009年に行われた車種の統合、言うことが出来るかも知れない。
5番目の型に相当する当該K9は、上位グレード「レッツ4 G」と通常グレード「レッツ4」の統合が行われたレッツ4であり、モデル名は「UZ50」でも「UZ50G」でもない新たな呼称、「UZ50D」へと刷新された。
特筆点は、指針式の燃料メーターの標準装備化。この変更は5,250円(税込※2009年当時)に及ぶ車両価格の引き上げを伴ったが、普及モデルとしての利便性は大きく向上している。半面、Gに装着されていたリアキャリアは標準装備化されず、純正オプション設定が継続された。
このK9は、「無改造である」という前提さえ守られるのであれば、初期モデルのなかでも判別・特定が容易なレッツ4のひとつ、として挙げることができる。
・車体両脇のステッカー → 「4」の文字が水色
・メーターパネル → ガソリンメーターが「ある」
この2つが揃うと、K9で確定する。
なお、「グレードの統合を行う際、モデル名にDが付く」という手法は、かつて同社が販売していた50ccスクーター・レッツIIシリーズのモデル統合の際にも見られたもの。
・レッツⅡ → AZ50/AZ50U/AZ50L → 統合 → AZ50UD
・レッツ4 → UZ50/UZ50G → 統合 → UZ50D
恐らく『二重の~』を意味する「dual(デュアル)」もしくは「duable(ダブル)」の「D」を由来とする符号ではないかと考えるが、正式な理由や意味合いなどは不明。
■6型 UZ50 L0(CA46A)
2010年3月:130,200円
レッツ4において唯一の中国生産車両。
形としては中期型に属するモデルだが、前モデル(統合D型)からは更に仕様が異なっている。
この点に関しメーカーは、生産国以外の差異は無いと案内する。しかし同時に、中国生産車両のみを「別物」として取り扱っていたことは、事実として確かにある。具体的には、型番にJBH-CA46Aという単独のものを与えていること、また、パーツカタログなどを「CA46A」として区別していたこと、などが挙げられる。また、モデル名も直近のUZ50「D」を継いでおらず、旧型番(UZ50)が用いられている。
このモデルは細かなマイナーチェンジの多い歴代レッツ4の中にあって、その判別が、とても容易な車両と言える。その理由のひとつが、純正タイヤの銘柄。
6型のみ、独自に中国タイヤのCST(チェンシンタイヤ)C6025を装着し、工場から出荷されている。
それよりも前の時代の車両のタイヤは、IRC(井上ゴム工業)MB38指定であり、中国メーカーのタイヤを装着した記録は無い。チェンシンタイヤの溝とMB38のそれとは互いの格好が大きく異なり、加えて側面にはメーカー名も存在するため、意識さえしてしまえば、例え素人であってもタイヤの銘柄の識別は容易に可能。
更に中国生産車両固有の要素としては、車輪のエアバルブキャップの形状を挙げることができる。
この独特なバルブキャップで出荷された車両は、中国産の6型のみ、となっている。
タイヤもバルブキャップも交換されてしまった時点で識別要素として成立しなくなる事に変わりは無いが、その他にも、6型・CA46Aのみが有する固有の要素が存在する。フレームの塗装、そしてスピードメーターパネルのデザインが、それにあたる。これらは交換される事が無い部分であることから、より効果的かつ確実に判別可能なチェックポイントだと言える。
モデルL0特有の艶有りブラックフレームは、一目で違いが分かる何よりの特徴。前輪の奥や車体とエンジンの連結部など、外装から露出している部分を見るだけで判断する事が可能。
文房具の分度器のような独特の線画が施された速度計パネルも、ムギ球のように飛び出した形状の速度警告ランプも、このモデルにだけ使用されている部品。前述のK9と同じような外観のL0だが、メーターの意匠が異なるという点で、互いの差異は、はっきりとしている。
なお、黒メーターパネルのデザインの遷移は、次の通りとなる。
