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2009年07月17日 イイね!

いとこに纏わる、ちょっと深イイ話

知る人ぞ知る、私のいとこ“ミッシェル”(国籍:日本、年齢不詳、多分♀)はプロのバイオリニスト。

思春期真っ只中の高校生の頃、私と一緒にメタルにどっぷり浸かり込み、数々のアナーキーな伝説を残した彼女は、その後、私がメタルの深淵からちっとも社会復帰できないのに対して、多くの音楽家がそうであったように小さい頃から厳しいレッスンを積み、才能を開花させることで、音大に進み、メタルから脱却してまっとうな音楽家になりました。

ただ、多感な時期に受けたメタルの影響だけは抜けきれなかったようで、メタルの名曲をバイオリンでカバーするコンスピ・アルバムを次々企画しては事務所にはねられるなど、メタルの後遺症に悩まされてはおりますが、その内なる感情をストレートにぶつけ、聴くものすべてを自分の世界に引き込み、共演者を決して寄せ付けない孤高のスタイルは、ジプシーバイオリンというジャンルを確立しました。

クラッシックにも関わらず、青少年にはドギツ過ぎる情熱とフェロモンがほとばしり過ぎて、時々ライブがR指定になるとかならないとか(爆)

琴とのコラボレーションで南米ツアーに出るなど、ワールドワイドに飛び回り、多忙な音楽活動の傍ら、どういう経緯で声が掛かったのか不明ながら、超有名私立中学から彼女に課外活動でのバイオリン講師の依頼があったそうです。

その付属高校は、東大進学率がトップクラスのスーパー進学校。
小学生の頃から、有名大学進学を運命づけられた医者や弁護士の息子達が学業に勤しむ無菌室のような環境に、彼女を放り込めば、熱帯のウイルスのごとく、あっという間に毒が蔓延し、勉強どころではなくなるのではと、脳裏によぎる、一物、、いや、一末の不安。

