今日は人の走りにケチをつけよう第二回目です。
今回のターゲットはじょに~♪さんです。
じょに~♪さんには、
昨年もターゲットになっていただいたので、今回は2回目の登場であります。
昨年のタイムは43”064だったようです。
今年のタイムは42”641ということで、0,4秒のタイムアップでした。
本来なら、昨年のとの比較を行うことで、どこが改善されたのかを見るべきなのですが、これでは良くなったところがわかるだけで、ケチのつけどころを見つけにくくなってしまいます。
そこで、タイム差が1.6秒ある41”0の青黒FD氏と比較することで、たくさんケチをつけられるようにします。
まずは全体比較をごらんください。
赤:青黒FD氏、青;じょに~♪さん
次にタイム差を整理します。
1、2コーナ: 0.3秒
3コーナ: 0.1秒
5、6コーナ: 0秒
6~8コーナ間の直線: 0.7秒
8~10コーナ: 0.1秒
10~1コーナ間の直線:0.4秒
─────────────
合計: 1.6秒
すなわち、直線区間が遅いということがわかります。
一般的に直線が遅い=エンジンパワーの差ということになりますが、グラフを見てわかるように速度カーブに違いはありません。
原因は以下の3つです。
1、コーナ立ち上がりの速度が低い
2、アクセル全開地点が遅い
3、シフトアップが遅い
1と2の根本原因はどちらも同じなので、基本的には2つの差があります。
3のシフトアップについては、ただただ日々の訓練あるのみなので、今回は割愛します。
今日は5,6コーナについて見てみましょう。
(スタートラインで位置を合わせているので、距離が同じ=コース上の位置が同じではありません)
まずは速度カーブの見方です。
これは、エクセル等で直接比較する方法、シミュレーションによる方法、熟練の技による方法の3通りあります。
今回紹介するのは、熟練の技による方法です。
僕の場合、ロガーを使い始めてすでに10年以上経つので、経験の少ない人にできるかどうかはわかりません。
1、エクセルでグラフを作成する。
または、パワーポイントにドリフトボックスのグラフをプリングスクリーンでコピペする。
2、走行ラインの直線部分の速度カーブに沿って、”オートシェイプ”の”曲線”機能で曲線を描く。
3、速度の低い部分を
なんとなく想像しながら延長する。
4、その曲線を平行移動して比較したいデータの上に重ねる。
これは難しい。
とくに3の部分には最低3年程度の経験が必要と思います。
その結果できた曲線が、グラフの中にある点線の曲線です。
今回は、じょに~♪さんの660~700mの部分の速度カーブを使って作成した曲線をそれぞれの加速部分に重ねています。
これを見ると、途中からほぼ重なっていることがわかると思います。
重なっているということは、同じ加速をしているというこです。
逆に重ならないところ(低速部分)はなぜ重ならないのか?と言うと、それはアクセル全開ではないからです。
この技を使うことによって、加速部分のエンジンパワー差によるところと、アクセル開度の差によるところを切り分けることが可能になります。
走行ラインも見てみます。
赤:青黒FD氏、青;じょに~♪さん
それでは比較に入りましょう。
まずは最低速度発生地点です。
走行データを比較する場合、これ以上大事なことはないくらい大事な項目です。
最低速度発生地点の違い≒走行ラインの違い と言ってもいいくらいです。
なので、最低速度発生地点を知ることで、その人がどういう走り方をしているのかが大よそわかってしまいます。
コース図の最低速度発生地点を見てもらうと、じょに~♪さんは、コーナの中央よりも手前で最低速度になっています。(図中のa地点)
これに対し、青黒FD氏はコーナの中央部分で最低速度になり、図中のb地点まで最低速度を維持しています。
次に全開加速地点です。
じょに~♪さんは、図中のd地点で加速度がやや上がりますが、全開とは言い難い状態です。
そして図中のe地点でようやく全開になっています。
図中のdの地点はほぼ直線の始まりのところなので、直線区間になって(ハンドルが真直ぐになって)初めてアクセルを全開にできています。
しかし、青黒FD氏はb地点で最低速度になったあと、c地点ですぐにアクセル全開になっています。
なぜ全開にできるかと言うと、c地点を過ぎて5mくらいで横Gが減少しているので、その分加速にタイヤのグリップを使えるからです。
それに対し、じょに~♪さんはe地点の直前まで横Gが高い状態が続いているので、加速にタイヤのグリップを使うことができないのです。
この差は何が原因で発生するのでしょうか?
