2015年04月05日
速いドライバーとは?
さて、本日のお題である速いドライバーとは?ですが、普通はこう考える人が多いようです。
同じクルマを走らせたときに、より速いタイムで走ることができる人
しかしながら、僕の認識はちょっと違います。
僕の考える速いドライバーとは
同じクルマを与えられたときに、そのクルマをセッティングも含めてより速いタイムで走らせることができる人
つまり、セッティングができるかどうか?これも速いドライバーの条件だと思うのです。
なぜなら、モータスポーツでは道具であるクルマの速さが結果を左右するので、その道具をより良く作る能力が大事だと思うからです。
それに、モータースポーツにおいて、全く同じクルマで競うことなんてないのです。
だから、全く同じクルマでより速く走れたとしても大して意味がないのです。
ところで、レースをしようとするドライバーの多くは自分の運転技術を人に認めてもらいたい、試してみたいと思っているので、クルマの改善に消極的です。
そして、彼らはこう言います。
”俺はクルマの速さではなく、俺のウデで勝つのである!
一番速いクルマで勝ったとしても、それはクルマが速いのであって、自分が速いということにならないから、クルマは他より速くなくてもいいのである!”
僕はこう言います。
”そんな取り組み姿勢ではレースに勝てない。
それに、そんな取り組み姿勢で勝てるようなレースはレベルが低いので、参加する意義がない。
自分が他の人よりも速いと示したければ、ブっちぎりで勝て。”
レースをしようとする人はなぜか直接的に競い合いたいらしいのです。
つまり、コース上で抜きつ抜かれつのバトルをした上で勝ちたいようです。
でも僕はそんなものに興味がありません。
バトルをすれば接触する可能性が出てくるので、極力コース上でのバトルは避けたいわけです。
ポールポジションからブっちぎりで独走すれば、安全に勝つことができます。
見ているお客さんからすればつまらないかもしれませんが、そんなことは知ったことではないのです。
レースは勝てばいいんです!
クルマが速かろうがドライバーが速かろうが勝てばいいんです。
そして、勝ったドライバーが速いドライバーってことになるのです。
先日のブログに、以前もてぎシビックに参戦し始めたときにブレーキング時の安定性に問題があったということを書いたのですが、そのときのドライバーがレースをしていた先輩に相談しました。
すると、その先輩はこう言ったそうです。
”お前のブレーキの踏み方に問題があるから、そうなるんだ。
クルマの問題ではないので、運転を見直せ。”
それを聞いて、そのドライバーはクルマの改善をやめようとしていました。
しかし、事象としては、ブレーキを踏むとリアがロックしやすいという事象だったので、こんなのはウデの問題でもなんでもないわけです。
普通のクルマはブレーキを踏むとフロントからロックするようにブレーキの前後配分が設定されています。
ドライバーにブレーキの前後配分をコントロールする能力なんてありません。
なので、その先輩の助言は無視して、プロポーショニングバルブを変更しました。
するとサクっと解決しました。
普通はフロントがロックするはずなので、なぜプロポーショニングバルブの変更が必要だったのかいまだに解せないのですが、ブレーキで競り負けすることもなかったのでそのままにしました。
これはセッティングというよりも不具合解決をした事例なのですが、ワンメイクレースでもタイヤの空気圧や、ブレーキパッド、車高、バネレート、ダンパ減衰力、キャンバ角、トーなどなどセッティング可能な項目はたくさんあります。
もちろん我々も可能なところは全部セッティング変更しました。
セッティングをするにあたり、ドライバーの役割は大きいです。
特に車輌の走行データが速度とGくらいしか見ることがができない場合はドライバーの意見が方向性を決める際に最も重要視されます。
ここでドライバーにセッティング能力がないとクルマの改善が進みません。
先ほどのブレーキが安定しない問題もドライバーが運転で解決していたらいつまで経ってもぬるいブレーキングしかできないわけです。(実際は何も解決してないってことです)
しかし、ドライバーが問題を的確に指摘することができて、対策の前後の違いを感じてタイムに反映することができれば、どんどんクルマの改善が進み速いクルマができます。
幸いなことに、僕がお手伝いしていたドライバーはセッティング能力が高かったので、クルマの改善が進み、運転技術の著しい向上もあって最終的にはシリーズチャンピオンをとることができました。
ちなみに、このときのドライバーはまさに”俺のウデで勝つからクルマは遅くてもいい”という典型的な人間だったのですが、途中からはセッティングの大事さを理解してくれたようです。
ところで、レースの練習走行に行くと、しょっちゅうセッティング変更を繰り返しているドライバーがいます。
これ、要するにセッティング能力がないんです。
そもそもの仕様違いによる差がわからないし、タイムにも反映されないから、あれこれセッティングを変更しようとするのです。
そこでセッティング能力とはなんぞや?ということを考えてみました。
1、クルマの問題点を的確に指摘できる。
2、対策の前後を感じることができる。
3、そのドライバーにとって好みのセッティングで良いタイムで走ることができる。
ここでドライバーにエンジニアリング的な知識は必要ありません。
あるに越したことがないのですが、なくても問題はありません。
ドライバーは問題点を指摘して、クルマの改善はエンジニアが行い、ドライバーはそのクルマを運転してより速く走ればいいので、クルマのどこをどう改善するかという知識は必要ないのです。
だからプロドライバーはエンジニアリング的にトンチンカンなことを言う人が多いのだと思います。
しかしながら、僕らのように走行会で自分のクルマを自分でセッティングする場合はエンジニアリング的な能力もセッティング能力として要求されると思います。
ということで、一般的にはセッティング能力は軽視されていると思うのですが、速いドライバーというのは、ただ単にクルマを速く走らせる能力が高いということではなく、クルマのセッティングも含めて総合的に速く走らせることができる人であるということを言いたかったのでした。
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クルマ | 日記
Posted at
2015/04/05 03:34:33
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