
16日未明に発生した大地震により、熊本県宇土市の鉄筋コンクリート5階建ての市庁舎が倒壊寸前の状態となった。崩れた建物の写真は中国のネット上でも紹介され衝撃を与えたが、それ以上にショックを与えたのは「学校の校舎の強化を優先したため、市庁舎の改修が間に合わなかった」という事情のようだ。
中国メディア・新華毎日電訊は22日、「日本の学校が強震を恐れない、ということがもたらす啓示」とする評論記事を掲載した。記事は、同市役所庁舎が1965年に建設され、10年あまり前の耐震性調査によって「震度6以上の地震で破損の可能性が高い」と警告されていたことを紹介。市は庁舎の改築を検討したものの、財政に余裕がなかったことから学校の古い校舎の強化を優先せざるを得ず、庁舎には手が付けられないままだったと解説するとともに、庁舎が崩れたのとは対照的に現地の学校はみな無事であったと伝えた。
そのうえで、地震多発国である日本では「どんなに大きな地震でも、学校を倒壊させてはいけない」というのがもはや社会の共通認識になっていると指摘。学校や体育館といった公共施設は避難所としての役割を発揮することもあり、最も厳しい耐震基準が適用されていると解説した。そしてその背景には1995年の阪神淡路大震災があり、震災後に政府が校舎強化計画を発表、全国の学校に対して耐震調査、校舎の強化措置を進めたとしている。
また、経済の低迷によって地方財政は厳しい状況となっており、宇土市のように「校舎強化計画」を遂行するために、庁舎などの改修を後回しにするケースが数多く発生していると解説した。このような苦悩を抱えながらも、20年あまりの努力によって計画は仕上げの段階に入っており、2020年までにはすべての校舎が耐震基準をクリアする見込みであること、それでもなお世論からは学校の安全を危惧する声が出続けていることを紹介した。
記事は最後に、日本社会がどうしてこれほどまでに「校舎強化計画」に執心するのかについて、文部科学省の関係者が「大地震はいつ起きるか予測できない。子どもの安全を最優先に考えなければならない」と回答したことを併せて伝えている。
「子どもの安全を守るのが第一」という考えは、国や社会の将来を考えるうえでも、弱者を守るという社会通念からしてももっともなことである。同時に、記事でも言及されているが、学校は災害発生時に被災者が避難し、寝泊りをするための重要な施設の1つになるのだ。だからなおさら丈夫な建物が求められるのである。「学校は勉強するところ」というイメージが先行しがちだが、学校は地域社会を支える重要な拠点になり得るという、もう1つの大事な使命も持っているのだ。
中国メディアがこの件を敢えて取り上げた背景には、中国の行政が必ずしも「学校の校舎を何よりも丈夫に」という意識を持っておらず、老朽化した校舎に見てみぬふりをして立派な庁舎や関連施設を立てることに「執心」するケースが少なくないことがあるのは、もはや言うまでもないだろう。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF) サーチナ 2016-04-25 14:43
Posted at 2017/11/09 14:17:50 | |
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