
今も多くのファンに愛されているオートバイ『ホンダ CB400Four』ですが、その純正マフラーが限定復刻生産されました。
当時の純正マフラーの開発製造を手掛けた【三恵技研工業株式会社(以下)】の手によって製作されていて、それを旧車・絶版バイクの専門ディーラー【ウエマツ】にて取り扱いを開始しています。
レプリカではなく“ほぼ本物”が再製作されたわけですから、『ホンダ CB400Four』のオーナーさんたちは喜んでいることでしょうね。
『ホンダ CB400Four』が新車として発売された当時の純正マフラーを開発製造した【SANKEI】による復刻で、当時と同じ素材・フォルム・構造で再生産された“こだわりあふれる逸品”です。

今や世界規模で日本の絶版車・旧車ブームが巻き起こっており、クルマでもオートバイでもそれは変わりません。
そんな中で愛好家たちを悩ませているのが補修パーツをどうすべきかが問題で、新車時から数十年が経過てメーカーから補修部品の供給が打ち切られた場合は、コンディションはもとより、オリジナルのスタイリングを維持するのは困難となってしまいます。
特にスチール製のマフラーはサビや熱害などによる経年劣化は避けられませんし、オートバイでは転倒などで傷ついたり凹んでしまうことも少なくありませんから、良い状態で維持していくのはたいへんです。
一部のクルマやオートバイでは、絶版車人気が高まる中でユーザーのニーズに応えて“復刻プロジェクト”等が行われていますが、今回はメーカーからではなく、パーツを生産していた会社が取り組んでくれているというNEWSです。

考えてみれば、40年以上前に作られたパーツ(今回はエキゾーストパイプ&マフラー)を蘇らせるなんて、それほど難しいことではないように思えてしまうのですが、実際には簡単ではないことが多いようです。
その理由が“当時と同じものを作ること”で、全く同じようなものを作ろうとしたならば、残念ながら現代の技術を活かしたとしても“それなり”または“それ以上”に手間がかかるようです。
今回の『ホンダ CB400Four』のマフラーについては、新車発売当時の純正マフラーを開発製造した【SANKEI】による“異例の取り組み”だったようです。
【SANKEI】は、国内二輪車・四輪車の純正エキゾーストパイプやマフラーを中心に、樹脂パーツの製造やメッキなどの表面処理までを手掛ける国内有数のメーカーで、国内の6工場のみならず、アメリカやインドや中国など世界17ヵ所の生産拠点を持っています。
そんな【SANKEI】が自社内では量産とは呼べない規模で、40年以上前に作られた純正マフラーを復刻するという取り組みは同社としても異例中の異例で、【SANKEI】のウェブサイト復刻プロジェクトのテーマは[温故知新]でした。

職人によるモノづくりの魂を込める工業製品の生産現場は3D・CADの登場により大きく環境が変化しました。
現在は設計から外観のデザイン、性能評価からマフラーの音の波形シミュレーションまでパソコンの画面上で完結し、そのデータはメールでやり取りすることができます。
開発陣や生産現場の職人同士が顔を合わせ、意見を交わし合ってひとつの製品を共に造り上げていくような、かつての昭和のモノづくりの現場の風景は失われつつあります。
今回のプロジェクトにおいて【SANKEI】では、かつて自社が【ホンダ】からの高い要望をクリアするため、一丸となって成し遂げた『ホンダ CB400Four』マフラーを復刻することで、当時の苦労を身をもって知り、もう一度モノづくりへの意識を新たにしようという裏のテーマを持っていたそうです。
バンク角と最低地上高を稼ぐため4本のエキゾーストパイプが一列に並ぶ集合部や、サイレンサーエンドの処理など、社内で試作の木型を何度も作り直すなどしてデザインの精度が高められました。
また、かつてないマフラーを生み出すために生産のための機械や製造手法まで、新たな手法が取り入れられ、様々なチャレンジが行われたそうです。

当時の金型はすでに廃棄処分されていたので、新たに金型を作り出しています。
社内の資料を探索したところ当時の設計図を発見し、この設計図と現物のマフラーが金型づくりの指針となっていますが、当時の設計図は手描きのもので長さやパイプ径といった2次元の寸法しか記載されていなかったので、3Dスキャナーを用いて純正マフラーを3Dデータ化しCADで設計を行い、マフラーの微妙なカーブや集合部の独特のフォルムを再現しています。
新しい金型を作る工程では、実際の製品になると純正とは微細に異なる仕上がりとなってしまい、そのたびに修正を加えて金型製作がやり直されることになったそうで、最終的には機械で製作された金型に“直接職人の手で修正を加える”ことで、当時の純正マフラーの持つ風合いや細部を再現することに成功したということです。

当時と同じ規格で自社にてクロームメッキ加工を施しており、厚みや品質も当時のホンダ純正と同等で、だからこそマフラーの刻印も実にはっきりとしているんだとか・・・。
【ホンダ】で再生産と販売の許可を得ているため、当時の純正と同じように「HONDA」のロゴが刻印されていて、1970年代の世界的名車『ホンダ CB400Four』の純正マフラーが完全復刻生産されているわけです。
なんとボルト1本までホンダ純正品を使用していて、採用サイレンサーのバンド部分などに使われているボルトの頭には独自の刻印が入った当時タイプの純正ボルトを使用しており、細部に至るまで忠実に純正クオリティを追求しています。
繊細な“魅せる溶接ビート”も再現されていて、サイレンサーエンドの細く繊細な溶接ビードは、このマフラー生産のためだけに輸入された外国製の溶接機が用いられていたそうですが、現代においても、この溶接ビードは【SANKEI】の工場でも最もハイクラスの溶接機でなければ再現できなかったようです。

オリジナルと全く同じ仕様のエキゾーストパイプ&マフラーを製作したことで、見た目のみならず新車当時のエキゾーストノートまでを現代に蘇らせることができているのだそうです。
そのサウンドは現代に残っている当時ものの純正マフラーに比べて非常に穏やかで、アイドリング付近の回転数だとエンジンの音が際立ち、エンジンの調子の善し悪しがよくわかるそうです。
そこからエンジン回転を上げ、7000回転を超えるとエキゾーストノートは一変し、胸のすくような乾いた高音を奏でるのが『ホンダ CB400Four』の大きな魅力の1つだと思います。
これこそ新車時のサウンドであり、私もそれを耳にしていた者の1人でもあるのですが、時空を超えて現代においてそのエキゾーストノートを堪能することができるのは何とも素敵なことですよね。
この『ホンダ CB400Four』の「限定復刻生産エキゾーストパイプ&マフラー」は限定300本作られているそうですが、そのうち既に100本が予約済みになっています。
今回製作された金型は量産仕様ではないため、これ以上の増産の予定は現在のところないようです。

購入希望者からは“購入したら装着せずに箱のまま保管しておきたい”という声も聞かれているらしいのですが、開発を担当した方の声としては“ぜひ自らの愛車に取り付けて新車当時のサウンドを楽しんで欲しい”と語っているそうです。
自身も『ホンダ CB400Four』のオーナーであり、熱心なファンの一人であるからこそ、そうした願いを抱いているのでしょうね。
私にとっても『ホンダ CB400Four』は憧れのオートバイの1台ですが、こうした話を聞くと羨ましいというか、素敵というか、心温まるエピソードだと思います♪