L1後期出荷分以降は、刷新された新型のホワイトメーターパネルとなる(後述)。
ちなみに、この中国生産モデルには、他にもいくつかの謎がある。
素朴なところで思いつくままに、いくつか書き出してみる。
謎1:完成状態の車体重量(装備重量)が70kgと公表されている。通常仕様のレッツ4は68kgとされているので、その差は2kg。おおよそ通常のレッツ4に満タンの大型ペットボトル飲料を1本積んでいるような状態にも関わらず、スズキからは、その原因や理由が説明される事は無かった。恐らくはチェンシンタイヤ前後2本および各種L0専用の樹脂部品による僅かずつの重量増が、車両1台分の総合計となった時点で2.0kgほどの差を生む結果に繋がったのではないか、という推測が妥当なところに思うが、実際に当該部品類が他モデルよりも重いのか否かまでは、確認できていない。
謎2:シート高が690mmと公表されている。レッツ4の座席の高さと言えば685mmという数字が有名だと思うが、L0は690mm。たかが5mm、されど5mm。宇宙じゃ5mmで命を落とす。こちらも原因や理由は、全く分からない。
謎3:やはり気になる4.5psエンジン。マフラーヒートガードなどはレッツ4の物に相違ないのだが、最大出力や最大トルクの発生回転数といった情報を読む限り、エンジンそのものは翌年登場の新型のそれを連想せざるを得ない。使用されている部品についても共有するものが目立ち、ウェイトローラーに至っては、後の統合エンジンの代名詞である12.25g(資料によっては12.29gとも)を内臓。見えているところだけを掻い摘んだ場合、それは先行量産車両のように思える。
謎4:個体差なのか仕様なのか、ハンドルカバーなどに用いられているグレーの無塗装樹脂のシボ加工が他モデルよりも荒めの質感の車体が存在する。確認し直したところ、当時のスズキの公式画像でも明らかに見た目が異なっている。
画像については拡大などは加えたものの、細工などは行っていない。
実車(中古車)についても画像と同様の車体が存在するが、全車に及ぶ仕様か否かは不明(※)。
※継続して観察を続けているが、どの車体もシボは大きい(荒い)。L0固有の仕様だと考える。
■7型 UZ50D L1 (前期)(CA45A)
2010年11月:134,400円
従来のものから細かく様変わりしたモデルが、この2010年冬に発売となった7型。
公式に案内された変更点と、実車で確認できる変更点は次のとおり。
・搭載エンジンを、シリーズ全車で部品の共用化・統合(※)
・純正オプションのリヤキャリアを標準装備化
・車体の装飾の意匠を変更(※)
・ブレーキレバーをバフ仕上げのものに変更(※)
・シート下収納スペースのインナーマット中敷きを廃止(※)
・シート表皮を側面に継ぎ目の無いものへ変更(※)
・シートベース(座席の基礎部分)を白い樹脂に変更(※)
※…UZ50レッツ4シリーズ共通の変更(部品統合)
搭載エンジンの統合は2010年のレッツ4シリーズすべてのモデルに実施されたもので、この時をもってバスケット、パレット、そしてレッツ4(および姉妹車種のレッツ5/GおよびアドレスV50のFIモデルを含む)シリーズ全車が、同じ仕様のエンジン搭載となった。インジェクションやマフラーを含む機関一式丸ごとが共用化された影響で、丸みを帯びたシルエットとマッチしていた楕円形のマフラーヒートガード(やけど防止の樹脂カバー)は姿を消し、レッツ5の特徴でもあった鋭角なパーツへと更新されている。このヒートガードの変更は良くも悪くも、統合前後のレッツ4の分かり易い見分けポイントとなっている。
変速の要となるウェイトに関しては、新たな規制への対応により、11.7gから12.25g(約12g)への重量増という、細かな再調整が施される事となった。レッツ4/G、パレット、V50(FI)、バスケット、そしてレッツ5/Gと、ここにきてモデルUZ50シリーズのウェイトローラーの更新履歴は相当に複雑な状況と化しており、もはやパーツカタログなしで仕様を判断する事が困難な領域に達している。
