
今回の投稿は前回から続く格好で、海外のマイナーなブランドのヘルメットの類、および購入品に関する知ったかぶりを披露する、自己満足のメモ。あらためて、その道のプロないし、セミプロレベルな諸先輩方を差し置いて、こんな知ったかぶりを披露する無礼をお許しいただきたく。
そして、この記事がインターネット通信販売、ないし海外ヘルメットのご注文をご検討中のライダーにとっての後学の種のようなものにでもなりましたら、幸い。
ちなみに今回ご紹介する例も、前回と同様、去年(2020年)以前の購入品。なぜ、そんな賞味期限が切れたような過去の出来事を投稿するのか――?、その理由は既にご説明した通り、単純に自己満足を満たすための自慢、と言うことで、どうか、ご容赦いただきたく。
◆全部同じじゃないですか(C)中川圭一
あらためて、コミネ最新モデルの一部と同型の既存モデルの、お話を。
2021年6月の発売を予定している、コミネ・HK-173 FLジェット・ヘルメットは、中国企業・ダフェイマ・オートパーツ・テクノロジー(Dafima Auto Parts Technology※)が展開するFASEED HELMETSのライン・ナップのひとつ、ハイブリッド・ヘルメトット・FS-726X "TROOPER(トルーパー)"と、かなり似た(共通点のある)内容のヘルメットとなっている。
※うんちく:中国企業・ダフェイマ・オートパーツ・テクノロジー(Dafima Auto Parts Technology)…江陰市(こういん-し/Jiangyin City/チャンイン・シティ)に拠点を置く、ODM系中国企業のひとつ。当該記事の作成から数ヶ月後に英字表現が変更(修正)された模様で、2022年秋現在の企業名は、『ダフェイマ・オートモバイル・テクノロジー(Dafeima Automobile Technology Co., Ltd.』となっている。
■参考画像:コミネ HK-173 FL ストリートジェットヘルメット
■参考画像:HK-173 FL ストリートジェットヘルメット マウスガード装着状態
■参考画像:FASEED HELMETS FS-726X TROOPER
ヨーロッパのブランド・FASEED HELMETSの「FASEED」はイタリア語で「段階的」といった意味合いをもつ言葉で、これは英語で言うところの「PHASE(フェイズ、変化における”段階”を意味する言葉で、Phase.1~Phase.2、などと用いられる)」に相当するものとなっている。
各種製品は『FS』から始まる製品の型番が特徴で、当該FS-726Xには、そのミリタリー感に富んだ外観に合わせて騎兵や落下傘(らっか-さん)部隊員を意味する『TROOPER(トルーパー)』という商品名が与えられている。
ブランド本来のヘルメットには磁力着脱式の最新ネック・ストラップなどは用いられていない(※)が、全体の構造がコミネ社の商品と共通である様子は、画像からも見て取れる。
■参考画像:HK-173 FLとFS-726X TROOPER
※うんちく:最新ネック・ストラップこそ装備されていない…ODMヘルメットにはシールド・バイザーやネック・ストラップのクロージャ―(留め具)といった部分で他銘柄との差別化が行われるケースが目立ち、今回のコミネ社の新商品も、その点で差別化が図られているものと推測。
ダフェイマ社供給の726X系ヘルメットは、南米、北米、欧州、極東――世界の各地に同型品が存在する。コミネの製品も、それらに加わる格好となるだろう。その点で、恐らくは現在、世界的に最も高い人気を博し、かつ高い知名度を有しているであろう同型モデルとしては、欧州方面で流通しているアストン・ヘルメットのエレクトロン(Astone Helmets Elektron)を挙げることができる。
■参考画像:Astone Helmets Elektron
