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2023年11月05日

雷光ガードの小っちゃい奴 芝浦製作所6吋電気扇 2120形 大正13年頃

前回最後の予告に反して、更に時代を遡ってみます。
というのも少々事情がございまして…

10月は職場で年に一度の某イベントがあり、その主催側である私は特に忙しいのです。
加えて家族が急遽入院する事となり、これがまたお互い人生初だったために扇風機その他に触れる暇がなかなか取れませんでした。

そしてこのエントリの内容をスタートした時点でも日常には戻っておらず。
なのでまとまった作業時間が取りずらい状況でございます。

で、ふと…手軽に済ませられる奴だったらできるかなぁ、という発想に。
ならば相応しい奴が居ます。
もう何年も、買ったままディスプレイしていた放置個体が。



こちら。
前回が16吋だったのに、いきなり10吋マイナスの6吋型です。
カタログナンバーは2120。
最大から最小へ。

三菱の小型は時々見かけますが、芝浦は滅多に出ないのではないかと。
実際、これを買った当時から現在まで3年が経過していますが、その間の出品はほぼ記憶にございません。
三菱は9吋ですが更に小さい6吋なので本当に小っちゃい。

で、モートルは三菱同様に交直両用型。
100V商用電源の他、DC100Vでも動きます。
DC100Vというと一般には馴染みのない電源ですが、現在では下記の用途があるようです。

・発・変電所用電源
・非常用照明電源
・計装機器用電源
・防災・防犯システム用電源
・上下水道設備用電源

身近なDC扇風機ならば、鉄道の非冷房車の天井扇でしょうか(現代では希少かもしれませんが…)。
また、トラック・バスにもDC24Vのコンセントが付いています。

そして古くからDC100Vが使われていたのが船舶。
現在もどうやらあるようですが、ちょいと調べたところDC100Vが主流の時代は大体昭和10年以前らしい。
それ以降は船内でも電化が進み、発電機容量の大型化も相まってDC225Vになったそうです。
同じワッテージの負荷で比べても、電源を高圧化して電流値を下げれば損失が少なく電線を細くできます。
線路長を長く取るため、これまた大型車と同じ理由かと思われます。


さて、この機種の年代推測をしたいところですが、まず資料は無し。
なのでヒントから探ってみましょう。
外見上からは下記が読み取れます。

・ガードが雷光型デザイン
・羽根が真鍮無垢仕上げ
・銘板表記が「Fan Motor」
・型式名が2000番台
・逓信省型式認定番号無し

これらの特徴は芝浦電氣扇なら大正期を代表するものですが、手元にある大正8年のカタログにはこの機種は登場していません。
なので少なくとも大正8年より後の製品と予測が立ちます。
それで上記の船の電源事情と認定番号が無い事を考えると、昭和10年以前であろうとも思われます。

そしてこれは芝浦の製品なので、元ネタはGEにある筈…そう思いGEの6吋ファンを調べたところ、大正13年に登場しているようです。
細かい差異はあれど似た特徴がありまして、この2120型はそれを基に開発されたのではと考えられます。

よって、早くとも大正13年頃かなと予想してみました。
しっかりした資料が見つかると嬉しいですが…これが中々難しい。


それではレストアに入りましょうか。
今回は部品点数自体が少ないので分解の手間はかかりませんが、ネックになろうかと思われるのはカーボンブラシでしょう。
当然純正品などとうに絶滅しているでしょうから。
まぁ何かしら、電動工具用でも削って作ればよろしいであろうが。



何をするにも分解から。
現状不動なので、その原因を探りつつバラします。
いきなり裏面ですが…蓋すらありません。

当時の電気スタンドもそうですが、鉄鋳物で内部がスカスカです。
この機種は電源コードの中間スイッチでON/OFFするだけで碍盤がありません。なので当然ですね。



ファンが固着していたので、油の浸透を待ちつつエンドベルから着手します。
ビス2本を外すだけの簡単なお仕事。



取れました。
ブラシ式なのでロータに巻き線があります。
この時点で良い感じにファンが取れてくれました。



ロータ。結構汚れてます。
カーボンブラシを削ってたんだから当然か。
導通は問題無さそうなのでクリーニングしましょう。



こちらはモートルケースのフロント側。
両側へ出ている筒にカーボンブラシが入りますが、ハウジングを止めるイモネジはあったものの蓋は無し。
片方だけ木片を削ったものを詰めてありました。
本来の形状はやや鍔の付いた蓋らしく、ハウジング側にある穴と一緒に割ピンを通していたようです。
蓋は適当に木の丸棒辺りで作りましょうか。



で、件のブラシがこれ。
片方が無事だったのは何よりで、この寸法を基に何とかしたいと思います。
もう片方は折れていたため、不動の直接の原因はこれかもしれません。
ブラシホルダと電源線のそれぞれ片方ずつは導通が取れましたので、コイル断線は無いようです。
一安心。



銘板です。
しっかり酸化していて読みにくいですね。
ここも後で磨きます。



まずはエンドベルから行きましょう。



やはりと言うか何と言うか、漆の上に一層あるようで、それを剥ぐと輝きます。
何だろう…塗装なのかコーティング的なものなのか分かりませんが、大正終わり~戦前の黒い芝浦はこうなんです。



