2012年11月04日
ボディ剛性
今日はいろんなものにケチをつけるコーナーの第3段です。
お題はボディ剛性。
まず、ボディ剛性は大事です。
剛性がないとキャンバーが無限についてしまします。
運転席も地面に擦ってしまいまともに走れません。
そのくらい大事です。
ところでボディ剛性なる言葉が日本で頻繁に使われるようになったのはいつ頃からか知っているでしょうか?
僕の記憶によれば1987~9年くらいです。
実際には、レーシングカーの世界では昔からボディ剛性の大事さは知られており、1975年初版のレン・テリー著”レーシングカー/その設計と秘訣”という本に1960年代にはボディ剛性の大事さが認識されていた記述があります。
にも関わらず1980年代中盤の国内ツーリングカーレースでは、それほどボディ剛性は重要視されていないように感じられます。
それは1987年のインターテックでデビューしたR31 GTS-RのGrA車輌を見るとよくわかります。
ロールオーバーバーは必要最低限+αくらいしか入っていません。
(写真はレーシングオンの450号を参照ください)
当然、当時から日産(ニスモ?)としてはボディ剛性は大事であることは認識していたと思うのですが、ロールオーバーバーの追加に伴う重量増加とボディ剛性アップによるラップタイム向上分を天秤にかけたときに、重量増によりラップタイムが悪化すると判断した結果が実際のロールオーバーバーの入り方に現れていると思います。
ところが、1988年だか89年くらいから、ボディ剛性という言葉が使われるようになってきました。
GrAは基本的に同じボディをシーズン通して使っていたようですが、後半になるとなぜかラップタイムが落ちたり、サスペンションセッティングを変えても変化が出にくくなるなどの症状が現れるようになったそうです。
ところが、ボディを新調すると、それが改善されることがわかってきた。
そして、その改善代がかなり大きく、その原因はボディ剛性の低下にあることがわかってきた。
その頃、初めて僕もボディ剛性という言葉と、その重要性を認識しました。
だから、1990年に登場するR32 GT-RのGrA仕様では大幅にボディ剛性をアップしてきました。
これもロールオーバーバーの入り方を見るとよくわかります。
どちらかと言うと、ロールオーバーの対応をするところの他にサスペンション取り付け部の剛性をアップするための補強バーをたくさんつけているという感じです。
それでも、レギュレーションの最低重量を見ながら重量増にならないように気をつけています。
また、同じような時期にホンダではNSXを開発しており、こんな記載があります。
ホンダのHPから抜粋
http://www.honda.co.jp/NSX/nsx-press/press33/the_man/index.html
「そのきっかけとなったのはF1ドライバーだったアイルトン・セナです。彼にNSXのテスト車へ鈴鹿で乗ってもらったとき、「ボディがやわらか過ぎて話にならない」と酷評されたんです。僕は当日行けなくてあとから聞き、『何言ってんだ!』と思いましたが、世界のセナだから走る次元が違うだろうと。
それでドイツのニュルブルクリンクに確認しに行った。そして、ニュルでボディを徹底的に鍛えたわけです。
ニュルに行ったら、普通のサーキットで「いい」と感じていたNSXのボディが、本当に柔らかく感じた。それくらいアップダウンや路面のアンジュレーションやコースレイアウトが激しい道でした。それまでのNSXのボディでは歯が立たなかった。」
で、僕が何が言いたいのかわかっていただけたでしょうか?
僕が言いたいのは、ボディ剛性の違いは普通の人にはぼとんどわからないってことです。
1988年当時に日本でレースをしていたドライバーがショボかったか?
全然ショボくないです。世界でも十分通用するような人ばかり。
当時の技術者がボディ剛性の大事さを理解できないアホばかりだったのか?
1975年の本に書いてあるので全員知っているし理解できていたはずです。
じゃあ、なんでそれまでボディ剛性が1980年代後半までそんなに重要視されてこなかったのか?
あくまでも僕の推測ですが、それは日本のサーキットを走る限り、ドライバーにはその違いが非常にわかりずらかったんだと思います。
つまり、新車のときには問題なくてもだんだんボディ剛性が低下してくるような状況では、ボディ剛性に問題があるのか?サスペンションに問題があるのか?それともタイヤに問題があるのか?どこに問題があるのかを判断できなかったんだと思います。
そもそも、昔のクルマなんて新車のボディ剛性は十分じゃなかったはずです。
でも、サスペンションセッティングでどうにかしていた。
ところが、どうにもならないような状態になって初めてボディ剛性の問題に気が付く。
そんな感じだったんだろうと思います。
でもってホンダの橋本氏の言葉
「ニュルに行ったら、普通のサーキットで「いい」と感じていたNSXのボディが、本当に柔らかく感じた。」
要は、橋本氏はニュルで走って初めて本当の意味でボディ剛性とはなんぞや?ってことが理解できたってことです。
日産もR32 GT-Rの開発で1988年にニュルで走らせています。
その頃にボディ剛性の大事さみたいなものをさらに理解していったんだろうと思います。
一方、我々が走るところ
日本の一般公道と日本のサーキット
こんなところ走っててしかも、プロの様に頻繁にボディ剛性の違うクルマで評価をしていなくて、なんでボディ剛性の違いなんて感じることができるんでしょうか?
わかるわけがない。
じゃあなんでメーカはボディ剛性を上げることに必死なのか?
日本の道を普通の速度で走るお客さんにはわからないようなボディ剛性を上げることに意味はあるのか?
彼らはアホなのか?
全くない!
どこにもない。
微塵もない。
つまり、彼らはアホなんです。
って僕は思ってます。
必要な安全性を確保したら、それ以外は軽量化すべき。というのが僕の考えです。
ちなみにツインリンクもてぎをN1のシビックで走るなら、EG6をひたすら軽量化してパワーアップしたエンジン載せた方が、同じだけ時間をかけてボディ剛性をアップしてその分重量もアップしちゃったクルマよりもよっぽど速く走ります。
ボディ剛性はラップタイムには微塵も表れませんが、重量は10kg軽くなったら、その分だけラップタイムは向上します。
鈴鹿はなんとなくボディ剛性が効きそうな気もしますが、ホンダの開発チームはわからなかったみたいなので、よっぽど橋本氏が鈍感か経験不足だったか、鈴鹿でもボディ剛性の違いはわかりずらい(タイムにも表れにくい)のかどっちかなようです。
剛性感は普通の道で普通に運転していても感じることができるので、とっても重要。
わかりやすいところでは、初代ロードスターはAピラーがバタバタ動く感じがします。
なんので、剛性感が低く感じるし、バタバタ感が気になって不快です。
これは重くなっても改善して欲しい。
でも、ニュルをプロが走って初めてわかるようなボディ剛性なんてどうでもいいです。
ぜひ日本のメーカには、日本の道、日本のサーキットに最適化したボディ剛性とボディ重量の両立を図ったスポーツカーを作って欲しいなぁって思います。
ブログ一覧 |
クルマ | 日記
Posted at
2012/11/04 21:57:04
今、あなたにおすすめ