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菊菱工廠のブログ一覧

2025年02月23日 イイね!

スタンド型電子コンパックの初代 三菱電機 R35-SN 昭和44年

今回のレストア対象は、2台連続となる電子コンパックでございます。
前回のR30-SSの前年となる、昭和44年デビューのR35-SN。



ニコイチ修理のため2台用意。
ファンガードの無い方が部品取りですが、実は当初は逆のつもりでした。
部品取り機を買ってみたら、そちらの方が状態が良かったためガードを移植。

ファン径35cmで、首を伸ばすと140cm弱になるスタンドファンです。
仰角調整ネジの付くネックピースより上は、30cmファンの機種と共通部品が多数。
故に30cmファンも取り付け可能で…部品取りにした方は当初そうなっていました。
買ってから気づいて、後年の機種を買って移植した挙句の部品取り化。
可哀想な事をしたなぁ…一部は糧となりますので、有難く使わせていただきましょう。


本機は電子コンパックシリーズとしては初の大型機となります。
この後二代続くR35-SN系の初代です。

今の所確認できているスタンドタイプの電子コンパックは、このR35-SN~SN3の3種に限るようです。
SN3はSN2をベースにしたマイナーチェンジ版のため、電子コンパックの初代にして30cmお座敷扇であるR30-SXと同様、「初代だけ別設計」です。

その後は通常のプッシュスイッチなりに纏まったようですが、人間が立った状態でスイッチが手~目線の位置に来るスタンドファンの方が、何となく電子スイッチに向いている気がします。
重心が高くなるため、プッシュよりもタッチの方が軽く操作できるという点からも。
それでもあまり流行らず終息したという事は、やはりメリットが大きくなかったのでしょうか。

こう考えてみると、生物の進化を辿るかのようですね。



当時のカタログも手元にあります。
以前レストアしたR30-SX2にてご紹介したものです。
その中のシリーズ一覧に本機が載っています。
というか、このカタログで存在を知りました。

「豪華な洋間・応接間にふさわしい電子スイッチがついた洋間扇の超高級タイプです」

との事。
分類は「35cm高級洋間扇」。
ファン色はブルーのみです。
電子スイッチは「風速順送式」となっており、結果的に風速選択式はこのカタログでメインを飾っているSX2だけ。
更にその初期型に限られるようです。

何故そうなったのかは不明ながら、一つの仮説として考えているのは、誤動作を取り切れなかったという事。
以前レストアした個体が正にこのカタログの外見のスイッチ(数種バリエーションがあります)でしたが、風速を選んだ後に電子スイッチを無効化(固定モード)としないと、暫くの後、勝手にレンジが切り替わってしまうのです。
それはもうランダムにガチャガチャと。事情を知らなければ完全なオカルト状態。

てっきりプリント基板上のキャパシタ劣化かと思いきや、交換しても収まらず。
コールドスタートからは少々時間を置いて起きる事から、電子部品の温度特性に思えます。

そして同じSX2にも風速順送式があったり、選択式でもスイッチ形状が数種あったりするため、当時の三菱電機が「諸々努力した結果、選択式はダメでした」と結論付けたストーリーが見えてくるのです。
まぁ完全な妄想ですけれども…


さて、この個体…大型機ですのでどう進めましょうか。
コンパックの利点として操作部から上下が簡単に分離できますので、先にどちらに手を付けるかが迷いどころです。
何となく普段と違う所から手を付けたいので、やはり基台部分でしょうか。
その後、合体させて上部を手入れすればスマートかしら。
ではそうしましょう。

…誰と話してんだ。



という事で分離。
裏面を開けていきます。
スタンドファンの特徴の一つとしてキャスタを装備しており、三菱電機ではローラベースと呼びます。
似た機構として、東芝のロータリーベースがありますね。

キャスタはゴム製のため、経年劣化で罅割れと歪みが出ています。要交換。
しかし、ハンマーキャスタ製とあって規格品かと思いきや、ビス穴ピッチの長い方が33㎜という変なサイズ。
短い方は24㎜なので、今なら30×24が売っているのですが…いきなり壁です。
仕方ないので、近い寸法の車輪に打ち換えるか?

…と思ったところで閃く。
「取付穴を片方切ってしまえば良いじゃない」と。
それでワッシャを挟んで締めてしまえば問題無いのでは?
という事で、打ち換え用の車輪も一応用意しつつ、30×24mmピッチの物を用意する方向。
その車輪は7mm大きいですが…半径で3.5mmなら、恐らく底板に干渉はしないでしょう。
したらその時に対策を考えれば。



裏蓋を開けました。
コード巻き機構が無いので実にシンプル。
…そして汚ねぇ。

普段と違う異臭(油臭いというより刺激臭に近い)がしていましたが、錆が混じったせいでしょうか。
或いは裏面に砂が少々付いていた事から、一時屋外か半屋外(納屋的な)にあり、雨や湿気が入った可能性。
そこはかとない雑巾臭。

とはいえこの汚れ、冷静に見れば唯のグリスです。
見た目は焦げ付いた鍋のようですが、首の伸縮機構で配線を滑らせるためのグリス。
このまま置いておくのも嫌なので…



早々に清掃。
臭いも消えて、触っても汚れないので一安心です。



そして首も分離します。
主目的は首の交換。付け根のガーニッシュ取り外しと清掃はいわばオマケ。
今回はニコイチ修理ですので良いとこ取りする訳ですが、全体的に良い感じのこの個体、どういう訳か首の下半分(塗装部分)はもう1台の方が奇麗。
特に痛いのが正面にガリ傷がある事。

なので交換しますが…大型機故にベースと分離できる構造で助かりました。
普通の30cmクラスでは基台として一体成型されているため、基台そのものを換えるしかありません。

そうなると加飾パーツの移植になりますから、難易度と手間が一気に爆上がりします。
特にヘアライン仕上げの飾りパネル等、広い面積を両面テープ止めしてある奴。
奇麗に剥がすのが至難の業なので、安易にやると却って見た目を損ねてしまいます。
その辺の状態の良し悪しと、購入時の引きの良さが大事になってきます。



向かって右が外したもの、左が着けるもの。
共に正面を上に向けています。
汚れは同等ながら傷の有無が歴然。

なお着ける方…当初はロックビスを外しても首が上がって来ず一瞬困惑。
一端操作部から上を戻して引っ張り出したところ、何とパイプが曲がっていました。
バタンと倒したとか、横倒し状態で荷重をかけた(売りに出る前の回収時とか)かしら。
ファンガードやモートルカバーが無傷だった点からすると後者かも。

