• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

タツゥのブログ一覧

2012年09月16日 イイね!

ボルト締め付け回転角

今日はボルト締付け時の回転角度を計算しようと思いましたが、その前になぜ回転角度なのか?
ってまたまた思ったのでそこから説明します。

みんカラを見ているとハブボルトを折ってる人が結構多いんです。
原因を見てみると
1、締め忘れ
2、締め過ぎ
3、ちゃんと締めたのに折れた(原因不明、ボルト不良)

要はどれもちゃんと締めてないんです。
3の「ちゃんと締めた」という人の99%はちゃんと締めてないはずです。恐らく締めすぎ。
ちゃんと締めたという根拠は、トルクレンチで規定トルクで締めたから。というものです。
でも規定トルクで締めても潤滑状態が設定どおりでなければ正しい軸力にはなりません。
正しい軸力が出てなかったらちゃんと締めたことにはならないんです。

トルクレンチを使って締める人はボルトに気を使う人が多いので、ボルトにカジリ防止のグリスを塗ったりします。でも、どこのメーカの整備書にもグリス塗れなんて書いてません。
つまりメーカ設定の潤滑状態は無潤滑でトルク係数は0.3~0.4くらい。
これに対してボルトにグリスを塗ると0.2くらいになります。
そうすると場合によっては倍くらいの軸力で締まっちゃうわけです。つまり締めすぎです。
実際にボルトを折っている人は降伏締付け軸力以上の軸力で締めているはずです。

それとプリセット型のトルクレンチは狂いやすいです。
ず~っと昔に僕とガレージK氏の二人で会社にあるトルクレンチの確認作業というのをしました。
20本くらい確認しました。(もっとかも)
ほとんどまともなのはなかったです。
これに対してベンディングタイプは微塵も狂いはありませんでした。

さて、しつこいようですがボルトを締付ける目的は正しい軸力を得るためです。
本来は軸力を直接測りたいのですが、これは無理。
そこで締め付けトルクと軸力は比例するという関係を使って締付けるのがトルク法
ところが、潤滑状態が変わるとトルクと軸力の比例定数、すなわちトルク係数が変わってしまう。

もう一つ軸力に比例するものがあります。
それがボルト締付け回転角度です。
ボルトに軸力が発生すると、ボルトは伸びて、被締結物は縮みます。
ボルトが回転することによりピッチ分進む距離=ボルト伸び量+被締結物の縮み量
という関係があるのでボルトの回転角度を知ることで軸力を知ることができます。

しかし、メーカの設定軸力もよくわからないし、ボルトや被締結物の剛性もわからないので、ボルト回転角もわかりません。
そこで、 分解前に締まっていた角度と同じ角度まで締めるという方法をとります。
ただ、この方法は被締結物を交換してしまった場合には使えなくなってしまいます。
このときは、かなりめんどくさいのですが次の方法を使います。

1、被締結物交換前のボルト位置を印してボルトを緩める
2、被締結物を交換する前に、もう一度以下のトルクで締め付けを行い、それぞれの角度で印をつける
 ①規定トルクの20~40%のトルク
  ※大体このくらいのトルクで接触面同士がピタっと接触(着座)します。
   このときのトルクをスナッグ(着座)トルクと言います
 ②規定トルクの100%のトルク
  ※本来はこのときの角度は1の状態と同じであって欲しいのですが、差がある場合は角度の大きい方とします
3、①と②の角度差を記録する
4、被締結物を交換し、2の①のトルクで締付けてその角度で印をつける
5、3で記録した角度のところに印をつける
6、規定トルク100%で5の印を見ながら行き過ぎないように締付ける

これはトルク法と角度法を組み合わせた締め付け方法で、なんらかの理由によりトルク係数がメーカ設定状態と大きく変わってしまった場合でも回転角度を管理することで締めすぎを防ぐ狙いがあります。

実際にはこんな面倒なことをやる人はいないと思いますが、大事なことはスナッグトルクから規定トルクまでの回転角度をなんとなくでもいいから覚えておくことです。
そして、トルクレンチで締付けるときも、その回転角度と比較して回転し過ぎていないかどうか?を常に考えながら締め付けをします。
回転しすぎていたら何かがおかしいんです。
トルクレンチが壊れているか、すでにボルトが降伏しているか、ホイールとハブの間に何かが挟まっているか、とにかく何かおかしいので確認することが必要です。

以前、僕がブレーキロータを交換したとき、ロータがきちんと奥までハブに嵌っておらず、少し浮いている状態になっていました。
それに気がつかずにホイールを締めたところ、ナットが着座後もグルグル回るので確認したら、ロータがハブから浮いていました。

