今回は、スズキの50ccメットインスクーター、レッツⅡ(レッツ2)についての備忘録を投稿。
2016年1月追記:「Ⅱ」は環境依存文字のため、以降は「2」と表記。
■レッツ2の生い立ち
「レッツ2」の初登場は、1996年。
新発売されたばかりの当時のスズキ最新型50ccメットイン・スクーター「レッツ」の姉妹車(廉価版)としてデビュー。
・スズキ レッツ 型式:CA1KA 1996年2月発売
機種名:AS50T 標準価格(税抜):144,000円
↓
・スズキ レッツ
2 型式:CA1KA 1996年5月発売
機種名:AZ50T 標準価格(税抜):
99,800円
真骨頂は、最新型にも関わらず10万円を下回った車両価格(※)。これは「9・9・8(きゅう・きゅっ・ぱ)」というキャッチコピーにも用いられ、人気女性タレントを起用したコマーシャルフィルムなどで一般客層、特に女性への強い訴求を実現。発売直後から評判を呼び、一躍、スズキ原付スクーターのスタンダードという立場へと躍り出た。
■参考画像:スズキ レッツ2 コマーシャルフィルム

引用:スズキ二輪
※10万円以下…
厳密に言えば、CA1KA・レッツ2の新発売当時の販売価格は消費税抜きで、99,800円。上図CMキャプチャー画像下端のテロップ「保険料・税金(消費税を含む)・登録などに伴う諸費用は別途申し受けます」にもある通り。なお、1996年5月時点での日本の消費税は、3%。
■レッツ2のメカニズム
横置きシリンダーの空冷単気筒2ストローク50ccエンジン、テレスコピック式のグリース封入式フロントサスペンション、前後リーディングドラム式ブレーキなど、基本的なメカニズムはベースモデルのレッツを踏襲。外観的に全くの別物とも思えるレッツとレッツ2ではあるが、その基礎となる重要部分が同一(乗り物としての仕組みが同じもの)であるため、国土交通省に申請・受理された両者の『型式』は共に同じ、『CA1KA』のままとなっている。
搭載エンジンも基本的にAS50・レッツと同じものゆえ、6.8psの最高出力やトルクなどのスペック面における差異は無いが、実は構成部品に細かな変更が施されており、外からは見えない(スペック上に現れない)部分での違いが存在する。代表的な例がウェイトローラーで、レッツ2のウェイトは1個あたりの重量をレッツの2倍相当にすることで部品点数の削減に貢献している。
・メモ 初期型レッツ/レッツ2のウェイトローラー
初期型レッツ → 外径17mm 6.5g * 6個 = 39g
初期型レッツ2 → 外径17mm 14.0g * 3個 = 42g
■レッツ2のデザイン
レッツとレッツ2とのルックスの違いはヘッドライトの搭載位置と、その形状の違いによるところが大きいのだが、実はレッツ2に採用されたハンドルマウントのヘッドライトやウインカーなどの主要部品の大半は、かつて同社が製造・販売した50ccスクーター・セピア(N型)からの流用であり、レッツ2のために新造したものでは無かった。

■参考画像:CA1EA スズキ セピア AF50N (1992年) 引用:スズキ二輪
新発売となる最新型の「顔」に相当する重要部分にあえて生産中止モデルの部品を用いるという手法は斬新、かつ非常に稀なもの。いかにAZ50・レッツ2の開発コストが抑えられたものだったのか、その様子がうかがえる。
・メモ セピア系とのパーツ互換
上述のとおり、初期型レッツ2のヘッドライト周辺は、旧型セピアの後期生産車両・AF50N型からの流用。フロント側のサスペンション(フォークセット)やホイールなどは、新型セピアの後期生産車両(AJ50P/R型)のパーツが使用されている(一部のパーツ群は、レッツ2の生産途中で更に更新されている)。
■レッツ2の車体の大別
スズキ・レッツ2は、その生産時期と車体の仕様を根拠に、初期型、中期型、後期型の3つに大別される。更に踏み込むと、採用されている部品の違いにより、初期型は3種類、中期型が3種類、後期型を2種類に区別する事が出来る。
それぞれの判別は、車両の製造時に付与された車体番号、いわゆるフレーム・ナンバーを根拠とする方法が確実(※)だが、「工場出荷状態のままである」という確かな前提が約束されるのであれば、外観から見分けることも不可能では無い。以下に、それぞれの特徴を列記する。
※エンジンと電装部品一式まで交換されているような改造車両の場合は、この限りではない
・初期型 CA1KA/KB
(1型) 1996年販売。6.8psエンジン搭載。
(2型) 1997年販売。6.8ps。インナーラック新装備。
(3型) 1998年販売。騒音規制対応6.3psエンジン搭載。全車キーシャッター・燃料計装備。
・中期型 CA1PA
(4型) 1999年販売。排ガス規制対応6.1psエンジン搭載。前後別色ウインカー。燃料計装備。
(5型) 2000年販売開始。6.1ps。前後クリアレンズウインカー。燃料計装備。
(6型) 2002年2月販売。6.1ps。前後オレンジウインカー。燃料計は削除。
・後期型 CA1PA/PC
(7型) 2002年9月販売開始。6.1ps。給油口シート下。5.3リットル燃料タンク搭載。
(8型) 2007年販売。6.1ps。10mmターナー付きバックミラー装備。ファイナルモデル。
因みに、これら「何々型~」という表現は、このブログ内に限る便宜的なものなので、念のため。
■あれこれ出てくる意味不明な英文字について
本文中で使われている表現のうち、機種名・AZ50の後ろに付くアルファベットの意味は、次のうちのどちらか、もしくは、その両方とする。
・バリエーションモデルのコード
頭文字となる英文字(1~2文字)で、そのモデルの種類を表す。
(G) → ジー。盗難抑止装置を搭載した上級仕様車。
(L) → エル。ローシートに加えリアキャリアなどを取り付けた女性向けの上級仕様車。
(S) → エス。フロントにオイルダンパーフォークとディスクブレーキを装備したスポーツ仕様車。
(D) → デラックス(DX)。リアキャリアと専用ステッカーがおごられた特別仕様車。
(U)(UD) → コンビネーションブレーキを搭載しない廉価仕様車。
( ) → 英文字が何も無い=基本的には標準グレードを意味する。生産年によって例外あり。
・イヤーコード(年番号)
スズキのスクーターやモーターサイクルの機種名に付与される、生産開始年度を示す英文字、ないし英数文字の組み合わせによる文字列のこと。
スズキ二輪における50㏄スクーターへのイヤーコードの導入は、1989年のKから(※公式情報未確認)。当初はVINのVIS(※詳しくはweb検索をどうぞ)に則ったコード進行を続けていたが、21世紀への到達を機にローマ字一文字の形式にアラビア数字を加えた計2文字での表現に更新されている。レッツ2系では、1996年から2007年までの文字が、機種名の最後に付く。
1989年:K
1990年:L
1991年:M
1992年:N
1993年:P
1994年:R
1995年:S
1996年:T ← レッツ/レッツ2 新発売
1997年:V
1998年:W
1999年:X
2000年:Y
2001年:K1
2002年:K2
2003年:K3
2004年:K4
2005年:K5
2006年:K6
