今日はOpenF1で入手したテレメトリーデータを使って、スペインGPの角田選手とフェルスタッペン選手の予選の比較をしたいと思います。
スペインGP予選では角田選手がQ1敗退となってしまったため走行条件が同じQ1の走行データ比較を行います。
まずは、セクターとラップタイムの差です。
角田選手:1分13秒385 (5周目)
フェルスタッペン選手:1分12秒789 (2周目)
各セクターで約0.2秒ずつ、1周では0.587秒差です。
次に1周の比較です。
カタロニアサーキットのコース図、コーナ番号、セクター位置
※コース図は
ハンガロリンクと同様にGogle Earthで作成しました。

※セクター位置は時間とGPS位置から求めているので実際とは少しズレがあります。
1周全体を見てみると、250km/h以上の高速域での速度差が目立ちます。
また、レース後のニュースでも
”「これまでとはまったく異なることを試した。予選で大きなリアウイングを使ってパフォーマンスを出せるかどうか見たかった。我々のミスだった」とピエール・ワシェは述べた。”(
F1-Gate.com)
と書かれており、大きなウイングが原因で走行抵抗が大きく、高速域の加速が悪かったんだろうな と考えた人が多かったと思います。
しかし、この走行データを見ると走行抵抗差による加速の差が原因には見えません。
まず、見てわかるとおり9コーナと14コーナではタッペン選手の方が最低速度が高く、コーナ出口速度も高いためその後の直線速度の差になっていることがわかります。
そして、9コーナと14コーナの最低速度差の原因はスロットルの戻し量の差が理由であることもわかります。
ここでコーナ出口速度差を考慮して、速度が同じになる位置で重ね合わせることにより走行抵抗差が原因の速度差がどのくらいあるのか確認してみます。
9コーナ~10コーナ
3250m付近から少し差が付きますが、わずかな差しかありません。
14コーナ~1コーナ(コントロールラインから1コーナをつなぎました)
タッペン選手はなぜかコントロールラインからの加速がよく、ここで大きく差がついています。
しかし、最高速度(エンジン出力と走行抵抗が釣り合う速度)はほとんど差がない(1km/h前後)ため、走行抵抗としてはほぼ同じではないのか?というのが僕の推測です。
コントロールラインからの加速差の原因は全くわからないので、知ってる方がいらっしゃいましたらぜひ教えてください。(バッテリーの使い方とかではないですよね??)
最後に1~3コーナを見てみます。
このラップでは1コーナは角田選手の方が最低速度が高いのですが、2コーナ出口での全開タイミングが遅く、タッペン選手に逆転されています。
その後3コーナでは4コーナのブレーキ位置まで、2コーナ出口でついた速度差を保っており3コーナ全域で速度差があることがわかります。
ところで、F1に限らず最高出力付近をずっと使って走行する場合、最高出力も走行抵抗も同じ車輛ではコーナ出口で速度差があっても、速度が上がるにつれて速度差が小さくなることが普通です。
ところが、この走行データでは速度差があまり小さくなっておらず4コーナブレーキ開始までずっと速度差があるためここも1030m付近の速度が同じになるように重ねて確認しました。
1030m~1450m付近までほぼ速度変化が一致しました。
1450m以降は少しタッペン選手の方が少し速度高いのですが、ここもわずかな差しかありません。
ここで、じゃあ1030m付近の速度変化は何が原因なの?ということになるので考えてみます。
この1030m付近の角田選手の速度変化をみると、少しカクカクしていてわかりずらいのですが、タッペン選手の速度変化と比較すると、角田選手は1030m付近で一瞬スロットルをオフにしたかのように加速が悪いことがわかります。
しかし、スロットルのデータを見ると角田選手も全開です。
ブレーキも踏んでいません。
ドライバーが操作できるものと言えば①スロットル②ブレーキ③ステアリング④シフトの4つしかないので④(シフトアップタイミングでのエンジン回転数変化)を確認しました。
差はあるのですが、このデータだと角田選手の方がシフトアップ回転数が高いことくらいしかわからないのと、昨今のF1のシフトアップ時間は1972年のモナコGPのように長くはないので、シフトアップ時間が0.2秒以上あるように見えるこのデータから何かを言おうとするのは無理がある気がするので③のステアリングを確認します。
がしかし、残念ながらOpneF1のテレメトリデータにステアリングホイール角度は含まれていません。
かつ今年のスペインGPはタッペン選手がポールポジションではなく、オンボード映像もないので、
2023年のフェルスタッペン選手のポールポジションオンボード映像を確認しました。
その結果、1030m付近というのは2コーナから3コーナへ向けて左から右へハンドルを切り返す位置になっていることがわかりました。

※オンボード映像を見ると、2コーナの出口はもっとコースアウト寄りにいます。
結局、それ以上のことはわかりませんが、F1は舵角による加速の低下率が大きそうなので、恐らく角田選手の方が舵角が大きいとかの理由で加速が悪くなったのだろうと思いますが、いずれにせよ大きなウイングが原因ではないはずです。
本日の確認結果としては、大きなウイングやフロアの違いが原因と考えられるような高速域での加速、最高速度の差はほとんんどないということがわかりました。
次回はブレーキ、コーナを確認します。