3週間前からこじらせている風邪ですが、ようやく良くなってきました。
まだ、喉が痛くて咳も出るのですが、先週末に比べればかなりいい状態です。
さて、今日はみん友のs氏さんの要望により、ロガーデータの見方について説明しつつ、データを見てみましょう。
まず、データを見る前に用意することがあります。
単独のデータを眺めていても眠くなるだけなので、同じクルマを自分より速い人が乗ったときのデータや自分のクルマと近い仕様のデータを用意して比較します。
しかしながら、必ずしもそういうデータを持っているわけではありません。
そんな人のためにサーキットシミュレーションをやっているのですが、サーキットシミュレーションはハードルが低いとは言い難いので、次の策を考えます。
僕がロガーを使い始めた2003年くらいは、検索しても1個か2個くらいしかロガーデータは出てきませんでしたが、昨今は山ほどでてきます。
ただ、自分のクルマに近い仕様のデータがあるとは限りません。
そんなときは以下の観点で探します。
1、タイヤが同じまたはタイヤの分類が同じ(Sタイヤやスポーツタイヤなど)
2、ラップタイムが近い
3、パワーウエイトレシオが近い(加速能力が近い)
ここで、数値データがあるのが最も望ましいのですが、画像データでもなんでもいいからとにかく探します。
YOUTUBEに速度表示がされている車載動画がアップされている場合は、
コマ送りして記録するという方法はかなりオススメです。
この場合は、数値データを入手することができるからです。
ここの努力を惜しんではなりません。
本当に速くなりたいなら、車載動画からコマ送りで速度データを入手することに時間を使うことくらい大したことないはずです。
と言いつつ今回は、手元にあった適当と思われる青黒FD氏のデータと比較することにしました。
また、s氏さんのデータはパソコン画面をカメラで写したものだったので、こちらはパワーポイントでラインをトレースして使うことにしました。
こんな感じにトレースすると見やすくなります。
こうやって入手した比較用データを重ねます。
赤がs氏さん、青が青黒FD氏です。
走行ラインも重ねます。
比較を行う場合、タイヤが同じことが望ましいと書きましたが、今回はタイヤが異なります。
s氏さんのAE111:A048-185/55R14
青黒FD氏のRX-7:DIREZZA ZⅡ-255/40R17
車重の軽いAE111とは言え、185で14インチでは小さすぎな気もしますが、経験的には青黒FD氏のRX-7のZⅡと同等以上のグリップ力があると思います。
ということにして比較してみましょう。
何を見るか?と言うと速度を見ます。
今回の場合は、パワー差があるはずなので、直線の全開加速区間はあまり見ません。
減速と最低速度の前後を見ます。
ロガーデータの見方の基本
各地点で速度差の有無を見る
これだけです。
各地点というところが重要なので、本来は横軸は距離でなければなりません。
横軸が時間の場合は、距離に直すべきなのですが、今回のようにそれが困難な場合は、同じ地点が重なるように少しずつズラして見るようにします。
ということで、速度差の有無を見てみると、5~6コーナを除きs氏さんの方がコーナの最低速度が低くなっています。
ここで、最低速度が低いという事実のみを見て、”最低速度が低いからそこを直そう”ではダメです。
問題がるときに何の具体的な解決策もなく、ただ”がんばります!”と言っているのと同じにしか僕には聞こえません。
なぜ速度が低いのか?ここが大事です。
何度も書いてる気もしますが何度も書きます。
最低速度を決めているのは、横Gと旋回半径の大きさです。
旋回半径の大きさとは、つまり走行ラインということです。
走行ラインに問題があるのか?、それとも発生している横Gの大きさに問題があるのか?
