2012年10月26日
スピードスプレーヤーの改良と防除の考察2
・今年はも葡萄果実の病気が多かったので検証してみる事に。別の所で書いたけれど、結論として「晩腐病」の病原菌は樹体内に満遍なく存在するので、二次感染の対策として行う薬剤の散布は必ずしも充分ではないことが分かった。この病原菌は一応雨媒病なので、葉っぱの上に薬剤があれば発病しない建前ではあるのだが、どうもそれだけでは駄目のようだ。1次感染がそのまま果実の表皮や果梗に伸びてくる。また、果実内部や種には病原菌は無かったが、果皮に傷が付くと極端に病気にかかりやすくなる模様。また今年の病気発生を見ていると、片側に極端に病気が集中している傾向が見られた。デラのような自然樹形での晩腐の発生は房のどこでも満遍なくと言った感じなんだが、棚下平行は比較的方向性を感じる(でも全部駄目になっているのも多いので、必ずしもそうとも言い切れないかも知れない)。
・で、SSの防除なので、使っている薬剤や散布時期は他の園とも同じであり、対策しないと来年も痛い目にあうので、その原因を探っている訳だ。まあ、同じSSを使ってもノズルがノンドリフトかどうかで違うだろうし、ファンの設定や散布量なども違うから、単純には言えないだろうけど。で、ナシの防除の研究資料があったので見てみたが、かなり意外な内容だった。それはナシの防除でファンオフ・ファン半分(450立米)、フル(700立米)のファン能力で被覆率と防除価を比較していたのだが、私の想像と違ってファンオンでの被覆率と防除価が高かったのだ。
・研究では棚上にも感水用紙を配置してドリフトを調べて居たのだが、ファンオンだと2m上の10m向こうまで薬液が飛んでいて、明らかに無駄に散布している。一方ファンオフでも棚下だと被覆率は100%だ。棚下短梢なら当然もっと被覆率は高かっただろうと思う。ところが、防除価で見ると風量が低い方が低いという意外な結果が出ていた。理屈から言えばドリフトが多かったという事は付着量は少なくなっているはずであり、防除価も劣っていると予想するのだが、実際はただ最大効果範囲がSSより遠くなっただけで、防除価に違いはなかった。逆に言うなら、SSから遠い場所での防除価は広がった。
・ナシは棚上にも葉っぱを伸ばすので、葡萄とはかなり違うし、そもそもうちでも葉っぱの防除は今年上手く行っているので、その部分にはあまり問題は感じない。各列走行なので、飛距離の問題もまあ無いだろう。しかし、被覆率が無送風だと意外と葉っぱの裏に弱いのが気になった(書いてないが研究にそうある)。果実の罹患率の違いがそこらへんから読み取れるかも知れない。SSは各列入っていても実はそこから遠く離れた場所を防除していて、結果ドリフトさせまくっても別の場所で防除が進んでいるし、その場所では薬液のスピードが遅いからか付着が満遍なく行われていて、雨による影響もあんまり無い、という結果なのだ。
・そこで思い出したのがレーバスフロアブルの特性。昔の農薬は葉表に付着させ降雨で溶け出して防除するという発想なのだが(有機銅系全て)、レーバスなど一部の浸透移行系農薬は作物のワックス層に吸い込まれて機能する。なので、果実そのものに対しても効果を期待出来るのだが、ファンオフで回るとレーバスの付着にムラが出来やすく防除価が下がるのではないか?という予想が一つ出来る。これに関して先輩農家さんから、大粒種は1番房を使わず、2番房を使って薬液のかかりやすさを求めてはどうかというアドバイスをもらった。実際今年は結果的に2番房で作ったのもあったが、それがどの程度防除価が違うのかは調べられなかった。別に対策するとしたら、より角度が付いた直進性の強いノズルを用いて反対側の列を走っている時に薬液が付くように工夫することだろうか?
・もう一つの対策として、今年はトップジンMペーストの3倍液による母枝の防除もやってみる予定。これ、母枝に降雨が当たらないので防除が出来ると説明されているが、チオファネートメチルの薬効はやはり浸透殺菌なので、1次感染現をある程度叩く事で病原菌の内部移動を遅くする効果があるのではないかと想像する。
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Posted at
2012/10/26 19:27:58
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