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菊菱工廠のブログ一覧

2022年10月23日 イイね!

過去のレストア記録 ~ 明治43年型 General Electric "Sidewinder Oscillator"

これまでレストアしてきた扇風機は、手放した物も含めると恐らく60台程になると思います。
現在手元にあるのは50台程度かと思いますが、学生時代に購入・整備した物もあり、みんカラを始める遥か前の物が多数です。

という事で、記事の充実を図る意味でも、これまでの整備を振り返って投稿したいと思います。
日付は迷いましたが、投稿は現在時間として、本文中に作業した年月を記載する事にします。


レストア振り返り企画の第四弾です。
今回の機種は初の海外製、「General Electric "Sidewinder Oscillator"」です。

当方手持ちで最古の機種でもあり、何と明治43年製。只今112歳です。
GEとしても古い機種ですが、その特徴は何といっても首振り機構。
同社が初めて首振り機構を搭載した機種だそうで、この後各社が取り入れる機構よりも、アーム類の取り回しが複雑になっています。
今の扇風機にある要素(変速・首振り)を揃えた、機能上の始祖と言える機種ではないでしょうか。
「Sidewinder Oscillator(サイドワインダー オシレーター)」は米国のマニアの間で呼ばれる愛称ですが、その独特の首振り機構から付いた名のようです。

なお、こちらを入手したのは2013年2月24日でした。
…蟲柱さんの誕生日ですが、親の誕生日でもあるんですよこれが(どうでもいいですね…)。
ちなみに私は東日本大震災の翌日。あの作品では唯一誰の日でもない月…何か悔しい。



さて、入手時の様子です。
羽根・エンブレムとも黒塗りになっており、状態自体は良いものの過去に再塗装されているようです。
が、全箇所でもないようで…無垢仕上げの部分が酸化して、見た目が悪いのでそこだけ塗ったのでしょうか。











いつもの通り分解からですが…
独特の機構なので気を使いつつ進めて行きます。
ロータ後端のスクリューギアが大きく、そのままではモートルのエンドベルから抜けません。
実はロータシャフトと別体になっており、端部のすり割りがビスになっていました(確か)。

碍盤の底面も国産機とは大分風情が異なります。
蝶ネジと一緒に写っているアーチ状の部品はモートルの受けアームです。
この後の各社機種はモートル真下で受けますが、この頃の機種はY字型アームで両端で支持していました。













首振りギアボックスの分解清掃です。
この後一般的になる機構と原理は一緒ですが、機構自体が90度横向きに配置されています。
ノブの上げ下げで首振りのON/OFFを切り替える定番の機構ですが、明治終わりの時点で完成されていたのが驚きです。

グリスの程度は古さにしては酷くなく、無事清掃が完了しました。
にしても、細かいビスやギアが多い印象です。
アームの取り回しにしても、いろいろ試行錯誤して作ったんだろうな…と感じられます。









清掃後の組み立て風景です。
最後の写真は首振りの動作を伝えるアームですが、緩いS字型のクランクに加えてもう一本アームがあります。
これが通称「Sidewinder Oscillator」の由来だと思うのですが、左端シャフト部にボールが刺さり、それが左右に行ったり来たりする動作をします。



唐突ですが裏蓋です。
英語の説明書きが奇麗に残っていますが、その上からラベルが2枚貼ってあります。
どちらも「菱形雷紋」が描かれており、「検査済証」とも書かれています。

これは現在の京福電鉄…当時の京都電燈(電力会社でした)の検査証で、昭和17年に検査を受けた事が分かります。
このような消費電力や電流値を測った検査証が残っている個体は時々見られます。

なおこの時点で、本機は既に32年落ち…今の家電ならとっくに更新されているだろう年数です。
いつ頃輸入されたかは定かではありませんが、新品かそれに近い戦前頃であるのは確かなようです。

そして昭和17年というと、第二次世界大戦開戦から3年。太平洋戦争も始まっている時期です。
ラジオで言えば戦時統制型の「放送局型123号」が省資源設計に一段階改められた時なので、金属供出も免れてよくぞ生き残ってくれたという一品です。
当時バリバリの敵国製品でもありましたし。
そんな歴史すら体験している(かもしれない)と思うと、ただの家電とは見られませんね…







