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2023年05月07日

渾名は「鳥籠」、雷光と睡蓮の狭間に~芝浦電氣扇 7017型「ガードネット仕様」(大正14年頃)

ちょいと洒落たタイトルにしてみました。
しかしこのところ芝浦ばかり、それも戦前大正期の物ばかり買っている「芝浦祭」状態でございます。
いい加減同じ型ばかりの整備も飽きてきたところではありますが、やはり見つけてしまうと見過ごせず…


という事で、今回入手の品はこちらです。



おなじみ芝浦電氣扇ですが、ファンガードが細かいタイプ。
ですが所謂「睡蓮」ではなく、青海波のような意匠でメッシュを組んであるデザインです。
誰が呼んだか、「鳥籠型」と言われてもいるものになります。



本体型式としては、以前ご紹介しました「三越特選品(睡蓮ガード)」や「煽風型ガード」と同じ7017型です。
安全性が求められ、「ファンを守るガード」から「人間を守るガード」へと設計思想が変化したものです。
このファンガードの意匠登録については、例によってガードの方に銘板が追加されています。



番号は右読みながら漢数字で書かれており、第27906号。
登録名称は「扇風機『ガードネット』」。
大正14年7月1日登録となっており、「煽風型ガード」の2か月ほど前となっています。

ここで、当方に3台集まった大正末~昭和初期のファンガードについて、年代を整理してみましょう。
機種的に先代に当たるであろう7007型も含めて古い順に並べると、以下のようになります。

・実用新案第55881号「電氣扇風機保護装置の改良」
 (大正10年3月18日登録、7007型の雷光ガード)

・意匠登録第27906号「扇風機『ガードネット』」
 (大正14年7月1日登録、鳥籠型)

・意匠登録第28521号「煽風型扇風機保護枠」
 (大正14年9月28日登録、「睡蓮」の原型)

・意匠登録第36243号「花辯型電氣扇保護枠」
 (昭和2年11月16日登録、睡蓮ガード)

このようになります。
雷光型から今回の「ガードネット」(以下、鳥籠型)までには少々開きがあり、かつ55881号は意匠登録ではなく実用新案です。
なので雷光型と言えど主たる内容は構造についてでして、そこからガードネットまでにも何かがあった可能性もあります(記憶にはありませんが…)。

とはいえ、大正末期から昭和初期にかけてファンガードが大きく進化したというのは間違いないでしょう。
参考としている論文にもありましたが、雷光型の粗さによる事故多発を受けてガードを「密」にするのが急がれた時代です。
まずは後付けの金網に始まり、続いてしっかりと作られた後付けガード(専門メーカや大阪市電気局による改修など)が登場、そしていよいよメーカとしても設計を変えてきたわけです。

三菱なら所謂「菊水ガード」、川北なら「うづまき型」等がそれぞれ登場してきたのですが、芝浦に於いて嚆矢となったのがこの「鳥籠型」ことガードネットではないかと思われます。

そして気になるのは、ガードネットと煽風型の意匠登録に2か月弱の差しかないという点です。
いくら扇風機黎明期、カンブリア爆発の如き時代と言えど、モデルチェンジにしてはあまりにも短い気がします。
現存数からそれを測るのは間違いかもしれませんが、これまで見てきた出品数の印象から言えばこの鳥籠型の方が多いと思います。
12吋・16吋とも希少ではありながら、それなりのペースで出てくるんです。
煽風型ガードにおいては、16吋は見た記憶すらありませぬ。あったとしたら欲しいものです。

更に言えば、この鳥籠型…16吋の方はもうかなり前に手元に来ております。



こちら。撮影地は地元仙台から遠く離れた尾張の国は小牧市。
素直に愛知って言えよ。
最初の就職先の借り上げアパートでの撮影でした。
タイムスタンプは2009年7月11日ですので、もう14年も前になります。
早かったような、長かったような。

当時レストアを行っておりますが、その後この個体のみ「ガードにカビが生える」という状態異常に罹っておりますので、今度再整備のついでに洗いましょうか。

で、この16吋の方は型式名がC-7018。
頭に「C-」が付いて羽根が黒塗装なのは昭和期のモデルの特徴らしいです。
なので、いくら何でも2か月しか製造しなかった…という事は無いように思います。
果たしてどうでしょうか? これまた真相はは闇の中。忘却の彼方です。
私としては、型式名は同じながらガードのデザイン上のバリエーションとして、同時展開していたと考えるのが自然な気がします。