2007年:K7 ← レッツ2 生産中止(終了)
2008年:K8
2009年:K9
2010年:L0
2011年:L1
……
『AZ50
GT』と表記された場合、それはレッツ2
Gの1996年販売車両(モデル
T)、という意味になる。
注意:各種コードには半角スペースが含まれることがあるが、これは、いわゆる「表記ゆれ」。公式記録上でも、スペースの有無は統一されていない。
■レッツ2の初期型について
【CA1KA/KB】

※モデル例(画像引用:スズキ二輪)

最も初期に製造・販売されたレッツ2が、このCA1KA/KB。
飽きのこないオーソドックスな、角形ヘッドライトとハンドルカバーが特徴。
型式(モデルコード)は、通常のレッツ2シリーズがCA1KA、レッツ2SのみがCA1KB。
Sの型式が「KB」という個別のものである理由は、フロント側の懸架装置と制動装置が、ノーマルと全く異なるオイルダンパー&油圧ディスクブレーキ方式であるため。
「かなり見た目が違う割に型式は同一」というレッツとレッツ2の関係性については前述した通りだが、レッツ2とレッツ2Sは正に、その逆で「見た目は大して変わらないのに(肝心なところが違うので)型式が違う」という関係にある。
ちなみに、この「~A」「~B」といった区別はスズキ50㏄スクーターの伝統的な取り扱いで、後年のレッツ2には「C」も加わる(CA1PA、CA1PB、CA1PC)。
なお、上の図表中の「コンビブレーキ」とはコンビネーションブレーキの意味。
左手で後輪ブレーキを操作すると(連結された鋼線により)前輪にもブレーキがかかる仕組みの事を指す。厳密なところを言えば、本来 “ コンビブレーキ ” という呼び名はホンダ独自の呼称であり、スズキ車には当てはまらない。念のため(表中スペースの都合で略した次第)。
・メモ スズキ50㏄スクーターにおけるモデルコードの末尾
型式の区別に用いられるA・B・Cのローマ字は発売順で与えられるとは限らず、また「ドラムブレーキ車がA」といった基準がある訳でも無い。顕著な例として、1987年~1988年に販売が開始された初代アドレス・シリーズが挙げられる。
・CA1CB アドレス/Address (AD50 1987年11月 トレーディングサス&ドラムブレーキ)
・CA1CC アドレスウェイ/Address Way (AD50W 1988年4月 テレスコピックサス&ドラム)
・CA1CA アドレスチューン/Address Tune (AD50T 1988年4月 ト(中略)サス&油圧ディスク)
・メモ モデル呼称「U」について
1998年に出荷された前後ブレーキが個々に作動する(一般的なブレーキ構造の)レッツ2は、その生産台数が少なく、事実上の限定車の取り扱いとなっていた。この「コンビネーションブレーキ装置が付いていないレッツ2=AZ50U」という図式は、以降のモデル(CA1PA~)へ継続される。
■初期型(1) AZ50T/GT 1996年販売
6.8psエンジンを搭載する、最も初期のレッツ2。
普及モデルのAZ50と、センタースタンドロック機構を装備するAZ50Gが、同時に発売された。
ほどなく水面下でキャブレターが変更されるが、外からの判別は難しい。
■初期型(2) AZ50T/GTの後期出荷分と、AZ50SV、およびAZ50LV 1997年販売
全車にフロントのインナーラックを新採用した、中期出荷分。
バリエーションモデルのS、およびLが市場に流通するのは、この年から。
この時期に新発売となったインナーポケット付きの後期GとLは併売の体勢が取られ、販売店では専用カタログも配布されたが、Gの出荷はここまでとなる。
■初期型(3) AZ50UW/W/LW/SW/DW 1998年販売
新たな騒音規制に対応すべく専用のチューニングが施された、6.3psエンジンを搭載したモデル。
盗難抑止装置として機能するスライド式キーシャッターを、全車に採用。逆説的にはシャッターキー付きの初期型イコールW型のみであり、特に判別しやすい存在となっている。
・メモ 初期型レッツ2の乗車シートの仕様の違い
最終W型を含むCA1KA/KBには、全部で三種類の乗車シートが存在する。
その内の二種類はローシートであり、かつ、ローシートの代名詞的モデルである「L」以外のレッツ2にも使用された経緯がある。
・通常シート(シート高710㎜)ブラック表皮 → レッツ2、レッツ2G、レッツ2S、レッツ2DX
・ローシート(シート高685㎜)ブラック表皮 → レッツ2コンビネーションブレーキ(AZ50W)
・ローシート(シート高685㎜)グレー表皮 → レッツ2L、レッツ2Lコンビネーションブレーキ
・メモ 初期型レッツ2のウェイトローラーの仕様の違い
通常モデルの14.0g * 3個に対し、レッツ2Lのウェイトは、15.0g * 3個を用いる事で変速が微調整されている。モデルごとに変速装置の調整を行う手法は後年発売のレッツ4バスケットや、アドレスV50(FI)でも見る事が出来る。
・メモ AZ50GTとAZ50LWとの関係
盗難抑止仕様のGはカタログ落ちしているが、実は、その自己主張たるセンタースタンドロック機構のパーツ群は丸ごとLW(初期型レッツ2Lの後期出荷分)に使用されている(※その影響で価格が跳ね上がっている)。この事から、LWは事実上のG統合モデルであったと考える事も出来る。
・メモ 6.8psエンジンと6.3psエンジンの見分け方
加速騒音規制への対応により、数値上の馬力が6.3psへと減少したW型のチューニングエンジンは、クラッチケースカバーを固定するボルトに一般的な六角頭が採用されている。元々の6.8psエンジンのケースボルトは丸い頭のプラスネジであったため、ボルトが交換されていない限りは、プラスネジ=6.8psエンジン、六角ボルト=6.3psエンジン、と区別する事が出来る。
・メモ 初期型レッツ2のサイドスタンド
全てのCA1KA/KBの中で、スズキ純正パーキングサイドスタンドが標準装備となったモデルは、LWのみ(1998年のレッツ2Lのみ)となっている。
それぞれの特徴を図にまとめると、次のようになる。
前述の通りレッツ2Gは途中で販売を終えており、コンビネーションブレーキ仕様の時代には生産が行われていない。そのため、“Gコンビネーションブレーキ”というレッツ2は、公式では存在しない。また、後年発売されるCA1PAの後期型にて『レッツ2G』という名前が再び登場するが、この時代の車体とは様々な部分で仕様が異なっている。
・メモ CA1KA 「AZ50UT」という謎の存在
株式会社デイトナが発行する 『デイトナカタログ(※1981年から30年以上、毎年欠かさず発刊される用品カタログ)』の適合一覧には、謎のレッツ2を意味する『AZ50UT CA1KA-131220~』という型式が掲載されている(※2017年度版では、881ページ目)。
前述のとおりコンビネーションブレーキの有無(AZ50/AZ50U)が設定されたのは、1998年・モデルWから。それ以前(1996年~1997年)のモデルTに「U」が設定されていたという事実は無く、更に言うならば「AZ50UT」という文字列はメーカー提供のパーツリスト上に存在すらしない。どうして?
