
写真は4月5日に行ってきたF1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025に展示されていたレッドブルRB16Bです。
僕は予選の日のみ行ってきました。
この日は角田選手初のレッドブルでの予選ということで、パブリックビューイングでの観戦は大いに盛り上がりました。
では、前回の続きです。
今のところの結論は
日本式:最低速度までブレーキで減速する走り方
欧州式:コーナの途中から最低速度までをエンジンブレーキのみで減速する走り方
ということになっていますが、オートスポーツに書かれていた欧州式では①ブレーキは直線で終わらせる、②コーナは一定速度という二つの特徴があります。
しかし、僕の考える欧州式ではコーナ中もブレーキで減速していて、途中からエンジブレーキで減速することになっているので、①②どちらにも合っていません。
ところで以前、僕がこの問題で悩んでいるときに、僕の知り合いで一番速い人に、どういうことなのか聞いてみたことがあります。
すると以下のような回答をもらいました。
「ブレーキを急に弱くする間に大きくハンドルを切るので、そこから先がその人にとってはコーナと考えている可能性がある」
つまり、実際にはクルマは曲がっていて、コーナでも減速しているが、「ブレーキを強く踏んでいて舵角が小さい間はコーナではなく、直線である。」という考え方です。
そんなことある??って最初は思いましたが、あらゆる可能性を排除しないのが最近の世の中の流行なので、この考え方を取り入れると、①の「ブレーキは直線で終わらせる」については「舵角が小さく、ブレーキを強く踏んでいる区間を直線とする」と置き換えることができます。
同様に②の「コーナは一定速度」についても、これは「ブレーキを非常に弱く踏んでいる区間はほぼ一定速度である」と考えれば説明ができます。
実際にコーナ(走行ラインが曲線)かどうか、一定速度かどうかではなくて、そのドライバーがどう考えているかで判断します。
これを速度変化グラフで表す下図のようになります。
走行ラインで表すとこのようになります。
桃色線がドライバーの考えるコーナです。
このような速度変化をしていれば、欧州式コーナリングだということにして、スーパーフォーミュラ野尻選手の富士スピードウェイ TGRコーナの走行データを見てみることにします。
※走行ラインは僕の推測で多少ズレている可能性があります。
野尻選手のTGRコーナの場合は②の区間の舵角が小さく、③の区間で短時間でブレーキを弱くして舵角が大きくなっているので、③区間の途中までが直線で、③区間の途中と④⑤区間をコーナということにすれば、ブレーキは直線で終わらせて、コーナ中は一定速度(実際はブレーキが弱いだけ)と言えるので、欧州式コーナリングに分類されると考えられます。
次に、エンジブレーキ区間が短い大湯選手のもてぎ東ヘアピンの走行データを見てみます。
大湯選手の走行データでは、エンジブレーキ区間が短いという特徴があるのですが、もうひとつ特徴があります。
それは、速度変化の折れ点(③と④の変化位置)がコーナ中央寄りにあるということです。
今まではエンジンブレーキ区間の長さの違いが欧州式と日本式の違いだと考えていましたが、エンジンブレーキ区間の長さの違いは、速度変化の折れ点の位置の違いによる結果であって、速度変化の折れ点の位置の方が大事なのではないかと気が付きました。
速度変化の折れ点がコーナ入口側に寄っていると、残りのコーナをブレーキが弱い状態で減速することになり、その分エンジンブレーキ区間も長くなるので、本質は速度変化の折れ点位置の方ではないかと思います。
またまた結論が変わったので、これまでの欧州式と日本式の違いに関する結論に出てきたキーワードを表にまとめてみました。
以前、日本式も欧州式も最低速度に差はないと書きましたが、コーナ中の最適速度からの差を全体的に小さくしようとすると、日本式では最適速度よりも最低速度を少し低くしないとコーナ中央寄りに速度変化の折れ点を設定できないので、恐らく日本式コーナリングでは最低速度が最適速度よりも少し低くなっていると思います。
さらに欧州式と日本式の速度変化を模式図で表すと下図のようになります。
欧州式の速度変化(桃色点線が日本式)
日本式の速度変化(青色点線が欧州式)
ブレーキ強さ変化
速度変化は、ぱっと見はどちらも同じで、どちらもコーナ中に減速してるし、コーナ中の速度変化に折れ点もあるし、最低速度の差も小さいので、片方だけ見てもすぐにはどちらがどちらか判断しにくいのが実態です。
しかし、コーナ中の速度変化の折れ点がコーナの入り口側に寄っているか、コーナ中央側に寄っているかを確認すると、どちらかを判断しやすくなります。
では、例題として欧州ドライバーのフェルスタッペン選手のハンガロリンク1コーナの走行データを見てみましょう。
見てわかるとおり、タッペン選手の走行データでは、速度変化の折れ点(③と④の変化位置)がコーナ中央寄りになっています。
したがって欧州人のタッペン選手は日本式コーナリングで走っているということになります。
ここで、さらによく見てみるとタッペン選手の場合速度変化の折れ点以降の④と⑤区間の速度変化がほぼエンジンブレーキの速度変化になっていることがわかります。
エンジブレーキ区間の長さだけで判断すると、このタッペン選手の走行データは欧州式になるのですが、速度変化の折れ点の位置で判断すると日本式となり、速度変化や舵角変化を見る限り野尻選手よりも大湯選手に近い走り方になっているので、エンジンブレーキ区間の長さではなく、速度変化の折れ点位置で判断する方が正しいように思いました。
ではなぜ大湯選手はエンジンブレーキ区間が短いのか?と疑問に思う人もいると思うので、大湯選手の走行データにRB15のエンジブレーキ相当速度変化を重ねてみます。
こうやって見ると、大湯選手は④区間をRB15のエンジンブレーキ相当の減速Gで減速しているということがわかります。
クルマもコーナも異なるので、実際のところはよくわらないのですが、恐らくどちらも求められる最適な速度変化は同じで、速度変化の折れ点以降の減速Gもほぼ同じ減速Gで減速したいけどF1の場合はエンジブレーキが強いので④区間がほぼエンジブレーキ相当の減速になり、スーパーフォーミュラの場合はエンジブレーキが弱いので、④の区間もブレーキで減速するという走り方になっているだけで、目指している走り方はほぼ同じであるというのが僕の推測です。
では最後にまとめです。
基本的には前述の一覧表や速度変化そのものが日本式と欧州式コーナリングの違いですが、要点を短くまとめると以下になります。
日本式:コーナ中の速度変化折れ点がコーナ中央寄りにある走り方
欧州式:コーナ中の速度変化折れ点がコーナ入口側にある走り方
という結論になりましたが、本当は日本式と欧州式の二つに分類することの意味はあまりないと思ってます。
本来の目的は「コーナ中の最適な速度変化に極力近づけること」なのであって、日本式とか欧州式というのはその方法論のひとつに過ぎないと思うのです。
どちらの方法でも結果的にコーナ中の最適な速度変化に近づけていないのであれば遅いし、近づいていれば速いので実際のクルマやタイヤの特性に合った方法を選ぶべきだと思います。
ということで、やっぱり「コーナ中の最適な速度変化とはなんぞや?」ということが一番大事だということを再認識したので、再び走行ラインの最適化について考えたいと思います。