ロータも綺麗になりました。



お次はモートルケース。
入隅が多く磨くのには結構厭らしい造り。



面積の少なさに助けられてこの通り。



ついでに銘板も綺麗になりました。



どんどん行きましょう。
小さな基台です。



こんな感じでしょう。
ゴムブッシュは電線の引き込み部分にしかありませんでしたが、オリジナルでは上側の穴にもあったようです。
ただ穴が小さく、その一方で電源線がそのまま通りますので、今では適合するブッシュは無いかもしれません。
少なくともウチには無い。

お次はいよいよモートル(というよりブラシ)の再生と行きますが…



これを使います。建築用のΦ2シャープペンの芯。
カーボンブラシは要はグラファイトの棒な訳ですから、鉛筆の芯でいいんです。
しかも最近は便利な事に、1㎜を超える太い芯のシャープが出ています。
鉛筆をカチ割る必要はありません。

で、今回の純正ブラシは4mm角くらいの細長い形状でして、そんな形の既製品は多分ありません。
電動工具用を加工するにしても、長さ方向が意外とネックになります。
なのでこれを2本まとめて入れ込んで、スプリングで押してしまえばOKでしょう。
接触して通電すればOKなのですから、過程や方法などどうでも良いのです。



という事で引き出し線を交換します。
過去に補修か交換歴があるようで、絶縁テープがしっかり巻かれていて少々不格好。
ちゃんとテープの見えないようやり直します。
まずは既存テープの剥がし方から。



何とハンダ無し。
捩っただけ。



こんなもんでしょうか。



で、こうなります。
後はちょっとコードを折り返して引き出せば大丈夫なはず。



無事にエンドベルが閉まったのでシャー芯ブラシの取り付け。
スプリングは純正を外してやや延ばしました。



蓋はこんな感じに。
Φ8丸棒をやや細めてピン穴を開け、色合わせと時代感の演出に炙ってみました。



それを銅線でロックして完了。
良い感じじゃないでしょうか。



中間スイッチはボタンが両側とも失われ、内部も錆が来ていたので交換します。



そしてファンです。
当時塗られた油の濃淡で酸化の度合いが異なり、模様が付いています。
構造は川崎オルビットの初期型と同じ、一対の羽根を十字に重ねたタイプです。



酸化膜落とし完了。
ここからの磨きが大正期の機種で一番面倒&仕上がると嬉しい作業です。



とか言っていたらものの45分で完了。
状態の良さも然ることながら、面積の少なさが一番効きました。



本体組み立て。
ブラシホルダがちょっと厳つい。



本体の最後はガードのエンブレム。
SEWマークも小っちゃい。



元の塗装が厚く残っており、磨くだけで綺麗になりました。
スポークと外周は鉄製でしたので、その点から見ても大正後半の機種なのは間違いなさそうです。



プラグは恒例のナショナルWH4000になっていましたので、トキワの縞模様に交換。
そのままでも良かったのですが、何となく芝浦製の機種に松下プラグというのが違和感ありまして。



そして完成。
可愛いサイズです。



シャー芯ブラシの実力。
何事も無かったかのように動作します。
風量は穏やかで、サイズ的にも現代のUSB扇風機的な感じ。
ハンダ作業の際に煙を流すのにちょうど良いかもしれません。
ブラシの当たりが出れば、動作はもう少し変わって来るかも。



三菱の9吋と並べて。
芝浦の方は本当に手の平サイズです。



そして同社卓上用最大の16吋、2025型(大正8年製)と共に。
10吋も違うと本体サイズもこんなに差が出ます。
親子みたいですね。



なので、12吋の2020型も加えれば家族写真になります。
三菱MKW~初号扇しかり、この並びも今では貴重だと思います。



さて…ここ一か月、家族の2回に渡る入院やら職場のイベントやらで色々ありました。
そして極めつけは長年お付き合いのあったディーラの倒産。
パジェロとエクリプスクロスを見てもらっていた正規ディーラさんでしたが、いきなり倒産してしまいました。

それを知ったのが退院する家族を迎えに行った帰りという衝撃よ。
別店舗に通っていた上司ofエボⅣ乗りから電話があり、何かと思えば緊急で知らせてくれたのです。

というのもその前日、つまり倒産の翌日に点検入庫を予約していて、行ってみたら「定休日」だったので「変だなァ」と思っていたところでした。
仕事の合間に点検の話をしていたので知らせてくださったのでした。

…道理でいつも社用車やら点検待ちやらが停めてある場所も、ガランとしていたわけだ。

しかしこれからどこへ通えば良いのやら。
これまでの店舗よりやや近い場所にも三菱ディーラはありますが、別の会社なんです。
まぁ自工からするとそちらが本流らしいのですが(この辺は内々で聞いていた会社ごとの事情なので詳しくは伏せておきます)…

一応、方針が決まり次第個別に連絡となっているので、自分で別店舗へ飛び込む前に連絡を待つべきかなぁ。
如何したものか…

パジェロは年明け早々に車検なので、それまでには諸々の方針が決まらないと困ります。
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Posted at 2023/11/05 19:46:45

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