で、それは素直にパワーで解決。
山なりになる向きに倒して体重をかけたら直りました。



首の付け替え前にベースは洗剤で洗いましたが、結構な砂が出てきました。
乾燥中に「縁に巻いてあるガーニッシュの隙間が乾かないな」と思い直し、結局外してもう一度洗う事に。

すると隙間にまたまた砂が。
そしてやはり雑巾のような臭いが…外して良かった。
そりゃいつまでも床がザラザラする訳だ。



買ってきましたキャスタ。
少々大きいですが仮合わせしたら問題無し。
これを…



こうしてビスが通るように。
穴からずれる分はワッシャで押さえてしまいます。



普通にM4ワッシャでOKでした。
ビスもオリジナルのまま。





ネックの伸縮部ガーニッシュもこの通り。
メッキの錆び落としは何度やっても気持ちいい。
なおこの部分、メーカ次第では内部のスプリングの押えも兼ねているので、取外しは慎重に。

三菱では、30cm系は無関係、本機はビス2本が兼用(内部にもう2本、固定専用のビスがあり)。
完全にガーニッシュだけで押さえている例としては、富士電機OEM時代のゼネラル ハイクール等。



これで基台は完了。
ようやく折り返しにしてメイン作業に入ります。
首を縮めれば分解に丁度良い高さ。



ファンには取り付け方法の指示ラベルが残っていました。
貴重品です。
剥がしますが保管しておきます。





後は前回のR30-SSや昨年のR30-SX2と同じ。
劣化のほぼ見られないモートルカバーが嬉しいですね。

時代時代で各社の長短が出るものですが、この年代の三菱はモートルカバーがガサガサになります。
三洋は黄ばむけど粉吹きはしない印象。
ちょっとした素材の違いなんでしょうけれども…



開けました。
全く同じかと思いきや、早速違いに遭遇。
35㎝ファンとそのファンガードで重くなる分、カウンターウェイトが載っています。
キャパシタも4μFではなく5.2μF。線も太い。



モートル配線も4本です。極数が違うものと思われます。
ファン径5cmの差とはいえ、しっかり設計も変えてあるのですね。
フロアファンの部類という事で回転数(風量)のチューニングが違うのかも。



とりあえずカウンターウェイトを取りました。
…と、交換用キャパシタに5μFが無く、仕方なしに3+2にする事となりました。
さて、どうマウントしたら宜しいか。



これでどうだ。4μFと同じギアボックス上と順正位置の併用。

仮にウェイトを置いてみれば、見事なまでに神がかったクリアランスでした。
なおこれ、純正の取り付け位置は、30cm系の4μFだと大きくてカバーがつっかえるため無理な場所。
2μFのサイズでギリギリ収まりそうな感じでした。
このまま進みましょう。



首振り機構などはR-30系と全く同じなので割愛。
モートルを外してネックピースまで至れば、カバーが一部内側に入っているのを発見。
製造時からなのか、後から何かあったのか。



スプリングのハジケに気を付けつつ分解。
今回はグリスの変質が少々変わった方面に行ってまして、透き通ったままロウの如く硬くなっていました。
それでも戦前機よりはずっと楽に落ちましたので、サッとクリーニング完了。
次はプレスでネックピースのピン抜きをします。



抜けましたのでテンションスプリングの位置確認。



ところ変わって伸縮する首との接点へ。
鉄球と窪みによるラッチがある通り、本当はここで左右に向きを調整できます。
しかしここもまたグリスがロウか飴のようになっており、ほぼ固着しておりました。



続いて操作部です。
全体は大型ながら、首の一部に位置するため操作部はコンパクト。
この中にタイマとステッピングリレー、制御基板が収まっています。



電子スイッチとインジケータ。
この型のインジケータは、どうも経年でクラックが入るのが癖のようです。
実際に見てみればゲート(成型の際、樹脂を流し込む湯口の部分)から放射状になるようで、樹脂の流れに沿っての事のようですね。

例に漏れず本機も出てはいながら、良い感じに軽度な様子。
よく見ると背景にレザー調のシートが入っているのも、余計そう見せるのかもしれません。



内部の下側。ステッピングリレー付近。
この後で電子スイッチの錆び取り等々やるのですが…
これ、スイッチは溶着で固定してありますね。
タッチスイッチと言えどプラパーツに銅箔+クロームメッキなので。
最後までは外さずにやりますか。



ここまでで外したメッキパーツ達。
錆び落としを行います。



ギアボックス内は普通。



清掃完了。30cm系と全く同じ。



ちょっと眺めを変えてみたり。



電子スイッチの錆び取り中。
ふき取りで済ませるため、垂れないよう薄く塗ってます。



完了。



インジケータのレンズとレザー調遮光シート。
横並びだと余計に信号機っぽいですね。



クラックは現状この位。



作業も大詰め。モートルカバー清掃へ。
仕上りは撮り忘れ…



組みあがってきました。
本当にちょうど良い高さ。



キャパシタとカウンターウェイトの取り付け完了。
ウェイトの存在を忘れて配線したため、少々スマートさに欠ける取り回しとなりました。





ファンを磨いて取り付けたら完成です。
なかなかボリュームのある作業でした。



1速運転中。
インジケータのクラックは、組んでみると気にならない程度。

普段戦前型に慣れていると、この頃既に当たり前だった「1速が最低速」に一瞬だけ戸惑います。
風量は35cmファンだけあって、強力と言う程ではありません。

しかしそれが相応と言うもので、然程離れない距離で風呂上りに涼むには良さそうです。
今は寒さの盛りのため最も縁遠い季節ですが、あと5ヶ月ほど先…今年の夏の夜はこれですね。
せっかくスタンドファンなので、毎年にしても良いかも。
Posted at 2025/02/23 22:55:59 | コメント(0) | トラックバック(0) | アンティーク家電 | 趣味
2025年02月11日 イイね!

