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2012年09月22日 イイね!

西尾忠久氏の肖像~秋の夜長に

西尾忠久氏の肖像~秋の夜長に













昨日は僕の好きであったジャズベーシストのジャコ・パストリアスが
亡くなって、ちょうど25年目の夜であった。



いささか牽強付会であるが、このタイトルで「ジャコ・パストリアスの肖像」という
評伝の本のタイトルを思い出された方も、いるかもしれない。



暑かった今年の夏、亡くなられた物故者の中にふと、
コピーライターの西尾忠久氏の名前を見つけて、
この本のことを、いつか取り上げなければと、思っていた。
今夜は、1963年に出された優れたワードとアートの本のことを、
取り上げていく。




今から49年前の1963年に、海外の商業広告デザインの良さを
紹介した1冊の本が出された。
ずばり「フォルクスワーゲンの広告キャンペーン」と、そのまま
中身を表すタイトルであるが、この非常に優れた1冊の本は
広告業に携わる人々にとり、泥臭い営業や昔からのやり方を
踏襲していた広告の世界に、初めてクリエティブの方法論を
伝授した画期的な書だったのである。




また、先日御殿場まで長駆参加した、カーグラフィック50年の
イベントの感想に含まれきれなかった、「想い」が残っている。
それはカーグラは最初から、カーグラだったのか、という
生まれたときから、やや高尚な、高貴な雑誌でありえたのは、
なぜだったのかという、疑問に対する答えでもある。

半世紀も前の日本は、「3丁目の夕日」に見られる庶民の暮らし
が存在していた一方、なぜ東京五輪の直前に、このような
ハイブロウな雑誌があり得たのか。そして読者は豊かな生活に
なる以前であったのに、着いて来れたのか。
そのあたりのことが御殿場のイベントでは抜け落ちており、
私なりに補足しないと、気が済まなかったことがある。


この西尾忠久のVWの広告キャンペーンの本と、CG創刊は
ほぼ同じ時代に属しており、向かうベクトルは非常に近い。

それまでの編集法や、広告の作り方と一線を画し、新しいものや
海外の優れた情報や、やり方を紹介したいという思いに溢れている。



「なぜエンジンが後部にあるのでしょうか」

「15年前、この車には、自慢できるところがありませんでした」

こういった優れたコピーを介在させて、広告意匠を強く訴求
させる広告は、新聞雑誌等の読者の中でも、生活質の向上に
強い関心を持つ層には、非常に反響があり、VWは米国で
戦後成功した理由のひとつが、優れたキャンペーン力があった
からなのである。


ビートル、カブトムシ、VOLKSWAGENといった名で呼ばれる
この20世紀を代表する車種に対して、歴史認識、その時代の評価
これまでに様々に変化してきた。
みんからブログの時代には、もっと希少価値の高いレアな車が
取りざたされるが、もうちょっと本質について見直してみようと思う。



今年1月のニューイヤーミーティングの前夜に、私は荻窪で泊まった。
その夜に荻窪の古本屋で買い求めた本である。

東京フォルクスワーゲンクラブ、「VWと25年のあゆみ」
これは1989年、平成元年に創立25周年を迎えた私的な
自動車オーナークラブが、非売品で出した本である。

1964年、東京オリンピックの年に出来たこの会は、輸入車に乗ると言う
晴れがましい集まりであったらしい。
それ以前からVWを所有する先輩オーナーと、サラリーマンの
夢を実現した人々で、親睦の会が始まり、一つのクラブとなった。



その当時からの思い出が詰め込まれたこの書物は、いまと
なっては古本だが、おそらく当時のオーナーたちは、西尾さんの
広告キャンペーンに魅了されて、VWを購入したに違いない。

それほど昔の外車オーナーたちは、高い意識を持っていたし
だから、カーグラフィックも、高級志向であったが、出現当時から
高い評価を受けていたことが分かる。

この間のイベントでは、「いま」は多少感じられた。
しかし「まえ」は松田コレクションがあったという過去までで、
その前の花やかりし60-70年代の説明がいま一つ弱かった。

雑誌が先行して読者の生活がいつの間にか追いついた。
だから今のポルシェやフェラーリを見ても、昔ほど興奮しない。
今日はこんな話をしたかったのは、なぜだろう。
それは、西尾忠久という人の本の中にもある新しさが、今の
時代には感じにくくなっていることの現実。

それと、自動車趣味と言うものは、点で見るものでなく
過去と今のラインで見る遊びであることを、もう一度
確認したかっただけである。

西尾忠久スクリプトというと、1980年代NHK FMの夜間番組
クロスオーバー11の中で津嘉山 正種らがナレーションする
ショートストーリーのテラーでもあった。

「中国地方山間のある村では、」のストーリーが曲間で始まると
エアチェックの手を止めてふと、語りに聴き込んだものである。

今この本の折り返しのプロフィールを見て、鳥取市出身、
三洋電機在籍のキャリアを見て納得がいった。

古い話だが、車と音楽と夜のひと時というものは、昼間の
慌しさから解放されて、こういった話題に思いを馳せてみるのも
良いのではなかろうか。


西尾忠久、2012(平成24)年7月28日永眠 享年82歳


Posted at 2012/09/22 04:43:07 | トラックバック(0) | うんちく | クルマ

プロフィール

「「自動車趣味人」38号に取り上げていただきました。」
何シテル?   06/14 14:37
車は殆ど処分して、1971年登録のフィアット850クーペに 1987年以来、乗り続けています。 住居は昭和4年築の、古い日本家屋に、現状で住んでいます。
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