先週は、大阪出張行ったり、テスト現場に張り付きでいたり、会議と打ち合わせに出席しまくったりでなんだかよくわからないうちに終わってしまいました。
さて、そんなわけで前回の続きです。
前回、走行ラインで大事なことは、最小旋回半径の大きさと位置であると書きましたが、前回は半径の大きさについて見てみました。
今日は、位置について見てみます。
今回も前回同様にTC1000の1~2コーナをS2000で走ったときのシミュレーションをします。
最小旋回半径は僕の推奨値である47mとします。
位置は、前回の位置とその前後で計算します。
まずは走行ラインです。
赤:前回の走行ライン、青:赤より最小半径を15m奥(2コーナ寄り)、黒:赤より最小半径を20m手前
図中の□のところが最小旋回半径の位置を示しています。
速度変化
最低速度の位置の差=最小半径の位置の差です。
タイム差は赤と青の差を表していて、下に行くほど青の方がタイムがよくなります。
ラップタイム(走行距離分の補正も入っています。)
最高速度
結果を見ていただいてわかるように、今回計算した範囲では最小旋回半径の位置を奥にすればするほどラップタイムもよく、かつ3コーナ手前の最高速度も高いことがわかります。
ちなみに僕の走行ラインは、黒の走行ラインが最も近いです。
シミュレーションとの比較を見てみます。
赤:僕の実測 、黒:シミュレーション(半径47m)

赤:僕の実測 、黒:シミュレーション(半径47m)
走行ラインも速度変化もおおよそ合っていることがわかると思います。
シミュレーションでは走行ラインを元に速度を計算しているので、走行ラインが同じなら、速度変化も同じになります。
実測の結果も同様に、走行ラインが決まれば、速度変化もおおよそ決まります。
つまり、僕の速度変化が現在の状態になっている原因は、ほとんどが走行ラインが原因ということです。
走行ラインは僕自身が決めていますから、僕自身が最適でない走行ラインを選び、その分遅いタイムで走っているということになります。
そこで、普通はこう思うわけです。
「なんで、シミュレーションで最もタイムの良い、青のラインで走らないの?」
ここが最大の悩みどころなのですが、自分が思ったように走れないのです。
もちろん走行ラインを合わせるだけなら青のラインで走ることは可能です。
しかし、青の走行ラインで走ろうとすると、速度が落ちすぎてしまいます。
なぜ速度が落ちすぎるかと言うと、最低速度になる手前付近でテールスライドしまうからです。
テールスライドする原因は横Gが高く、かつ前荷重になっているからだと考えられるので、前荷重にならないようにします。
前荷重にならないようにする=減速しないなので、速度が落ちません。
速度が落ちないので、同じ旋回半径で曲がると横Gが上がります。
横Gが上がると、前荷重でなくても前後両輪が滑ります。
そこで、旋回半径を大きくしなkればならないのですが、少し大きくしただけではやっぱり滑ってしまうので、曲がり始めの状態の速度を落とします。
すると全体的に速度が落ちます。
結果全体的に遅くなります。
ごちゃごちゃ書きましたが、青の走行ラインで走ろうとすると、恐らく摩擦円の縁を使って走れないので、結果としてタイムが上がるどころか下がってしまうのが現状です。
この原因がクルマにあるのか、運転に問題があるのかわからないのですが、感覚的には運転に問題があるように思っています。
ここで、話を強引にドライビングスタイルに戻します。
黒の走行ライン、すなわち最小旋回半径の位置が手前側にあるような走行ラインを走った場合、最低速度になるところまでの減速Gが比較的高めです。(速度変化が大きい)
これに対し、青の走行ラインは最低速度になるところまでの減速Gが比較的低めです。(速度変化が小さい)
これを無理やり言い換えると
最小旋回半径位置が手前の走行ライン:ブレーキを残す走り方
最小旋回半径位置が奥側の走行ライン:ブレーキをあまり残さない走り方
と言えるように思います。
何が言いたいかと言うと、日本式とか欧州式というのは、もしかして最小旋回半径位置の違いのことを言いたいのではないか?という気がするわけです。
前回までは、コーナ中の最低速度=最小旋回半径の大きさの違いがドライビングスタイルの違いであるという観点で話を進めてきましたが、さらに最小旋回半径の位置もドライビングスタイルの違いとして着目すべき項目のような気がします。
ところで、僕がサーキット走行を始めたばかりのころ、サーキット走行理論に悩んでいるときに読んだ雑誌の記事で今でも心がけていることがあります。
それは、WRCドライバーのマルク・アレン選手の言葉で、マルク・アレン選手曰く
「アクセルには全開と全閉しかない」
実際ロガーを見てもそういう傾向があったそうです。
これを読んでびっくりしました。
全開と全閉しかないというのは大袈裟としても、ほとんどパーシャルを使わないような走りをしているってことです。
僕としては、いくら4WDと言えども、グラベルでは十分なグリップが得られないので、アクセルコントロールは大事だと思っていたのに、全開と全閉しかないと言い切っていたのは驚きでした。
マルク・アレン選手はWRCではシリーズチャンピオンは獲れなかったものの、優勝は何度もあり、まさにトップラリーストです。
そのマルク・アレン選手が全開と全閉しかないと言うのですから、当時僕が乗っていたS13シルビアであれば、アクセルコントロールなんて不要に決まってます。
それ以来、心がけている走り方は、アクセルコントロールしなくてもいい走り方です。
減速が終わったら即全開。
つまり僕の目指している運転スタイルは、「マルク・アレンスタイル」です。
実際は全くできていないのですが、今回シミュレーションをやってみて、減速後にアクセルを即全開にできるような走り方が理論上は速いということが確認できたので、今後も引き続きアクセルコントロールしなくてもいいような走り方で走れるようにいろいろ試してみたいと思います。