ルーフの進捗状況、リアゲートのスピーカ穴埋め

只今絶賛ボデー補修中のサバー君。
来るべき納車日を夢見つつ、1月の連休にメタルワーク他の写真をいただいて早一か月。
もしかしてこの変則連休で来るかなぁ…と思っていたら続報をいただきました。

ルーフの補修を先に決めてしまう方針のようで、その進捗状況の写真です。









ほぼサフで覆われた状態。もう少しで全部の面が出そうといったところでしょうか。
鉄板を大きく貼り直した左Dピラーの他、ルーフの補強リブが始まるキワ(前後ドアの境目辺り、純正ルーフラックをOPで選ぶと付く部分の始まり)を2か所、更にパテ修正中。

ルーフマーカ―は一旦ビス穴を埋めてしまうようですね。
同タイプとはいえ元のビス穴の状態が分からないので、その方が良いと判断したのでしょう。

…そうか。こうしておくとマーカーのベースは貼り付けるだけで良いので、雨漏れや腐食のリスクが大幅に減りますね。
配線穴も防水しているでしょうけれども、更にベースをシールして付けてしまえばもっと効果的ですし。



ちょっと引いた画もいただきました。
こちら側のホイールが写っている写真は初でしたが、最後に実車を見た時に履いていたG30シェビーバンのメッキホイールではなく、左側と同じエコノライン純正に揃っています。
またよーく見ると、フロントフェンダ後端はこれから再生が始まるようです。
ここまで来たら急ぎませんので、予算と時間の許す限り納得できる仕事をしていただければと思います。





そしてこちらも準備を進めます。
リアゲートの内張り。
昨年9月末に引き取ってきた時の写真です。
後付けスピーカの大穴が開いていますので、これを塞ぎます。

前オーナー様に何か言うつもりは全く無い、という前提ですが…
ここにスピーカがあると、リアゲートの利便性が相当落ちる気がします。
折角荷物の仮置きができる所ですから。

後は単に、オーディオはマトモに聞こえればよろしいというスタンスなので。
前車パジェロはベースグレードだったため、そもそもはAMラジオに運転席側シングルスピーカ。
それをランサーセディアのCDデッキに換えて、スピーカを左右にしただけで十分でした。
音響に拘っても聴く物が無いっちゃぁ無い。有るっちゃぁ有るんですが。どっちだい?

いえ、そもそも音楽を聴く事があまり無い人というだけ。
ラジオも別に聞きたい訳ではないので、自分が運転する時は基本無音です。
エンジンや排気の他、外の環境音があれば良いんです。
何かかけるのは余程気分の乗った時くらい。

音楽については昔からそうでして、つい最近までポータブルのプレーヤも持っていませんでした。
今持ってるのも中古で、年に数回使うかどうか。
それも専ら慣れた作業のBGMで、外出中に使った事は一度も無し。
歴代携帯にも着信音用に加工した音源しか入れてません。

携帯と言えば、スマートフォンはmp3をそのまま着信設定できて楽ですよね…
フィーチャーフォン時代はその端末で撮った動画に偽装したり、特定のビットレートと容量以下じゃないとダメだったりしたもんです。
所謂「自作着うた」。データの入れる場所とかファイル名にも、端末のメーカ別に様式があった筈。
無理矢理MMFにして低音質で我慢したりとか。

動画データが着信設定できるかは機種次第で、自作データの着信設定を一切受け付けてくれないものもありました。
ソニエリは一部バグを突く以外厳しかった記憶。
自分が主に使ってた三洋は、ある程度緩かったなぁ。
MIDIを加工してMMFにして…とかもよくやった。携帯の音源チップがMA5とMA7で音が変わるとか言って。



脱線しました。
自分語りはこの位にして、昨年のお浚い。
純正カーペットは仕方なく張り替えになりますので、まずは撤去から。
剥がすのは簡単でしたが…



接着剤の撤去がまぁ大変。
魔法が切実に欲しくなる位には。
この黒いのは恐らくカーペットの裏材で、下には更に接着剤が居る訳です。



ここからが最近の事。
もう大分進んだ段階ですが、黄色っぽい接着剤が全面に塗ってある他、その下には大まかながら白く硬い接着剤も見えます。

奥に見えてるBASURI用OKDJモジュールは、匂わせでも何でもない写り込み。
モジュールテスタで時々音を聞くので近くに置いているだけ。

これらを除くべく、巾140cmほどの広大な面積をひたすらスクレーパがけしてました。
途中からはパーツクリーナでふやかしたものの…肩と腕は無事痛くなりました。
下地が樹脂なので下手に電動工具は使えません。まぁどうせカーペット貼るので、試しても良かったかもしれませんが…



これが最後に残った接着剤。
何となくボンドG10とか、その辺っぽい感じ。
でもあれってPPには効かないよなぁ。



という事で除去完了。
お次は板を切り出して穴を埋めます。
ここが工夫のしどころかと思います。



大穴を裏面から。
バリもあります。



用意したのは同じPPの板。
接着は難しいと言われるものの、なるべく同じ性質の素材にした方が良いかなと思い。
元の板厚は概ね2.5mm程のようでしたので、3mmを選択しています。



それを各穴から型取りして加工。
各々真円じゃないので、左右・表裏を決めておいた方がピッタリ行く筈。
切り出しはジグソーです。

仮止めは半田ごてで溶かして繋げばOK。
この時点で予想以上に強くなっています。
参考は海外DIY系動画のバンパー補修。
撚線の芯を埋め込んだり、ホットステープルがあれば尚強いでしょう。



表はツラになるよう気を付けましたので、尚の事綺麗。
これまた予想以上の仕上り。

後は裏から補強の板を当てましょう。そちらは接着剤で。
最近はPPでも行ける接着剤が売っています。
…苦労して剥がした当時の接着剤は何者だったんだろうか。やっぱりG10とかG17の仲間かな。



という事でテスト。
端材から更に小さくテストピースを切り出して、接着剤の強さを見ます。
使うのはボンド ウルトラ多用途SUプレミアム ソフト。

この写真の前には、ついでに手持ちのG10を試しました。
PP不可にしては思った程弱くはないものの、やはり剥がそうとすると奇麗に剥がれます。
ただ、表面が荒れていると結構頑張ってくれるようです。
なので表のカーペットはG10で行けそう。
机の天板を貼った時のが未開封で1本残ってます。
内張りの方、カーペットで隠れる面もシボ仕上げでしたが、ベースグレード(カーペット無し?)向けの処理かと思いきや、接着剤の密着の為だったかもしれませんね。

テストピースの結果は中々良好で、PP同士でもしっかり力を込めないと剥がせないレベル。
しかし課題もあり、「湿気を通さない素材で面積が広い場合、両面塗りで1分以内に貼り付け」とあったのですが、完全硬化時間となっている24時間後にも、内部が全く硬化せず。
若干は空気(湿気)に当ててから貼り付けるのが良さそうです。



