• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2019年06月02日

2017メルセデスF1走行分析

先日、とあるサイトで「ブレーキを離すと、すぐに荷重が抜けるのか?」というお題について書かれていました。

ブレーキを離した直後は、スプリング反力で前輪の荷重は大きい状態になっていて、かつ制動にグリップを使っていないため、摩擦円のすべてを横方向に使えるので、この瞬間のグリップを有効に使おうという趣旨で書かれていることに対し、ブレーキを離した瞬間に前輪の荷重は元の状態に戻るという意見にに対する反論のようです。

第一回目は、考え方が書かれており、スプリングが縮んでいる間はその反力分は前輪の荷重は増大しているのである。という内容でした。

スプリング反力が発生している時間については次回算出されるらしいので、その前に僕も計算してみました。

計算をするにあたり、クルマの固有振動数を知らなくてはなりません。
なぜなら、縮んだスプリングはそのクルマの固有振動数で元に戻ろうとするからです。減衰の影響も考えられますが、今回は無視します。

クルマの固有振動数についてネット検索をすると、チームルマンの方が書かれているHPに記載がありました。
こちら

スポーツカーは2Hz、F1は5~7Hzだそうです。
そこで、2Hzと6Hzで計算してみました。


2Hzというのは1秒間に伸びて縮んでを2回繰り返すという意味です。
6Hzは1秒間に6回

実際のスプリングの伸び縮み時間がどのくらいなのかは、僕のS2000で実際に測定した結果があるので、こちらを参照ください。

ここで、ブレーキ(減速)によって縮んだスプリングが荷重を増大させている時間を計算するわけですが、今回は最も縮んだ状態から半分だけ伸びたところまでの時間(グラフの赤丸で囲った部分)を計算します。

スプリングが半分伸びるまでの時間
 2Hz:0.08秒
 6Hz:0.03秒

次に、この時間は運転操作(転舵時間)に対してどのくらいなのか?というのが知りたくなりました。

こういうときは、世界一のクルマを世界一のドライバーが運転していたときのデータで確認するのがわかりやすいと考え、2017年のメルセデスF1をハミルトン選手が鈴鹿サーキットを運転したときのオンボード映像から速度データと転舵角度を取得して確認することにしました。

では見てみましょう。
まずは全体
青:速度(km/h)
緑:前後角速度(m/sec2)
ピンク:転舵角度(deg) ※S字とスプーンは割愛しました


次にデグナーとヘアピン
図中の赤と青の縦線の意味は、赤が転舵始め(と思われるところ)、青が一度転舵を止めるところです。


前後加速度は速度から計算して0.36秒間を移動平均しています。
転舵角度は画面のステアリングホイール角度から僕がおおよその角度を目で見て書き写しました。なので、誤差は±5°くらいはあります。

このグラフを見ると、どこのコーナでも40~60°の転舵後に一度転舵を止めているということに気が付きます。

本当の理由はわかりませんが、恐らく一気にある程度のところまで転舵したあとに、クルマの向きが変わり始める感覚を確認してからさらに切り増しているということだと思います。

したがって、この一度転舵を止めるまでの時間とスプリング反力により前輪荷重が増加している時間を比較すると、転舵時間が十分早いかどうかがわかると考えました。

メルセデスF1の固有振動数を6Hzと仮定すれば、ブレーキを離してから、前輪荷重が半減するまでの時間は0.03秒です。

一方のステアリングホイールを回している時間はヘアピンの場合、切り始めの60°くらいまでで約0.5秒で、デグナーでは45°までに0.2秒くらい。

サーキットで最も転舵の速いところはシケインの場合が多いので、シケインを確認すると、転舵速度は308°/secで、45°回すためには0.15秒必要です。


ブレーキを離した後のスプリング反力を有効に使うにはスプリングが伸びる前に横Gを最大に立ち上げなければならないわけですが、スプリングが伸びる時間は転舵時間に対して短すぎてF1の場合、有効に使うのは困難なようです。

ということで、「ブレーキを離すと、すぐに荷重は抜けるのか?」という質問に対しては、「F1の場合、転舵時間に対しては、すぐに抜ける」というのが答えになろうかと思います。

さらに、クルマの速度変化を見ると、切り始めから最大舵角以降も徐々に速度が低下しており、転舵している間はずっと前後方向にタイヤのグリップが使われており、ブレーキをパっと離して、その直後に横Gを最大にするという走り方にはなっていません。

今回のデータからはブレーキを徐々に緩めて、減少した前後のグリップの分だけ、ステアリングを切って横方向のグリップを使っているようにしか見えないので、普通に摩擦円の縁に沿った走らせ方をしているというのが僕の見解です。

ちなみに今回はF1で確認しましたが、僕の知るかぎりF1とサーキットを走るF1以外のクルマの走らせ方に大きな違いは見られないので、恐らくサーキットを走るクルマの場合は、ブレーキをパっと離した瞬間に曲がるような走り方をするクルマはないと思います。

ところで、この速度変化を見ると、以前書いた最低速度をコーナの奥にした方が速いという走り方になっていることがわかります。

プロドライバーや速いドライバーはみんなこういう走り方なのですが、真似しようとしてもなかなかできないというのが僕の悩みでもあります。

もともとは「ブレーキを離すと、すぐに荷重は抜けるのか?」について調べる目的でF1のオンボード映像を分析してみましたが、今回初めてわかったことなどもあり、勉強になりました。

