
バイク用のハンドルカバーや防寒レッグカバーといった二輪用品ブランド・SAFETY MATE(セーフティーメイト)などの販売で知られた、あの山本工業株式会社(兵庫県丹波市氷上町)の廃業を知る。
心から残念に思う。
インターネットの匿名掲示板においてセーフティーメイト販売終了の旨が書き込まれたのは今秋のこと。自分がそれを知ったのは、11月に入って間もなく。そんな馬鹿なと思う半面、実店舗の用品コーナーの様子を振り返ると、指摘されている通り様子がおかしい。季節商品であるにも関わらず、この時期になっても(他メーカーの品は陳列されているにも関わらず)セーフティーメイトが店頭に無い(どこに行っても売っていない)。
それから数日、インターネットや電話を使ってあれこれ調べて回ってみたが、正式な情報は得られず。いつの間にか山本工業のサイトは消えており、肝心の電話も繋がらない状態。これ以上の調べ物は個人の力では、どうしようも無さそうな雰囲気となってきた。そこで思い切って、山本工業の製品と類似した商品を販売している、とあるメーカーの窓口に電話をかけて直接お話をお伺いする事に。
そして、
「ああ、山本工業さんは廃業されました」
「もう(セーフティーメイトが)販売される事は無いです」
「(廃業は)今シーズンのことです」
という回答を頂いた次第。
二輪向け防寒用品の愛好家の方々は真っ先に気付かれたようだが、今シーズンの各種ホームセンターや用品コーナーにおいて、山本工業の品物は(恐らく既存の在庫以外には)確かに存在せず、多くの場合、
・リード工業 MOTOUP
・大久保製作所 MARUTO(マルト)
・石野商会 maxBikers(マックスバイカーズ)
・ユニカー工業 unicar(ユニカー、FANCY series)
・大阪繊維資材 OSS
・パルスター
といった会社から販売されているハンドルカバーおよび防寒用品が、新旧混在で店頭に陳列されている状況にある。この現実に、上述した掲示板の利用者をはじめ、少なからずの人達が嫌な予感と不安を抱いたという訳だが、果たして製品が出荷されていないのだから商品が店に納入されるはずはなく。それを思うと、寂しくも残念な気持ちになる。
そんななか、あらためて実店舗の用品コーナーを眺めて回ると、驚かされるのは、かつて山本工業が販売していた製品の類似品が、各社から供給されているという事実。
確かにセーフティーメイトと同形の製品が他のブランドから別名で販売されていた事があった(有名どころではリード工業のMOTOUPシリーズから発売された130/160形の2タイプ、maxBikersから発売された130形、その他にも、かのコミネから発売された130形が存在する)訳だが、今シーズンに至っては一部パッケージの図版や製品の寸法などが良く似ている、ほぼ同型と見て差し支えの無い製品が散見される。某社の製品に限っては、あまりに130に酷似しているため、まるで後継商品のような印象すら受けるのだが、確認したところ「こちらはこちらで(あちらとは)別の、以前から販売している製品です」という回答。互いの関係は無い、との事だったが、どうしたらここまで似るのか不思議だ。
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■参考:130とそっくりなパッケージのOSSハンドルカバー310(大阪繊維資材)

※パッケージのイラスト図版は石野商会のMAX-06にも同様のものが使用されている
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■参考:MOTOUP版とSAFETY MATE版の関係(202A/203A共に絶版)
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■参考:現行のMOTOUP版とMARUTO版(206A/207Aと3000系/210系)
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予備知識が無ければ、どれも似た品物に見えてくる。同時に、「ここまで似ていればどれでも代替品になり得るのではないだろうか?」という考えが浮かんだとしても、何ら不思議ではない。しかし、実物の見本を手にとって品物を確かめてみると、そこには厳しい現実が待っている。
誤解を恐れず指摘するならば、各社、形こそ似せてあれど、製品は正に別物なのだ。
それは「メーカーが違う」「会社が違う」「名前が違う」といった概念的な意味ではなく、「同じ価格帯の商品として物が違いすぎる」という意味。どこのメーカーのどの品物がそうだとは書けないが、一部の品物に至っては、まるで粗悪な複製品のような印象。
最も驚かされたのは今シーズンの類似品・○○○○○版。なんとパッケージ裏面にクレーム対策とおぼしき一文があり、『本商品の耐用年数は4ヶ月です』と、製品の劣化の早さと寿命の短さが最初から宣言されているのだ。
ふと思い返すと昨今、合皮などを用いている着衣などにおいて製品タグに『本商品は水分の吸収・発散の度に素材が劣化するため、3年ほどで寿命となります』などといった注意書きを添付する手法が、確かに常態化している。しかし、それを二輪用品で目にする機会は今回が初めてのことであり、まさか実用品にそんな注意書きがされるとは考えた事は無かったため、少なからずの衝撃を受ける。もしやと思い、他の品々の裏面を確認して回る。すると、例えば某メーカーの防寒商品のパッケージに『耐用年数:○ヶ月』との記載、また、某社製品には『1年ごとに買い換えて頂いた方が良いでしょう』といった旨の記載が存在する事が分かった。どうやら、ほぼ全てのメーカーが同じ手法の元で注意書きを展開しているらしい。
結局のところ、全てに共通するのは『この商品は1シーズン限りの寿命です』という販売側の明確な主張であり、「(事実上の使い捨て商品ですから)後で文句を言わないで下さい」と開き直られていると解釈して差し支えないだろう。確かに広義で解釈すれば、実用品は消耗品とも言える存在な訳で、その観点から製品の寿命を消費者に明示する事は、決して悪い事では無く、むしろ歓迎すべきなのかも知れないのだが、果たしてメーカーから「すぐに駄目になるから覚悟しておけ」と言われているような気がしてならないというのが、自分にとっての現実。もはや、かつての(昭和の)感覚で品物を選別する事は、難しくなってきたようだ。
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自分が初めて購入した防寒用品のハンドルカバーは、たまたま、山本工業の品物だった。ただそれだけの事だったのだが、今にして思うと、それは買って正解だったと、心から思う事が出来る。
画像はセーフティーメイトのハンドルカバー160と、レッグカバーの組み合わせ。
車体も含めて、とうとう全ての品が絶版となってしまった。
『セーフティーメイトはステータスだ。希少価値だ』
と言われる日が訪れるのかと言えば、そんなことはないだろうけれど、やはり寂しいものがある。
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追記:2012年11月25日
2ちゃんねる バイク@2ch掲示板 ハンドルカバー通算19個目 287
官報に掲載されたと思われる山本工業の解散公告の引用が書き込まれています。
(公告の日付は2012年6月末、該当公告の閲覧は一般には出来ないようです)
山本工業の皆様、お疲れ様でした。
Posted at 2012/11/20 02:26:39 | |
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防寒 | 日記