今日は日曜日で、てっきりJr.が走りに行くつもりでいるのかと思ってましたが、「試験勉強する」と殊勝なことをおっしゃるので、以前撮影した動画にコメつけて遊ぼうと思います。
今回は、いわゆる「ゼロ=ステアリング(ゼロステア)」と呼ばれている四駆のクロカン走行テクニックについて解説しています。
「ゼロステア」ってのは、マイナーな四駆の業界の中でも、これまたマイナー中のマイナーな技なので、自分以外でこんな言葉を使っている人を正直聞いたことがありません。
ですが、この動画で写っているような下がズルズルで滑りまくるような地形を走る場合や、タイヤがゲタ山だとか、坊主サービス(山のなくなったジープサービス)などの「全くグリップ力がなくなったタイヤ」を履いている場合などでは、かなり有効な技ですので知っておいて損はないと思います。
■ゼロステア・・・有名なのはドリフト族が使う言葉(w
ゼロステアってのは、元々は「イニD」じゃないですが、ドリフターの間で使われているドリフト中のステアリングテクニックをあらわす言葉ですね。
いくつか実際にやってる動画を見たことがありますが、ハンドルを中立状態で固定したまま、アクセル操作で車の向きをドリフト中に変えつつコーナーを抜けていく・・というよりは、「ゼロ・カウンター」と言って、カウンター方向にハンドルを切らず、コーナーの出口方向に向かって、カウンターとは逆方向にハンドルを切ってドリフト(スライド)させていく技術のことを言っている例もあるみたいです。
(プロがゼロカウンターをやってた神業動画の中では、ゼロステアやゼロカウンターが出来る車の条件は、四駆でフロントデフにLSD等が入っている車って言っておりましたが・・)
ま、僕は同じ四駆は四駆でも、クロカン四駆の方でドリフターではないので、そっちの方向は全く詳しくないので説明はこれまでにしておきます。
■元は”絶滅危惧種のジープ海苔”が使っていたクロカンテクニック
私が”この技”に最初に気がついたのは、今から10年弱ほど前のことでした。
当時、同じ場所を走っていたジープたちが、よりによってリブラグタイヤという「いかにもグリップしなそうなタイヤ」を履いていたのですが、その車にもデフのデバイスがないのに不思議とスルスルとよく走るんです。
リブラグタイヤってのはこんなタイヤ
こんなタイヤで岩場やモーグル、濡れたヒルクライムなどを走っていた車が当時はまだ多かったのですが、これが不思議とよく走るんです。
タイヤとしては、上記のリブラグ以外にもゲタ山が当時はまだ多く走っていた。
昔は、そんなちょっと気持ち悪いジープ海苔が多かったですね(汗)
(今はほとんど絶滅危惧種ですが・・)
「ジープだからそんなタイヤでも??」って思ってましたが、ランクル70より確かに200kgとかは軽い車が多いので、「軽さで走ってるのか?」というと、どうもそれだけではない様子。
自分も当時は、7.50-16のジープサービスやSATを履いてましたが、彼らと同じように溝がないタイヤを愛用してたので、自分が走れないのに、彼らが不思議とスルスル前進出来てしまうことがあることに、かなり長い間ギモンに感じてました。
ある日、スーパーハードという今は無くなっている岡山県北の林道を利用して作られたオフロードコースのモーグル地帯をその車が走っている処を観察してたのですが、グリップが怪しい処(要は難所)に差し掛かると、ステアリングを中立に固定したまま、体重を上からかけるような形でハンドルをホールドしっぱなしで、アクセル操作だけでそこを抜けていくのを発見したのです。
試しに、自分も同じように、グリップが怪しい場所で同じようにステアリングは中立に保たせたまま、アクセル操作だけに集中して走ってみたら、「スルッ」と抜けたのです。
「あぁ、これだ!!そういうことだったんだ!!」と当時はビックリした記憶がありますね。
車というのは、平地で置いておいて、自分が車を手で押してみると本当によくわかると思うのですが、
