2022年08月03日
ある出来事がきっかけで、牛丼が食べられなくなったという、心底どうでもいい前回のブログと、その出来事を、ある社会不適合者の独白から時系列に紐解いていく、駄作と名高いフォースカインドをさらに超絶劣化させた前編です。
【とある酔いどれチー牛メタラーの独白】
「あの頃、、、、そう、思い出してきた、当時俺は22で、とにかく金がなかった。丁度、組んでいたビジュアル系バンドに結構メジャーなレコード会社からアプローチあったりして、デモテープ作るぞってすごい意気込みで、バイトを増やしていくつも掛け持ちしてさ、それでも、稼いだそばから全部、バンドに吸われて、おまけに、卒業単位が足りずに華麗に留年を決めたら、勘当扱いされて仕送り停止。塾講師やバーテンのバイト代だけではとても足りず、魂を削りながらヤ〇ザキパン工場の日雇いバイトやら怪しげな労働にいそしむも、冷蔵庫は大体いつも空っぽ、魚肉ソーセージをお湯でふやかしたり、水で薄くした小麦粉を焼いたり、その小麦粉がなくなってクリープを舐めて過ごしたり、メンバーの実家に転がり込んだり、彼女に泣きついてご飯食べさせてもらったりして、なんとか食いつないでいたのよ。
で、貧乏生活マニュアルとキン肉マンを心から愛していた俺にとって、バイトの給料日は、吉〇家で牛丼大盛りを注文することが一番の贅沢。
毎月、この日この時を楽しみに、ある給料日の深夜3時ごろかな、歩いて行ったの、いつもの吉〇家に。
で、牛丼大盛りツユダクを注文。
え?あの紅ショウガのやつ、やったのかって?いやいや、いくら貧乏生活マニュアルをレスペクトしていたとしても、さすがに、あの紅ショウガ丼だけは、レベチ過ぎて、どうしてもマネできなかったね。

その代わり、肉の表面を覆うほど七味をふりかけ、紅ショウガをバベルの塔のごとく盛り付けて食べてたんだ。
いつもシフトに入っている店員に顔を覚えられてさ、「うまい、やすい、はやい」のキャッチフレーズどころじゃないスピードで、着席&注文と同時に着丼してた。
後から知ったんだけど、あだ名?いや、二つ名もつけられてたよ。
西荻のRHJ、なんかカッコいいだろ?
バイトに知り合いがいるツレから聞いた話では、レッドホットジャンキーの略だってよ。
ま、当時、体脂肪率7%と、気味が悪いほどガリガリに痩せた長い金髪で青白い顔をしてたので、吉〇家のガラスに映った自分の顔を見て、夜勤明けのシャ〇中すっぴんニューハーフってこんな感じなんだろうなって変に納得してた。
いかんいかん、話が逸れた。
そうだ、この時の牛丼がまた格別で、まず、肉がやけに多い。
飴色に輝く玉ねぎが密度高く折り重なっている。
予想外の僥倖に、前世で徳を積んだ自分に感謝し、目の前で黄金色のオーラを放つ牛丼を手に取り、まずは、そのまま口の中へ。
美味い、、、、とんでもなく美味い、意識が飛ぶようだ。
おおっと、危ない、、あまりの空腹と美味さにビーストモードに突入し、俺の流儀を忘れて全部行くところだったぜ。
理性を取り戻し、3口ほど楽しんだ後に、七味、そして紅ショウガの出番だ。
グラミー賞の赤じゅうたんのごとく七味を敷き詰め、その上から地層を形成するかのように紅ショウガを盛り付け、あとは自分のペースで楽しむのが俺流。
月に一度の贅沢をかみしめながら、箸を進めていくと、何か、いつもと違う感覚があったのよ。
グランドの整地をするように肉と紅ショウガの位置を整えようと、真ん中付近の肉の端をつまんで引っ張ったところ、俺は、目が点になったね。
なにせ、紅ショウガの山からいくら引っ張っても、そのやたら長い肉はいつまでたってもズルズルと出てくるばかりで、端っこがちっとも見えてこない。
紅ショウガを崩さないよう細心の注意を払いながらその肉を引き摺り出し、全貌が露になった時、俺は目を疑った。
「な、何なんだ、これは、、、」
その肉は、丼の端から端に掛かるどころか、そこから更に少し余るほどに巨大な躯体を、丼の中央で横たえていたのさ。
箸を持ったまま固まること数秒。
「ま、、、まさか、、この肉は、、、」
風の噂で聞いたことがあった。
何万、何十万という牛丼の中で、ごく稀に、精肉過程において、規格外の大きさで切り出されるバラ肉が混入していると。
コアラのマーチの幸運のコアラのように実在が確認されたものではなく、ただ噂が噂を呼び、都市伝説と化していたはずだった。
しかし、目の前には、UMAか奇跡といわれる、巨大な一枚肉があったのだ。
俺は、それを「メガ肉」と呼ぶことにした。
いやもうね、過呼吸になるんじゃないかってぐらい、興奮したね。
赤目なんか目じゃないってぐらいの伝承だよ、、、、まさにメガロドンが水揚げされたんだ、俺の目の前で!!
もうさ、矢追純一かムー編集部に電話しようかと思ったよ。
ああ、すまんすまん、ちょっと取り乱しちまった。
で、俺はその一生に出会えるかどうかの、メガ肉に七味をタップリかけて、かぶりついた。
でも一口で行くのは勿体ないから、途中で噛み切ろうとしたんだ。
箸でメガ肉を掴んで引っ張ったんだけど、さすがは伝説のレリック、そう簡単に噛み切れるものじゃない。
それに、ただ力任せに引っ張っていいものでもない。
反動で紅ショウガマウンテンが崩れれば被害は甚大、ともすれば丼自体が自由落下して大惨事になることだって考えられる。
相手は伝説、神話の類なのだ。
こういう時こそ、駆け引きが大事だと教えてくれたのは、四万十川のヌシと戦う釣り吉三平じゃないか。
俺は、メガ肉を口にくわえたまま、慎重にウィークポイントを見極める作戦に出た。
五感を研ぎ澄ませ、肉の端を歯で咥えながら箸で引っ張っては緩めてをしていると、とある部分だけ肉の繊維結合が他よりも少ないポイントがあった。
「ここだ!!」
俺は、箸をそのポイントめがけて移動させると、一気にテンションをそこ集中させて勝負に出た。
歯と箸の間でグーンと伸びきったそのポイントからプツプツと筋線維が千切れる音が聞こえる。
次々に赤みと脂身が切り離され、コカ・コーラボトルのウェストのような形状となり、ついに最後に残っていた太めのスジが「プツン」という音とともに切り離されたその瞬間、
「勝った!!」と確信したの同時に、顔の左半分全体に、ビターンと伸びきった巨大なメガ肉の半身が、反動で勢いよく張り付いてきたんだ。
それがメガ肉の最後の抵抗だったってわけだ。
俺は、張り付いたメガ肉の半身を口へと誘い、優雅に咀嚼しながら、何事もなかったかのように、落ち着いておしぼりで顔にベッタリと付いたツユを拭いた。
残った半身も幸運と一緒にかみしめた。
満足だった。
至高の時を賜ったことに感謝しながら丼の残りを平らげ、「ごちそうさん、、」と席を立とうとした時、ある異変が起きた。
それがこれから起きる悲劇の始まりだということを、まだこの時は知る由もなかったのさ。
【懲りずに後編へ続く】
Posted at 2022/08/03 15:26:35 | |
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