ちなみにフレームナンバーの範囲は無印、および当該Gを含む最初期出荷モデルに該当する。
初期型における装備面に関する違いは以下のとおり。
レッツ2 AZ50T ¥99,800-(税抜) 1996年
・装備 なし
レッツ2 AZ50UT ¥**,***-(税抜) 199*年
・概要/詳細 共に不明
レッツ2 G AZ50GT ¥129,000-(税抜) 1996年
・メットインランプ ○
・センタースタンドロック ○
・リアフック あり
レッツ2 AZ50UW ¥119,000-(税抜) 1998年
・燃料計 ○
・メットインランプ ○
・リアフック あり
レッツ2 コンビネーションブレーキ AZ50W ¥129,000-(税抜) 1998年
・燃料計 ○
・メットインランプ ○
・前後連動ブレーキ ○
・ローシート(710mm → 685mm)※ブラック表皮
・リアフック あり
レッツ2 L AZ50LV ¥119,000-(税抜) 1997年
・燃料計 ○
・メットインランプ ○
・ローシート(710mm → 685mm)※グレー表皮
・リアキャリア ○
レッツ2 L コンビネーションブレーキ AZ50LW ¥139,000-(税抜) 1998年
・燃料計 ○
・メットインランプ ○
・センタースタンドロック ○
・サイドスタンド ○
・前後連動ブレーキ ○
・ローシート(710mm → 685mm)※グレー表皮
・リアキャリア ○
レッツ2 DX(デラックス) AZ50DW ¥134,000-(税抜) 1998年
・燃料計 ○
・メットインランプ ○
・前後連動ブレーキ ○
・リアキャリア ○
レッツ2 S AZ50SV/AZ50SW ¥149,000-(税抜) 1997年~1998年
・燃料計 ○
・メットインランプ ○
・センタースタンドロック ○
・リアキャリア ○
・前輪油圧式ディスクブレーキ ○(Sのみの特別装備)
・オイルダンパー式フロントフォーク ○(Sのみの特別装備)
■レッツ2の中期型について
【中期型 CA1PA】

※モデル例(画像引用:スズキ二輪)

マイナーチェンジにより、イメージが刷新された新型レッツ2。一部の特別装備車を除き、以降の型式はCA1PAとなる。
この時期のモデルはマイナーチェンジの歴史の半ばに位置することから、「レッツ2の中期型」という大きな括りで扱われることがあるが、細かく見た場合、このCA1PAにも「前期」「中期」「後期」が存在する。詳しくは後述。
販売当初から展開されたG(盗難抑止)、L(ローシート)、S(油圧ディスクブレーキ&オイルダンパーフォーク)といったバリエーション設定は、ここで一旦、仕切り直しとなる。
旧型スクーターからのヘッドライトパーツの流用という豪快な手法は終了し、新型レッツ2には現代的な外観と印象を備える新規造形のヘッドライトとメーターカバーを採用。『スズキ・レッツ2』として、この時期のデザインが連想される機会は、決して少なくない。
特記事項は、大きく2点。
ひとつは、排気ガス規制への対応。
仕様の違いこそあれど、以降のモデルに搭載されるエンジンの出力は、全て6.1psとなる。
もうひとつは、エンジンオイルをクランクケースに供給するオイルポンプの作動方式の変更、および、その給油経路の増設。
どちらもファンの間では広く知られており、特に後者は、熱心な愛好家の間で有名な変更点。
その他、この代において『呼称が変わる』という珍事が発生。PA中期の最終モデルとして登場したUD(イヤーコードK2)からは車名が『レッツ2 スタンダード』へと変更され、以降、その姿と内容が変化する。
なお、上の図表のモデル名においてコンビブレーキとは、コンビネーションブレーキの意味。
■中期型(4) AZ50UX/X/LX 1999年3月販売
マイナーチェンジモデルとして市場に投入された最初の販売分。
姉妹車種が当初から設定されていたが、これが非常にややこしい存在となった。
・AZ50U 廉価モデル 税抜13万9千円
最も低い価格設定で提案された、新型レッツ2。
前後のブレーキがそれぞれ独立しているオーソドックスなドラムブレーキを採用。
1998年に発売されたレッツ2同様、モデル呼称にはUの文字が付与される。
・AZ50 標準モデル 税抜14万9千円(※AZ50、の後ろに文字が無い)
前後連動式のコンビネーションブレーキを搭載。車名にも、その名が付く。
センタースタンドロック、サイドスタンド、メットインランプ、リアキャリアの追加装備を誇るが、これだけ部品と機能に差があっても、廉価モデル(AZ50U)との差は、わずか1万円であった。
・AZ50L 低シートモデル 税抜14万9千円
標準モデルに専用シートを採用した女性向けモデル。
従来のコンセプトを継承し、シート高が710mm → 685mmにダウンしている。
装備の内容は、標準モデルに準拠。価格は、標準モデルから据え置き。
念のために繰り返しておくと、モデル呼称に何も付かない(単なるAZ50)ものが標準モデル。
廉価車が、AZ50Uとして扱われる。
外観の刷新に目を奪われがちな99年モデルは、エンジンの機能面にも多数の変更が施された事でも知られる。そのひとつが、オイルポンプの作動方式の変更。電磁弁を用いたソレノイド・バルブ方式から、機械式オイルポンプへと更新されている。
更に、生産途中の変更点としてはオイルポンプのオイルラインの経路数の変更なども挙げられる。こちらに関してはクランクケース上面を覗き込む事でオイルホースおよびオイルホースの付け根に設置されるオイルホースニップルを数えることが出来るため、確認・判別は容易に行えると言える。
・メモ オイルポンプ周りの違い
改良前は、オイルポンプの吐出口が1つのみ。これは、電磁弁式も機械式も、共通。
機械式への更新直後に改良された新型は、吐出口が2つに増設されている。
この新型は、ポンプの吐出こそ2経路ではあるが、実は、その片方のホースの先が途中で2本に分岐する構造。果たして、1+(1+1)=3であり、合計、3経路となっている。
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(1999年2月1日)
50ccスクーター「レッツ2」シリーズをマイナーチェンジ
スズキ株式会社は、「乗りやすさ」と「安心感」が特長の50ccスクーター「レッツ2」シリーズ(「レッツ2」「レッツ2コンビネーションブレーキ」)を(1999年)3月5日より全国一斉に発売する。
http://www.suzuki.co.jp/release/b/b990201.htm
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(1999年9月22日)