・参考メモ:UZ50シリーズのウェイトローラーの歩み
画像引用:デイトナ2013カタログ(低解像度)
装備面の更新としては、純正オプションのリアキャリアが標準装備に変更された点も挙げられる。実用的な観点からは待望と言えるが、後述する再度の変更を鑑みる(かんがみる)に7型のキャリアは事実上の在庫処分と解釈する事も出来なくは無く、ある種、残念なものとも言える。
外観上の変更点としては、車体側面の装飾のデザインの変更が著しく目立つ。従来の水色から一転、Let's『4』の文字を彩り豊かな黄色とし、車名の下に添えられていた「Fuel Injection」の部分を線画ごと削除したことで、よりシンプルなものとなっている。この新エンブレムの登場でレッツ4バスケット/パレットの専用装飾は廃止され、以降は全モデルに『Let's4』エンブレムが貼付される。
その他の変更は、ブレーキレバーをバフ仕上げによる鏡面のものへと変更した点、シート表皮を側面に継ぎ目・縫い目の無い新しいものへと変更した点、シートベースの樹脂の色の変更、そしてシート下収納スペースに収められていた中敷きの削除となっているが、上述の新エンブレムの統一と同様、それらは2010年に施されたレッツ4シリーズ全モデル共通のマイナーチェンジであり、部品統合によるものとなっている。
既存モデルからの価格の引き上げは4,000円(税別)。当時の純正オプションのリアキャリアの価格は2,000円(税別)であったため、引き上げの半分程度はキャリアの代金と解釈する事が出来る。
■8型 UZ50D L1 (後期)(CA45A)
2011年5月:134,400円
モデルL1発売から半年後の2011年5月、同じモデル名称(UZ50DL1)のままマイナーチェンジと呼ぶに相応しい仕様の変更が行われた。その内容は歴代のモデルの中でも目立つものだが公式に発表された形跡が無く、果たしてスズキ・ニュースリリースの二輪製品ニュースでは該当情報が欠落している(※)。当然の事かも知れないが、販売店の従業員も把握できていない様子がうかがえる。
※該当情報が欠落
スズキ・ニュースリリースの二輪製品ニュースは、全てのモデルの全てのマイナーチェンジが記録されている訳では無い。型式の変更などが伴わない仕様変更は情報として発表される事が無く、果たして該当記録が掲載される事も無い。これは同社小排気量モデルに散見するもので、具体的にはレッツII(レッツ2)シリーズ、そしてレッツ4シリーズが挙げられる。この種の記録は自動車専門誌及び出版社の提供するポータルサイトが詳しく、閲覧や確認も可能。閑話休題。
以下に、モデルL1後期の変更点を列記する。
(1)グリップ付きリアキャリア
センタースタンドをかける際に手で掴む事が出来るフックの付いたリアキャリア。源流はUZ50B・レッツ4バスケットの標準装備品で、マイナーチェンジによりレッツ4パレット及びレッツ4も部品統合される事に。結果、レッツ4シリーズ3種のリアキャリアは全てフック付きリアキャリアに統一された。
(2)ホワイトメーターパネル
こちらも基礎はレッツ4バスケットの装備。線画の刷新などを経て部品統合に用いられている。色調、書体、文字の大きさや配置などの変更により視認性が向上しているが、一見してロマンチックで女性的なその雰囲気は、正に主婦向けのバスケットに由来する。このメーター統合は兄弟車種のUZ50X・アドレスV50FIにも及んでいるが、どちらかと言えば男性的で、よりスポーティーなデザインだった既存のV50FIのメーターパネルと新型のホワイトパネルは趣が大きく異なり、果たして浮き気味な印象。
(3)ウインカーインジケーター
上述のメーターパネルの変更に合わせて、ウインカーインジケーターがメーターパネルに搭載された。ウインカーに合わせて明滅するランプのおかげでウインカーの動作が分かりやすく、消し忘れの防止にも貢献する。
(4)固定式バックミラーターナーカバー