そして本番。
面積的に、塗り広げている間に1分など優に超えてしまいます。
更に内張り自体が経年で歪んでいるため、作業台で平面を出しつつ重量物で圧を掛けます。
バイスやVブロを集めてきましたが、それこそ戦前の扇風機でも良いか。16吋なら10kgオーバーだし…

なお、作業台の巾が足りませんので片方ずつやって行きます。



その間にもう片方の準備。
微妙に残っていた補強リブを削り倒し、できるだけ平面を出してからペーパ掛け(多分80番の端切れ)。
少しでも接着が良くなるように。
内張りの中央は巾方向に蒲鉾型の隆起があるため、裏打ちは2分割になりました。
後は取り付けの際、ゲート側に詰め物でもして裏からも支えれば十分でしょう。



とりあえず半日ほど重しを掛けた後の状態。
このまま硬化を待てばよろしいかと思います。
貼り付けた当初よりも接着剤の密着面積が広くなっていますが、どうやら時間をかけてゆっくりと荷重が効き、広がって行ったようです。

アレか。家の基礎補修で使う低圧樹脂注入と似た理屈。
ゆっくり圧を掛けると奥まで入って行くんですってね。



数日置いた頃にカーペットが到着。貼っていきましょう。
それこそスピーカのエンクロージャとか、自作する人が貼ってるよなぁ…と思い出しつつ探しまして、自動車内装用の物を買いました。

ちなみに一度色を間違って買い直してます。
まずはこれを切り出し。



ほぼ長方形なのでシンプルですが、直線が長いので曲がらないよう注意。
それが終われば、後はこの凹型の切込み。
マスキングテープで型を取ってペンで下書きをして…



非常に良い感じ。
ディ・モールト・ベネ。アメリカ製の車ですが。



続いて貼り付け。工作室へ移動して、ドア閉&窓開で臭いを拡散しないように。
何しろ使うのはボンドG10なので…シンナー臭が強烈。

この写真は左側半分を貼るべく、両面に塗布を終えて乾燥中の図。
G10は指に付かない程度に乾燥させてから圧着するのがセオリーとなっています。

未使用1本+αでギリギリ半分が間に合いました。
追加を買ってこないと…



右側も貼りました。
狙い通り穴の部分に凹凸も出ず、正直かなり良い仕上がりになりました。
そしてこれを事前に作っておけるというのも、臭いが抜けるまで置いておける意味で有難い状況。
強力なのは助かるのですが、暫くはシンナー臭いんですよこれ…

なお肝心の接着力、本来PPには適さない接着剤ながら、シボ加工と追加のペーパ掛けでかなり強く着いたようです。
少なくとも、意図的に剥がさなければ十分でしょう。

後は新車時のビス穴とそれっぽい何かが開いているので、ビスを打ってあったならそれを追加すれば良いかと。
加えて、新車時には取っ手の凹部の角にタッキングしてあったようですが…そこは省略で良いかな。


という事で進捗は以上です。
桜の咲く頃には乗れていると良いなぁ…
そうすると、車検は夏冬どっちのタイヤで受けるんだろうか。
サイズ等々考えなくてはなりませんね。
Posted at 2025/02/11 22:27:32 | コメント(0) | トラックバック(0) | 車(サバーバン) | クルマ
2025年02月01日 イイね!

完璧で究極の電子コンパック? 三菱電機 R30-SS 昭和45年

相変わらず大正~昭和40年代くらいを行き来する扇風機レストア。
今年2台目のお題はこちら。



三菱電機のR30-SS。昭和45年デビューの機種です。
只今絶賛コンプリートを目指している、電子コンパックシリーズの一つです。

元々リストに載っていながらノーマークだった機種で、偶然にもオクのおすすめに出てきて知り得ました。
しかし改めて型式で検索をかけても、過去の出品履歴や投稿写真が出てきません。
もしかすると貴重な1台かも…?

そしてこの個体に目を向ければ、イエローのファンが目を引きます。
同じファンを使う他機種でも、出てくる個体は多くがブルー。
あってもパープルやグリーンのため、三菱のイエローは激レア。
そもそも扇風機と言えばブルーのイメージが強いですし。

この時期の三菱機は「お好み羽根」と銘打って7色のファン(30cmのみ)を展開しており、その名の通り好きな色を選べました。
それでこの機種も各色選べたのであれば、敢えてイエローを選んだのは通な方だったのかと。

R30-SX2のカタログ説明を見る限りでは、ファンのみ追加購入して、部屋に合わせて付け替える想定もされていたようです。
分解組立の簡単なコンパックの特徴を上手く生かした展開と思います。





基台と操作部は、以前「接点有一郎&無一郎」と呼んだR30-SFと同じ。
デビュー年も同じなので、R30-S系の共通デザインという事でよろしいのでしょうか。
或いはSFの上位機種とか。

そしてタイマー・首振り切り替えノブの蓋には「Wireless Control」の文字が。
これ、買ってから詳細を知ったのですが…



まさかの無線リモコン仕様。
SFは他と同様有線リモコンで、電子スイッチの奥側にジャックが付きます。
ロッドアンテナを伸ばした姿は、どこぞの28号でも飛んできそうな見た目。



中には9V角型電池(006P)。懐かしのナショナルブラック。
回路にクリスタルもある事から、とある周波数で電波を飛ばしているのでしょう。
…この電池が生きているのが更なる驚きであります。

よって本機は「タッチスイッチ&無線リモコン採用」という変態度の高いの機種(誉め言葉)であると分かります。
正に電子制御の面目躍如。
なので勝手ながら、「完璧で究極の電子コンパック」と呼ばせていただきます。

検索しても一切他の個体が出てこない事からすると、当時かなり高かったとか、オーバスペックで売れなかったんだろうなぁ…
初代オーナーもイエローのファン選んじゃうくらいだもん(しつこいようですが誉め言葉です)。
…というか、有線でも欠品の多いリモコンがよくぞ残っていたもんだ。


という事でレストアに入りますが、全体のコンディションは上々。
イエローのファンと相まって、他のメッキパーツがゴールドに見える…
気になる点は、ファンガードのクリア塗装が変色して剥がれてきており、ガード全体に点錆が出ている事。
大きくはその程度で、後はこの時期の三菱あるあるのプラグ交換済み個体という所。
ちゃんと収納できるサイズで違和感の無い色を探さないと。



とりあえずファンとファンガードを外し、それからモートルカバーへ。
この世代周辺の三菱機は、電源プラグ付け根に緩衝が無く断線しやすい事の他、モートルカバー(恐らくPP)が劣化して粉吹き&異臭発生してしまう弱点があります。
前者は一体成型プラグ黎明期故で、後者は経年劣化が主な原因。

