今日のお題はプリロード。
僕はこのプリロードというものの目的がよくわかっていません。
でも何をするかは知っています。
実際にやることは、ダンパ-ASSY(スプリング組み込み状態)で、スプリングを予め縮めておき、ダンパーが伸びきり状態でもスプリング反力が出るようにします。
このときのスプリング反力をプリロードといいます。
で、プリロードってなんか意味あるんでしょうか?
プリロードの有無だけで比較実験したことがないので、本当のところはわかりませんが、過去20年の経験では僕には違いはさっぱりわかりませんでした。
ということでいつもの計算
こんな絵のダンパーASSYで計算してみます。
この絵の中で、③の寸法はスプリングの自由長です。
結果はこちら
まず、プリロードのかけ方ですが、上図の様にダンパが伸びきった状態でアッパシートとロアシート間距離がスプリングの自由長と同じになるようします。
このときのプリロードは0です。
僕はプリロードという言葉が大嫌いなので、このときを初期縮み量0mmと表現します。
ここからロアシートを上げて行くとスプリングが縮みます。
そうするとスプリング初期縮み量×バネレートに相当するプリロードがかかります。
上図では、③-⑦=10mmなので、下の絵は初期縮み10mmの状態です。
ロアシートを上げると車高が変わってしまうので、ロアケースの位置を調整して④=⑧になるようにします。
同一ダンパで、同一スプリングを使う場合、車高は④、⑧で決まるのでこの寸法が同じであれば車高は変化しません。
ここで大事なことがあります。
それは図中の①+②の寸法です。(アッパシート下面~ダンパケース上面距離)
ダンパは初期縮み量0mmでも10mm伸びきった状態なので、①+②の寸法に変化はありません。
つまり①+②=⑤+⑥という関係で。
(①⑤はバンプストップラバーなので①=⑤、②=⑥です)
次に計算結果のグラフを見てみます。
当たり前ですが、初期縮み10mmのときはスプリング縮み量0~10mmという範囲はありません。
今回計算に使った条件
バネレート :180N/mm
ガス反力 :250N(計算上は無視してもあまり違いはありません)
1輪荷重 :3850N
伸びきり状態のケース上面~バンプストップラバーまでの距離(図の②と⑥):55mm
初期縮み0のときは1G荷重をかけると、20mm縮みます。(グラフのa)
a=(3850-250)/180=20(mm)
a+b=②という関係になっているので、
パンプストップラバーまでの距離は35mmです。
初期縮み10mmのときは1G荷重をかけると、10mm縮みます。(グラフのc)
ここで、②=⑥という関係からパンプストップラバーまでの距離dを求めると
c+d=⑥=②=55なので
d=55-10=45mm
1G荷重時のスプリング縮み量で整理すると
伸び側ストロークは
初期縮み0 :20mm
初期縮み10:10mm
⇒初期縮みを与えると、伸び側ストロークは初期縮み分だけ減少する
縮み側ストロークは
初期縮み0 :35mm
初期縮み10:45mm
⇒初期縮みを与えると、縮み側ストロークは初期縮み分だけ増加する
グラフを見てもらうとわかるように、1G荷重から小さいストロークの範囲ではダンパケースにかかる力は全く同じなので、なにも違いはありません。
一般公道を合法的に走っているときは、ストロークは小さいので、初期縮み影響はわからないと思います。
サーキットでは、ストロークを目いっぱい使うことが多いのでグラフのように違いが発生します。
ただ、伸び側については初期縮み量が1G縮み量に対してあまり大きくない場合(今回の計算例では5mm以下)、スタビライザーの影響でここまでダンパは伸びないと考えられるので違いはないと思います。
一方縮み側については、初期縮み量を与えることで、バンプストップラバーまでのストロークが増加するので、ストローク不足のダンパーASSYの場合は大きく違いが発生します。
でも、これって変わったのは縮み側ストロークの影響なわけで、初期縮みによる初期スプリング反力=プリロードとは関係ないですよね?
僕がS2000を購入した当初、テインのタイプフレックスという○子供向けのダンパでサーキット走行をしたことがあります。
全長調整式の車高調はストローク不足とは無縁である。というよくわからない思い込みで走行し続けていたところ、あまりに具合が悪く、TC1000の1コーナで8回スピンしたため、ストロークを確認したら全くストロークが足りてませんでした。
しょうがないので、10mmくらい初期縮み量を与えたところ、かなり改善しました。
もちろん街中を合法的速度で走るだけなら、何も変化はありませんでした。
本日のまとめ
プリロードは縮み側ストロークを確保するために初期縮みを与えた結果発生するものであって、それ自体はどうでもよい。
ただし、縮み側ストロークが増えた分、伸び側ストロークは減少するとともに、伸びきり時のタイヤ荷重変化が大きくなるので、バランスを見ながら調整する必要がある。
たぶんプリロードって言葉は、全長調整式の車高調を売り出すときに”なんだか良さそう”って思い込ませるために車高調業界が広めた言葉だと思います。
減衰力特性も出さなければ、実車の実測結果も出さない。
そしてプリロードを変えると○○に変化がある。とかウソをつく。
ちゃんとした計算結果、実測結果がない理論はなんの役にも立ちません。
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いろいろ計算 | 日記
Posted at
2013/02/16 11:37:17