構造上の都合で固定ができず、位置がずれてしまうなどといった扱い難さの目立った従来型のターナーカバー(※切り株のような形のもの)を廃止。新しいものは肉厚があり、丈も充分にあるため、ターナー&ナットをしっかりと包むように固定できる。
L1後期販売分は、これだけの変更が及んでいても販売価格は変更されていなかった。恐らくは部品の統合による恩恵、むしろ実質的なコストダウンの一環と解釈するのが妥当に思う。
■9型 UZ50D L2 (前期)(CA45A)
2011年11月:134,400円 黄色を追加 (黄・銀・黒・白)
2012年4月:134,400円 桃色・橙色を限定発売
2012年12月:134,400円 赤色メタリックを追加・白を廃止 (赤メタリック・黄・銀・黒)
2013年4月:134,400円 茶色・赤色を限定発売
2013年12月:134,400円 象牙色を追加・黄を廃止 (象牙・赤メタリック・銀・黒)
ボディーカラーの追加・変更を行いつつ、増産が続けられた型。各種媒体の紹介記事において「車体色の変更のみ」という明確な記述が確認できる事からも分かるとおり、2012年~2014年にメーカー出荷された販売分は、モデルL2となっている。
■9型改 UZ50D L2 レッツ4低シート(ローシート)仕様(CA45A)
2012年12月:152,280円~ (参考価格)
ごく一部の店舗にて販売されている、特別仕様扱いのレッツ4。その正体は、スズキビジネス/オートリメッサの提供する低シートを装着した車両であり、メーカーからの公式発表は行われていない。
元来、低シート高を自己主張としてきたレッツ4ではあるが、身長140cm~150cm台の女性や小柄な青年達にとっては例え地上高が685mmであっても、その幅広シートは決して足付きが良いとは言い切れず、十分な訴求に達しきれていない面は否めなかった。果たしてオートリメッサの低シートは着座位置を純正よりも13mm低くすると共に、大腿部(ふともも)の内側部分が接触する部分を削り込む事で、足付き性能の向上と、672mmという低着座位置を実現している。
(画像引用:スズキ二輪 販売店向けフライヤーより)
この低シートの商品価格は、税抜きで13,000円(消費税込14,040円)と設定されているが、特別仕様とうたわれる物件はシート交換工賃の無償化などを含めた金額的優遇が行われている様子もうかがえる(参考価格参照)。同様の販売手法は、アナザースタイル・アドレス(オートリメッサ提供のリアスポイラーを装着した状態で店頭に陳列されているアドレスV50・FIの俗称)の販促にも見る事ができる。
■10型 UZ50D L2 (後期) カウリングファン・カバー仕様 (CA45A最終モデル)
2014年-月:134,400円
2014年4月:138,240円 (消費税率変更8%・税抜価格128,000円は据え置き)
UZ50D/CA45A、レッツ4の最終生産品。
趣味性の高い乗用車や二輪車で言うところの『ファイナル・モデル』『ファイナル・エディション』などに相当するが、モデルイヤーコードが2011年秋に登録された “L2” のままである事からも分かるとおり、この時に施された手直しも、また、公式発表が行われる事は無かった。
L2後期の最終出荷分に施された変更点は他でも無い、カウリングファン・カバー(純正部品名:カバー カウリングファン)の追加装着。2014年の早春頃から全国の販売店に納入された出荷分の内、最終生産分の各色全てが、カウリングファン・カバー仕様に更新されている。
・メモ:カウリングファン・カバー
スズキ純正部品(SGP)から提供されている正規オプションパーツの一種。噛み砕いた表現をするならば「エンジンオイルの温度を短時間のうちに上昇させるための仕切り板」。
短距離走行・短時間走行というシビア・コンディションへの配慮を具現化したもので、このパーツを装着することにより(中略)空冷4ストローク小排気量エンジン搭載モデル特有のマイナートラブルの発生を抑制(※あくまで抑制。これはGなどに採用されていた「盗難抑止アラーム」におけ”抑止”と同様の概念)する。