で、この写真はモートルカバーですが…中々良好な状態を保っています。
全体的に細かいクラックがあるものの、爪で引っ掻いて粉が落ちるレベルではありません。
ネックピースから上が同じR30-SX2の際にはこの補修から始まりましたが、今回はスキップできます。



外しました。
酷いとは言えないもののそれなりの埃。



キャパシタは4μF。
今のところ無事ですが固体タイプに交換します。



軸の油を保持するスポンジが崩壊中…触らずにしておきましょう。
油を保ってくれれば良いので。
でも崩れたら何かしら詰めます。



モートル分離とエンドベル取り外しのため、配線を外します。
同色の3本線+キャパシタ配線なので…



番号を振っておきます。



コンパックシリーズの特徴の一つである、複雑で見事な首振り機構。
モートル分離には、まずカムを外します。





そして取り外し。
からの分解。
蓋はそのまま外すとスプリングが飛んでいきますので、慎重に押えつつ。



続いてネックピースの分解に入ります。
ここはスプラインシャフトを圧入してあるので、プレスで抜きます。
本来はプレスベンダですが応用という事で。



こんな風に。スプラインは片側のみなので、それの無い方から押しましょう。
コマはドライバセットの六角用。
この下はベンダの雄型を固定するM12ナットを敷いて、シャフトの逃げを作っています。



はい取れました。
この機構、もう3台くらいやっているので慣れたものです。



外れたモートルAssy。
更にバラシは続く。



ギアボックス開封。
グリスの色合い(変色)はこの頃の扇風機によくある感じ。
割合ひと塊で取れてくれて楽でした。



バラシ完了。
続いて清掃へ。



首振りカムのピン抜き方向確認。



清掃完了です。
こうして奇麗になった部品を並べるのも一つの楽しみと、最近気づきました。



お次はネックピース。
首振り角度調整の機構です。



完了。
と、ここで新事実が。



SUS製のカバーにはSX2で無かったクリアがかけてあり、若干黄色を帯びています。
写真では写り切れない位に薄くです。
改めて他のメッキパーツを見ても、錆が出ているのはクリア剥げのあるファンガードくらい。
他は汚れがあるだけで、酸化はしていませんでした。

と言う事で、最初に書いた「ゴールドメッキに見える」は本当にゴールド仕上げでした。
そうすると、カラーコーディネート的にファン色もイエロー固定だったのかも…?

ガードのクリアも変色ではなく、初めから黄色っぽかった可能性。
であれば…剥がして再生するのは良いとして、仕上げはそのままにするかクリアイエローを塗るか…
まぁそのままかな。
後から色味など判明すれば、その時に施工しましょう。
錆もありますし、全てを一時に仕上げる必要は無いのです。



続いて本体、基台に入ります。

ところで、後で存在感を放つのはサバーバンのリアゲート内張り。
アメリカンフルサイズピックアップの雄・C/Kシリーズのリアゲートが元なので、内張りでも巾150cm位あります。
今は後付けスピーカの穴を埋めるべく、まずは純正カーペットのノリ剥がし中。
スクレーパ作業が地味に疲れる…



ビフォーです。
前端のメッキにもクリアイエローをかけてあり、うっすらとゴールドになっています。
電子スイッチは動作に影響があるからか、普通にクロームメッキのままの様子。
なので酸化もしています。



裏面を開けました。
無線リモコン仕様とあって、回路がしっかり入っているだろう…と期待すれば、立派なプリント基板がお出迎え。
「電子」コンパックだもの。こうでなくちゃ。





アンテナは途中にコイルを挟んで効率を上げつつ、基台の周囲をグルリと一周していました。



そして破損発見。
ステッピングリレーの取り付けビスですが、それが入るボスが割れていました。
プラが劣化して、タッピングビスの圧に負けたようです。





リレーを外したところと破片。







更にはリレーのカバーまで。
これは完全にバキバキでして、カバー自体の中央にも1本亀裂あり。
ビス穴のタブは完全分離&粉砕状態。
タブの残った部分にも亀裂があり、触れたら更に細かくなりました。

プラの経年劣化の他、リレーの熱の影響でこうなったように思います。
夏物家電という事で、そもそもの雰囲気の温度も影響大でしょう。

とりあえず破片を集めてシルエットが見えたので、プラリペアで固めて直しましょう。
アルミ端材か何かで金具を作っても良いですが、折角なのでオリジナルに近くします。
見えない箇所ですけれどね…拘りって奴さ。





固まりました。
カバー全体も若干歪んでいるようです。
劣化と熱変形かな。やっぱり。



リレーの取り付けボスも無事直り、元の形で固定できました。
周囲も清掃しましたので、表側の清掃へ行きましょうか。



メッキパーツを取り去った表側。
隙間には過去55年の埃が。



ネック付け根のベゼルも、外せば下には埃。
ここのベゼルもSUS製ですが、よく見ればイエローの痕跡がありました。
やはり、タッチスイッチ以外のメッキ・SUSパーツはゴールド仕上げだったと見て良さそうです。
イエローはソリッドでも褪色しやすいので、クリアが黄変というよりクリアイエローが薄くなったのでしょう。



本体は組み立てに入った一方、残りのパーツの再生へ。
大物はファンガード…密着性が落ちてパリパリ剥がれるクリアイエローを除去します。
下に錆も出ているので。



こんな風に近づくとわかります。
ファンガードについては、確かSX2でもクリアはかけてあった筈。



エンブレムは塗装剥がしと錆び落としに影響されぬよう取り外し。
この塗装剥がしを塗るのが大変でした。
下手に樹脂毛のブラシを使えない分、筆しか無くてスポークを1本ずつ塗っていったので…
小さめの豚毛ブラシでも買っておこうか。



その間に、本体はここまで組みあがりました。
2本のアームで制御される首振り機構。



フロント側のオイルを保持するスポンジは、やはりポロポロと崩壊してしまいました。
おもひでぽろぽろ。

この手のスポンジが手持ちに無かったので、代わりに紙ウエスを詰めました。
うえすぽろぽろ。いやそうなっちゃ困る。





モートルカバーも清掃。
表面の劣化がまだマシなのが救いです。



ファンも軽く磨きます。
手入れ前は軽く埃が積もった感じ。
ブレードの先にも綿埃ができつつありました。





別件で作業台を使いたく、やや駆け足で完成。
早くも占有中のため床での撮影です。
希少な機種ながら、状態はそこそこなので…達成感という意味では戦前機の方がどうしても上ですね。

電源プラグ交換を撮り忘れましたが、この後レストアするR35-SNの部品取りから取りました。
途中の継ぎ目が若干引っ掛かるようで、巻取りが少々キツイ。仕方なしか。
予告させていただくと、R35-SNはニコイチ修理します。
部品取り機のつもりで買った方が状態が良く、本来のベース機が部品取りとなる予定。

しかし次回更新はサバーバンの方になりそうです。
上に書いたリアゲート内張のスピーカ穴埋め中。
Posted at 2025/02/01 23:29:41 | コメント(0) | トラックバック(0) | アンティーク家電 | 趣味
2025年01月19日 イイね!

