kazu XXさんから前後重量配分が50:50でないときの考え方について質問があったので、ロータスエリーゼを題材に考えてみたいと思います。
エリーゼの前後重量配分は36:64で、車重はドライバーと燃料などを含めて1000kgくらいだと思うので、この値で計算することにします。
まずは、前輪と後輪の1輪あたりの垂直荷重を求めます。
前輪垂直荷重:Fzf
Fzf=1000×9.806×0.36/2
=1765(N)
後輪垂直荷重:Fzr
Fzr=1000×9.806×0.64/2
=3138(N)
次に、1.2Gで走行中の横荷重を求めます。
横方向も垂直方向と同様に前後重量配分に応じた力がかかります。
前輪横荷重:Fyf
Fyf=1000×9.806×1.2×0.36/2
=2118(N)
後輪横荷重:Fyr
Fyr=1000×9.806×1.2×0.64/2
=3765(N)
垂直荷重と横荷重(=コーナリングフォース)から必要なスリップアングルを求めます。
今回は3種類のタイヤの組み合わせで検討してみます。
A仕様:前後同一サイズで205/45R16
B仕様:前205/45R16、後225/45R17
C仕様:前205/45R16、後245/40R17
とは言うものの、タイヤのサイズ別の実測データがないので、”幅広、低偏平率タイヤの方がグリップが高いのである”という仮定の下に、計算上都合のよい係数をかけてタイヤサイズ違いの特性を作ることにしました。
従って、実際は小なり大なり今回の値とは異なると思いますが、考え方という観点で見ていただければと思います。
それでは、まずA仕様です。
A仕様は前後同サイズのタイヤを使っています。
前輪、後輪の垂直荷重に相当するコーナリングフォースを推定し、そこからスリップアングルを求めるます。
前輪は1.2Gで旋回するために必要な横荷重2118Nをスリップアングル7.5°で発生できます。
しかし、後輪は必要な横荷重3765Nを発生することができません。
垂直荷重が3138Nの場合、発生可能な横荷重の最大値は3533Nです。
3533Nの横荷重で発生できる旋回横Gは3533/3138=1.126Gです。
従って、実際には前輪も1.126G相当の横荷重以上を発生しても意味がない(スピンする)ので、1.126G相当の横荷重である1987Nが発生するようなスリップアングルで走行することになります。
このときのスリップアングルは5°なので、後輪よりも3°少ないスリップアングルになります。
スリップアングルが前輪の方が少ないので、見た目的にはゼロカウンターに近い状態です。
次はB仕様です。
B仕様は前輪に対し、後輪をやや幅広にした仕様です。
今回は、この仕様が前後バランスのいいタイヤ特性になるように設定してみました。
この仕様では、後輪も1.2Gの旋回をするために必用なコーナリングフォースである3765Nを発生することができています。
かつ、前輪も後輪も1.2G相当のコーナリングフォースが最大コーナリングフォースになっていて、前輪、後輪のグリップを使い切った状態なので無駄のない状態と言えます。
スリップアングルを見ると前輪7.5°、後輪8°とほぼ同じであり、前後重量配分が50:50のクルマに前後同サイズのタイヤを履かせたときとだいたい同じ状態となりました。
最後にC仕様です。
C仕様はB仕様よりさらに幅広にした仕様です。
この仕様の場合、後輪は垂直荷重3138Nで最大コーナリングフォース3886Nを発生することが可能です。
しかし、前輪が1.2Gしか発生できないので、後輪も1.2G相当のコーナリングフォースである3765Nしか使いません。
このときの後輪スリップアングルは6.3°で、前輪の7.5°よりも1.2°小さい値になっています。
という感じに考えればよいと思うのですが、結局のところ前後重量配分だけではなんとも言えず、前後のタイヤ特性の組み合わせを合わせて考える必要があるので、実際のタイヤ選択に当たっては、タイヤメーカからタイヤの特性図を入手し、タイヤを選択したいものです。
しかし!!
タイヤメーカは、タイヤにとって最も大切な「スリップアングル-コーナリングフォース線図」をユーザーに公開していないのはいかがなものか?思う今日このごろです。
ところで、今回の説明では、まるでB仕様こそが最速仕様であると感じたと思うのですが、実際はコーナ立ち上がりでは後輪にグリップの余裕がないと加速ができないので、C仕様みたいな組み合わせの方がラップタイムとしては速いと思います。
Posted at 2014/08/14 18:20:28 | |
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サーキット走行理論 | 日記