2012年03月21日
数年前、とある知人の147GTAのハンドルを握ったことで、知らず知らずの内に脛についていたミラノの毒蛇の甘い一噛み。
その後、全身に回った神経毒は、4ビット足らずの私の中枢神経をいとも簡単に蝕み、毎夜、美しい吸気管を夢見ては目が覚め、仕事中にも耳元で艶やかなV6の調べが聞こえてくるという、飛蚊症ならぬアルファロメオ・バリトン症を発症した挙句、こうなったら『毒を食らわば皿まで』と、正常な思考と判断力を失ったまま注文書にサインしたのが、桜並木が薄桃色のベールを脱ぎ、葉桜へと衣替えを終えた2年前のこと。
家族に何の相談もなく、秘密裏に迎え入れたイタリア娘ことGTVは、まるで、「ふ~ん、ま、いつまで続くか知らないけど、よろしくね。」と幾多のパトロンを渡り歩いてきたかのような不敵さと深入りすれば火傷間違いなしの危ないフェロモンを漂わせ、
その実、不規則で爛れた生活によりド派手なルックスのところどころにできた肌荒れからは、
「今度こそ運命のオーナーでありますように。」と自らの薄幸さ故の一抹の悲しい期待が、垣間見えてしまうのでした。
そして、先日、身辺整理を終え、期待に添うことができないばかりか不義不貞を精算させられる形として、次のオーナーのもとへと背中を向けて去って行ったGTV。
後継車としてSTi A-Lineがやってきたものの、E36M3の時とはまた違った自責の念が色濃く残り、STiへの気持ちのポートフォリオが十分割り当てできずにいる今日この頃。
そこで、バタイユのマダムエドワルダ、はたまたマゾッホの毛皮を着たビーナス(ここでメタラーからのお願い。良い子のみんなは大人になってから読んでね。)を地で行くようなイタリア娘と過ごした647日間を、手淫の誹りを承知で、気持ちの区切りとして、その情念と背徳に満ちたアーカイブとして纏めておくことにいたしました。
クラシックアルファは手が出せないまでも、フォード傘下以前の、アルファロメオらしかったモダンアルファにご興味のある方、はたまた、GTVに御乗りの方への参考事例としてご覧いただければ幸甚です。
過去のブログでご紹介したものを、完全なる私の主観により、背徳度と情念度に分けて3段階にランク付けをした、いわば回顧録でもあり、目新しいものはございませんが、宜しければどうぞ。
まずは、GTVがもたらした快楽と堕落の目録から、背徳の履歴をば。
背徳度:★ これぐらいなら若干の後ろめたさが漂う程度。
2010/6/9 イタリア娘にちょっかいかけたら火傷した。(HIDのDIY交換)
2010/7/23 続く内装疾患 (エアバッグ警告灯)
2010/7/27 イタリア娘脱臼する (ドアオープナー破損)
2011/4/17 フロントガラスでトロイカ擁立(ワイパーの構造的トラブル)
2011/5/18 低床車両の憂鬱(下回りには本当に気を使いました。)
2011/8/25 「いいからとことん飲ませて」 イタリア娘の胸焼け日記(ガソリン吹きこぼし注意)
2011/9/8 メンテの秋 ~愛車の夏バテ日記プラス 残暑編~(添加剤間違い)
2011/11/1 溶けるほど愛して【GTV編】 情熱の極点で見たものは・・・(OLさんの意外な反応とは)
背徳度:★★ もしかして間違いを犯したのたか?と不安になる段階。
2010/8/2 イタリア娘の事件簿 その2 彼女の正体はアサシンだった(ブレーキホース破断)
2011/6/29 粟立つ乙女の柔肌 GTVの夏バテ日記その1(紫外線はアルファレッドの天敵)
2011/7/1 乙女の熱すぎる吐息 GTVの夏バテ日記その2(メタラーが燻製になり掛かる)
2011/7/9 「お嬢さん、落としましたよ。」 GTVの夏バテ日記その3(万有引力の実証)
2011/7/15 『見てはいけない』乙女のタブー GTVの夏バテ日記 番外編(禁忌のスクラッチシール)
2011/12/27 イタリア娘 凍傷にかかる (直ったものの原因不明のまま)
背徳度:★★★さて、ここから背徳感MAX、あまりの業の深さに打ちのめされ、「生まれて来てごめんなさい。」と自我を否定したくなるレベルです。
2010/5/30 美人薄命とはあんまりなGTVとの初夜(納車3日にして遭遇した超メジャートラブル)
2011/4/2 リア王の悲劇 二式三高地を攻略せよ(某繁華街で撃墜されました。)
2012/2/22 残りわずか(家族の知るところとなり、、、)
2012/3/13 掛け違えたボタン(ストロベリータイムが終わりを告げました。)
お次は、ハレとケの『ハレ』をご紹介。
情念度:☆☆☆~青天井
いきなりの星3つですが、イタリア娘のぶっちぎりの情念は全てにおいてハイパーインフレ!!