そんなミッシェルと最近話をする機会があったので、近況を聞いてみると、、、、、
「久しぶり。」
「ご無沙汰!!」
・・・・(中略)・・・
「ふ~ん、そういえば、どう、例の学校のレッスン??」
「ああ、あれね、やってるよ~。」
「秀才君だし、生意気な子っているでしょ?」
「いるよ~。最初は、青っちょろい顔した子ばっかりで、名前呼んでも返事が小さい!!なんでも理屈こねたがる子もいたよ。手なんて、鉛筆しか握ったことがないんじゃないかぐらい、皆、女の子の手みたいにきれいで。」
「うんうん。」
「後は、とにかくお母さんにお伺いを立てる子。勉強とバイオリンを両立するなんて、それこそ、社会からいくらか隔離していないと中々集中できないから、自主性が追い付いてないというか、、、、ま、最初は面食らったよ。」
「へぇ~。昔、そんな彼氏いたよね。エリートだけど、あんまりだらしないから、髪の毛掴んで引きずりまわして、ヤキ入れてたっていう。。。。それにしても、大人になったねぇ。」
「あははは、あったあった。打たれ弱い秀才君は本当に手が掛かる。。。。でも、同じようなこと、やっちゃったんだ。。。」
「ええ!!ど、どういうこと??」
「最初の頃は、そりゃあ、猫かぶって大人しく教えてたよ。いいところの坊ちゃんだし、変なトラウマ刻んでも気の毒だしね。
でも、知能犯というか、私が大人しくしているのを見透かして、だんだん横着になっていったのさ。携帯は鳴るし、途中でいなくなるなんて、しょっちゅう。やんわりと注意はしてたんだけどね。」
「あら、大人じゃん。それで??」
「で、ある日のレッスンを始めようとしたら、DSを開いて対戦している子達がいたの。さすがに、カチンと来たけど、そこは、グッと堪えて、『さ、ゲームは終わり。あなた達が持つのは、バイオリンのほうよ。』って注意したんだけど、全然聞く耳もたなくて、その内、対戦が終わって、やっとレッスンを始められると思ったら、彼ら、どうしたと思う??負けた子が『もう1回!!』って勝った子に言うなり、また始めたのよ!!!他の子たちも集まってきちゃって。」
「ひどいなぁ。」
「私もこれだけ舐められたら、もう限界。頭のてっぺんがカーと熱くなったと思った途端、気がついたら、DSを取り上げて、、、、、、」
「うん、うん、、、」
「こう、、、、バキッて、折っちゃった。」
「!!」
「で、流れで、相手の子のDSも取り上げて、、、、、、、バキッと。。。。」
「や、やっちゃったね。。。」
「うん。さらに、折れたDSを踏みつけて、窓の外に投げ捨てちゃった。飛んでいくDSを見ながら、ああ、首だなって思った。」
「普通そうだ。で、DSの持ち主は??」
「呆然としてた。で、思わず『舐めんな、くそガキども!!ちょっとぐらい勉強できても、なんにも偉いくないんだよ!!次はこれで済むと思うなっ』って睨みつけてやったら、一人シクシク泣き出しちゃった。どうせ、これで最後だと思ったら、もうそこからスパルタよ。」
「うわ、、、」
「一人づつ立たせて、私とアンサンブル。できないところは何度もやり直して、ボロッカスに言ってやったさ。」
「お気の毒様・・・」
「そうしたら、レッスンが終わったら、全員で『ありがとうございました。』って、しおらしくなってて。私も、勢いで、『いい男になれよ!!バイバイ。』って言って帰っちゃった。」
「へぇぇぇぇぇ。でも、まだやってるんでしょ??」
「うん、でね、その晩、案の定、保護者から電話が掛かってきて、、、、DSを折られた生徒のお父さんなんだけど、お医者さんって言ってたっけ。私も一言あったので、気合入れて電話に出たら、DSの件、もう一人の子の親御さんと話したらしく、その代表として電話を掛けてきたんだって。それ聞いたら、私もテンション上がっちゃって、来るなら来いって顔じゅう青筋立ちまくり。そしたら、なんと・・・」
「なんと??」
「『愚息のDSの件、、、、ありがとうございます。』だって。」
「ええええ??」
「『お前が甘やかすから、常識を教えてやったんだよ。』と喉まで出かけてたのが、『は、はぁ。』と拍子抜けしちゃって、、、、なんでも家に帰ったその子が、いきさつを全部話して反省していたみたいで、それで、悪いのは僕だから、先生を怒らないでって親御さんに伝えてくれたんだって。」
「ふ~ん。」
「その後、別の子のご両親と連絡を取りあって、それで、代表として、お礼とこれからもお願いしますってことを改めて伝えてくれて。。。で、まだ先生、やってます。」
「すごいなぁ。良かったねぇ、理解あるご両親と、素直な子で。」
「いやいや、これも私の人徳、、、な訳ないけど、なんとか結果オーライだった。
今、皆すごく言うことを聞いてくれて、バイオリンも上達してるよ。私がお茶って言ったら、すぐに入れてくれるし、不機嫌だと顔色伺っちゃって、かわいいんだこれが。」
「あれ、、、なんかベクトル違ってきてない??」
「そう??バイオリンも精神修行の場。強いて言うなら、ガチンコ・バイオリン倶楽部、、、いや、クラッシック版の戸塚ヨットスクールみたいな(笑)」
「・・・・・・」

そんなこんなで、本性を出した途端、持ち前のカリスマと目力で秀才達を服従させ、厳しすぎるレッスンは時に泣かしてしまうこともあるそうですが、課外授業ながら誰も辞めることもなく、親御さんたちからは感謝の言葉が絶えないとか。

それにしても、彼らが一体、どんな大人になっていくのか、、、
きっと素直で頭のいい彼らのことですので、このレッスンをポジティブに咀嚼しながら真っ直ぐに成長していくことでしょう。

そして、その時に、初めて彼らは気がつくのです。そこにあったのは溢れる教育愛ではなく、ミッシェルがとびきりの『ドS』だったってことに・・・
Posted at 2009/07/17 18:14:24 | コメント(13) | トラックバック(0) | My Life | 日記

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