サバーバン、再生進行中

昨年9月末、サバーバンが鈑金屋さんへ旅立ってから3か月半…
ショップ社長より新年のご挨拶と共に、待望の続報をいただきました。

いよいよ塗装へ向け、現在はボデーの朽ちた部分を補修していただいているとの事。
メタルワークと言われる作業です。
これが始まったという事は、後は塗装まで一気に進むかな…と期待が高まります。
工程や場所の占有を考えてもそうかなと。
本日はいただいた写真と共に、現況をご紹介したいと思います。

なお、鈑金屋さんの場所や社名については敢えて聞いておりません。
何より失礼ですし、聞いてしまったらちょいちょい近所を徘徊しそうなので…
ヤンデレかお前は。いやでも「ヤンデレ男子」タグは中々良き…





はい本題です。
今回いただいたのは主にリア周りの進行状況。
いかにもプロジェクトカー、レストア作業といった風景になります。

まずは左リアフェンダー。オーバーフェンダーで隠れていた下端が錆びています。
車種によらずあるあるな部分ですね。
積雪地だと進行しやすい所でもある。



で、実際の錆びてる部分がこう。
塗装で隠れていても、裏面から錆が進行して思った以上の面積に…というのも定番。
これがコワイのよ。



後側は切開まで進んだ写真です。
インナーパネルまで錆が及んでいるのが分かります。
下側に丸みを帯びているのは、スペアタイヤ積載スペースの裏側。

こうして無事な所までしっかり切り落とし、新たに鉄板を溶接してボデーを再生していきます。
ザックリやる事としては、

1.錆の無い部分まで切開
2.鉄板を形作りながら溶接
3.表面を仕上げて塗装

となり、正しく旧車レストアの手法。
言葉にするとシンプルながら、きちんと収めるにはプロの技が要ります。
勿論設備も。



後側は更に切り進める必要があったようです。
少しずつ見極めながら、最終的な切り取り部分を決めるのでしょう。
この写真は多分、アウター側パネルの仮合わせだと思います。

こうして納車日が朧気に見えてくると、色々考える事を思い出すもので…
この写真では仮付け&作業用の小さいタイヤですが、納車前には当然イイ感じのサイズにしていただきます。
入庫当初の37インチで大きすぎでしたから、やっぱり35インチ程度でしょうか。
もう少し下げてもいいかも。

ホイールはタイヤの入手性を考えて16インチ。こちらは既に、社長がお持ちだったシェビーバン用で決まってます。
8穴だからG30に履いていたのかな。
なお、この写真はフォード純正スチール(エコノライン用)で、左右で2種を見比べて決めた時のまま。

と、ここでちょっと違う部分へ。



現車確認時から気になっていた、左Dピラー上部。
ルーフとクオータパネルの継ぎ目、ルーフパネル側の錆び穴です。
他の個体でもここが錆びているのを見た事があるので、Squarebodyサバ―のウィークポイントの一つかもしれません。
塗装を落としてみれば、穴だけでなく肉厚も薄くなっている状態…

先ほどのボデー下部は水が溜まりやすい箇所ですが、他の影響が少ないのでまだマシかと。
しかし上部で若干天面を向いているとなると、雨漏りが心配になります。

で、これを…



切り取って奇麗な鉄板へ。

若干奥まっているのと折り目に切れ込みが見える事から、これは裏打ちの板でしょうか。
当たり前かもしれませんが、オリジナルの継ぎ目をきちんと残していますね。

よく見ればレインガーターも外してあります。
この車の場合、レインガーターはルーフパネルの耳じゃないんです。
オプションだったようで、ドア毎分割式のビス止めとなっていて外せます。
なので当然「無し」の個体も存在します。

ところで、切った貼ったを思い切ってできるのもフレームオンボディ構造の良い所。
車検での扱いも然る事ながら、モノコック構造ではピラーがより強度・剛性で重要な役割をしますので。
最悪ボデー側が錆びていても、シャーシが無事ならある程度耐えるというのも。



そして形が見えてくる。
この写真でDピラーはパテまで進んでいるようなので、先に上の写真を載せた次第。
次に注目すべきはフェンダーの処理で…



クオータパネル下部からフェンダーへと繋がるラインを出すべく、短冊切りの鉄板を継いでいます。
部材切り出し・曲げ&調整・溶接の繰り返しなので、これだけで結構な手間がかかるはず。
見ての通り、下端も地面と平行ではないので、手作りするとなると大変。
素人ながら真似事をしているため、「これは大変だろう」とは分かります。

なお、費用や時間をつぎ込めば、一枚もので叩き出しての製作も不可能ではないでしょう。
しかしそれはショーカーやヘリテージ級の車でやれば良い事。
仕上り・手間・コストのバランスを見極めるのもプロの腕なのだと思います。

そして、このように作業途中の写真をいただいているわけですが、半端な仕事をしていたら見せられない段階のはずです。
つまりは、見せても恥ずかしくない仕事をしているという事…大変ありがたいです。

「奇麗な旧車」には適当&雑な鈑金が付き物というのは、悲しいかなよくある現実と聞きます。
凹みを鈑金せずパテ山盛りで済ませる、アウターパネルだけ適当に直して中は錆びたまま…等々。
色を塗ってしまえば一見分からないだけに、こうして経過を見せていただけるのは本当にありがたい。



反対側、アメ車なのでこちらが助手席側。Passenger side.
運転席側と異なり、ある程度部分的な切開となっていますね。
ちょうどマフラーが真裏にある部分だけ無事というのは、熱で早く乾燥するため錆が進行しなかった…というストーリーでしょう。
マフラーがある事で水や砂が溜まりにくかったのかも。