喜び組もたじたじの歓喜溢れるエピソードの数々です。
2010/6/23 イタリア娘のアンチエイジング プラグ交換(フィーリング激変)
2010/8/12 イタリア娘と目隠しプレイ&京美人と(アブノーマルプレイ&プチオフ)
2010/9/10 イタリア娘と過ごした100日間(100日間の極めてポジティブなインプレ)
2011/4/22 スポルティーバの鉄人(25万kmを走破した155との出会い)
2011/9/12 GTV全国オフレポ&『極』インプレ (あの台数のGTVを間に当たりにし、あまりのエロスに前立腺がもげ落ちるところでした。)
2011/9/4 こんな日は、『できるかな』をしてみた(のっぽさんをオマージュ)
2011/10/28 女盛りの秋 GTVのパワーチェックをしてみた(奇跡のカタログ値オーバー)
2011/11/14 懐かしいぞ、OPTIONサイン!! (プリメーラオーテックVerとの高速バトル)
とまあ、ここまで情感ほとばしるエピソードは枚挙にいとまがありませんが、なによりも、内外装の不世出なデザインや存在感すべてが情念の塊であり、アルファロメオのハンドルを握っていることの自己陶酔に似た高揚感に集約されるのではないかと感じ入ってしまう次第です。
こうして振り返ってみると、GTVに直接関係するブログは計34個、ご紹介できなかったエピソードも数多くあり、また、同窓会シリーズでも重要な役割を果たすなど、647日という時間のくくりだけでは語れないGTVとの日々。
それはGTVと自分との二軸で完結することはなく、そこから放射円上に広がるGTVがもたらした良き出会い、小さなことなど気にならなくなる鷹揚さ、そしてGTVに触れた誰もが上げる感嘆の声と笑顔は忘れ得ぬものであり、こと私に関して言えば、スペックやトラブルを超越するほど感情補正が著しく効く車種だったことは間違いありません。
書いていて、胸のどこかに赤剥けしたような痛みが残るあたり、まだまだリハビリが必要な気がしますが、間もなく今年の桜が開花し、新たな門出に鮮やかな祝福を添えようとする中、過ぎたことに囚われていては笑われてしまうというもの。
『もう少し先の未来、GTVが似合う伊達で洒脱な男になれたら、E36M3Limoひっくるめて迎えに行きたい。』
そう心に留め置いて、イタリアの弾丸娘ことGTVと過ごした647日の総括とさせていただきます。
【参考データ】
・647日のマイレージ
約10,000km(売却時65000km)
・平均燃費
6.7L/km(満タン計測、市街地走行8割強。エコドライブなし)
・実馬力
223.7ps / 6631rpm、25.4kg / 5898rpm(名古屋SABのシャシダイ)
・バレた時の嫁の怒り
宮刑を言い渡されたほうがマシなほどの家庭内カタストロフィー(鋭意修復中・・・)
Posted at 2012/03/21 18:40:31 | |
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GTV | 日記
2012年03月14日
GTVとの別離によってついた心の傷の瘡蓋すらできないまま迎えた本日。
主がいなくなり、ぽっかりと空いた駐車場は、私の胸の内そのもの。
イタリア娘がいたそこは、陽光に晒されたアスファルトは情事の痕跡がくまなく消毒され、やがて来るGTVの後釜を迎え入れる準備が既にできているという、まるで長期宿泊客を送りだし、翌日にはその部屋を平常営業するホテルのごとく、私の傷心を知る由もなく、ただニュートン的な時間が経過していたのでした。
そんな荒みきった私の前に現れた、マッシブでストイックなニューカマー。
そうです、STiのA-Lineが我が家にやってまいりました。

平成21年式、走行1万kmのワンオーナー、STiのリップとリアアンダーのおまけつき。
嫁の要望通り、ドノーマルの個体です。