カバー カウリングファンは税込価格1,350円相当の純正部品だが、L2後期の車両販売価格に、その金額は反映されていない。いわゆる「お値段据え置き」での提供である。
・2015年12月11日追記
カウリングファンカバーに関するメーカー公式発表に関するメモ
スズキ株式会社 > リコール等情報 > サービスキャンペーン > 二輪車 > 2015年12月10日
アドレスV50/レッツ4/レッツ5のサービスキャンペーンについて
http://www.suzuki.co.jp/about/recall/2015/1210/index.html
この公式発表によって、以降、対象通知が手元に届いた購入者の車両のうち、エンジンの暖機が不十分な状態での走行を繰り返したことによって生じたエンジン・ストール、もしくはエンジンの始動不良であると認められたものは、メーカーによる(≒車両購入店舗による)無償での対応を受けることが可能となった。
もっとも、正しく暖機を済ませられている車両、および十分な熱がエンジンに加わる程度の連続走行を繰り返すような乗り方を実現している車両には、ファンカバーは必須な部品ではなく、購入時の状態のままでも問題は無い。意識すべきはファンカバーの有無よりも、その車両の乗り方・使い方(※)にある。
※…極端な話、そこが寒冷地であっても、十分な暖機もしくは連続走行時間が確保されるという条件が満たされるのであれば、ファンカバーが無くても、問題は無い。
なお、「レッツ4のリコールでハガキが―」「レッツ4のリコールでファンカバーが―」といった発言や投稿を耳にする/目にすることもあるが、当該ファンカバー(およびVベルト)に関する対応はサービスキャンペーンによるもので、リコールでは、ない。
■追記(1) レッツ4と同型のエンジンを搭載する姉妹車種への対応
レッツ4と同型式のエンジンを搭載するモデルのうち、2014年の春以降に出荷されている製品については、レッツ4のL2後期出荷分と同様にカウリング・ファン・カバーの装着が標準仕様となっており、実際に全国各地の販売店へと納品されている。
具体的にはレッツ4バスケット、レッツ5、そしてアドレスV50(FI)の三品目の最終出荷モデルが、店頭在庫として日本各地に存在する(注:2015年秋現在)。ファンカバーの増設に関する公式な紹介や案内などはされていないが、UZ50BL2・レッツ4バスケットに限っては、2014年4月モデルにおける公式ウェブサイト上の紹介画像から、当該カバーの装着を確認する事が可能。
(参考:レッツ4バスケットL2後期出荷モデルの公式画像 引用:スズキニ輪)
なお、UZ50FL2・レッツ4パレットに限ってはカウリングファン・カバーを標準装備するモデルが存在しない。非公式な情報を根拠としても良いのであれば、レッツ4パレットのみがL2前期仕様のまま、2013年の時点で出荷を終えていたことになる。
■追記(1)補足メモ ※2015年12月加筆
2015年に発表されたスズキ公式の情報を噛み砕くと、ファンカバーを有していないレッツ4(9型)の生産は、2014年2月が最終であったと考えることが出来る。同時にUZ50FL2・レッツ4パレットの生産も、このときをもって中止(終了)した、と考えられる。
そのほか、レッツ4バスケットの中期型(※便宜的な区別)の生産がパレットに先立ち、同年1月の時点で切り上げられている様子があるのだが、こちらに限っては事前に得ていた話と合致するため、間違いないものと考える(※以降のレッツ4バスケットは最終型仕様で生産・出荷され、翌2015年に生産終了を迎えている)。
■追記(2) 低シート(ローシート)仕様について