このどちらが原因なのかを突き止めなければ何も解決しません。
そこで走行ラインを見てみます。
1~2コーナの推奨半径は47m前後で、s氏さんの走行ラインでは42mくらいに見えるので、少し小さいです。
これに対し、青黒FD氏は52mなので、その差が最低速度の差として現れていると考えられます。
ちなみに1.2Gで走行したときの速度差を計算すると
半径42m→80km/h
半径52m→89km/h
s氏さんと青黒FD氏の差も10km/h程度なので、旋回半径の差が最低速度差となっているようです。
3コーナはパっと見でも旋回半径が小さ過ぎです。
5コーナへのつながりを考えて小回りしていると思いますが、その分速度が落ちすぎていて、ラップタイムとしては遅いはずです。
5~6コーナは、走行ラインの差は大きく見えるものの、速度を比較してもあまり差がありません。
横Gを見ても差がないので、恐らく最小旋回半径もほぼ差がなく、その結果速度の差もないと考えられます。
8コーナは走行ラインを見ただけだと正直よくわかりません。
そこで、横Gを見てみます。
すると、8コーナは他のコーナと比較して横Gが低いことがわかります。
一方、青黒FD氏の場合、8コーナも他のコーナも横Gはほぼ同じです。
したがって、8コーナがの最低速度が低い原因は旋回半径ではなく、横Gが低いことが原因と考えられます。
その原因は恐らく僕と同じで、目の前にカベが迫ってくるので、減速しすぎているだけと思います。
ここで、もう一度1~2コーナに戻ります。
最低速度の差は旋回半径の差と考えられて、かつs氏さんの旋回半径は僕の推奨値よりも少し小さい程度なので、ラップタイム影響は小さいと考えられるのですが、2コーナ手前の加減速が気になります。
そもそも、旋回半径を小さくすることの利点は、その分、最低速度前後の加減速区間で高いGで加減速ができることなのですが、2コーナ手前で減速してしまっているので、2コーナ後の加速区間でも青黒FD氏よりも遅くなってしまっています。
なぜ2コーナ手前で減速しなくてはならなくなったのか?これが問題です。
そこで、もう一度走行ラインを見てみてください。
s氏さんの走行ラインでは1~2コーナの最小旋回半径の場所が、1コーナのところに来ています。
1コーナを小回りして減速しすぎているので、2コーナに向けて直線的に加速していますが、そのままでは2コーナを曲がれなくなっているので、2コーナに向けて減速してます。
1コーナと2コーナを別々のコーナとして走るような走り方です。
この走り方が必ずしも悪いわけではないのですが、多くの場合は1つのコーナとして走った方が速いです。
少なくともTC1000の1~2コーナは1つのコーナとして走った方が速いので、最低速度になる地点が1コーナと2コーナの中間くらい(
このブログの200mよりも2コーナ寄り)になるように走り方を変えた方がいいと思います。
今回は以上ですが、ロガーデータの見方を整理すると
1、タイヤ、クルマの仕様、ラップタイムが近いクルマの実走データを入手して比較する
2、各地点で速度差の有無を確認する
3、差のあるところは、走行ラインと横Gを見て、差の原因がどちらなのか確認する
4、さらに、なぜそのような走行ライン、横Gになっているのかその原因を考える
ここで、車載動画を同時に確認することが有効です。
ロガーの走行ラインは、多くの場合コース図に対して少しズレがあるので、正しい位置を示しているとは言い難いです。
なので、しっかり車載動画を確認してロガーデータの走行ラインと相関を取ります。
横Gが低いところがあれば、そこも動画を確認します。
テールスライドしていると、そこの横Gは下がるのが普通です。
しかし、スライド直前は摩擦円の縁を走っていることが多いので、その部分を見ると、摩擦円の縁がどこにあるのかわかりやすいです。
逆にテールスライドのない動画では摩擦円の縁をしることが難しいので、ロガーでデータをとる場合は、2回くらいテールスライドするまで攻めた方がデータ解析を行う際に便利です。
同様に、ブレーキは必ずロックするまで踏みます。
ABSがついている場合は効くまで踏みます。
これ大事です。
ロガーデータでは、他のクルマとの比較をすることはもちろんなのですが、自分のクルマの限界に対してどの程度の状態で走らせているかを知ることも重要なので、ブレーキをロックさせたり、テールスライドさせたりして、クルマが限界を超えたときのデータも同時にとるようにしてください。
最後にロガーを使っていいことは何か?と言うと、いろいろ試した結果を各コーナ毎に確認できることです。
ラップタイムしかとっていないと、1周のタイムでしか良し悪しがわかりません。
しかし、例えば1コーナは従来に対し改善しても、8コーナをミスった結果1周が遅くなった場合、1コーナが改善できたかどうかを客観的に評価する方法がないわけです。
でも、ロガーを使えばそこだけを確認することができます。
ということで、ロガーは、走ってデータとって、データ見て解析して、また走ってデータとってというのを30回くらいやると、何か見えてくるはずなので、ひたすらデータをとりまくり、ひたすら解析しつづければ自ずと何をどういう視点で見ればいいかわかるようになると思います。
習うより慣れろ ってことかと思います。