ちょっとでもハンドルを左右どちらかに切っていると、ビックリするほど重くなるんですね。
つまり、「極力走行抵抗を抑えようとするなら、ハンドルは真っ直ぐに固定したほうがいい」ってことが言えるんです。
「あとひと押しが欲しい」という場合などは、人間が後ろから押してやるだけで前進できたりするものですが、その最後のひと押しってのは、トラクションで得られるんじゃなく、「走行抵抗を抑えること」で得られる場合が実は物凄く多いんです。
僕らは、ひとまずは前後オープンのままで遊ぶことが多いし、昔のジープ海苔の多くはデフにデバイスを入れて無かった人が多かったので、V字溝の底にタイヤを落として走る時や、モーグルをクローリングして遊ぶ場合などは、溝の底に落としたタイヤや、タイヤが地形に引っかかっているような状況になることが非常に多い。
そういう場合、「車が前進するかしないか」を分けていることは、実は「空転してないタイヤの転がり抵抗をいかに抑えるか」で決まっているということが多いというわけなのです。
前述のリブラグタイヤのジープが不思議とスルスルと走ることが出来たというのも、「ゼロステア」という技術を、たぶん経験則で使っていたということもあるのだろうが、「転がり抵抗が少ないタイヤを履いていたから」ということがわかったのだった。
■極悪タイヤの方がツンツルテンなタイヤより走れない場合もある
それに気が付いてからは、「デカイタイヤを履いて、タイヤにモノを言わせながらブリブリと走る」ってことに本当に興味が持てなくなった。
「グリップが良いタイヤ」というのは、おのずと「転がり抵抗が大きく、オープンデフのまま走る場合などでは、転がり抵抗が逆に邪魔になる場合もある」ということに気がついたからだ。
だから、V字溝を延々と攻めないといけないような地形を、敢えて前後オープンでトライするときなど、スワンパーだとか、ジャングルトレッカーみたいな「極悪タイヤ」を履いている車が、よりによってツンツルテンのボーズサービスを履いている車にカモられるということも珍しくない。
空転している方のタイヤは荷重がかかってないので、そもそも極悪タイヤでも得られるトラクションはツンツルテンのタイヤとそれほど違いはないのだが、谷側になって荷重を掛けられて地面に押し付けられているタイヤが、極悪タイヤの方が転がり抵抗がずっと大きいからだ。
つまりだ、デフロックを掛けて走る場合は、「よりトラクションが得られるように走ること」が多く、前後オープンで走る場合は、「より走行抵抗を抑えたステアリング操作で走る」ことが多いというわけだ。
デフロックで慣れてしまった人が実際、ヘタクソな人が多い理由は、このように「走行抵抗を抑える」という観念が元から欠落していることが多いからだと思っている。
最近はそんなことを言いながら、34吋のスワンパーという、当時の基準では「そりゃ、反則だろう?」というような極悪タイヤを履いているのは、当時と違い、周囲の車の走破性が極端なまでに高くなってきているからだ。
ディーゼルジープはほぼ壊滅状態だし、当時デフのデバイスと言えばリアLSDとか溶接デフロック程度しかなかったジムニーも、前後エアロッカーとかが結構増えてきたし、JB23のように出来の良いコイル車なども出てきた。
また、ほぼ同じ車格だとTJなどがあるのだが、あれも反則くらいよく走る(汗)
少しでもデフロック以外のところで走破性を稼ごうとするなら、タイヤくらいあの程度はしておかないと、歯が立たないって状況が増えたってのもある。
ただ、僕にしてみたら「グリップしすぎるタイヤ」の34吋スワンパーだが、雨などが降ると途端にグリップが怪しくなるので、こういう「ゼロステア」の練習などに最適な条件が整うので、雨の日のクロカンってのは本当に楽しいし、またそういう時にしっかり考えながら走り込みをすることで、腕は急激に磨かれると思っています。