健全かつ良く鍛えられた肉体、そして由緒ある血筋から生み出された純度100%のアスリートたる雰囲気は、艶めかしいボディラインから甘い体臭を漂わせ、視床下部へと直に訴えかけてくるエロスの化身ともいうべきGTVとは対極に位置する最たる部分。
スパークシルバーのボディカラーは、機能性のみを追求したスポーツウェアのようでもあり、張り出したフロントフェンダーは上腕二頭筋、リアフェンダーは大腿筋そのもの。

コクピット周りでの過分な装飾は一切排除され、ほどよい緊張感が纏わりついてくるあたりも、阿片屈からふらふら出てきた様なGTVの淫媚な気だるさとは違い、健全極まりなく、私自身が気後れするぐらい潔いデザイン。
カチカチと小気味よく決まる操作系も、礼儀正しい体育会系部員を思わせる節度の高さです。
ちょい乗りした印象としては、始動時に水平対向エンジンであることを意識させられる、ブルッとした身震いが一瞬起きますが、その後は、驚くほどの静寂性とスムーズな回転フィール、そして2000rpm付近から湧き上がってくるお化けトルクのお陰でイージードライブはお手の物。
ただ静かなだけでなく、4000rpmを超えた辺りに、メカニカルノイズが共鳴してクォォーンと『泣く』ポイントがあるのも嬉しい限り。
設計の古いトルコン5速ATの変則スピードは、街乗りでは不足なく、パーシャル時に若干のトルコンらしさが顔を出す程度で、マニュアル操作でのダイレクト感はツーペダルMTには及ばないながら、今まで乗ったAT車とは隔世の感でした。
4ポッドのブレンボもM3に奢った6ポッドと遜色ない制動力。
ただ、雑誌等で賛否ある硬めの足回りは、ボディ剛性と相まって私的にはOKながら、嫁にとっては結構ハードに感じたそうです。
と、なおも未練が止まらないGTVの総括をしたいとと思いつつ、ちょい乗りでは比較的好印象なSTiの詳細なインプレはこれからとして、まずは納車のご報告まで。
さて、今から少し遠回りして、嫁へのホワイトデーを買いに行かなくては!!
て、あれ!?そこに置いたはずのキーは!?
さっきまで庭で遊んでいた嫁と娘は一体??
まさかまさか、、、、、駐車場は、、、、、、、ああ、やっぱりカラになっているorz
「早く帰ってきて。あと300馬力だから、くれぐれも気をつけてね。」と嫁にメールした後、ふとアスファルトの上に目をやると、
そこに落ちていたのは、間違いなくGTVが落としていったであろう30Aのヒューズ
「あいつ、またなんか企んでいたな。」と頬が緩むのと同時に、してやったりの顔を見ることができない一抹の寂しさが肌寒い春風とともに吹き抜け、
「花粉症ってやつは、、、」
とわざとらしく目頭を押さえるメタラーの姿が目撃されていたとのことでした。。。
Posted at 2012/03/14 18:33:31 | |
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STi | 日記
2012年03月13日
人生を振り返った時、もっとも不毛な営みの筆頭に挙げられるのが「もし、、、、、していたら」「もし、、、していれば」と過ぎ去ったことを後悔し、嘆くこと。
過去のことにいくら仮定を加えたところで何一つ前に進まないと頭では分かっていながら、心についた傷が新しく深い程、無意識の内に「あの時、ああしていればと、、、」と触れざるを得ないのは、小さい頃に親から怒られて隠れた押入れや自分だけが知っている秘密基地に逃げ込みたくなるのに似た、デフォルトのペインキラーなのかもしれない。
間もなく迎えるGTVとの別れを惜しむ間もなく、先週から書斎に籠り、仕事とこの季節の恒例行事でもある確定申告で煮詰まる私に、
「父ちゃん、オレ、あの赤い車に乗りたい。」そう言って、声を掛けてきたのは11歳の息子。
「うん?赤い車って、アルファロメオのことか?」
「そうだよ。」
「今ちょっと忙しいから、また今度な。」
仕事が佳境に入り、トイレすらに行く暇すら惜しい私は、息子を一瞥してそっけなく答えると、再びPCに向かった。