プリセット型トルクレンチは幸か不幸かラチェット機構がついているものがほとんどなので、回転角度を気にせずにガンガン回せます。 カチンッとなるまでガンガン回せます。
だから、潤滑状態が変わり回転角度が大きくなっても作業者はカチンッとなるまでボルトを回し、その結果ボルトは降伏点あるいは0.2%耐力を超えてどんどん伸びてそれが繰り返されることで、最終的に破断します。
そして作業者はこう言います
「トルクレンチを使ってきちんと規定トルクで締めたのにボルトが折れた」

今日のまとめ
ボルト締付けは締め付けトルクだけでなく、着座後からの回転角度(ボルトの伸び量)を意識して締付けることが大事

具体例がないとわかりずらいので、次回は計算の具体例です。
Posted at 2012/09/16 22:59:11 | コメント(3) | トラックバック(0) | いろいろ計算 | 日記
2012年09月13日 イイね!

ボルト再利用時の注意

誰も読んでいないかと思いきや、意外にイイねがたくさんついて嬉しいです。

まずは軸力ボルトの説明から
軸力を実測すると前回書きましたが、軸力の実測は普通できません。
そこで特殊ボルトを使って測定します。これを軸力ボルトとか言います。
どの辺がどう特殊なのかはこちらを参照ください。(東京測器研究所のHPより)
http://www.tml.jp/product/strain_gauge/catalog_pdf/bolt.pdf

でも普通は、こんなボルトいちいち使ってられないよ!というのが実情です。
そこで自動車メーカの人が事前に軸力ボルトで測定したときの潤滑状態とそのときの締め付けトルクがサービスマニュアルに書かれているので、そのトルクで締め付ければ、大体設定軸力の範囲で締め付けできます。(と信じるしかありません)

ただ、フレームボルトの様に新品時にワックスが塗ってあるボルトを再利用する場合は、この限りではありません。
僕も長年メンテやってますが、ボルトにワックス塗ったことないし、塗ってる人も見たことありません。
でも、いちいち新品ボルトなんてアホ臭くて買ってられない。
しかしこれではメーカの設定した軸力が得られない。
ではどうすればいいか?

当初締付けてあったときと同じ角度まで締付ける。

もちろん、ボルトは同じところに使わなければなりません。
さらにワックスとは言わないまでも潤滑材を塗った方がいいです。(降伏締付け軸力を上げるため)
潤滑材は機械部品に使うオイルならなんでも大丈夫。
サラダオイルは事例を見たことがないのでわかりません。

ここで注意することがあります。
オイルはたくさん塗りすぎてはいけません!!
たくさん塗りすぎると、接合面のスキマに入り込んでしまいます。
そうすると接合面の摩擦係数が下がってしまいます。
せっかく軸力を上げても、接合面の摩擦係数が下がってしまっては摩擦力は上がりません。
S2000のサービスマニュアルを見る機会があったらフライホイール締結のところを見てください。
そこには”ボルトの座面にオイルを塗布する”と書いてあります。
これは恐らくねじ面にオイル塗布して接合面にオイルが入り込むことを嫌ったためと推定されます。
座面にオイルを塗布するのは、締め付けトルクに対する軸力が安定するからです。

実際に締付けるときは、トルクレンチを使って規定トルクで締付けたあと、同じ角度まで締まっているかどうかを確認し、回転角度が少ない場合は元の角度まで回すという手順で締付けた方が安全です。
オイルを塗布すると普通はトルク係数が0.2前後になるので元々ワックスが塗ってあったボルトよりも少し回転角度が少なくなるだけなので、この時点で回転角度が大幅に少ない場合は、なにかがおかしいので一度外して点検します。

では次回は回転角度の計算です。
Posted at 2012/09/13 23:48:32 | コメント(0) | トラックバック(0) | いろいろ計算 | 日記
2012年09月13日 イイね!

