2011年11月04日
ボディコーティングと乙女達のボーカルオーディション
パワーチェックで見せた女の盛りに、不義不貞と分かっていても、ますますGTVと肌を合わせる回数が増えてしまったここ最近。
そして、それに反比例して疎遠になっていくのがM3との逢瀬でして、愛人宅に足しげく通う主人の、いつになるか分からない帰りを、「よよよ、、、、」と涙するまっこと慎ましやかな正妻というべきM3への、半年に一度の御奉仕となる、ボディコーティングのメンテナンスに先日行って参りました。
高速に向かうまでの下道で、ゆっくりウォーミングアップをすると、澄み渡った秋空に高々と響くエキゾースト、そしてハイレスポンスなS54は、M3ならでは心憎い演出。
情感の塊を具現化したGTVとは、また対照的な強心臓と肉体美は、アスリートたるM3の得意分野。
高速を気持ちのいいペースで抜けると、丁度、開店数分前に到着し、いつものメニューを馴染みの担当者と確認して車を預けること3時間。
出来上がったのがこちら。
小傷が消え、薬液が丹念に塗りこまれたことで浮き上がる刃紋のような光沢に、M3も誇らしげです。
さて、この日、M3に積んでいたのは、愛機Gibson FlyingVとお疲れ気味のギターアンプ Peavey Bandit。
実は、朝一でコーティングの予約を入れていたのは訳がありまして、午後から、うちのバンドのボーカルオーディションが開催される運びとなっていたからなのです。
場所は、ドラムの実家にある専用スタジオ。
スタジオといっても、手広く農業を営むドラムの、実家の広大な敷地にある納屋を改造したバラックスタジオみたいなものでして、電圧を上げ、そこにドラムセットやらPAとかを押し込んで無理やりそれらしくしたもの。
空調は一切なく、演奏中は全ての窓を閉め切るため、夏は熱中症と汗による感電との戦い、そして冬になると石油ストーブが差し入れられ、閉め切って演奏していると、不完全燃焼を起こしたストーブによってメンバー全員の目の前に天使が現れると言う、スタジオ代は掛からない代わりに、命を天秤に掛ける必要があるブルータルなスタジオなのです。
そして、奥には、決して開けてはいけない謎の冷蔵庫がポツンと置いてあるという・・・
バンドが結成された高校一年生の頃からお世話になっている、メンバーの思春期の甘酸っぱくもイカ臭い歴史が詰まったここで、思う存分音楽活動ができるのは、春と今の季節ぐらい。
バンド名を改めてから約10年、都合3人目となるボーカルをライブハウスの張り紙、雑誌やWEBで募集したところ、意外にも結構な数の応募があり、その中から3人に絞って、ここでオーディションをしようというものです。
到着すると、すでに何曲か音合わせを終えたベースとドラム。
いつもと違ってこざっぱりしている二人。
それもそのはず、今日、オーディションに来るのは、うら若き3人の乙女達。
全員がおっさんのビジュアル系メタルバンドと書いたにもかかわらず、次々写真入で送られてくるプロフィールに、テンションダダ上がりのおっさん達でして、厳選且つ公正な偏見による胸倉掴み合いなどを経て、6名をオーディション候補としてピックアップし、内、3人が歌いに来てくれることと相成りました。
一通り、音合わせが終わり、車座になったまま年甲斐もなくソワソワするおっさんメタラー3人。
すると、ベースの携帯の着信音が鳴り響き、最初の子から、今駅に着いたとの連絡が。
最寄駅から遠いため、ベースが車で駅までの送り迎えをすることとなっていまして、なにがあっても必ず戻ってくることを堅く約束してお見送り。
ドラムと二人で、間を持たせるため、適当なセッションをしていると、ベースの車が戻ってきた気配を感じ、楽器を置いてかしこまる私。
ガラガラと引き戸が開けられ、「どうも、初めまして~」とむさ苦しい納屋に響き渡る、コロコロと明るい声。
「あ、初めまして、、どうぞ入って。靴はそこで脱いでね。」
「ええ、あ、私、××です。宜しくお願いします。」と臆することなく、高そうなコロンの香気ともにバラックスタジオに上がりこんできたのは、自称28歳のOLさん。
少し栗色がかった長い髪が細いウェストの上辺りまで伸び、大きく切れ長な瞳と派手な顔立ちはステージ栄えがする感じ。
ぴったりとした革のミニスカートとそこから覗く幾何学模様の編みタイツが引き締まったボディラインを強調していて、この時点で、おっさんメタラー達のテンションは、ライジングフォース状態へと突入(汗)
特にドラムが推していた子だけあって、ドラムスタンドから注がれる視線が尋常じゃない熱度。。。
しかし、これはあくまでオーディション、バンド経験もあるとのことで、早速、歌ってもらうことに。
課題曲は、SHOW-YAの限界ラバー、相川七瀬のトラブルメーカーの懐メロ2曲。
本人の断りを取ってから、MTRに録音開始。
ハスキーな歌声は好みが分かれるものの、タイム感もピッチも正確で、私自身、この子でいいかなと思ってしまうほどの実力でした。
その他、BON JOVIやRAINBOW、OZZYもいけるとのことでしたので、数曲を楽しくジャムってオーディション終了。
どうしてこんなおっさんメタルバンドで歌いたいか聞いてみたところ、以前、ライブを観に来てくれたことがあり、自分のバンドがなくなった折に、メン募を知ったとか。