この時の作業完了状態です。
銘板は磨かなかったようですね…1895年8月13日と、1901年6月25日にパテント取得と書かれています。
流石、国産機の手本になっただけあって日付が一際古いです。

銘板を見て分かる通り、本家アメリカ仕様なので100Vながら60Hz前提で設計されています。
なので東日本(当方仙台)で使うと少々非力です…首振り機構が複雑で抵抗が大きいのも要因です。









そして現在の姿。
より当時に近づけるべく、羽根とエンブレム、各部の真鍮製ビス・ナット類を磨きました。
銘板も磨き、よりビンテージさが際立つ佇まいとなりました。

最初の修理時に真鍮パーツ類をそのままとしたのは、確か奇麗に磨くのが大変だったからだと思います。
真鍮は加工しやすい柔らかめの金属である一方、酸化膜が非常に頑固でして、しっかり酸化した状態から一様な磨き面を作ろうとすると結構苦労します。
なので、ピカールくらいしか使った事の無かった当時は、つい面倒でそのままにしたのでしょう。
ピカールは番手にして凡そ4000番だそうで、艶出しには適する一方で、厚い酸化膜を削るのは不得意です。

それでもゆっくり磨けばピカール一本で行けますし、その分磨き傷が残るリスクも下がりますが…私にはその根性がありません(笑)
今は同じピカールでも練りタイプなど、番手の低い別の研磨剤の後に液体ピカールで仕上げています。

無垢仕上げとした各部品は、当時の手入れ法に則りマシンオイルでさび止めしました。
クリア塗装してしまうのは私としては邪道です。
当時の物はあくまで当時流に手入れするべし…と思っています。悪影響が無い範囲ではありますが。
Posted at 2022/10/23 20:53:50 | コメント(0) | トラックバック(0) | アンティーク家電 | 趣味
2022年10月23日 イイね!

過去のレストア記録 ~ 昭和10年頃 三菱電氣扇 12吋

これまでレストアしてきた扇風機は、手放した物も含めると恐らく60台程になると思います。
現在手元にあるのは50台程度かと思いますが、学生時代に購入・整備した物もあり、みんカラを始める遥か前の物が多数です。

という事で、記事の充実を図る意味でも、これまでの整備を振り返って投稿したいと思います。
日付は迷いましたが、投稿は現在時間として、本文中に作業した年月を記載する事にします。


レストア振り返り企画の第三弾です。
今回手がけましたのは「三菱電氣扇 12吋」です。

三菱電機製の戦前型としては、最も多く出てくる型だと思います。
本機の入手時からこの記事を書いている現在に至るまで安定して出物があり、価格的にも大きな変動はないようです(箱付きはかなり高価ですが…)。
しかしながら、前回の「初号扇12吋」の際にも書いた通り、同社の一時期の製品はダイキャスト部品が弱く、無事な個体を見つけるのは意外と難しかったりします。
こちらを入手したのは2012年10月9日でした。



入手時。確か動作状態のジャンクとして入手だった記憶があります。
なお、後ろに映っている青いスタンド扇は、この10年後に入手時の20倍の価格で売れる事となります。









何をするにもまずは分解です。
この時は取っ手は外さなかったようですね。
もう10年も前の作業なので、記憶が曖昧です。
モートルの配線も断線か劣化が著しい個体が多い中、何とか使えそうな感じです。
安全上は交換するに越したことはないのですが、外観上のオリジナル度を大きく左右する要素なので、できるだけ再利用します。





モートルを開けてみました。
半世紀以上に渡って蓄積したホコリが凄いです。しっかり活躍していた証でしょう。
ロータのシムは前後3枚。うち一枚は欠けていましたので、確か真ん中に挟むよう入れ替えたのではなかったでしょうか。



碍盤です。これもビス穴が一部欠けていましたが、致命的な損傷なし。
清掃して終了。



モートルの受け部品とその留めボルト、首振りクランクです。
左上がモートルの受け部品で、上下方向の調整と左右の首振りの軸受けになります。
これがダイキャスト製なのですが、この型の三菱電機製では不良ロットが多く、ギアボックス共々こうして無事を保っている個体は少数です。