ディスプレイの端には、「分かった。」と肩を落としてドアノブに手を掛けた息子の背中が映り、心が少し痛む。
しかし、折角ノッてきた仕事を中断するのは、何があっても避けたい。
「悪いな。」
そう呟いて、レポートの続きを打ち始めたのだったが、次の息子の言葉にキーボードを叩く手が止まったのでした。
「もうすぐ新しい車来るんだよね。オレ、まだ、アルファロメオ乗ったことないからさ、最後ぐらい乗りたいなって。」
「そうか、、、、お前、乗ってなかったのか。」
椅子の座面を回転させ息子のほうへと体ごと向き直った私に、息子は続けた。
「当たり前じゃん。父ちゃん隠してたし。」
「う、、、、そのことは、悪かったと思ってる。」
「母ちゃんも怒ってるよね。」
「そこんとこも良く分かってる。」
「母ちゃんは乗るもんかって言っているけど。」
「はぁ、、、ま、しょうがないな、父ちゃんがいけない事したんだから。」
「でもさ、母ちゃんが、父ちゃんを許したの、誰のお陰が分かってる?」
「それも言うのか、、、いやもう、お前には感謝の言葉もない。」
そうなのです、嫁がGTVの代わりにSTi A‐Lineを承服してくれたのは、息子の「母ちゃんも運転が楽しい車にすればいいんだよ。」との強い働きかけがあったから。
「だからさ、最後にいいでしょ?」
「今?」
「うん♪」
落胆から一変、喜びに満ち溢れた表情の息子に、再び失意を味わわせるような真似はできっこない。
「よし、行くか。」
「やった!!」
保存をクリックしてから、GTVの赤いキーをポケットに仕舞い、息子を連れて駐車場へ。
甘い一時の代償として、深夜の県道のど真ん中で無理心中しようとしたり、リスト・カットならぬブレーキホース・カット(未遂)をしてみたり、熱い吐息を吹きかけメタラーを燻製にしようとしてみたりと、直情的な心の内をそのまま投影し、眼が眩むほど鮮やかな緋色のボディカラーをたたえ、夜の蝶よろしく、お子ちゃまお断りの雰囲気すら漂うGTVを前に、
「この車、お父ちゃんのって知らなかった頃から乗りたいって思ってたんだ。」と物怖じしない息子。
「黙ってて悪かった。。。」
「で、どうやって乗るの?」とお約束のプッシュキーが分からない息子に、
「鍵穴を親指で押し込むんだよ。ほら、そこの。」
「あ、開いた。」
嬉しそうにベージュのMOMO製シートへと体を沈める息子を横目に、去来する、
『もし、最初から家族の了解を取っていれば。』との思い。
どこへ行くともなく走り出し、水温計が正位置を差したところで、スロットルを深く踏むと、
ボンネットの下からファロロロロロと高らかなバリトンが響き渡り、その歌声が一オクターブ上がった高回転域で、
「すごい、いい音!!」感嘆の声を漏らす息子。
その後、10kmほど走り、街道沿いのコンビニにGTVを滑り込ませ、飲み物を買い込んだ後、再び乗り込もうとする息子を「ちょっとこっち来いよ。」とGTVの鼻先に呼びつけて、ボンネットをOPEN。
息子に見せたかったのは、心臓部の最大のアピアランスともいうべき6本の美しい吸気管。
「この車はな、アルファロメオ最後のV6エンジンを積んでるんだぞ。」
「へー、なんか本物の心臓みたい。お父ちゃん、本当にエンジン好きだよね~」と熱気の立ち上るエンジンルームに顔を突っ込み、しげしげと眺めた後、息子がふいに漏らした一言で、私は万感極まり、無言のままGTVのハンドルを握ることしかできなくなってしまったのです。
「でも、もうお別れなんだよな。オレ、もっと沢山乗せてもらいたかった。」
この一言になんの申し開きもできない私を、GTVは、責めるでもなく、そして煽りたてるでもなく、ただ踏み込んだスロットルの分だけ饒舌に、そして時に情熱的に、私の代弁者となって、息子に応えてくれていたのでした。
それはまるで、「大人の事情ってものは、その内、分かるようになるわ。」と息子の頬に甘い吐息を吹きかけながら諭しているかのように。
そもそも最初のボタンの掛け違いは、家族に内緒でGTVを迎え入れたこと。