低めのシートが特長の50ccスクーター
「レッツ2L コンビネーションブレーキ」新発売
スズキ株式会社は、「乗りやすさ」と「安心感」が特長の50ccスクーター「レッツ2」シリーズに、シート高を低くし乗りやすさを一層向上させた「レッツ2L コンビネーションブレーキ」を追加設定し、(1999年)9月22日より全国一斉に発売する。
http://www.suzuki.co.jp/release/b/b990922.htm
■中期型(5)
AZ50UX/X/LX 2000年3月販売 (※1999年モデル後期出荷分)
AZ50UY/Y/LY 2000年7月販売
AZ50UK2/K2 2001年4月販売 (※2002年モデル前期出荷分)
ウインカーレンズが前後共に透明となったPA中期型。
直前まで出荷されていたAZ50Xシリーズと同じXのイヤーコードを持つモデルであるが、わずかな出荷時期の違いにも関わらず車体の仕様は異なっており、全国各地の販売店では「見た目も値段も見分けがつかないが中身が違う」という在庫の混在が発生した。
後期モデルX出荷分以降のレッツ2で注目すべきは、デザイン面ではなく機能面の変更、オイルポンプ周辺の改善の部分に尽きる。
【スズキ・レッツ2におけるオイルポンプ周辺の度重なる仕様変更について】
1999年モデルで改良された新型のオイルポンプとオイルラインに、更なる手直しを加えたものが、この時期に登場した改善型。エンジンオイルの供給経路が見直され、注油箇所および注油目的が変更されている。
TYPE① 従来型:
初期型(1)から中期型(4)の途中までが搭載する旧式のもの。
オイルポンプ → キャブレターへ
TYPE② 改良型:
中期型(4)の生産途中から採用された3経路分岐式のもの。
オイルポンプ → キャブレターへ
|
(ここで2つに分岐) → 一方はクランクシャフト右側へ
↓
クランクシャフト左(オイルポンプギア)側へ
TYPE③ 改善型:
中期型(5)から以降の全てのモデルに搭載された新3経路分岐式。取り回しが改善されている。
オイルポンプ → キャブレターを中継せずインテークマニホールドへ
|
(ここで2つに分岐) → 一方はクランクシャフト右側へ
↓
クランクシャフト左(オイルポンプギア)側へ
後述する姉妹車種を含め、この形態が、レッツ2系エンジンの完成形だと解釈することも出来る。
・メモ スズキスクーターにおける2ストロークエンジンのオイル供給経路の歩み
スズキは、このレッツ2以前の旧世代の製品において、複数経路オイル供給の実績がある。
(例:1992年にリリースされたAJ50・セピアのP型に搭載されたオイルポンプ)
しかしながら後年発売のAS50・レッツの新型エンジン設計のタイミングで、これらの豪華装備がカットされてしまった事実は、冒頭に記載した通り。
余談ながら、2経路での供給はセピアよりも更に過去のモデルの時点で、既に達成されている。
(例:1980年代に人気を博したAD50・ADDRESS/アドレス)
・メモ バッテリーの変更
2000年秋から販売されたY型以降、搭載バッテリーが2.5Ah → 2.3Ahへ変更されている。
・メモ レッツ2Lのファイナルモデル
レッツ2Lコンビネーションブレーキのファイナルモデルは、この時期に販売されたAZ50LY。
つまり、『レッツ2L』と名の付くスクーターは、どれほど新しくとも、この2007年7月以前の型。
ちなみに中期型Lに使用されたローシートは、CA1KA・初期型レッツ2コンビネーションブレーキのものだった(ブラック表皮の685mm仕様)。
・メモ 特殊な大型リアキャリア
全バリエーション中、特に異彩を放つ存在が、この時期の最後を飾ったUK2/K2。
1996年の発売以来、右肩上がりに価格上昇の一途を辿ったレッツ2の上位モデルはUK2/K2の時点で15万円台にまで値上がりしてしまったが、そんな2002年モデルの特徴はズバリ、複合素材を用いた大型リアキャリア(※)。後にも先にも、この特殊キャリアを搭載したレッツ2は当代・K2のみとなっている。
※複合素材を用いた大型リアキャリア…鉄パイプで構成された従来式のリアキャリア(荷台)を、特製の樹脂カバーで覆ったもの。『ロシア極東に代表される寒冷地での運用においてスチール・キャリアはヒトのヒフが張り付くなどといった事故の原因になり兼ねないため外殻に温度変化の少ない樹脂を用いた』、という説をバイク販売店某(※既に廃業)にて聞いた記憶があるのだが、本当のところは分からない。
■中期型(6) AZ50UDK2 2002年2月販売
CA1PA中期型の最後を飾る事となったモデルが、このUDK2。
3種類あったモデルを統合した結果、コンビネーションブレーキ設定は消滅。
機種名は「AZ50・AZ50U・AZ50L」の三種から「AZ50UD」へと一本化され、あわせて車両の通称名は『レッツ2スタンダード』にあらためられた。
このモデルは、従来比20%以上(※公式発表値)という凄まじいコストカットが施された車両。最も大胆な変更を受けたのは各部のカバー類で、構造・形状の調整によって部品点数と樹脂の面積(=材料の使用量)を削減。レッグカバーやハンドルカバーに至っては、素材自体に色が付いている着色樹脂材料を使用する事によって、塗装の行程を省略。結果、車体そのものが持つ雰囲気を大きく変える事無く、全体で2割以上のコストダウン(公式案内より引用)を実現させている。
・メモ 中期型レッツ2のウェイトローラーの仕様の違い
UDK2のコストカットは内部にも及んでおり、それまでレッツ2向けの部品で構成されていた駆動系変速装置には、この型のみCA1PB・AZ50Rインチアップスポーツ・ZZの部品が丸ごと流用されている。そのため、UDK2のウェイトローラー設定は、8.5g (注:厳密には8.6g)* 6個。駆動系消耗部品の適合においてUDK2用のみがインチアップスポーツ・ZZと共通とされる理由は、ここにある。なお、これら部品の仕様は直後のマイナーチェンジで再度、変更される。
■補足 CA1PA・レッツ2の顔の違い
CA1PAには、大きく分けてふたつの顔(ヘッドライト&ハンドルカバー)が存在する。
見分け方は実にシンプルで、
ZZの顔か否か、の一言に尽きる。
丸顔……CA1PAの最初期生産分(No.143952まで)と、UDK3以降のもの。
ZZ顔……CA1PAの中期生産車両。No.143953から、UDK2のラストまで。

■参考画像:CA1PA初期出荷モデル(左)と中期出荷モデル(右)の例 引用:スズキ二輪
ZZ顔では無い仕様(便宜的に”丸顔”と呼称)は、1999年夏モデルに採用されていた、丸みのあるライトとハンドルカバーの組み合わせ。強いて例えると、どこか優しげな造形。