それは
1、走行ラインの狙い
2、最低速度になる地点の狙い
3、アクセルを全開にする地点の狙い
すなわち、走りに対する狙いの差が結果的に0.7秒もの大きな差になって現れてきているのです。
もちろん、ダンパーや車輌セッティングによる差も無視できないのですが、今回の場合、走行ラインや速度の変化を見る限り、ほとんどが走り方の差によるものだと考えられます。
ではどうすればよいか?
そこでまずは、現状の最低速度の比較をします。
じょに~♪さん;52km/h
青黒FD氏: 51km/h
最低速度はほぼ同じです。
でもコーナ立ち上がりの差が激しい。
最終的な目標としては、コーナの入り口~立ち上がり後の直線区間まで全域で速く走ることなのですが、
まずは最低速度を捨てます。
”いいから遅く走れ”です。
サーキットに速く走りに来ているのに、”遅く走れ”と言われると不思議な顔をする人がいるのですが、とにかく遅く走ってもらいます。
その代わり、最低速度になる地点とアクセルを全開にする地点を指定します。
二つが満たせれば、そのときの最低速度については言及しません。
多くの場合、じょに~♪さんのように最低速度にすべきところよりもかなり手前で最低速度になってしまうので、そこから加速しようとします。
サーキットには速く走りに来ているのですから、これは当然です。
でもダメです。
手前で減速しすぎていようが、ラップタイムが落ちようが、最低速度になって欲しい地点で最低速度になるまで許しません。
自分の狙った走り(走行ライン、加減速)のできない人は、それ以上速く走れることなんてできないのです。
まずは、自分の狙った走りをある程度できるようにして、そこから徐々にラップタイムを上げて行くのが、効率のいい練習方法だと思います。
ついでに5.6コーナのGサークルも見てみましょう。
(グラフ中に数字の単位はm/sec2なので、1m/sec2≒0.1Gと読んでください)
桃:青黒FD氏、青:じょに~♪さん
減速から横G最大のところにかけては、差はあまりありません。
むしろ減速Gはじょに~♪さんの方が高いくらいです。
横Gの最大値もほぼ同じ。
しかし、加速部分に差があります。特に横Gが高い領域の差が顕著です。
青黒FD氏は無謀にも、横Gがほぼ最大値の状態で、ほぼアクセル全開にしていると思われ、0.4G以上の加速をしてGサークルからはみ出しています。(実際は縁石に乗り上げた際に横Gが高くなったと思われます)
これに対し、じょに~♪さんの場合は、横G最大値付近では、加速Gは最大で0.24G程度までしか出せていません。
この原因は二つ考えられます。
1、運転者の技量
2、走行ライン
今回の場合はどちらともだと思います。
加速側でGサークルの縁付近で走るということは、テールスライドするということを意味しているので、カウンターステアを当てる自信のない人は、そもそも加速しようとしません。
走行ラインも重要です。
旋回半径のわかるグラフを見てみましょう。
(6コーナ部分でコース上の同じ位置になるようにスタート地点をズラしています)
青黒FD氏はアクゼル全開地点のすぐあとに横Gを減少させているわけですが、そもそもそうなるように、旋回半径を大きくしています。
しかし、じょに~♪さんは、コーナが終わるまでず~っと半径が小さいまま走っており、e地点でようやく半径が大きくなっています。
上の走行ラインでの半径比較
青黒FD氏 じょに~♪さん
c、d地点 26m 28m
e地点 65m 40m
青黒FD氏の走行ラインの場合、c地点を過ぎてからはハンドルを大きく戻す方向に動かしているので、カウンタステアが当てやすいです。
じょに~♪さんは、d地点からe地点までハンドルをほとんど戻す方向に動かしていないので、カウンタを当てにくく、かつe地点まで横Gがかかったままなので、ライン取りに自由度がなく、思い切った走りもできません。
ということで、じょに~♪さんは走りの狙いに問題があると考えられます。
クルマ的な差があるかどうかを確認するために、タイム差がほとんどない3コーナのGサークルもついでに見てみましょう。
減速~最大横G~加速の全ての区間でほぼ同じようにGサークルの縁に沿って走れています。
もちろん改善の余地はあると思うのですが、5,6コーナのような差は見当たりません。
つまり、本来であればクルマ的にも、ドライバーの運転技能的にも、同じように走れるはずなのです。
とても長くなったので最後のまとめ
1、走りの狙いを定めましょう。
走りの狙いとは、①走行ライン ②最低速度地点 ③アクセル全開地点 のことです。
2、コーナ立ち上がりの加速区間でカウンタステアを当てられるようなイメージトレーニングをしましょう。
→ハンドル持って歩きながら練習します。
1,2コーナは、また別の機会に説明したいと思います。