ドラムが最近買った自慢のスマートフォンを取り出し、不穏な動きをし始めたところで、次の子が駅に着いたとの連絡が入り、ベースが再びピストン輸送。
再度、「必ず戻ってくる。」とのイスカンダルへと旅立つYAMATOばりの誓いを立てさせ、残念そうにi-Phoneを仕舞うドラムを尻目に、OLさんをお見送りして、次の子を待ちました。
ほどなくして、勢い良く引き戸が開けられたかと思うと、「ちょりーす!!」と叫びながら入り込んできたのは、ド茶髪を肩の上で揃え、パツパツのT-SHRTSを着て、ローライズから臍と下着のラインを見せ付けんばかりに現れたギャル。
プロフィールを見ると、ちょっぴり頭が痛い地元女子高校に通う2年生の女の子。
そのノリに怯み、なにを話したらいいのか全く分からないまま、演奏開始。
2曲目が終了し、
「もうさ、お父さんと同じぐらいなんだけど、、、演奏上手すぎ、うけるwwww」
「今どき、相川ってさ、どうなの、、せめてSCANDALじゃね??」
「うちらの連れ、呼んでくるから、AKBみたいなアイドルユニットやろうよ。絶対いけるって。」
などなど一方的にまくし立てられ、そのテンションに圧倒されっぱなしになるおっさんメタラー達。
肝心な歌唱力は、声量がありポテンシャル十分。
『アイドルユニット』の件は再考&ペンディングとし、女子大生になってしおらしくなったら、お友達を沢山連れて、また歌いに来て欲しい素材でした。
お見送りする際、メンバー全員で、「ありがとう。」と言うのと同時に、なぜか財布を取り出していたベースを嗜め、次は俺が行くと言ってきかないドラムが最後の子のお迎えに。
というのも、最後の子は、自称ローカルタレントでして、送ってきた画像が、恐らく事務所がそれ用に作成していた桁違いのベッピンさん!!
オオトリ、そして大本命の登場に、否が応でも期待が高まるベースと私。
約10分後、ドラムの車のドアが開く音がして、コツコツと石畳を鳴らすヒールが近づいてくる。
引き戸に手がかかり、ガラリと開いた先には、、、、、
およそ画像とかけ離れた、ド派手なおば様と、気持ち元気のないドラムの姿があったのです。
「お邪魔ぁしますぅ。」鼻に掛かったような声で、上がりこむ自称タレント。
目が点になる私とベース。
「誰、あれ!?」セッティングの振りをして小声で、ドラムに尋ねてみると、
「俺も駅で分からんかった。でも、ボーカルに応募してきたって自分で言っているから、そうなんじゃね。」
「皆さんバンドやられてるなんて、素敵ですよね~私のこと、○ちゃんて呼んで下さい、うふ☆」と丸々とした指でマイクを握り、こちらに目配せする謎の生命体。
「さ、やろうやろう。」ベースが言うのと同時に、スティックでのカウントが入り、通常の1.5倍速で2曲終了。
歌も、カラオケレベルで特筆すべきところなし。
「タレントさんなんですよね?この写真は、、、、」となぜか敬語で質問するベース。
「ああ、それは事務所入りたての時に作ったのよ。うふふふ」とすっとぼける正体不明のクリーチャーに、
「27歳って書いてますけど・・・」と尚も食い下がるベース。
「だから、事務所入りたてって、言っているじゃない。もう、意地悪ね~、、ところでおトイレどこかしら。」
シナを作りながら、お手洗いへと消えていく、たくましい後姿を見送ると、
「おい、下手したら、同じ干支、、、いや先輩だぞ」
良く見ると昭和の香りが漂うプロフィール画像に、
「なんてこった、奇跡の一枚かよぉぉぉぉ」と若かりし頃、某雑居ビルで、何度もパネルの写真に煮え湯を飲まされたベースががっくりと肩を落とし、
「俺も、まさかこんな思いをするとはな。」とスネアを力なく打つドラム。
「ところで、誰が送っていく?」との話題になり、「どうぞどうぞ。」との全く美しくない譲り合いの結果、一度も出動していないM3で駅まで送ることが決定。
「わぁ、、、ビーエムじゃん。やったぁ。」と艶々になったM3を前にはしゃぐ第13番目の使徒。
車内で「次のライブ、なに演る~??そうそう、良かったらメールして。」との独り言を華麗にスルーし、極めて事務的に駅まで送り届けてミッション終了。
スタジオまで戻り、さて、ボーカルを誰にしようか、相談をしたところ、ほぼ最初のOLさんで決まり掛かったものの、残った3人をどうしても歌わせてみたいベースとドラムに押し切られ、どこかでオーディションを開催することに。
昨日から、喉の痛み激しく知恵熱が出始めているのは、この時、なにかウィルスをもらってしまったからなのだろうか。。。
M3の車内で感じた悪寒はこれだったのかと得心するのと同時に、週末のファミリエに間に合うか微妙な体調のまま洗面所に向かうと、気持ちばかりが若いアラフォー・メタラーが、『お前も人のこと言えないよな。』と青白い顔をして鏡に映っているのでした。
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メタルギター | 日記
Posted at
2011/11/04 16:01:06
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