このモデルにも、販売店提供の低シート(ローシート)仕様が存在する。そもそもレッツ4の低シートは単品で販売されているオプションパーツなので、言ってしまえば、どのレッツ4であっても(販売店が対応してくれる限りは)低シート仕様での購入が可能であり、それほど気に留める必要性は無いのだが、例えそうだとしても、あらかじめ特別仕様としてパッケージングされた物件は店頭在庫の中でも相応の説得力と訴求力をもつ。何よりも、実際に触れる事が出来る(足付き性を確かめる事ができる)という点は、大きい。小柄で足付きに不安のある方には、ぜひ低シート仕様の在庫をもつ店舗で実車に触れてみる事を、おすすめしたい。
発売から約10年を経て、生産の終了を迎えたレッツ4。既に最新設計のSEPエンジンを搭載したCA4AA・新型レッツが市場に登場し、CA46Aをはじめとするレッツ4シリーズは、商品的にも製品的にも、文字通り過去のモデルとなってしまったが、必要な機能・性能が揃っていて、なおデザイン・見た目・好み・予算と合致していると判断したのであれば、新型レッツではなく、あえてレッツ4を選ぶというのも、良い選択だと思う。
■2013年2月10日 推敲版 投稿
■2013年2月11日 一部訂正 表現修正
■2013年2月11日 図表入れ替え 本文加筆修正
■2013年2月12日 上位グレードGに関する補完 図表入れ替え
■2013年2月12日 本文大幅に加筆修正
■2013年2月17日 0型・1型に関して加筆修正 図表入れ替え
■2013年3月05日 全面的に加筆修正 図表入れ替え 参考画像追加
■2013年3月06日 表現修正 UZ50 L0のタイヤについて言及 参考画像編集
■2013年3月07日 一部訂正 表現修正
■2013年3月23日 一部訂正 表現修正 L0及びL1後期に記述と画像を追加
■2013年3月28日 一部表現修正 誤字訂正
■2013年4月14日 一部表現修正 誤字訂正
■2013年4月28日 一部表現修正 参考画像差し替え
■2013年9月2日 L0について記述を一部追加
■2014年6月4日 消費税率についての補足を追記 一部追記改訂 誤字修正
■2014年9月10日 L0におけるタイヤ銘柄に関する記述を見直し
■2014年10月21日 一部改訂
■2014年11月26日 図版変更 L0に関する記述の修正・追記
■2014年11月27日 一部表現変更 誤字修正 レッツ4低シートに関する記述を追加(暫定)
■2014年12月4日 タイヤの記述について修正
■2014年12月4日 ウェイトローラーに関する記述と引用画像を追加 各所改訂
■2015年3月7日 走行距離数計の表示に関する記述を修正
■2015年3月16日 L2後期 カウリングファン・カバーに関する記述を追加 各所改訂
■2015年3月17日 低シート(ローシート)仕様に関する記述の追記
■2015年3月27日 カウリング・ファン・カバーに関する記述の修正
■2015年4月5日 2ちゃんねる スズキ50cc原付総合スレへの書き込みに対するおことわりを追加
■2015年4月30日 一部改訂
■2015年6月8日 2ちゃんねるに関するおことわり 掲載終了
■2015年7月26日 一部表現変更
■2015年11月12日 カウリングファン・カバーに関する記述を修正
■2015年12月12日 サービスキャンペーンに関する記述を追加
■2015年12月16日 レッツ4、パレットおよびバスケットの最終型への移行に関する補足メモを追加
■2016年3月21日 K8(バスケット・エンジン)の記述を修正
■2016年3月22日 K8、K9、L0の記述を修正
■2016年4月3日 排出ガス識別記号の表記について一部加筆
■2017年1月12日 一部改訂
■2018年11月12日 一部改訂
■2021年3月7日 文字色や行間などを編集
■2022年10月22日 ウェイトローラーや部品の共用化などに関して加筆修正
■2024年11月20日 誤字修正(UZ50D L2 誤:CA46A → 正:CA45A)
■2024年11月26日 UZ50DK9/UZ50L0の出荷時期を修正・図を差し替え(6.0版 → 7.0版)