
海外メーカー製のヘルメットに魅力を感じるようになって久しい今日この頃、日課のごとくwebであちこちを見回っていたところ、ふと某掲示板で気になる情報に遭遇。通信販売サイトなどで知られるバイクブロスが、オリジナルのシステムヘルメットの販売を2013年4月1日から開始したという。商品名はBH-0001。価格は税込で1万2千円弱。
日本国内における量販店・用品系の低価格帯システムヘルメットと言えば、MHR JAPAN/MOTOR HEADが提供するLS2系の製品が思い浮かんだりもするが、それらを遙かに上回る、もとい、遙かに下回ると表現すべきだろうか、とにかく低価格だという事は紛れも無い事実。このご時世には魅力のある提案だなあ、と思いそうにもなった訳だが、果たして実際の販売画面を見た瞬間、落胆。
このヘルメット、間違いなく、見覚えがある。
率直な指摘をさせて頂くと、このBH-0001というバイクブロスオリジナルヘルメットは、どこをどう見ても、台湾のARCヘルメットに代表されるA676系システムヘルメット(※注意・便宜名)の類似品であり、また、その類の商品は日本で1万円を大きく下回る価格で販売された実績が過去にある。つまり、BH-0001の1万数千円という価格設定に驚く必要は無かったのだ。落胆。
そんな訳で今回はBH-0001の購入を検討中の方がweb検索でこのページに辿り着く事を想定し、バイクブロスオリジナルと銘打たれたBH-0001と世界各地で販売され続けるA676系システムヘルメットの一部が、どれほど酷似しているか、その現状を備忘録として投稿しておく。
左上:PROSPEED SP-676
上中:SPEEDPIT Phantom TOP PT-1
右上:GP5 A676
左下:ARC A676
下中:バイクブロス BH-0001
右下:NEO RIDERS NR-8W(絶版)
ぱっと思いつくものが、計5種類。
新発売となるBH-0001を加えると、6種類となる。
それぞれの製品は外見こそ酷似するが、肝心の内装などに差異がある模様。
A676系は庶民向けのシステムヘルメットで、安価が何よりの真骨頂。世界的に見た場合の価格帯は日本円で8千円前後が相場の様子だが、こと日本国内の場合、SG及びPSCの取得に関わる費用、そして生産地からの輸送費用が盛り込まれる結果なのだろうか、果たして販売価格は1万円台前半~中盤程度の価格帯に落ち着く。2013年現在、TNK工業のヘルメットブランド・SPEEDPITから既に販売されているファントムトップ・PT-1と、新発売となったバイクブロスのBH-0001は、真っ向から同価格帯でぶつかる格好となっている。
これほど似通った商品が複数同時に存在する光景は一見して異様なものに思えるが、実は、上図にも掲載したARC及びGP5ヘルメットを製造する台湾の坤成実業(こんせい-じつぎょう、台湾名:坤成實業廠股份有限公司、英字表記:QUEEN KWAN ENTERPRISE → KWON CHEN MANUFACTURERS & CO., LTD.)は、かの地で知られる大手ODM企業であり、様々なヘルメットを同時多発的に世界へ向けて提案し続ける事を商売としている会社。工場のショーウインドーにはラベル違いのヘルメットが陳列されており、ヘルメット好きからするとカオスな空間となっている。
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なお、坤成実業の他にも台湾系企業は活発に活動しており、上述したA676系製品の他にも「同じ型のヘルメットが複数同時に存在する」という例は後を絶たない。昨今人気のデュアルスポーツモデルは枚挙に暇が無く、AFXブランドのFX-39デュアルスポーツヘルメットに端を発する混沌とした同型品の登場は、記憶に新しい。
■AFX FX-39DS タイプFX-39デュアルスポーツヘルメットと同型モデルの一部

左上:AFX FX-39DS
中上:FLY Trekker
右上:MSR Xpedition
左下:SPADA Sting
中下:THH TX-26
右下:Cyber UX-32
北米および日本のwebショップにおいてFLY版やAFX版を取り扱っている様子を散見するが、さかのぼると2011年のFX-39DSの以前に台湾で発表されていたTHHブランドのTX-26こそが、いわゆるオリジナルと解釈することが出来る。
(2013年4月23日追記)
2013年の春に開催された台湾の国際モーターショーにおいて、THHからTX-26の後継・TX-27が発表されている。そう遠くない未来、TX-26がそうであったように、AFX・FLYといった北米向けのブランドから仕様の異なるTX-27型の製品が発売される事は、想像に難くない。
(2013年5月30日追記)
AFXブランドより、2014モデルのラインナップとして新製品の画像が公式サイトに掲載されている。モデル名はFX-41DS、イメージカラーはハイビジ系統のオレンジ。販促の文字が製品を隠している事もあり仕様の差異は不明な状態ながら、外殻の意匠は台湾・THHが提供するTX-27の、それ。
(2014年5月12日追記)
TX-26系比較一覧画像に、SPADA Sting を追加。
(2016年7月25日追記)
日本のバイクショップはとや(株式会社はとや)が、2016年7月、上述のTX-27・FX-41DS型ヘルメットの国内販売を実施。カラーラインアップおよび細かい部位こそ、はとや独自のものが用いられているが、ヘルメットの仕様そのものはTX-27・FX-41DSの、それとなっている。
驚くべきは販売価格で、消費税込み、なんと9,980円送料無料(※追記記載現在)。
台湾におけるTX-27の実売価格は3,300台湾ドル前後であり、実質1万1千円弱。
北米におけるFX-41DSの実売価格は140ドル前後であり、実質1万5千円弱。
それが、9,980円。
後述のTS-41もそうなのだが、はとや恐るべし。

