
今日もオーディオネタです。
今日はPioneer DEQ-2000Aのクロスオーバー周波数の調整をするにあたり学んだことと、クロスオーバー周波数からカットオフ周波数を計算する方法について書きたいと思います。
Pioneer DEQ-2000Aは各チャンネルに対しHPF(ハイパスフィルター)とLPF(ローパスフィルター)の設定をすることができます。
中低音スピーカーと高音用のツイーターを使う場合中低音スピーカーはLPFで高音をカットし、ツイーターはHPFで低音をカットします。
カットすると言っても、普通はその設定した周波数を境にいきなり音量を0にするわけではなく、だんだん音が小さくなっていくようにカットします。
そのため、それぞれのスピーカーの音圧が半分くらいになる周波数が一致するように調整します。※音圧レベル(dB)でなく単位がPaの音圧です
このときの周波数をクロスオーバー周波数と言います。
通常のスピーカーは中にクロスオーバーネットワークという抵抗とコンデンサーなどで構成された電気回路が入っていてその回路がHPF、LPFの機能を持っています。
DEQ-2000AのようなDSP機器ではHPF、LPFのカットオフ周波数をデジタル値で設定がすることができます。
カットオフ周波数の定義は「電力が半分になる周波数」となっていて、音が減少し始める周波数ではなく、電力が半分になる周波数のことを指します。
”音圧”ではなく、”電力が半分”というところに注意が必要です。
電力は音圧の2乗に比例するので、電力が半分のときは音圧は1/√2≒0.707倍になっています。
次に音圧(Pa:パスカル)と音圧レベル(dB SPL:デシベル サウンド プレッシャーレベル)の関係について
オーディオ機器で「音の大きさ」を表すとき、通常は「音圧レベル」のことを指します。
音圧レベルの定義は次のとおりです。
Lp=10×log{(P/P0)^2}
=2×10×log(P/P0) (dB SPL)
P:測定された音圧の実効値(μPa)、P0:基準となる音圧の実効値=20(μPa)
音圧レベルの式でlog{(P/P0)^2}に10をかけている理由は、単位をB(ベル)からdB(デシベル)に変換するためで、dBの”d”はSI接頭語のデシで1/10という意味です。1B(ベル)=10dB(デシベル)という関係です。
一方、人間の耳は音圧の大小を感じて音が大きい、小さいと感じるのだそうです。
したがって本来は音圧で音の大きさを表すべきのような気がしますが、実際は音圧レベルで表します。
また人間は音圧が2倍になっても音の大きさが2倍大きくなったとは感じず、その対数で大きくなったように感じるのだそうです。
そのため、音圧レベルは対数を使って計算します。
音圧レベルの式に対数を使うのは理解できましたが、音圧の比を2乗している理由がわからなかったので調べました。
すると、もともとは電話の電力伝送減衰量を計算するための式だから2乗になっているのだそうです。
計算結果としては10×log(P/P0)の2倍になるだけで、変化の仕方が変わるわけではないため、気にしなくてもいいことがわかりました。
測定された音圧と基準音圧の比を対数にした値と、音圧レベルの計算結果
音が大きくなる側は
10×log(P/P0)は音圧が2倍になると3.01ずつ増加します。
音圧レベルはその2倍で6.02dB SPLずつ増加します。
音が小さくなる側は
10×log(P/P0)は音圧が1/2倍になると3.01ずつ減少します。
音圧レベルはその2倍で6.02dB SPLずつ減少します。
一般的に音圧が2倍になると音圧レベルが6dB上がると言われますが、正しくは20×log2=6.02(dB)上がります。
次にフィルター特性について
クロスオーバーネットワークのフィルターは何種類かあって、DEQ-2000AではButterworth、Bessel、Linkwitz-Rileyの3種類に設定することができます。
初期設定はButterworthフィルターで、設定を変更して聞き比べてみましたが、違いがわからなかったので、そのまま初期設定のButterworthフィルターを使うことにしました。
Butterworthフィルターの音圧レベルのゲインは下式で計算されます。
G:ゲイン(dB)、f:音信号の周波数(Hz)、fc:カットオフ周波数(Hz)、n:減衰の次数
この式で計算するとf=fcのときG=-3(dB)になるので、カットオフ周波数のときの音圧レベルは半分の大きさになりますす。