190603追記
昔のブログを読み返していたら同じようなことを書いていたので、参考にごらんください。→131004茂原走行会分析その3

今日の所感:クルマは急に曲がらない
ブログ一覧 | サーキット走行理論 | 日記
Posted at 2019/06/02 23:38:25

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

バイクばかりじゃなく自宅の修理も少 ...
エイジングさん

米価とスーパーカー
THE TALLさん

免許書き換え。
ベイサさん

試作と試着と撮影と
AXIS PARTSさん

締め切りが近くなりました。福島ドラ ...
のび~さん

GW後半戦のグルメ探訪&漆黒オフ😁
ねこじさん

この記事へのコメント

2019年6月3日 11:14
ブレーキを離すのと同じ速度で前荷重も抜けるんですね\(◎o◎)/

サスペンションの振動とタイヤの振動はきっとタイヤのほうが高いし
F1はカーボンブレーキやからブレーキを離すと途端に制動力がなくなるだろうし
ブレーキを離しながら残すのが出来んのかな…

U13のスクーターはワイヤー式ドラムブレーキなのですが、ブレーキを離すと(ワイヤーの動きが鈍いので)微妙にブレーキが残ってくれて運転しやすいです\(◎o◎)/
コメントへの返答
2019年6月4日 0:02
実際は同じ速度ではないけど、ほぼ同じと考えてもいいくらい同時に前荷重は抜けるようです。

今回の速度変化を見ると、徐々に減速度が落ちている(減速Gが低くなっている)ので、徐々にブレーキを緩めてます。

ワイヤー渋いのは危ないから油を挿しましょう。
2019年6月3日 12:36
Garage Kさんのところから来ました。
無茶苦茶マニアックな内容で凄いですね。
いきなり質問で済みません。
この場合スポーツカーの2Hzでは半減までに0.08秒くらいかかるけど、一方でF1と比べてステアリングのギアレシオが低いからタイヤが転舵するにはより時間がかかる。
結果スポーツカーもすぐに抜ける考えていいのでしょうか。
ハミルトンの10倍くらい速くステアリングを切れればまた違うのかもしれませんが。
コメントへの返答
2019年6月4日 0:17
はじめまして!
コメントありがとうございます。

今回は横Gのデータがなかったので、ステアリング角度で代用したのですが、
ドライバーは横Gの上り方に合わせてステアリングを切るので、本来は横Gがどのくらいの早さで変化するのかを見た方が正しいように思います。

そういう観点でスポーツカーのデータを見ると、シケインでは横Gが1Gまで上がるのにかかる時間は、0.35~0.5秒くらいありました。(Sタイヤのレースカーだと0.25秒くらい)

ステアリングギアレシオというよりも横G増加率(単位時間当たりの横G増加量)に対してスプリングの伸びる時間は短すぎるということになろうかと思います。
2019年6月4日 10:28
なるほど~。
丁寧なご解説ありがとうございます。
もう一つ済みません。
フと思ったんですが固有振動のところで、逆位相のピークになるところが一番荷重が抜けるポイントで荷重が1G以下になると考えていいんですかね?
それを知ったところで何ができるわけでも無いかもしれませんが、素人っぽい質問で済みません。
コメントへの返答
2019年6月5日 0:20
実際のところはどうかわかりませんが、理屈上はバネが伸びたときは荷重は1G状態よりも低くなると思います。

でも、そもそもブレーキを離すときはそんなに速く離すことはないはずなので、気にしなくてもよいと思います。
2019年6月9日 16:52
(脱線)ハンマリング試験で、固有振動数が低すぎる(5Hz未満とか)と、プリアンプ内蔵の加速度センサなどだとうまく測れず困ることが多いです。

「ブレーキを残す」が本当に下手なので、小さいコースのタイトコーナーが本当に苦手です。
コメントへの返答
2019年6月10日 0:08
振動のグラフって横軸が対数になってたりするから、測定前に予測してから測定しないと正しく測れないのかもしれませんね。

僕の感覚では意図的にブレーキを残さないといけないところはほとんどなくて、実際はタイヤの摩擦円の縁に沿って走るために、少しずつブレーキを緩めるという感覚で走った方がよいと思います。

プロフィール

サーキットで車を速く走らせるために必要なこととはなにか?を研究するのが趣味です。 日光、TC1000、茂原、を毎年走行してます。 2010年まではもてぎで開...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/5 >>

    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

愛車一覧

ホンダ S2000 ホンダ S2000
最新型のS2000が欲しくなったので買い替えました。
アウディ A3 アウディ A3
プレミアムコンパクトです。 コンパクトなのにプレミアム プレミアムなのにコンパクト マ ...
日産 180SX 日産 180SX
いまいち乗っていた記憶がないのですが、いい車でした。 だけど、いろいろやっていたらしい ...
日産 フェアレディZ 日産 フェアレディZ
バツグンのカッコよさを誇るZ31です。 電動ファンがいまいちだったせいか、ラジエータの冷 ...

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2024年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2021年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2017年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation