クラプトンの夜に

車で移動の途中、たまに行くカフェに
寄ってみた。

マスターと車の話をしたあと、おもむろにエリック・クラプトン
のDVDが流れてきた。

フィル・コリンズがドラムを叩いている。
ああ、なんとなく、いいな。

最近、小さな現実主義者になってしまっていないか。

ミュージシャンの映像を見て、遠い別世界のように醒めている
自分に気付き、ふと首を振ってみた。

感性と現実の狭間を泳ぎながら、普通の人よりずっと本能的な
感覚で生きてきたのに、年齢という壁の前で、随分と小市民な
身構えをしている自分に気が付く。

クラプトンだって、若い時から名声はあったけど、
歳を取ってから随分、渋いイケたおやじになった。
こんなふうに歳を取るのが夢だったのでは、なかったかな。

車に戻り、ルームミラーに映った男の後ろから、
スローハンドのトレモロが、追い掛けてきそうな
夜であった。