音圧と音圧レベルの二つがあってやや混乱しますが、カットオフ周波数で半分の大きさになるのは音圧レベルで、音圧は上に書いたように0.707倍です。
以上の知識を使うと目標のクロスオーバー周波数に設定するためのLPFとHPFのカットオフ周波数を計算することができます。
例えば、DEQ-2000AでHPFとLPFのカットオフ値を下記の数値に設定すると下図のような周波数特性になります。
中低音のLPF:2600Hz
ツイーターのHPF:4500Hz
このグラフを見ると、クロスオーバー周波数は3400Hzくらいで、このときの音圧レベルは-6dB前後であることがわかります。
ただ、普通はクロスオーバー周波数とそのときのゲインを決めて、そのクロスオーバー周波数とゲインになるようにLPFとHPFのカットオフ値を決めると思うので、
クロスオーバー周波数とそのときのゲインを先に決めて、そうなるようなLPFとHPFのカットオフ周波数を計算で求めることができるようなエクセルの計算表を作りました。
以下はエクセルの説明です。
まずD2セルにクロスオーバー周波数の目標値を入力します。
今回の例では3400Hzです。
次にD3セルにクロスオーバー周波数での音圧レベルのゲインを入力します。
一般的には2つのスピーカーから等しい音圧を発生して足して1になるようにするので、各スピーカーが半分の音圧になるように設定します。
音圧半分は音圧レベルでは-6.02dBなので、今回の例では-6.02を入力しています。
次にD8、E8、G8、H8セルに音圧レベルの減衰の次数nを入力します。
一般的には周波数が1オクーターブ変化したときに、音圧レベルが12dB変化するように設定するのだそうです。 (1オクターブは周波数が2倍変化する間隔です)
12dBというのはButterworthフィルターの式の2nのnが2のときのことを指していて、DEQ-2000Aでは”スロープ”という項目で設定します。
スロープは18dB、24dBなどにも設定できるので、そのときはスロープの値を6で割った値にnを設定します。
以上を入力するとE6セルに中低音スピーカーのHPFカットオフ周波数、G6セルにはツイーターのLPFカットオフ周波数の計算値が表示されます。
今回はそれぞれ、2584Hzと4474Hzになりました。
DEQ-2000Aではカットオフ周波数を指定するため、計算結果から下記の値に設定にしました。
中低音スピーカーのHPFカットオフ周波数:2600Hz
ツイーターのLPFカットオフ周波数:4500Hz
それぞれの値をE7、G7セルに入力すると、そのときのクロスオーバー周波数と音圧レベルのゲインがE2とE3セルに表示されます。
中低音スピーカーのHPFとツイーターのLPFはクロスオーバーには関係ありませんが、グラフを書く都合上、D7に中低音スピーカーのHPFカットオフ周波数、H7セルにツイーターのLPFカットオフ周波数を入力します。
今回の例では初期設定の70Hzと20000Hzです。
エクセル表のC列の周波数を横軸にしてF列、I列の音圧レベルでグラフを作ると下図のようにDEQ-2000Aで表示されるグラフを描画することができます。
DEQ-2000Aでは中低音とツイーターを合成したときの音圧レベルがわからないのでJ列で計算できるようにしました。
こんな感じでエクセルで先に計算してから、DEQ-2000Aの設定を変更すると一発でクロスオーバー周波数でのゲインを-6dBに設定できるし、12dB以外のスロープにしたときのカットオフ周波数も計算できるので、より簡単にクロスオーバー周波数の設定ができるようになります。
うちのMarshall STANMORE Ⅱの場合は、初期設定のカットオフ周波数 LPF:1900Hz、HPF:3400Hz(クロスオーバー周波数は2500Hz)で聞いてみたら、少し高音が大きい気がしたのでツイーターの音量を全体的に下げてみました。
そうしたら、ちょうど良くなった気がしたので、いろんな曲を聴いていたら高音が変に聞こえる曲があったのでクロスオーバー周波数を何種類か設定して最もいい音に聞こえたLPF:2500Hz、HPF:4500Hz(クロスオーバー周波数は3400Hz)で現在は使っています。
正直言うと、変更の前後でほとんど違いはわからなくて「なんとなくいい音になった気がする」程度の差ですが、とにかく聞けば聞くほどいい音に聞こえてくるので、大満足で毎日音楽聴いてます。