軸力計算

軸力の大事さは十分理解していただいたと思うので、今日は軸力の計算をしてみます。

計算する軸力は次の二つです。
1、初期締付け軸力(以下締付け軸力)
2、降伏締付け軸力

1の締付け軸力は、ボルトをある締め付けトルクで締め付けたときに発生する軸力の大きさです。
2の降伏締付け軸力は、ボルトを締め付けたときにボルトに発生する応力(ググってください)がボルト材料の降伏点(ググってください)以上になるような軸力の大きさです。

摩擦接合、引張り接合のどちらも、ボルトの座面が陥没しない限り、より大きな軸力で締め付けた方がより強い接合ができるので、普通は2の降伏締付け軸力を超えないように極力大きな軸力で締め付けできるような締め付けトルクの設定をします。

では早速、1の締付け軸力を計算してみましょう。
計算式には難しいのと簡単なのがあるのですが、実用的な簡単な計算式を使います。
(詳しくは、先日紹介した本か東日のホームページ、JIS B1083などを参照ください。)
ボルトの発生軸力をF(N)、締め付けトルクをT(Nm)、ボルト呼び径をd(m)とすれば、

T=F×d×K (Nm)

今回は締結トルクから軸力を求めたいので

F=T/d/K

ここで、Kはトルク係数と言いねじ部や座面の摩擦係数と座面の有効摩擦半径で決まります。
また摩擦係数は潤滑状態によって変化します。
実際には軸力を実測しトルク係数の値を求めるのですが、まずは一般的な次の値で計算します。
各潤滑状態におけるトルク係数Kの値

1)無潤滑:0.3~0.4
2)オイル;0.15~0.25
3)ワックス:0.1~0.2

これらはあくまでも一般的な値なので、実測することが必要です。

具体的事例がないとわかりずらいので、S2000のリアサブフレームボルトで計算してみます。
ボルトサイズはM14でピッチは1.5です。
サービスマニュアルの指定トルクは、103Nm
従って、d=0.014、T=103
潤滑状態はよくわからないので、それぞれの場合で計算してみます。
K=0.4のとき
F=103/0.014/0.4=18393N → 18.4kN(1876kgf)
K=0.1のとき
F=103/0.014/0.1=73571N → 73.6kN(7503kgf)

なんと、潤滑状態の違いで軸力は4倍の差が発生してしまいました。
つまり、軸力の狙い値は潤滑状態の狙い値がわからないとまったく見当がつかないというとになります。

とりあえず締付け軸力は置いておいて、次は降伏締付け軸力を算出します。
降伏締め付け軸力は次の式で計算します。(JIS B1083参照)
降伏締め付け軸力をFyとすると

Fy=σy・As/(1+3{3/dAS×(P/2/π+0.577×μth×d2)}^2)

ここで、σyはボルト材の降伏応力(Pa)、Asはねじ部有効断面積(m2)、dASはねじ部有効断面積相当径(m)、Pはねじピッチ(m)、μthはねじ部摩擦係数、d2はねじ有効径(m)です。

この式の意味するところは、この軸力以上の軸力になると、ボルト全体が降伏するということです。
ここで大事なのは、この降伏締付け軸力の軸力以下でも、ボルトの表面はすでに降伏しているというところです。

降伏締付け軸力の計算にはねじ部摩擦係数が必要なのですが、これもトルク係数と同様に潤滑状態がわからないと決められないので、次の一般的な値で計算します。
ねじ部摩擦係数μthの値
1)無潤滑:0.21~0.28
2)オイル;0.1~0.18
3)ワックス:0.06~0.14

さらにボルト材の降伏応力σyもわからないと計算ができません。
サブフレームボルトをじ~っと見てみるとボルト頭に”10”と刻印してあります。
一般的には、これはボルト強度区分が10.9級であることを示します。
ボルト強度区分はJIS B1051で規定されていて、10は引張り強さが1000MPa以上で1200MPa以下という意味で、10.9の9は降伏点が引張り強度の90%以上であることを示しています。
つまり、S2000のフレームボルトは10.9級で降伏応力σyは、1000×0.9=900MPa以上であると推定されます。

降伏締付け軸力は計算式が複雑で計算がカッタるいので、別途エクセルで計算しました。
μth=0.28のとき (トルク係数は0.4相当)
Fy=78.6kN
μth=0.06のとき (トルク係数は0.1相当)
Fy=105.6kN

降伏締め付け軸力も摩擦係数の影響を受けますが、軸力ほど大きな差は発生しません。

さらにおまけでボルト材が8.8級の降伏締付け軸力も算出してみます。
μth=0.28のとき (トルク係数は0.4相当)
Fy=55.9kN
μth=0.06のとき (トルク係数は0.1相当)
Fy=75.1kN