FASEEDの726Xと比較し、AstoneのElektronヘルメットの情報は、web検索にヒットしやすい。そのうえで得られた印象としては、おおよそ酷評の類は見当たらず、どちらかと言えば、おおむね好評、好意的に迎え入れられている様子。しかし、本質を言ってしまうと726X系とは「廉価品」そのものであり、品質も機能性も、一般的なモーター・サイクル・ヘルメットと比較すると、(ウッ…!)と、悪い意味で唸らされるところが多々、存在する。詳しくは、後述。
◆アメリカでは存外マイナーな地位に甘んじている?ダフェイマ製品
ダフェイマという業者が製造しているODMヘルメットは、大手~中小規模のショップが提案するプライベート・ブランド品として、ちょこちょこ見かけることがある。そのうちのひとつが、アメリカのILM。
■参考画像:ILM Motor Cycle Helmet ILM-726X
こちらが、北米アマゾン(Amazon.com)の窓口にて提供されている、ILMotor(アイ・ラブ・モーター/I Love Motor)のストリート・ファイター・モデル、ILM-726X。
■参考画像:ILM-726X Amazon.com上での販売ページ(ILM)
――で、自身が購入した品物が他でもない、このILM-726X。この他、南米においてはAVXというブランドからFS-908という商品名にて同型のヘルメットが流通していたりもするが、南米の商品はweb検索が難しく、どこの会社が提供しているブランドなのかまでは確認できず。閑話休題。
◆ILM-726X モジュラー・ヘルメットの率直な感想
ここまで、長々と前置きやうんちくの垂れ流しにお付き合いいただき、恐縮。
肝心の、ヘルメットのお話をば。
第一印象は、「安っぽい」ではなく「確かに安い品物」という、身も蓋も無い現実。実売80USドル以下の典型的な100ドル・メット(※)なので、当たり前と言われてしまえば、当たり前。今夏に発売を控えているコミネ版はフル・セットで標準小売価格が税込19,000円を超える(13,500円+3,800円+消費税10%)のだが、SGおよびPSC、そして最新の磁力クロージャーといったコスト増を考えても、なお、その差は大きいように思えてならない。
※うんちく:100ドル・メット…その文字列の通り、100USドル以内、ないし100USドル前後にある廉価品を意味する言葉。726X系の相場は80USドル、1,500メキシコペソ(MXN、約8,000円)、9,000アルゼンチンペソ(ARS、約1万1千円)といった具合で、100ドル・メットの範疇にある。
■参考画像:ストリート・ファイター系ジェット(モジュラー)モデルとの比較
一番奥に置いてあるのが、726X。
既存のストリート・ファイター系モデルと比較し、サイズ感に大差はなく、むしろ若干は小ぶりかな?というのが、726Xの印象。その大きさに相応しく、確かに軽い、という特徴も。
■参考画像:ILM-726X 安物くさいのではなく、実際に安いヘルメット
この商品のカラーは、マットのメタリック・グリーン。アウトドア用品っぽい色味に対する興味・関心から、思い切って選んでみたのだが、予想に反して質感が低く、安っぽさが、きつい。素直にマット・ブラックにしておいた方が良かったかも。
■参考画像:ILM-726Xのエア・インレット&アウトレット(1)
頭頂部に設けられた、エア・インレットとアウトレットの様子。スイッチのあるスリットに設けらている刻印はOがオープン、Cがクローズ。
開口部が広く見える豪快な造形だが、帽体に空けられている換気口は小径かつ少数で、肝心の機能性は決して高いものではない。どちらかと言えば、デザイン優先。雨の日に上から雨水が侵入するであろう、おバカ構造は、昨今の海外ヘルメットに散見する一種のお約束。試してはいないが、きっと水が染みると信じている。
■参考画像:ILM-726Xのエアインレット・アウトレット(2)
フェイス・マスクの裏側には、換気口の開閉スイッチを装備。上下のスライドで、ON/OFF。この類のヘルメットで、ここの開閉が選択できる構造のフェイス・マスクというのは、正直、珍しいのでは。機能性は、ぼちぼち。