■「ここぞ!」という時だけ、ゼロステアにして切り抜けるという方法もある
ズルズルのヒルクライムなどを攻めていくと、右に左に自然と車が振られてしまうということがよくある。
そんな時に「ゼロステアだ」と言って、坂の下からステアリング操作を一切せずに突撃すると、とんでもない方向に飛ばされてしまって大汗、ということも珍しくない。
そこで、車の方向をある程度保つために小さめなステアリング操作で突撃を始め、「ここぞ!」という時だけ、ハンドルを中立状態に戻し、なるべくガッチリとハンドルがキックバックで振られるのをホールドして、走行抵抗を抑えつつ、アクセル操作に意識を集中させ、難所をクリアさせるという走らせ方を僕は非常によく使う。
その「難所」というのは、ヒルクライムの最中にある場合もあるし、最後の最後のひと超えってこともある。
「トラクションがヤバい!」って思ったら、ハンドルをヘンにコジったりせず、中立に戻してやるだけで車は前進することもあるってことを覚えておこう。
■「ゼロステア」を使う際に同時に使う技として「ワンハンドステア」という技があることも覚えておこう
「ゼロステア」という技は、ハンドルを中立に戻し固定させることで走行抵抗を抑え、アクセル操作に集中させることでトラクションを稼ぎ車を前進させる技のことを言うわけなのだが、
この技を効果的に使うテクニックとして、「ワンハンドステア」というクロカンテクニックがある。
これまた、ラリードライバーやドリフターなども使うことがあるテクニックなのだが、四駆でも同様の技はあるし、ワンハンドステアの効果はかなり高いってことは覚えておいて損はないと思う。
要はどういうことか?というと、車というのはハンドルの舵角が少ない方が、走行抵抗を抑えることが出来るので、車というのは基本的に動かし易くなる。
つまり、「ハンドル操作というのは、大きく左右に切るよりは、小さい舵角で抑える操作をしてやった方が動かし易い」のだ。
ワンハンドステアというのは、右手でハンドルを握ったまま、右手だけで車のステアリング操作をすることを言うのだが、片手だけの操作だとおのずとステアリングの舵角は小さくなる。
ハンドルの切れ角が小さくなるってことは、当然小回りしなくなるので「なんやそれ?」って思われるかもしれないが、
そういう「制約」を普段の練習でしておくと、より操舵系に負担をかけない、わずかなステアリング操作だけで車を効率良く前進・後退させることが上手くなるんじゃないかと思っているわけだ。
当然、ワンハンドステアは大きくハンドルを切ってリカバリーするような地形では使えないので、限定的なステアリング操作テクニックにはなってしまうのだが、前後オープンのまま、V字溝にタイヤを落としながら前進させるときや、キャンバーを這っているとき、モーグルを這っているとき、ヒルクライム中などでは結構、この技を使っている。
モーグルなどを行ったり来たりする場合、試しにワンハンドステアをしてみても面白いですよ。
こまめに前後に揺すらないと車の向きは変わらないので、「揺り返し」の効果的な練習方法になりますし、地形をキッカケに小回りする技なども身につくのが早いと思います。
まあ、こんな感じで「腕が磨かれる」ってのは、なんらかの制約を自分の中で設けておいた時の方が、劇的に進化し易いんじゃないかと思いますね。
ちなみに、ワンハンドステアの副産物は、先ほども軽く言いましたが、
操舵系や駆動系への負担軽減になると思ってます。
というのも、CVジョイントなどは大きな舵角を切って大きな負荷をかけると簡単にポッキリと折れてしまうことがあるからです。
「岩場などを這っていて、駆動系などへの負担を抑えて走り込みしたい」とか、
「どうしてもポキポキとよくデフやCVを割ってしまう」などという方は、ぜひ「ワンハンドステア+揺り返し」や「ゼロステア」を多用する走行スタイルを取り入れてみてください。
かなり効果があると思いますよ。