しかしこの車外マフラー、一見地味ながらやっぱりカッコいい。
見た感じSUS製のようでしたので、磨くと更に素敵になりそう。



助手席側リアフェンダーの前側。
ここも面積分の如く短冊鉄板での再生ですが、フェンダーアーチの細い部分は縦の部材を仕込んであります。
ここだけ平面になるのと下が絞られる形状のため、この方が作りやすいのだな…とわかります。
そしてしっかりと下端の耳まで再現。流石でございます。

この後はフロントフェンダー下部の錆や細かい部分を同様に補修、その後パテとサフで面出しして塗装…となると思います。
と言っていたら更なる続報が。









ルーフの下地作りに入った模様です。やっぱり動き出すと早い。
斑に見えているのは鉄板の若干低い場所。パテ作業でよく目にする光景です。
左Dピラーとその前部分にパテが追加されているので、この後更に面出しするのでしょう。
そしたらいよいよサフかな。

ルーフ前方のマーカー、所謂デューリーマーカーは新品交換して残しますので、ソケット撤去・穴埋めはしません。
そして改めて見ると、オクで見つけて迷っていたフロントバイザーは買わなくて良かったと思います。
中央3か所のマーカーと取付位置が見事に被るので…

そういえばこの車、入庫当初はルーフだけ過去に黒の同色塗装をしてあったようで、それが捲れて剥がれている状態でした。
前オーナー様談として「乗れない期間が長くなってボデーの手入れができなかった」と聞いていますが、4インチリフトに37インチタイヤでしたから、広大なルーフの清掃も一苦労だったでしょう。
まぁ、ルーフラックの下を拭くのとどっちが面倒? と言われれば後者な気もしますが…

前車パジェロにはラックを載せていましたが、あれは完全にドレスアップでした。
確かにカッコいいし、後からBASURIを載せるには都合良かったのですが…
手入れ? 地獄だよ。

夏は汚れが溜まるし冬は雪が下ろせない。ラックの前にはサイドまで回り込むライトバーを着けていたので猶更。
なので最後の2年は冬に軽トラシートを掛けてました。
すると今度は、たるんだところに雨が溜まるっていうね。
更にラックの脚の塗装が痛んだり、ロゴステッカーが劣化したり…もう懲り懲り。

さて、オーダーしている色は、この89年式のDeluxe two-toneに沿った塗り分けで濃淡のメタリックブルー。
今後のタッチアップ等を考えて、敢えて国産車純正色で指定。これは社長のお勧め。
更にライトブルーで細いストライプが入りますが、これはオリジナルだとビニールのラインテープらしい。
でももしかすると、塗装で入れていただけるかもしれません。



という事で、生まれ変わった姿を見るのが更に楽しみとなりました。
納車前日なんて寝られないだろうな。年休必須か。

…こっちもリアゲートの内張りに手を付けないと。
スピーカの大穴を埋めて、カーペットを切り出して貼ります。
Posted at 2025/01/19 18:11:46 | コメント(0) | トラックバック(0) | 車(サバーバン) | クルマ
2025年01月13日 イイね!

地味に凝ってる奴 日立製作所 30糎標準型電氣扇 TO A3-30型 昭和13年頃

昨年は年男でしたが、更に前年末のディーラ倒産を切っ掛けとした車の乗り換えを急遽決めたり、最後には初のコロナに罹ったりと、色々あった1年でした。
とはいえ、結果無事に過ごせて何より。
今年も扇風機ネタは変わらずにやって行きますので、引き続きお付き合いいただければ嬉しく思います。



さて、今年最初の1台は、偶然にも本体と資料が短期間に集まった戦前の機種となります。
何となく「状態良いな」で本体を購入し、後で買った資料に偶然同型が掲載されていました。
詳しい年式特定が出来るとやる気も俄然出るものです。



こちら。
うちではあまり扱いの無い日立の扇風機で、型式はTO A3-30。







資料がこれ。
昭和13年発行と思われる、日立の製品一覧です。
古本のネット販売にて購入でしたが、内容紹介に「扇風機」の一言があったのが決め手。
写真は無い中「何か載ってないかな」が見事的中した形でした。

重電も手掛ける日立の製品一覧ですから、水力発電タービンから電気機関車、エレベータ、プラントの制御盤といった大規模なモノも載っています。
そして最後の数ページとなったところで扇風機が登場。
丁度よく同じ機種だったという訳でございます。





沿革が昭和12年までとなっているのが発行年推測の手懸り。
そして大陸の支店一覧も、この時代の特徴的な地名ですね。

本機で面白いのは、まずは命名規則。
戦後までファン径はインチ呼びが各社通例となっていたところ、こちらはセンチで書いています。
なので12吋ではなく30糎標準型電氣扇。
型式末尾の30もそうでしょう。

とすると、日立の初代モデルと目される雷光ガードのTO A-12は、12吋を指すのでしょうね。
日立は当初から独自開発、つまりは他社との違いに拘っていたようなので、早々にセンチ表記としたのもその一環でしょうか。

続いて本体を見てみましょう。





外観上は後に靡く形のファンが目を惹きます。
昔から時々出品されるタイプ、というのは知っており、いつか欲しいが決め手に欠ける…が続いていました。
エトラ扇のように特に決まった名前は無いようで、「効率の良い流線形の羽根」と書かれていました。

そんなファンばかり見てしまいますが、ファンガードの外周が単なる円じゃないのも凝っています。
この形を何と呼べば良いのか…フリル、とは違うだろうな。
横方向へ走る部材も、外周付近の2本だけ太くなっている凝りよう。
基台もポッテリした定番の水滴形ではない、富士電機のようなワンモーションカーブのスタイル。

なおこのガードのデザインは、基台が水滴形でファンも直線状の頃に出た物らしく、昭和9年版カタログではその組み合わせです。


モートル周辺は普通な感じながら、ギアボックス脇にも2穴の蓋があるのが特徴でしょうか。
スクリューギアが横向きに入っているタイプかな。
今年手がけたTO A-30が定番の縦型遊星ギア(内部は諸々工夫が見られました)だったので、そこからマイナーチェンジされた模様です。
更にこの後のモデルでは、砲弾型のカバーが付くデザインになるようです。

モートルへの配線は、日立特有のスプリング状チューブで保護されています。
これが非常に効果アリと見え、大体の戦前日立製では、この部分はオリジナル状態を保っていると感じます。

という事で分解整備に入ります。
今回もA-30の逆ネジみたいなトラップがあるかもしれないので…慎重に参ります。



まずはいつも通りのマイクスタンドから。
ガードを留める袋ナット…この機種の場合は丸いすり割りナットでしたが、数も揃って塗装痛みもありませんでした。
かなり良い状態。