対するZZ顔は、2000年春に新発売となったCA1PB・インチアップスポーツ・ZZのヘッドライト&ハンドルカバーの流用で、より精悍な印象の顔つきに仕上がっている点が特徴。2000年7月発売のモデルX後期出荷分から2002年のUDK2までのレッツ2シリーズは、このZZ顔での製造が行われている。
その後、安価路線への回帰が実現した着色樹脂外装のUDK3で、丸顔が復活。一瞬で姿を消した1999年モデルとは比較にならない生産台数となり、「レッツ2スタンダードの顔」として、広く知られる事となった。
なお、本家ZZとレッツ2のZZ顔は、ライトのレンズとライトカウル(ハンドルカバー)、およびメーターカバー(リアハンドルカバー)と配線ソケット&バルブが共有部品。ライト本体ケース(ヘッドランプユニット)のみ別物の扱いで、部品番号が異なる。部品の検索や注文の際は、注意が必要。
■補足 丸顔とZZ顔の違い
インターネット上の画像や動画では判別が困難だが、同じ「CA1PA」同士であっても、丸顔のレッツ2と、ZZ顔のレッツ2のヘッドライトとカウルは、両者で形が異なる。
具体的にはライトの上下の高さ(立幅)が違っており、それにあわせて、ライトカウル(ハンドルカバー)の形状も違っている。
これを知らずにZZ顔のCA1PA(当該ページで言うところの5型・6型)に丸顔用の外装を組もうとすると、前後幅が足りず、まるで
ズレたカツラを被っているかのような隙間がライトの上に出来てしまう。修理やレストアで外装類を入手しようとする際は、この点に注意。
ちなみに「給油口がメットインの外にあるタイプ」「CA1PA前期型用」などといった説明でインターネット通信販売や業者向けの販路で流通する非純正の「レッツ2外装5点セット」のなかには、ご丁寧に、生産台数の少ない丸顔版で整形されたハンドルカバーが入っている商品が存在する。確かに「CA1PAの前期」には違いないため、適合案内は「合っている」わけだが、いくらなんでも、それは不親切と言わざるを得ない。
参考までに、もう少し突っ込んで書いておくと、インチアップアップスポーツ・ZZ(スズキZZ・スズキジーツー・AZ50R・CA1PB)向けの非純正外装6点セットなどは更に酷く、「ZZ用」と書いておきながら丸顔版のレッツ2のハンドルカバーが同梱されているという、悪夢のような粗悪品も存在する。
・補足メモ レッツ2のヘッドライトバルブ
レッツ2の中期型は、全モデルが12V 40/40Wのヘッドライトバルブを使用する。
「この時期のスタンダード」であるUDK2も、例に漏れず40Wバルブ。
対して、K3以降の「後から出た方のスタンダード」は、全モデルに30/30Wの電球を使用する。
「レッツ2スタンダードの電球」で一括りにすると間違え兼ねないので、注意が必要。
CA1KA前期:25/25W T/GTのみ(※セピアN型と共通)
CA1KA中期:30/30W V/LV
CA1KA後期:30/30W W/UW/LW/DW
CA1KB全種:30/30W SV/SW
CA1PA前期:40/40W 丸顔のX/UX/LX
CA1PA中期:40/40W ZZ顔のX/UX/LX、Y/UY/LY、K2/UK2、UDK2
CA1PA後期:30/30W UD/UDS全種(K3/K5/K6K7)、G/GS全種(K4/K5/K6/K7)
CA1PB全種:40/40W AZ50Rシリーズすべて(AZ50R・RR・SR・RS・RZの各年式)
CA1PC全種:30/30W SK3/SSK3
中期型ヘッドライトのベースとなったインチアップスポーツ・ZZのヘッドライトバルブは、全年式を通じて40/40W。
CA1KAの初期生産車両のみ25/25W電球だが、これは元になった旧型セピア(N型)のパーツ流用が原因。時代に合わせたのだろうか、発売から間もなく30/30Wに更新されている。
(※「丸顔」「ZZ顔」はこのブログ内でのみ通用する便宜的な呼び方なので、念のため)
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(2002年1月25日)
国内生産で低価格を実現した
機能版スクーター「レッツ2 スタンダード」発売
スズキ株式会社は、通勤や通学、買い物など日常の足として使われる50ccスクーターに必要な機能を絞り込み、価格を11万円台に抑えたベーシックなスクーター「レッツ2 スタンダード」を(2002年)2月23日より全国一斉に発売する。
http://www.suzuki.co.jp/release/b/b020125.htm
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(2002年6月21日)
50cc スクーター「レッツ2 スタンダード」に車体色追加
スズキ株式会社は、国内生産で低価格を実現した機能版50ccスクーター「レッツ2スタンダード」に、青と黒の車体色を追加し、(2002年)7月8日より全国一斉に発売する。
http://www.suzuki.co.jp/release/b/b020621.htm
それぞれの特徴を図にまとめると、次のようになる。
手軽で判り易い見分け方は、やはりウインカーの仕様の違い。
前後のレンズの組み合わせで、PAは前期/中期&後期/最終が明確に区別される。
中期型(4)PA前期販売分 → フロントがクリア・リアがアンバー
中期型(5)PA中期販売分 → フロントもリアもクリア
中期型(6)PA中期最終販売分 → フロントもリアもアンバー (※以降の全モデルがこの仕様)
中期型における装備面に関する違いは以下のとおり。
レッツ2 AZ50UX/AZ50UY ¥139,000-(税抜) 1999年~2000年販売
レッツ2 AZ50UK2 ¥144,000-(税抜) 2001年販売
・燃料計 ○
・メットインランプ ×/○ 2001年販売分に装備
・センタースタンドロック ×/○ 2001年販売分に装備
・サイドスタンド ×/○ 2001年販売分に装備
・リアキャリア ×(リアフック装備)/○ 2001年販売分に樹脂カバー付きリアキャリア装備
レッツ2 コンビネーションブレーキ AZ50X/AZ50Y ¥149,000-(税抜) 1999年~2000年販売
レッツ2 AZ50K2 ¥154,000-(税抜) 2001年販売
・燃料計 ○
・メットインランプ ○
・センタースタンドロック ○
・サイドスタンド ○
・前後連動ブレーキ ○
・リアキャリア ○/○ 2001年販売分に樹脂カバー付きリアキャリア装備
レッツ2 L コンビネーションブレーキ AZ50LX/AZ50LY ¥129,000-(税抜) 1999年~2000年販売
・燃料計 ○
・メットインランプ ○
・センタースタンドロック ○
・サイドスタンド ○
・前後連動ブレーキ ○
・ローシート(710mm → 685mm)
・リアキャリア ○
レッツ2 スタンダード AZ50UDK2 ¥112,000-(税抜) 2002年販売
・リアキャリアもリアフックも何も付いていない
補足:初期型および中期型において「リアキャリアが無いレッツ2」の公式画像が広く出回っているが、1999年までに実際に出荷・販売された車両にはリアフックが取り付けられている(当該パーツリストにも記載あり)。しかし上記UDK2は、公式画像のとおり「キャリアもフックも無い状態」が、正解。
■参考画像 web上で見かける機会の少ないAZ50UK2の公式写真について
2001年の前半に販売されたK2/UK2に限っては、通常仕様にもコンビネーションブレーキ仕様にも樹脂製のカバーで覆われた専用リアキャリアが付属しており、加えて、販促向けの画像にも、そのリアキャリアがしっかりと写っているのだが、その画像はweb上にほとんど出回っておらず、果たして専用リアキャリアの姿と共にK2/UK2の存在自体も、あまり知られていない。

こちらが、そのUK2の姿を収めた公式の画像(引用:スズキ二輪)。歴代のSやDXほどではないにせよ、レッツ2としては珍しい車体のひとつとなっている。
・メモ リアキャリアとリアフックの違い
後年発売のAZ50UDK3(レッツ2 スタンダード)からは、新造形の(新型レッツ2 スタンダード専用の)リアフックが装備される。
「レッツ2 スタンダードにリアキャリアは付いてないよ」
「あれ?自分が買ったスタンダードにはキャリアみたいな取っ手が付いてたけど?」
といった主張の食い違いが生じる原因は、この新旧レッツ2 スタンダードの仕様違いにある。
■レッツ2の後期型について
【後期型 CA1PA/PC】

※モデル例(画像引用:スズキ二輪)

レッツ2の長く複雑な遍歴の中で、特にシンプルな存在となっている後期型。
直前に販売されていたレッツ2 スタンダードから、更に徹底したコストカットが施されている。
その徹底ぶりは部品点数の見直しどころか、外装各部の形状を変更して樹脂の面積(=使用する樹脂の量)自体を減らすという、文字通りの「身を削る」手法にまで発展しており、正に「手段を選ばない」といった印象。外装の樹脂素材の選定と塗装の省略にまで及んだ独自のコストカット論は、当時の経済情報番組(テレビ東京系・ワールドビジネスサテライト)で、取り上げられたほど。
・メモ スペシャルカラーの設定
この時代のレッツ2は、メタリック塗装モデルを「スペシャルカラー」という特別グレードとして設定、通常車両価格に対して4,000円高で提案する、といった手法が取られている(※実際のところは、前述の通り「ソリッドカラーモデルが(メタリックカラーに対して)4,000円も安く売られていた」、というのが正解)。
なおスペシャルカラーモデルを表す文字は、「S」。ディスクブレーキ仕様の「S」と同じであったことから、この時期のレッツ2の型式は、かなり紛らわしい。
・AZ50UDK3のスペシャルカラーモデル → AZ50UD S K3
・AZ50USK3のスペシャルカラーモデル → AZ50US S K3
機能面では、「座席の下に給油口がある」という要素も、この型以降にのみ存在する特徴。
後期型はシートロックを外して座席を上げないと給油口が露出しない仕組みであり、給油の際にはシートを開ける必要がある。現行のスズキ小排気量スクーターの多くが同様の構造となっているが、CA1PA・レッツ2の後期生産車両の構造は、その造詣のルーツに近いものを感じさせる。
型式は、CA1PAがレッツ2 スタンダードおよびGシリーズ、CA1PCがレッツ2Sシリーズを示す。
・メモ 後期型レッツ2Sの型式について
後期型レッツ2 スタンダードのCA1PAという型式に対し、後期型レッツ2Sの型式はCA1PC。何故、AとCの間である「CA1PB」が抜けているか?と言うと、その理由は他でもないレッツ2の兄弟モデル、インチアップスポーツ・ZZの型式として、CA1PBが既に使用済みであったから。(CA1PB AZ50R)。
・メモ K3以降のレッツ2スタンダード/S/Gの違い
CA1PAモデルK3以降のレッツ2では、コンビネーション・ブレーキ・システムの廃止と入れ替わるように、初期型にのみ存在したバリエーション設定、SとGが復活した。旧型のSおよびGとの細かな違いはあるが、おおよそ意味するものは同じであり、Sはディスクブレーキ+センタースタンドロック機構付き、Gは盗難抑止装置(センタースタンドロック機構)付きを、それぞれ意味する。
・メモ ローシート仕様のLの消滅と、標準座席のローシート化
前項でも触れた通り、ローシート仕様のL設定は、廃止。後期型はシート造形が見直されており、全車標準で5mmのローダウン&ナローシート化を実現した新型の乗車シートを装備している。
なお、上の図表のモデル名においてSTDとは、スタンダードの意味。
STD SPカラーとは、スタンダードスペシャルカラーを意味する。
その他に特筆すべきは、そのモデル遷移の少なさ。2002年から2007年までの4年半もの間、主だった変更が僅か1度のみという点は、非常にレッツ2らしからぬものとなっている。
ただし、その代わりと言っては難だがリコールは発生している。
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(2004年3月25日)
レッツ2/レッツ2Sのリコールについて(平成16年3月25日届出)
平成16年3月25日、国土交通省にレッツ2/レッツ2Sのリコールを届け出致しました。
http://www.suzuki.co.jp/about/recall/2004/0325.htm
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(2009年5月25日)
レッツシリーズ、アドレスV50、アドレスV125のリコールについて
スズキ株式会社は、レッツシリーズ、アドレスV50、アドレスV125について、下記のリコールを国土交通省に届け出いたしました。
http://www.suzuki.co.jp/about/recall/2009/0525b/
■後期型(7)
AZ50UDK3/5/6 ※K4の販売は無い 2002年~2006年販売
AZ50UDSK3/5/6 ※K4の販売は無い 2002年~2006年販売
AZ50SK3/SSK3 2003年販売
AZ50GK4/5/6 2004年~2006年販売
AZ50GSK4/5/6 2004年~2006年販売