ここまでで計算した締付け軸力と降伏締付け軸力をグラフにまとめると下図のようになります。


これを見ると、もし潤滑状態が無潤滑だとしたら、締付け軸力に対して10.9級の降伏締付け軸力が大きすぎるということに気がつきます。安全余裕を考えても8.8級ボルトで十分と思われます。
ということは、このボルトはオイルを塗布するかワックスを塗布することを前提にしていると考えられますが、サービスマニュアルには"分解時交換”としか書いてありません。
例えばエンジンのヘッドボルトなどには、”組み付け時オイル塗布のこと”と書いてあります。
オイル塗布を指示しておらず、かつ無潤滑だと10.9級ボルトを使う理由がないので、必然的にワックス塗布状態で軸力設定していると推測できます。
さらに、分解時に交換を指定している理由も新品状態ではワックスが塗ってあり1度分解するとワックスが取れてしまうのでワックス塗布済みの新品に交換するためだと考えれば納得できます。

そこで、ホンダのパーツセンターから新品購入したフレームボルトをじ~っと見てみました。
すると、ねじ部にロウのようなものが塗ってあることが確認できました。
ボルト座面側は、どうも塗っていないようでした。
本当に塗布してあるかどうかは、実際に締付けてみれば締め付けトルクと発生軸力の関係で確認することができるので、近日中にテストしてみたいと思います。

今回わざわざ軸力計算をした理由は、
1、設定軸力を大よそ知ることができる
2、設定軸力を発生させるために必要な潤滑状態を知ることができる
この二つです。

ここで話はリジ○ラに飛びますが、サブフレームがズレるという事象はレースをするときっと起きるんだろうと思います。
しかし、その原因は分解時にボルトを交換せずにそのまま使い、ワックスも何も塗布せずに締付けるので軸力が設定値よりも大幅(半分以下)に小さくなり、接合面の摩擦力が低下したためと推定されます。
にも関わらずその対策としてカラーを挟むとは・・・。
新車から一度も分解したことないにも関わらずサブフレームがズレる人もいると思うのですが、そんなときでもエイって増し締めして軸力アップすればズレなくなると思います。

今日のまとめ
設定軸力を発生させるためには、設定潤滑状態を知ることが大事。

軸力ネタは好評なので、次回も続きます。
Posted at 2012/09/13 00:21:42 | コメント(9) | トラックバック(0) | いろいろ計算 | 日記
2012年09月06日 イイね!

ボルトは軸力が大事

今日は軸力計算しようと思いましたが、まず軸力の重要さを理解してもらわなければならないので、今日は軸力について語ることにしました。

軸力という言葉はあまり聞き慣れない言葉と思いますが、ボルト締結において最も重要な言葉です。
軸力さえ知っていれば、あとはどうでもいいくらい重要です。

軸力の定義を調べてみると、JIS B1186にはこう書いてあります。
「ボルト、ナットで品物を締め付けて使用するとき、ボルトの軸方向に作用する引張力」

ボルトは締め付けると微妙に伸びます。
伸びた状態を維持するためには、何かがず~っと引張り続けていなければなりません。
何が引っ張っているかと言うと、ナット(めねじ)とボルトの頭に挟まれている被締結物です。
逆に被締結物はボルトから圧縮の力を受けて微妙に縮んでいます。
ボルトの引張力=被締結物の圧縮力という関係になるので、被締結物はボルトの引張力、つまりボルトの軸力によって押さえつけられています。

ボルトの役割は、二つ以上のものをくっつける(接合する)ことにあるわけですが、そこで必要になるのがこの軸力です。被締結物がくっついている(接合している)のは、ボルトが両側から押さえつけているからです。
つまり、そのボルトが発生可能な軸力の大きさが、被締結物をくっつける能力の大きさを決めることになります。

わかりにくい例で言うと
エンジンは出力を発生することが目的。
なので、排気量とかバルブ駆動方式とかは出力を得るための手段であって、それ自体が目的なわけではありません。大事なのは出力です。
同様にボルトは軸力を発生することが目的であって、ボルトの太さとか材料は軸力を得るための手段であり、大事なのは軸力です。。
どんなに強い材料を使っても、発生している軸力が低ければ、存在価値がありません。
ということで、「ボルトは軸力が大事」と3回唱えてから計算に移りましょう。

今日のまとめ
 ボルトは軸力が大事、ボルトは軸力が大事、ボルトは軸力が大事

次回は軸力計算です。
Posted at 2012/09/06 23:52:18 | コメント(6) | トラックバック(0) | いろいろ計算 | 日記
2012年09月05日 イイね!