埃と犬猫系の毛? が付いています。塗装は綺麗そう。



続いて底面。モートル配線を外します。
蓋はA-30と同じ作りですが、あちらにあったシリアル銘板がありません。
扇型の小窓は電源線の取り付け用。
しかしフェルト脚も完全に残っているとは…





開けました。
ナットが一部入れ替わっており、整備された痕跡が窺えます。
モートル配線がこの向きからの取り出しで、且つナット留めというのは大変親切です。



が、黄色線だけビニル線に変わっています。
どこかで継いである様子。ナットも手締めと六角の場所が入れ替わってます。



碍盤を単体にしました。
コンパウンド製と見え、小さくまとまったスマートな印象。



モートルへ参ります。
こちらのギアボックスは一見普通のタイプに見えますが、先に書いた通り、横に出ているメッキの蓋が個性的。





エンドベルには大阪市と思われる検査証の封印。
これまた綺麗に残っています。





ロータを外しました。
軸が太目なのが特徴ですね。
スクリューギアのピッチもかなり粗い。



一方のステータ。コイル側。
コイル部分は塗装してあり、防湿と保護がされています。
引き出し線のブッシュは差し込みできる構造。これもA-30同様。



ネックピースとの分離には、ロックピンを外す必要があります。
細いポンチ的な何かが無いと難しい寸法。
首を90度回した位置でないと切り欠きと合わず、通常の首振り範囲では抜け防止となる構造です。
よくある作りながら、こういうローテク(良い意味で)な工夫は思わずグッとくる。



取れました。
変な固着も無くスムーズに進みます。



全バラ完了。
続いて清掃と表面の磨きです。



お待ちかね(?)のギアボックス。
どんな構造でしょうか。



こんな構造でした。どんなだ。
一応トレインの通りに並べていますが、カウンターギアと遊星ギアで減速するのが定番なところ、軸を2度方向変換し、スクリューギア2段階で減速する方式です。
流石は日立。他の真似は徹底して避けています。



という事で清掃とエンドベルの塗装研磨完了。
こちらの方が並びが分かりやすいかしら。

なお、ギアボックス横から刺さる2段目(スクリューギア・ヘリカルギアのAssy)は、ヘリカル側のガスケットが砕けていました。
ロータの1枚も同様でしたので、自作して組もうと思います。

そして思ったのは「このギアボックスはどう作ったのだろう」という事。
大きな開口部が無い一体構造ながら、しっかり内部は必要な突起等が作られています。
まぁ考えれば、普通のカウンターギア式でも似た構造ではあり、きっと鋳鉄でしょうから、これもそうなのかなといったところ。
にしても他と比べて開口部が小さいので、殊更に気になった次第でした。







基台の清掃に入ります。
P剥げは下部の縁に少々程度で、汚れを落とせばかなり奇麗になりそうです。
銘板も現時点ではっきり読める。
出荷前検査の合格証までキッチリ残ってます。





ピカールで磨く事暫し、往時の輝きを取り戻しました。
いやホント奇麗。
流石に鋳型の粗い入隅部分は仕方ないものの、ここまで輝いてくれれば満足。



組み立てに向けて、足りないガスケットも作りました。
小さい方はギアボックス内、大きい方はロータ用です。



ギアボックス下面、首振りカムの付け根。
赤くなっているのは下地塗装で、錆止めの定番色。
この時代の扇風機で(目に見える形・別の色で)錆止め塗装がされているのって、結構珍しいのでは。
富士電機では鋳物の巣穴埋めにパテ処理してありましたが、それを兼ねているのかしら。





ギアボックス組み立ての様子。
グリスを入れてしまった後のため、見づらくてすみません。
2枚目の写真では、奥側からモートルのロータ軸が入ります。
それでちょうどXYZ軸の方向で減速・首振り動力取出しが行われます。



こちらはネックピース。
A-30と同じく、スライスしたドーナツ(ベーグル?)のような金具が入っており、仰角調整が固着しない工夫がされています。

この部分は各社とも個体差が大きくなる場所でして、固着していると分解に工夫が要ります。
時には清掃後も渋すぎる事すらあるため、ペーパがけして具合を調整した個体もありました。



ガード中央のエンブレム。
この時点で綺麗なので、軽く磨けばOKでしょう。

ファンは洗浄で済みましたので写真はありません。
…忘れただけです。
取り付けがきつかったためボーリングしました。



プラグはマツダ製が付いていたため交換しました。
マツダは芝浦製の扇風機等に使いたいと。

代わりに用意したのは、以前ジャンクのA-30から外したオリジナルプラグ。
ちょっとゴツい海外風の見た目が特徴で、当時の日立製はこれが付いていたらしい。

しかし配線は碍盤側共々鳩目仕上げになっておりました。
芯線の輪を鳩目でカシメて圧着端子風にしてある工夫です。
恐らくこの仕上げがオリジナルかと思います。同時に電線も。
なのでプラグだけ壊れて交換したか、あるいはこの時期の日立はマツダプラグなのか…
それは不明です。



完成です。
ファンの塗装は劣化で艶消し状態でしたため、例外的に油を塗りました。
今思えば磨いても良かったかも…
しかし目を引く羽根形状です。



リアビュー。
定番の芝浦や三菱とは違ったシルエット。
最初に紹介したガード周囲のデザインなどにも気づくと、意外な程緻密にアールデコなのが分かります。
どこまでも地味に凝っている奴ですね。
良い状態という見立ては当たり、見事に光ってくれました。



よく見ないと分からない位に地味ながら、分かると嬉しい拘り。
ギアボックスは他社より若干コンパクトに見えます。
これまたA-30同様、取り付け面にはガスケットが入ります。



最後は大先輩A-12、ご先代様A-30と共に。
いずれも昭和初期の機種ですから…100歳近くでございます。



日立エンブレムの変遷も分かりますね。



という事で、年末から始まり年を超えたレストアの報告でした。
次回は…なかなか攻めた個体が手に入りましたので、一気に昭和40年代まで飛んでみましょう。
Posted at 2025/01/13 18:45:07 | コメント(1) | トラックバック(0) | アンティーク家電 | 趣味

プロフィール

「真下を向く天井扇 三菱電機 CY-30B 昭和39年 http://cvw.jp/b/2115746/48618862/
何シテル?   08/24 23:35
菊菱工廠と申します。 「工廠」なんて言いましても、車いじりは飽くまで素人。 電装系なら結構自前でこなします。 ちょっとした金具作りなんかも。 ナ...
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