■参考画像:ILM-726Xのエアインレット・アウトレット(3)
726X系の購入&利用者としては、最も腹立たしく、最も忌々(いまいま)しい構造が、こちら。ベースとなったジェット・ヘルメット・726(無印)系から増設されたプラスチック・パーツが、帽体の両サイドに設けられている開口部――サイド・ベント(換気口)を覆っているのだが、
この樹脂部品が、このヘルメットを被っていることがバカバカしくなるほどの、強烈な風切り音を発する。
■参考画像:FASEED HELMETS FS-726(無印)ジェット・ヘルメット
画像の通り、姉妹品の726(無印)系の耳の外側には、当該パーツは存在せず、内部にメッシュを備えた開口部のみが口を開けた格好となっている。
■参考画像:726(無印)系と同型製品 Acerbis JET Aria
こちらは、ヨーロッパに流通する726系ODMヘルメットの一種・Aria(アリア)。紹介ページには、「Rear and side vents to increase the maximum ventilation.(最大通気性を高めるためのリアベントとサイドベント。)との商品説明が掲載されており、耳の両側に設けられている穴が換気口である事実が、明確に示されている。
問題の726X系の換気口カバーは、恐らくはドレス・アップ・パーツ、「純然たる飾り」として取り付けられたものと考えるが、それにしたって、この音の鳴りっぷりは余りに酷い。バイク用の耳栓をもってすれば、ある程度の騒音は抑制できるわけだが、街乗り用途のジェットヘルメットに耳栓を組み合わせるというのは、それはそれで辛い(※周囲の音まで抑えられてしまうため、危ない)。いっそ、カバーの奥に詰め物をして(穴を)塞いでしまう、というのも、ありかも知れない。
■おまけ参考画像:Astone Helmets Elektronのオプション・バイザー
否定や愚痴ばかりを羅列し続けるのも申し訳ないので、建設的というか、閲覧してくださった方に収穫がありそうなネタを、最後にひとつ。726/726X系のインナー・バイザーには、透明、スモーク、ミラー(複数カラー設定あり)が存在するのだが、供給先の商品によって、標準装備および付属品の内容に、差異がある。
・FASEED → スモーク・バイザーが取りけられた状態で梱包
・ILM → 同上
・Astone → シルバー・ミラーが取り付けられた状態で梱包+クリアーが付属
FASEED/ILM提供地域では、透明なインナー・バイザーが別売のオプション扱いで「transparent(トランスペアレント※ガラスのように透明、の意) Visor」として、設定されている。
「標準でスモーク?お得じゃないですか!」――などと思われるかも知れないが、そこを油断できないのが中華ODMヘルメット。標準スモークの濃さが常用バイザーとしての許容範囲を超えており、日常での使い勝手が、すこぶる悪い。もはや真夏の避暑地で着用する真っ黒なサングラスのような濃さ(暗さ)であり、夜間は言うまでもなく、薄暗い場所で難儀するレベル。
そこで急遽、取り寄せることとなったのが、上の画像のイリジウム・ミラー。その正体は、ヨーロッパで流通しているAstone Elektornのオプションである、リプレイス・バイザーの、レインボー。ここ最近のヨーロッパ地域では、クリアーにミラー・コート、ないし、ソフト・スモークにミラー・コートというリプレイス・バイザーが存在しており、これがまた、利便性の高いものとして重宝されている節がある。今回、取り寄せた商品は正に、その類。
■参考画像:透過率とは裏腹に、なかなかの光具合を見せるレインボー・ミラー
画像では綺麗に外光を反射しているが、実際は(良くも悪くも)光の透過率に優れているため、それほど視界に影響が及ぶことは無い。逆に言えば、日中の日差しなどは確実にサングラスの内側へと届いてしまうため、ライダーの目・鼻・顔・メガネなどは外から丸見え。早朝~夕暮れまでの風除け・水滴除け・軽い日差し除けとしてのサングラスとして考えれば機能性は十分に備わっているが、顔隠しの目的で手を出すのであれば、これは止めておくのが無難。純正スモークの方が、圧倒的に顔は隠れる。