首振りギアボックスの清掃です。
三菱の戦前型が途中からマイナーチェンジした、スパーギアとカウンターギアによる「乙型」ギアボックスです。
ねじ込み式のメインの蓋と別に、三日月型の蓋があるのが特徴です。
遊星ギア式の「甲型」よりバックラッシが格段に少ないのですが、ケースとカム(下部の円盤部品)が崩壊している個体が多いです。
前回と重複しますが、「結晶粒間腐食割れ」という、長期間の経過後に現れてくる崩壊現象ですので、新品当時から数年、恐らく十年くらいは問題にならなかったと思われます。

なお、この現象は古いミニカーにも一部見られ、そちらのコレクター界隈でも悩みの種となっているようです。
金属結晶構造の変質なので予防法がほぼ存在せず、修理方法もないのが致命的なのです…

ちなみに、この型をベースに戦後生産されたタイプは問題ない品質なので、ギアボックスとモートル受けだけ緑色になっている個体も時々見られます。
戦後型は緑や薄青が多数でしたので、それらの補修部品か移植により修理された物達です。









銘板とエンブレム磨きも完了しました。
今回は特に補修らしい補修もなく、羽根も元から塗装仕上げでしたので、ほぼ清掃と油脂関係の交換に留まりました。
この頃の扇風機のオーバホールとしては最も楽な部類です。



そして完成。現在の姿です。
錆びもそのまま生かした、味のある仕上がりになりました。
私のレストアスタイルは基本的にこの方向です。
再塗装は余程酷い状態からスタートした場合か、全く違う色の部品を移植した時くらいにしか行いません。

後は最後になりましたが…



裏蓋の写真です。
まず、脚の外周に貼られているフェルトがまともに残っている個体はかなり少数です。

そして当時の三菱電氣扇には、このようなラベルが裏蓋に貼ってありました。
これもまた、ほぼ完璧な状態を保っているのは希少です。
裏蓋自体が失われている個体もありますので…
なお、蓋の左側ビス穴はスプリングによるフック式になっており、ビスを外さずとも蓋を脱着できる工夫がされています。

芝浦も3か所の穴の内2箇所を切り欠きとして、ビスを1本外すだけで良い構造でした。
また、本機と同時期の芝浦は電源線の端子部がスライド開閉する構造になっていて、蓋本体を外さずに配線できるようになっていました。
電源コードの用意と取り付けはユーザサイドという時期があったとの事で、そのための各社の工夫という事でしょう。

なお、この三菱電氣扇はガードのデザインから「菊水ガード」なんて呼び方もあるそうですが、細かいマイナー違いが色々ある機種でもあります。
主に銘板の形ですが、今回の「楕円+赤スリーダイヤ」もあれば、神戸時代と同じ「長方形+リベット耳」タイプもあります。
それとは別に、装飾囲いのデザインで「高級電氣扇」とプレートの付いた個体も見た事があります。
それらがどの順で古く、それぞれいつ頃の製品なのかは情報がつかめていないのですが、本機については

・電線が布被覆である

・大正期のデザインに目の細かいガードを合わせた昭和初期スタイルである

・昭和10年に制定された逓信省の電気用品取締規則によるマーク
 (「〒」を逆三角で囲ったもの)が無い

といった特徴から、新しくても昭和10年以前の機種であろう事がわかります。
またガードが細かいので、大正期としても末期か、あるいは昭和に入った頃ではないかと。

なお、逓信省マークがある場合には届出番号も併記されるのですが、それがweb検索できれば年式特定も楽なのです。
しかし今は、特許・意匠登録検索システムから推測するくらいしか方法がありません。
銘板にそれらの番号が記載されているので、そこから検索をかけるのです。
…が、これも今一ヒットしないんですよねぇ…古すぎるのか、別の番号なのか。
Posted at 2022/10/23 20:24:04 | コメント(0) | トラックバック(0) | アンティーク家電 | 趣味

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