この日以来、頭の片隅で大きくなる「もし、最初から家族公認だったら、、、、」との非生産的な仮定。
道具である車に対して、感情移入はナンセンスだと笑われるかもしれない。
しかし、車を手放す喪失感は最初の車であるZ31からE36M3まで、分け隔てなく感じ続けてきたのと同質のもの。
ただ違うのは、どの愛車も、その周りには常に家族があり、迎え入れ、そして見送っては、「お前が生まれた時、シルバーのZで病院に行ったんだよ。」とか「青いM3、今どうしているかな。」と、今でも時々思い出しては昔話に華が咲くこと。
やがて来るその日に、家族との思い出を持たせることなくひっそりと送り出され、懐かしい話をすることすらかなわないGTVのことを思うと、申し訳なさとやるせなさに今更ながら胸がつぶれてしまう。
自らの手によって一度掛け違えたボタンは、最後まで掛け直すことができず、全て自分へと跳ね返ってくることを、身を以て知ったGTVとの別離。
帰宅し、息子を降ろした後、軽く洗車をしてから駐車場へ。
そして、春の訪れを感じさせる小春日和の中、私の手元にやってきたときと同じ姿となって、GTVは引き取られて行きました。
その後ろ姿は、「湿っぽいのはなしよ。こんなの慣れっこだから。」と、いたずらっぽく目配せしているように映り、
「そうだな、お互い、湿っぽいのは似合わないもんな。」
そう一人ごちた時、GTVのテールは坂の向こう側へと吸い込まれるように溶けていくのと同時に、家族を欺いた自らの業にうちひしがれる私の耳の奥で、ハミングし始めるアルファV6サウンド。
綿毛のように柔らかく澄み切ったその歌声は、感傷に浸る私のことなどお構いなしに、新しいオーナーを心待ちにしているかのごとく底抜けに陽気なリフレインを繰り返し、やがてフェードアウトしていったのでした。
消えゆく間際、泣き顔を見せたくないがために無理に強がっているような、ほんの小さな慟哭を残して。
Posted at 2012/03/13 15:54:13 | |
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GTV | 日記
2012年03月05日
高年式(できれば現行型)の国産車で4人がゆっくりできるATスポーツという厳しい制約が課され、さらに感知不能の嫁フィルターが加わって、難易度青天井状態のGTVの後釜探し。
Webで目ぼしい中古車を見つけては、嫁の機嫌がいいところを見計らい上梓するも、鉄板と思われたRX-8後期型を筆頭にことごとく却下され、これはGTVを内緒にしていたことへの小さな復讐であり「結論として買う車ないよね。」というメッセージかもしれないという疑心暗鬼すら芽生えてきたここ最近。
そういう私自身も、嫁フィルターを割り引いたとしても、気分が乗ってきていないのも事実。
それはなにより、GTVの放つフェロモンと華やかさに完全にやられている自分がいることの裏返しに他ならず、機能性は後付けとしか思えないピニンファリーナから与えられた艶めかしいウェッジシェイプとボディラインは、溢れ出る色香を隠そうともせず、車好きの視床下部へダイレクトに働きかけるのと同時に征服欲を掻き立てられ、
こと我が家のGTVに限って言えば、訳あって身を落とし爛れた生活を送っていてもなおも高貴さと優雅さを漂わせている、シルビア・クリステル演じる高級娼婦のよう。
私の中で、M3と棲み分けができているのは、そのキャラクターの違いが明確ゆえ。
いわば、M3は速い箱になるべく、計算尽くされた左脳の産物であるのに対し、GTVは原始的な性的欲求によって生み出された右脳の産物だったことでの共存関係が成り立っていたから。
純粋な車の性能や信頼性でいえば、現在の日本車に及ぶべくもないことは分かっていながら、
GTVとのめくるめく逢瀬によって侵された私の中枢神経は、もはや過剰な刺激でないと反応しなくなり、いつのまにか、どんなに賛美された国産スポーツのレポートを読んでも、「へぇ~」とか「ふ~ん」としか思えないほどの不感症に陥ってしまっていたのでした。