※買いました。感想文は、そのうち投稿の予定。
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こんな駄文を書いていたら今度は、あのナンカイ(NANKAI/南海部品)が、台湾・ゼウスヘルメットの最新モジュールヘルメットを日本で商品展開すると言う。
ここ数年で南海部品から提供されたオリジナルのヘルメットと言えば、フルフェイスヘルメットのCYBER DYNA(サイバー・ダイナ)シリーズやインナーバイザー装備のフルフェイスヘルメット・ZEUS(ゼウス)シリーズが知られているが、それらも例に漏れず台湾由来。なお、CYBER DYNA-MAX/MONO/NEO/DJの4種類の帽体の型はAFXのFX-16型であり、これはつまり、オリジナルであろうTHHのTS-41が該当する。
■NANKAI NCH-101 CYBER DYNA-MONOと同型モデルの一部

左上からAFX、THH、NANKAI、そして左下からAFX、Cyber、Cyberの提供する製品。ここで言う『Cyber Helmet』はAFX/THHのモデルと同型の製品を供給しているブランド。ナンカイの提供するヘルメットブランド・『CYBER』とは、また別なので、念のため。
このサイバー・ダイナシリーズは、発売を知った当時の台湾ライダーが自身のブログに「日本の南海部品からTHHのTS-41(AFXのFX-16)が発売されますよ(意訳)」と日記に投稿していた様子からも分かる通り、外殻自体は、北米および台湾で既に流通していたヘルメットがベースの模様。TS-41系は、台湾では定番モデル化している息の長い製品で、2013年現在(追記:2014年現在)も、世界各地で様々な意匠違い及び後継商品が販売されている。
ここから脱線~~~
なお、日本におけるTS-41系ヘルメットの販売として知られるものは、ナンカイの他にバイクショップはとや(株式会社はとや)の提供したオリジナルヘルメットブランド・VOID(ボイド)シリーズのフルフェイスヘルメット、Void TS-41が存在する。2013年の秋に税込6,930円という驚異的な価格で提供されたVoid TS-41は、見事に完売。その後、好評に応えるかたちで再入荷&定番商品化されてからの数年間で相当数が出荷されたと聞き及ぶが、そもそも、TS-41系は6,000円~8,000円が実売価格のヘルメット。PSCとSGが付いて7,000円弱(※新発売当時。消費税増に伴い価格変更済)というのは、正に絶妙な価格設定だったと考える。言っては難だが、ナンカイが提案したサイバー・ダイナシリーズのダイナ・モノ(単色モデル)の税込12,600円(!)とは、比べるまでも無い。
とは言えVoid TS-41にも、それなりに困ったところはあったようで、THH仕様のネックストラップ(あごひも)のまま日本に導入した事により、その異様なストラップの長さ(※)に戸惑った購入者の声は、今も楽天のレビューで確認できる。
※異様なストラップの長さ…
中国および中華民国には、二輪乗車用ヘルメットのネックストラップの丈に余分な長さを設ける、という独特の文化がある。裁断が適当だとか、個体差が生じているとか、そういう事ではなく、純粋に「ヘルメットのネックストラップとして正しく長く設計されている」。この点は本家であるTHH版に触れると、はっきり体感できる。
~~~ここまで脱線
そんなサイバー・ダイナに対し、新発売となるインナーバイザーモデルのZEUS/ARTEMISの方は?と言うと、そのアルファベットのZを模した特徴的なロゴや商品名から、自然と台湾・ゼウスブランドの既存モデルを連想しがちだが、実はそうではなく、南海ゼウス/アルテミス両モデルの帽体は、ご丁寧にも、わざわざ同ブランドのヨーロッパ・フランス向けの銘柄『アストン』(※)に準じた仕様で商品化されており、外観の印象が大きく異なっている。
※ヨーロッパ・フランス向けの銘柄『アストン』…
ゼウスヘルメットを供給する台湾のヘルメットメーカー・隆輝安全帽は、欧州市場におけるZEUSブランドへの二輪用品の提案・供給を行っている。
今回、予約販売が開始されたZEUSシリーズの最新モデルは、台湾仕様のZA-3100系をナンカイ独自のオリジナル商品名「NAZ-310 GAIA」として商品化する物の様子。こちらwebの告知画像を拝見する限り既存の既存モデルと同様の仕様のようで、日本での販売価格は税込1万7千円強(※新発売当時。消費税増に伴い価格変更済)。
NAZ-310 GAIAも、商品画像からの参照程度では、その差異は感じられない。内装などを除き、おおよそ同一の仕様である事は想像に難くない。とすれば帽体の外殻はABS、シールドバイザーはアンチスクラッチ&アンチフォグ、内装取り外し式、安全の規格はECE22-05、DOT、NBR、CNS、そしてSG。
発売は今夏という事だが、価格差を鑑みても、A676系とZA-3100系とは役者が違いすぎると思う。それはそのまま、B○-0001とNAZ-310 GAIAの差になるのではないだろうか。そんな気がする。
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あっちもこっちも新発売、新発売。
どうやら2013年は台湾ヘルメットの台頭の年なのかも知れない。
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■2013年4月23日 一部追記 修正
■2014年3月1日 一部追記
■2014年5月12日 一部追記
■2014年10月21日 一部改訂
■2016年5月4日 一部改訂
■2016年8月3日 一部改訂
■2020年9月9日 編集
■2021年9月9日 台湾ブランドの供給元を記載(某企業 → 実名)
■2024年2月18日 すっぽかしたままだった坤成實業(坤成実業)の英字表記を更新(KWON CHEN MANUFACTURERS & CO., LTD.)
■2024年10月17日 隆輝安全帽に関して一部修正