『スタンダード』という車名こそ前モデルから引き継いだ格好となっているものの、ガソリンタンクをはじめとする機能部品の構成には大きな変更が施されており、また、長らく標準装備となっていた車体前方のインナーラックやシート左脇のスタンドグリップも廃止されている。大きな変化のない外観や呼称から受ける印象に比べ、刷新された部分は意外なほど、多い。
・メモ 新旧スタンダード同士の相違点
前の項でも取り上げたが、同じ『レッツ2 スタンダード』同士でも、新旧で次の相違点がある。
①リアフック → 新型に装備。旧型は何も付いていない。ボルトだけ締めてある。
②ガソリン給油口 → 新型はシート下。旧型は車体の後部にフタが付いている。
③シート脇のグリップ → 新型はグリップが無い。旧型はグリップが付いている。
④ウェイトローラー → 新型は10.0g(注:厳密には9.8g)。旧型はインチアップスポーツ・ZZと同じ8.5g(注:厳密には8.6g)。
⑤ガソリンタンク → 新型は5.3リットルタンク。旧型の容量は5.5リットルで、若干多く入る。
⑥シート高 → 新型は、旧型より5mmシートが低い。
新スタンダードの変速装置には、直近のUDK2の仕様(※インチアップスポーツ・ZZの流用)は反映されていない。大部分は、レッツ2シリーズ本来の仕様(ふたつ前のモデル・UK2/K2までの構成)をベースに更なる変更を施した内容となっている。ただし、従来から大きく異なる部分も存在する。UDK3以降のレッツ2には、
10.0g (注:厳密には9.8g)* 6個のウェイトローラーが新たに採用されている。
・メモ レッツ2のウェイトローラーの個数
上記の通り、シリーズ後期に出荷されたUDK3~7のレッツ2のエンジンに搭載されるウエイトは、全車6個が正しい。その長い販売期間のなかで、14g * 3個、15g * 3個、8.6g * 6個、そして9.8g * 6個という仕様変更を経たAZ50・レッツ2は、その整備の話題において「WRは3個が正しい」「いや6個が正解」といった主張の食い違いを引き起こす事が稀にある。
・メモ 後期型レッツ2のウェイトローラー
外径17mm 10.0g(9.8g)のウェイト部品は、あっという間にメーカーカタログから姿を消した事でファンに知られるCA1NA・UG50アドレス(※1998年に発売されたアドレス110の50cc版的な車両)の系譜以外に使われる機会が無かった、不遇の部品のひとつ。シリーズと縁が無かった特殊な重量のウェイトが急に採用された背景には、コストカットを名目とした在庫処分の目的があったのではないかと邪推したくもなるのだが、本当のところは分からない。
復活したディスクブレーキ&フロントオイルダンパー仕様のSの販売は、2003年早春の1度のみ。祖先と共にレアなモデルとなっている。特別装備のフロント周りは今も愛好家の間で語り草となっているが、この2003年発売のSに搭載されるフォーク/ステム/ホイール/アクスルといった主要パーツは、実のところ祖先となる1998年版のSV/SWと共通。こちらも、長らくメーカー側で死蔵の状態に陥っていたであろうS専用部品の放出が目的だったのではないか、と勘繰りたくもなるのだが、こちらも本当の所は不明。
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(2002年9月19日)
50cc スクーター「レッツ2 スタンダード」を一部改良し発売
スズキ株式会社は、国内生産で低価格を実現した機能版50ccスクーター「レッツ2スタンダード」を一部改良し、価格を7千円引き下げ10万5千円の新価格で(2002年)10月8日より発売する。
http://www.suzuki.co.jp/release/b/b020919.htm
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(2003年1月28日)
50ccスクーター「レッツ2 S」を発売
スズキ株式会社は、50ccスクーターの人気車種「レッツ2」シリーズに、フロントディスクブレーキやオイルダンパー式フロントフォーク等、走行機能を高める装備を標準装着とした「レッツ2 S」を追加設定し、(2003年)2月5日より全国一斉に発売する。
http://www.suzuki.co.jp/release/b/b030128.htm
参考情報:スズキ二輪ニュースリリース(2003年2月21日)
「レッツ2」シリーズに新色を追加
スズキ株式会社は、50ccスクーター「レッツ2スタンダード」および「レッツ2S」の車体色に新色を追加する。
http://www.suzuki.co.jp/release/b/b030221.htm
■後期型(8)
AZ50UDK7/UDSK7 2007年2月販売
AZ50GK7/GSK7 2007年2月販売
CA1PA後期型の最終販売分、レッツ2のファイナルモデルが、このモデルK7。
知る人ぞ知る最後の変更点はバックミラーであり、レッツ2は最終販売分にのみターナー(衝撃緩和装置)式10mm取り付け軸のバックミラーを搭載する。この最終モデルは、同じく派生モデルとして活躍したインチアップスポーツ・ZZと共にスズキ2サイクル50ccエンジンメットインスクーターの最後を飾る事となった。
・メモ ターナー式のバックミラー
誤解を恐れず一言で表すのならば「10mmネジのバックミラー」のこと。
真面目に表現するならば、これは「道路運送車両法による新たな保安基準に適合するために設計された衝撃緩和装置の付きバックミラー」のことで、歩行者や他の車両などとミラーが接触した場合、その衝撃や応力によってミラーの取り付け基部が(進行方向とは逆の向きに転回する事により)緩む仕組みになっている。
古くからヤマハ発動機の車両に採用されている右側の逆ネジミラーと基礎を同じくする発想だが、ターナー式ミラーは、それよりも(歩行者に当たった時点で確実に緩むように機能させる必要があるため)緩みやすく締め辛い傾向にあり、慣れるまでは案外、取り扱いが面倒。
・メモ AZ50RZ K7
インチアップスポーツZZの最後を飾ったのは、リミテッドカラー・ファントムブラックメタリック(※)。全国限定1,000台販売。ブラックのアルミキャストホイールを含め車体全体を暗色調に仕上げた硬派モデルで、グレー/ブラックの2トーンシートを装備していた。
ZZにはテレフォニカ・モビスターカラーや3,000台限定のマットブラックメタリック、そして梁明(りょう-あきら)選手の全日本ロードレース選手権スーパーバイク・クラス総合優勝を記念して生産されたスズキ・ワークスカラーといった様々な限定カラーバリエーションが存在したが、ことモデルK7リミテッドは2サイクルの最後を飾ったという意味で、より特別な車体となっている。
※ファントムブラックメタリックに関するおまけメモ
1. 実際の印象は、グレー風味の効いたガンメタリック(灰色がかった黒鉄色)。
2. 実際の書類にはファントム(幽霊)ブラックではなく、ファトムブラックと表記されたものがある。
(そのためメーカー情報を基にするデイトナのカタログには、今もファトム~と掲載されている)
「予備知識が無いとどれがどれだか分からない」というのがレッツ2シリーズの真骨頂だが、給油口の移設とインナーポケットの有無という大きな差異にさえ気付いてしまえば、後期型自体は他モデルとの見分けがつけやすいモデルだと言える。
後期型の特徴を図にまとめると、次のようになる。
外観上の差異で目立つポイントは、フロントカバーのホーンスリットと車体側面のサイドロアカバーの形状。特にサイドロアカバーは、その形を覚えてしまえば遠目で(細かいところを観察せずに)大体の年式を判別できるため、覚えておいて損は無い。
・メモ レッツ2のキックペダル
後期型か否かを判別する要素のひとつとして頼りになるのが、何を隠そう「キックペダル」。歴代モデルの中でK3以降の後期型向けエンジンにのみ、長いアームが途中で折れ曲がっているキックペダル(部品番号:26300-43E30)が使用されている。
それとは異なり、短い棒状のキックペダルが付いているものは、K2以前の旧式レッツ/レッツ2シリーズ、もしくはインチアップスポーツZZを含む派生エンジン(※)となる。
※……AZ50RのZZエンジンには、全年式に旧式ペダル(26300-43E11)が使用されている。
後期型における装備面に関する違いは以下のとおり。
全グレードに4,000円高でスペシャルカラーが設定されていた。
なお、このモデルに関しては生産時期が長いため、イヤーコードの表記は省略する。
レッツ2 AZ50UD/UDS ¥105,000-/¥109,000-(税抜)
・リアフック装備:荷物の積載は事実上不可能
レッツ2 S AZ50S/SS ¥144,000-/¥148,000-(税抜)
・燃料計 ○
・センタースタンドロック ○
・サイドスタンド ○
・リアキャリア ○
・前輪油圧式ディスクブレーキ ○(Sのみの特別装備)
・オイルダンパー式フロントフォーク ○(Sのみの特別装備)
レッツ2 G AZ50G/GS ¥113,000-/¥117,000-(税抜)
・燃料計 ○
・センタースタンドロック ○
・リアフック装備:荷物の積載は事実上不可能
補足:後期型におけるリアフックの存在について
後期・最終型の普及グレードは専用のリアフックを装備する。これは純然たる取っ手であり、初期型のような簡易キャリアといった使い方は事実上不可能だが、そもそもPA後期・最終型はコストカットでスタンドグリップ(シートの左脇にある樹脂製のくぼみグリップ)が廃止されているため、いかに簡略化された構造であろうとも、リアフックの必要性は高いものとなっている。
かつて乗っていたレッツ2は、あらためて思い返してみても軽く小さく扱い易く、気軽に乗れる良いスクーターだったと感じる。よほどの事が無い限り自分が再び2サイクルエンジンのスクーターに乗る機会は巡って来ない訳だが、今現在、正にレッツ2を所有しているという方々には、ぜひ楽しく末永く乗り続けて頂きたいと、素直に思う次第。
とりあえずは、この備忘録の投稿が、何かしらのお役に立てば幸い。
■2013年5月2日 記事作成
■2013年5月5日 記事投稿
■2013年5月6日 図表一部修正 本文加筆修正
■2013年5月6日 図表修正 本文加筆修正 オイルポンプ変更内容詳細追記
■2013年5月7日 参考画像追加 本文修正
■2013年5月11日 本文追記
■2013年6月30日 モデル例 画像追記(引用:スズキ二輪)
■2013年6月30日 3分岐オイル供給エンジンを搭載する車体について追記
■2013年7月3日 ヴェルデ(初期型 モデルW)の判別要素に関する記述を修正
■2013年7月9日 本文加筆修正
■2013年7月29日 表現(説明)を一部見直し
■2013年8月9日 表現(説明)を一部変更
■2013年8月10日 型式とモデル名について追記
■2013年8月11日 誤字修正 一部余談を追加
■2013年8月20日 一部余談を追加
■2013年8月24日 モデルの大別について追記 画像追加
■2013年9月11日 CA1KAに関する紹介を一部変更 画像追加
■2014年1月3日 文字数を減らした改訂版Aを投稿
■2014年1月3日 誤字脱字修正
■2014年1月5日 一部修正
■2014年1月8日 一部修正
■2014年2月13日 一部修正
■2014年2月15日 全面的に改訂
■2014年2月16日 中期型のヘッドライトバルブについて追記
■2014年2月18日 ウェイトローラー、バックミラーについて追記
■2014年3月9日 一部修正
■2014年4月19日 CA1KA発売当時の販売価格に関する記述と画像を追加
■2014年5月18日 文字を置き換え II → 2(ローマ数字2 大)
■2014年5月18日 ウェイトローラー(WR)に関する補足 改訂
■2014年5月25日 脱字修正、一部表現変更
■2014年6月29日 一部修正、表現変更
■2014年9月24日 オイルポンプの歩み AF50セピアM/N型エンジンについて追記
■2014年10月21日 一部改訂
■2014年12月5日 一部表現変更
■2015年5月24日 ターナー式バックミラーに関する部分など一部の表現を編集
■2015年9月21日 一部修正 暫定的に文字の色分けを実施
■2015年11月11日 ウェイトローラーに関する記述を改訂・追記
■2016年1月9日 オイルポンプに関する記述を改訂・追記
■2016年1月12日 オイルポンプに関する記述を改訂・ストリートマジックに関するメモを追記
■2016年7月22日 一部修正
■2017年1月11日 一部修正
■2017年3月12日 AZ50Uおよび同Dに関わる記述を編集 キックペダルのメモ等を追記
■2017年3月13日 一部追記 CA1KA/KBのサイドスタンドに関する記述を修正
■2017年3月15日 イヤーコードに関する記述 ほか一部を改訂
■2017年3月16日 モデルコードに関する記述を追記
■2017年4月2日 表修正 AZ50UTに関するメモを追加 ※文字数超過により本文一部削除
■2017年4月9日 CA1PAに関する案内を追加 文字数確保のために一部文章を削除
■2019年3月28日 CA1KA、およびAZ50UTなどに関するメモ他を編集
■2020年2月16日 CA1PBヘッドライト修正漏れ(誤30W → 正40W)
■2024年7月2日 スペシャルカラーモデルについて追記
■2024年12月4日 一部文章を手直し(内容に影響なし)