中古車情報誌のページを捲り、気持ちを奮い立たせてみても、嫁によって潰され、それを繰り返しているうちにマゾっ気が芽生えて新境地を開くこともなく、ただ惰性で続けていたGTVの後継車選び。
しかし、週末、まさかの急展開があったのです。
それは、嫁に「いい車あるといいね。」と見送られ、「どうせダメなんでしょ。」との一言をグッと呑み込みつつ、向かった近所の中古車屋。
GTスポーツの在庫も豊富で、いくつか事前に候補を伝えて見積もりの用意までしてもらっていたそこで待ち受けたのは、、、、、
まるで、若いころの火遊びを清算して、そろそろ落ち着こうかと思っていた矢先、持ちかけられたお見合い写真の中から、身持ちが堅そうだという印象だけで会った相手。
ただ、親の望む条件と世間体だけで、なんの期待もせずに臨んだお見合い当日、そこに現れた実物は、写真で見るよりもずっと魅力的だった!!を地で行く車に巡り合うとは。
その車は、よく鍛えられたアスリートでありながらも、社交界ではスマートに振る舞えるプレステージ性をも併せ持ち、目を三角にする必要はおろか、絶対性能を競うシーンは、イケイケな弟に任せておけばいい、そんな大人の余裕を持つ、国産ATスポーツ。
GTVとは対極にある、『質実剛健』といったイメージのそれは、パドルシフト、5人乗車、そして、2.5Lターボが生み出す300馬力の走りに見合ったアピアランス。
さあ、ここでドラムロール、、、と勿体ぶるまでもなく、すでにお気づきの方もいらっしゃるかと存じますが、
そうです、STiのAライン 5Doorです。
実車はH21年式、修復歴なし、走行1万km、ブレンボ装着の禁煙ワンオーナー車と出物中の出物。
早速、嫁の携帯に、画像とともに『これが最後かも。』と書き添えてメールをし、返事を待つこと数分。
ほどなくして、嫁からのメールが届いたことを知らせる振動とともに高鳴る鼓動。
怖々、メールを開けてみると、「ちょっとイカツイけど、ま、私はいいわよ。」とのお許しを頂くことができました(感涙)
気になるGTVの下取りですが、右ハン6MTの中期型の相場はあってないようなもので、相当な高値がついている個体も存在し、相対に近い形で取引されています。
翻ってうちのGTVはと申しますと、、、え~思い出すのも忍びなく、、、、その分、いろいろとオマケをしてもらい、注文書にサイン。
帰宅後、エプロン姿で出迎える嫁に、玄関の土間で「ありがとうございました。」と最敬礼。
すると、嫁は「良かったね♪」と破顔した後、「もしかして、私が運転してもM3より速いんじゃない?」と意味深なコメントを残して昼食の準備へ。
しばらくしてスパゲティ・ポモドーロが出来上がり、食卓に着いた子供たちへ鼻歌交じりにサラダを取り分ける嫁に、
「一応、300馬力だってことは頭に入れておいてね。」と、念のため釘を差すと、
「うん、分かった。そっちも忘れないでね、絶対にいじらないってこと。」
休日お昼時のほのぼのムードが一変する鋭い視線を送る嫁。
「う、ううう、うん」
思わず、どもりながら答える私に、
「ちょっと、いつまで粉チーズ掛けてるのよっ!!」
と嫁の声にはっとなって見下ろした右手の先には、トマトソースが見えない程、粉チーズが振りかけられた皿が・・・
トマトソースの味わいがすっかりチーズで打ち消されたスパゲティを咀嚼しながら頭に浮かぶ、
帰宅後ものの5分で、脊髄反射により無意識に注文したゼロスポーツのエアクリーナー
『さて、一体どうしよう。。。。』
水平対向サウンドのようにドコドコと鳴り始める鼓動が、都合、14年ぶりとなるEJターボとの幕開けを告げていたのでした。
Posted at 2012/03/05 19:12:14 | |
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My Life | 日記