…と、今回の蘊蓄はここまでとしておきましょうか。
以下はいつも通りのレストアコーナーですが、直近で3台目ともなる7017型ですので、ある程度サラっと終わらせるかもしれません…
変わった所があれば取り上げてみます。





何はともあれ分解から。
順当にファンを外しますが、少々きついようです。
取り付け時には軸を少し削った方が良いかもしれません。
ガードネットは背面が平坦なので、後光の射しているような見た目になります。
蒸気機関車のスポーク動輪のようでもあり、某日輪刀の鍔のようでもあり。
この個体、時代的には最終決戦から10年後くらいでしょうか。
はて何の話やら。



裏蓋です。
この頃までは新品時点で電源コードが付かなかったので、取り付けに便利なよう裏蓋にスライド窓があります。
この機構は実用新案第42413号として、大正5年12月4日出願、翌6年2月15日登録となっています。
故に、この窓のある芝浦製は電源コードにはスプリングが付きませぬ。



開けました。中々綺麗です。




碍盤の上面。ほぼオリジナルなようですが、モートルに行く配線の色が不明。



という事で適当に割り振って位置を明示しときます。



次はエンドベルとギアボックス。
芝浦はギアボックスを先に外せるのでそうしてしまいます。



無事開きました…が、何か木くずか稿か、そんな物が溜まっていました。



ギアボックスです。
これの清掃がいつも面倒ですが…まぁ仕方あるまい。





珍しい位にこれでもかとグリスが詰まっていました。
しかし良い感じに固まっていたので、ゴソッと塊で取れてくれました。



こちらはロータを抜いたモートルケース前方の軸受け。
初めてのケースですが、ロータの圧縮紙製シムがこの位置にありました。
ガタ取りでしょうか。



後は本体を磨いたり何だりに入りますが、その前にモートル配線の交換を。



7000番台以降の戦前芝浦機は、どうもこの部分が硬化するのが多いようです。
折角オリジナルの配線が生きていても、交換せざるを得ない事がほとんどです。



サクッと交換。今回の色分けは適当なので、他とは合っていない可能性大です。
しかし分かればどうという事は無い。
違いがあって見分けが付けば良いのです。



ギアボックスも綺麗になりました。



と、ここで発見が。
ギアボックスを固定する3本のビスの内1本に、謎のすり割り加工がされていました。
何を意味するのか、はたまた何も意味はない単なる手違いor転用なのか。



碍盤を戻します。
今回、塗装は全体に細かい皹がありましたが概ね良好で、少々磨いて半艶程度としておきました。



電源コードも付属の当時モノを再利用できました。
目測2.5m程度と長かったので、外装の無事な部分を切り出しても2m弱は残りました。





続いて羽根の磨き。
これがまた面倒なんだよな…短期間に何台もやっていると、達成感より面倒の方が勝ります。流石に。





そんな思いからか、この途中経過を撮ったきり、仕上がり状態はすっかり忘れてしまいました。
何だか適当な扱いになって申し訳ないなぁ。



こちらはエンブレム。いつものように磨き、印刻部の塗装は補修します。



綺麗になりました。



と同時に、意匠登録の銘板も仕上げます。





こちらも輝きを取り戻しました。
後は本体の銘板。なるべく薄くしないように…



こんな程度かな。



という事で完成しました。
ガードを固定する金具は元よりありませんで、銅線で縛って留めております。



電源コード。プラグも再利用できました。


そんなこんなで駆け足となりましたが、それも素性の良い個体だったからこそ。
手を付けてみて思いましたが、珍しく癖のある劣化箇所が無い良品でした。
…これでガードの留め金具も揃ってれば…と言ってはいけないな。

では最後に一枚…



同じ「ガードネット」仕様の16吋、C-7018型と。
もう10年以上前に入手していたC-7018、いつかこう並べたいという思いを持ちつつ、すっかり埋もれておりました。
撮影に当たって再整備を行い、モートルへ行く配線にエンパイヤチューブを被せました。



次回…
多分また芝浦です。
また時代を遡り、大正9年頃と思われる2035型になりそうです。
真鍮無垢羽根、しかも16吋故…磨きのやる気が既に起きませぬ。
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Posted at 2023/05/07 22:26:30

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