◆ILM-726X モジュラー・ヘルメットのサイズ感
肝心なことが、後回しになってしまった。
海外ヘルメットで忘れてはならない、被り心地について。
コミネのHK-173が、どうなるのかは置いておくとして、既存の製品の状態を率直に申し上げると、
726Xはスペイン人などに代表される、前後に長い頭に合ったタイプ。記載こそ見当たらないが、これはOval(楕円)寄り。具体的には、Natural/Intermidiate~Long Oval寄りのShape。昭和世代には「ショウエイ頭」といった比喩表現が、伝わりやすいかも。
※「ナチュラル」「インターミディエイト」とは自然な・普通寄りな楕円形状を表すもので、「ロング・オーバル」は、かなりきつめの(左右が潰れて縦長となった)楕円形状、という意味合いの表現。
普段、自分が選んでいる海外ヘルメットは、L size、59-60cm。
SharkやCabergといったRound Ovalのモデルが、ジャスト・サイズ。
その頭で726Xを被ったところ、横幅こそジャストながら、後頭部をフィットさせるようにアジャストすると、ひたい(オデコ)に手指が1~2本ほど入ってしまう状態。
自分がIntermidiate~Long Ovalのモデルを被ると、まず、そういった状態に陥る。直近ではLS2の現行品・OF599 Spitfireジェット・ヘルメットのLがきつく、ではXLは?と言うと、これが絵に描いたようなOvalで、オデコがスカスカになるという有り様だった。
自分の頭蓋骨は前後に長い形状だ――、との自覚をお持ちの方であれば、FASEED~ILMの帽体(EPS)との相性が良い可能性が、考えられる。そうでない場合、よほどデザインやスタイルが気に入ったとしても、購入は見送られた方が、よろしいのではないか、と考える。
◆ILM-726X モジュラー・ヘルメットの各部あれこれ
インナー・パッドは、そこそこの肉厚と弾力、適度な、もっちり感。
表皮素材は、ちょっと珍しい毛質。ビロード?ベルベット?例えが難しい。触りや質感は上々なのだが、冬物の着衣の表地のような、クマのぬいぐるみの表面のような……、言わば真夏の環境下では肌に密着させたくないような暑苦しさを、想像させるものとなっている(画像を用意するべきだった)。価格帯から予想される通り、内装類の生地には、抗菌や冷感といった機能素材は、用いられていない。
前述の通り、軽さは好印象。公称1,300g、プラスマイナス50g。フル装備状態での体感的な重さは、確かに1,400gのメットのそれくらい。一昔前は「安価なヘルメット=重たい」というのが定説だったが、昨今は「安物のABSメットこそ軽い」というケースも、少なくない。
100ドル・メットゆえのアラはある。具体的には、塗装の異物や荒れ、樹脂パーツの角部のバリ、接着剤のはみ出し、etc……、しかし各部の組立・接着、内装の裁断・縫製は、及第点に思う。総じて、80USドルのオートバイ用DOTヘルメットとしては、無難な感じ。
自分の場合は、送料込みで約120USドルでの入手となったが、それくらいなら、妥協できるかな。アメリカからの空輸料がお高かった点も、ちょっと離れた場所の専売ショップに出向くための往復の高速道路+出先の駐車場代+ガソリン代などの合計~5,000円くらいが一発で飛んだと考えれば、まあ、納得できるかな、と。
◆最後に。
記事内にて使用しているコミネ公式サイト、ならびに各ヘルメット・メーカーにおける製品ページのキャプチャは、引用の目的での記録と加工を施したJPG画像ファイルであり、企業サイトの警告する複製や無断転載の意図、および認識は無く。閲覧者の皆様におかれましては、ご理解をたまわりたく。
このような長々とした駄文、乱文に最後までお付き合いくださったご厚意に、心から御礼申し上げる次第。これに懲りずに、次回もご覧いただけましたら幸い。