高力ボルト摩擦接合

9月になり、だんだん夜は涼しくなってきました。
涼しくなると、車の整備をしたくなります。
車の整備と言えば必ずボルト締結をします。
ところが、ボルトの締結理論は一般的には正しく理解されていないように思えてなりません。
そこで、ネタもなくなってきたのでボルトについて書くことにしました。
今日は第一回です。

まず、お題の高力ボルト摩擦接合とはなんぞや?という人が多いと思います。
高力ボルト摩擦接合とは、
高回転でボルト回しながら強い力で被締結物にボルトを押し付けることにより、その摩擦熱で被締結物を接合する手法
ではありません。
本当の意味はググってもらうとして、簡単に説明すると
高力ボルトを強い軸力で締め付けて、被締結物の接合面に生じる摩擦力で接合面にすべりが生じないように接合する手法
のことを言います。
全然わからないと思うのですが、これは建築業界の用語で、ボルト10本くらいで鉄骨同士を締結している手法のことです。
橋とか階段とか鉄骨でできたものに多用されている一般的な接合手法なので、そこら中で見ることができます。とにかくたくさんのボルトとナットで鉄骨が締結されていたら、それは間違いなく高力ボルト摩擦接合です。

次に高力ボルトとはなんぞや?って思うと思うですが、
高力ボルトは普通のボルトよりも引張強さの高い材料で作ったボルトのことです。
JIS B0101には、「摩擦接合用高力六角ボルト」の一般名が高力ボルトであると書かれています。
材料の機械的性質はJIS B1186に記載されています。

その次は、なんで高力ボルト使うのか?って思うと思うのですが、
それは、アモントン・クーロンの摩擦の法則(←知らない人はググってください)により、高い摩擦で接合面をくっつけるためには、より強い力で接合面を押し付けることが必要で、必要な押し付け力をより細い(軽い)ボルトで発生させるためには、引張り強度の高いボルト使うことが必要になるからです。

さらにその次は、なんで突然高力ボルト摩擦接合の話題なんだ?って思うと思うのですが、
自動車部品に限らず、世の中のボルト締結部品には、主に摩擦接合と引張り接合しか存在しないにもかかわらず、一般的には知られていないようなので、身近にあるボルト締結物の話題から入ってみることにしました。(ちなみに支圧接合という方法もありますが、一般的でないので割愛します)
主にボルトの軸直角方向に接合することが目的な場合は摩擦接合と言い、主にボルトの軸方向に接合することが目的な場合を引張り接合と言います。
実際には、どちらかだけに使われることはほとんどないので、主に接合されている方向で考えます。
例えば、エンジンのコンロッドは、ボルトの軸方向にコンロッドのロッド部分とキャップ部分が開かないように締結しているので、引張り接合です。
ただし、接合面が摩擦力ですべらないようにしないと、接合面にフレッティング摩耗(←ググってください)が発生してしまうので、同時に摩擦接合の役割も果たしています。
摩擦接合の例としては、サブフレーム(サスペンションメンバー)とボディの接合部があります。
この部分は、高力ボルトを使ってサブフレームとボディがボルトの軸直角方向にすべらないように接合しているので、摩擦接合です。
もちろんボルトがないとサブフレームは下に落っこちてしまうので、引張り接合としての役割も重要な役割です。ただ、下に落っこちないようにするだけなら、高力ボルトを使う必要はないはずで、摩擦接合に必要な軸力(締め付けて引っ張られたボルトが縮もうとする力)を確保するために高力ボルトを使っているという観点で、この部分は摩擦接合として考えます。

今日のまとめ
ボルト締結による接合手法には、摩擦接合と引張り接合の二つがある。

次回は、ボルト軸力計算です。

なお、偉そうに書いているものの、僕はボルトの専門家ではないので、詳しく知りたい方は、
ねじ締結の原理と設計 山本 晃著 株式会社 養賢堂発行 を読まれることを強く推奨します。
Posted at 2012/09/05 22:53:33 | コメント(0) | トラックバック(0) | いろいろ計算 | 日記

プロフィール

サーキットで車を速く走らせるために必要なこととはなにか?を研究するのが趣味です。 日光、TC1000、茂原、を毎年走行してます。 2010年まではもてぎで開...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/8 >>

     12
3456789
1011121314 15 16
17181920212223
24252627282930
31      

愛車一覧

ホンダ S2000 ホンダ S2000
最新型のS2000が欲しくなったので買い替えました。
アウディ A3 アウディ A3
プレミアムコンパクトです。 コンパクトなのにプレミアム プレミアムなのにコンパクト マ ...
日産 180SX 日産 180SX
いまいち乗っていた記憶がないのですが、いい車でした。 だけど、いろいろやっていたらしい ...
日産 フェアレディZ 日産 フェアレディZ
バツグンのカッコよさを誇るZ31です。 電動ファンがいまいちだったせいか、ラジエータの冷 ...

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2024年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2021年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2017年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation