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2012年12月25日 イイね!

メロウ・クリスマス

メロウ・クリスマスものの数秒で片思いに落ちた、高校1年生の春。

教室の一番隅っこに座っているのに気がついたのは、入学して2日目の自己紹介の時だった。
息苦しいような切ない痛みが胸に走り、恋をしたと自覚するのにさほど時間はかからなかった。
ライバルも多かった。
だが、夏休みが明けた文化祭の日に、全員が失恋を味わった。
一般開放でにぎわう校庭の、ポプラ並木の下で、爽やかな風を纏った背の高い他校の生徒が、彼女の笑顔を一人占めにしていたのだ。
後で、中学からの彼氏だと、隣の席の女子から聞いた。彼女のほうがベタ惚れだとも。

告白することすら叶わないのがただ悔しかった。諦めきれない思いをギターに託し、バンドに打ち込んだ。
他の女子とも付き合ってみた。
それでも、高校生活の3年間、いつも目で追っているのは彼女だった。

高校を卒業し、ようやく自分の気持ちにケリがつくと思っていた。
当時付き合っていた同じクラスの女子にそそのかされ、現役合格した大学を蹴って予備校に通うことになった挙句、ものの1ヶ月でその子にも捨てられてしまったのは、きっと気持ちを偽る半端な自分に罰が当たったからだ。
彼女は女子大生となり、別々の道へと進んだ。もう、人生が交差することはない。
まずは受験と、自分に言い聞かせた矢先、彼女は目の前に現れた。

今度は、仮面浪人をしたいと言う彼女の相談相手になっていた。
模試の受付や講義ノートを見せたりと、ただそれだけのことで、彼女と繋がっているのが嬉しかった。
自習室で、例の彼氏とまだ続いていると聞かされた時、ポプラ並木のことが浮かんで、それ以上望むまいと気持ちに軛を掛けることを忘れなかった。

彼女と出会って4回目の春、揃って、無事、東京の大学へと進むことが決まった。
今度こそ、区切りをつけるチャンスが巡って来た。
一人暮らしになったお互いの連絡先を交換することもなく、大学生活がスタートした。
バンドサークルに入り、チャラ系のテニスサークルにも出会い目的で顔を出すようになった。
夏が過ぎる頃には、バンド活動とバイトに精を出し、友人も増え、気楽な大学生活を謳歌していた。
彼女のことを思わない訳ではなかったが、徐々にその時間は減っていた。
当時、いい雰囲気になっていた女の子にも、高校時代の思い出として、彼女のことを話すことができていた。
だが、街中がクリスマスのデコレーションに包まれた頃、またしても彼女は目の前に現れたのだ。

大学デビューと称し、派手に遊ぶ輩が少なくなく、周りの女の子達も、うんざりするほどケバい化粧とファッションに身を包んでいたため、半年ぶりの彼女に、正直遭うのが怖かった。
しかし、当の彼女は、高校の時の面影そのままに、控えめなメイクをした出で立ちは、少しだけ背伸びをしているように見えた。
同時に、彼女への思いも高校の時からちっとも目減りしていないことに気付かされた。
懐かしい話に花を咲かせた後、新宿高層ビルのレストランのテーブルの向こう側で、彼女は、恋人と別れたと告げて来た。

失恋の隙間を狙ったと思われるのは本意ではなかったが、それ以上に、自分の気持ちを止めることが出来なかった。
クリスマスムード漂う夜の中央公園で、不意を突いて唇を奪ってしまってから、「どうしてこんなことするの。」と涙する彼女に、とってつけたような告白をしてしまった。
「ずっと好きだった。付き合って欲しい。」
「できない、、、V君とは、今まで通り、いいお友達でいて欲しい。」
「嘘だと思うかもしれないけど、高校1年生の時から想っていた。」
真っすぐ目を見つめながら、小さく頷く彼女に、胸の中で一つ誓った。
それは、来年のクリスマスも一緒に過ごすこと

何度か危機はあったが、次の年のクリスマスも、その次のクリスマスも、約束は破られることはなかった。

いつの間にか、彼女と過ごすクリスマスは20回を超えていた。
最初、二人で囲んでいたテーブルには、やがて、小さな椅子が置かれ、息子の笑顔が弾けた。
手狭になったマンションを引き払い、広いリビングがある家に移った頃には、クリスマスツリーの下で寝転ぶワンコの姿があった。
今、息子が座っていた小さな椅子の上では、3歳の娘がチキンを頬張っている。
切り分けたケーキの一番大きなピースを、中学生になる息子が目ざとく自分の皿へと移しているのを、ワンコがテーブルの下から見咎めていた。

眠りについた子供達の枕もとにプレゼントを置くと、クリスマスツリーが瞬くリビングで、「お疲れ様。」と微笑む、初めて一緒に過ごしたクリスマスと変わらぬ彼女が待っていた。
ワイングラスがカチリと鳴り、今年も約束が果たされたことを告げたのだった。

「うん、いつもありがとう。メリークリスマス。」
そして再び約束しよう、来年のクリスマスも、君と必ず過ごすことを。

Posted at 2012/12/25 12:25:11 | コメント(17) | トラックバック(0) | My Life | 日記

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