2012年12月12日
アンビルタイプの剪定ハサミ
・最近出てきたアンビルタイプの剪定ハサミと従来の剪定ハサミ、研ぎ比べて見て面白い事を発見した。アンビルタイプのハサミは同じ鋼材でもムチャクチャ硬い焼き入れがしてあった。最初砥石の表面をびびって滑るほどだ。使っていても刃がよく欠けないナーとは思っていたが。なんでそうなのか?
普通の片刃の剪定ハサミというのは対象に対して斜めに切れ込む特性がある。そうすると受け刃側に捻れながら切り進む事になるので、やわな刃だと受け刃と噛んでしまう事もある。なので剪定ハサミに「最初は細い枝で慣らしをしてください」とか「太い枝は回して切りましょう」とか書いてあり、研ぐ時にも少しだけ裏面を両刃のように研ぐように指定してある。まあ、研がないでも自然と裏は若干めくれるけど。それでもあまり強く噛むと良く無いので、このタイプは刃の厚さが根本側ではかなり厚くなって極力ねじれないようになっている。以前岡恒の収穫ハサミは研ぎやすさを求めて焼きが甘く鋼材自体が捻れて切れ味が良くないと書いたが、あれと同じ事が起きないようにね。
その点アンビルタイプは刃が対象に真っ直ぐ入る前提なので、横に曲がる力はあまり考えていない。だから刃は薄くても構わないし、横に捻れる力を受けて復元する力なども考慮しないから、焼きをキンキンに入れて尖らせて薄い刃の刃持ちを良くして対応しているんじゃないかと思う。実際片刃の剪定ハサミを折った人は知らないが、両刃のアンビルタイプの大きい奴は根本から折った事がある。かかる力が大きいというのもあるが、焼き入れが余程硬くなければあり得ない壊れ方だ。片刃だとああなる前に反るだろう。
どっちが優れているかというとケースバイケースなのだが、上で優れているように書いたアンビルタイプの弱点を挙げると、まず薄い皮や繊維なんかは残りやすい。片刃は刃が互い違いになって切り進む部分があるので、剪断する力が強いが、アンビルは受け刃にレールがあってそこにちょっとだけ刃が入るだけだ。このレールは樹脂であまりタイトには作ってないので、ロープなんかはそこで逃げてしまって切れない事が多い。また樹脂は変形しやすくて、ここがダメになるとさらに切れなくなるし、ゴミが詰まりやすい。また幹から生えている枝を面一で切る場合、アンビルは受け刃のレールの半分の厚さ分は残してしまう。片刃だともう少し綺麗に切れる気がする(本質的にはそこはノコギリなどじゃないと綺麗にはならないが)。
またハサミとしての使い方ではないのだが、枝に入った虫を殺すために枝を削ぐ時に片刃だとそのままナイフのように使えるが、アンビルタイプは刃先の角度の問題か削ぐ動作は不得意。またアンビルタイプはレールにスライドして切れ込むという動作機構は持っていない(もちろんリンケージで追加する事は出来る)。片刃タイプは素の単純な形の物でも受けと切りの隙間が根本側からどんどん閉じる形状になっているので、仮想的に切っている部分は引き切りになっている。アンビルはそれに比べると斧のような押し切りにより近い。結局の所、一本のハサミで全てを解決は出来ないので、良し悪しと言った所か。例えば1万円の手打ちのハサミを買うぐらいなら、アルス一本とアンビル一本を買った方がいいし、さらに安いハサミ一本とアンビルと太枝切りハサミを揃えた方が更にいい。そこらへんは高いオールラウンドモデルを買うよりジムニーとロードスターを買った方がそれぞれ楽しめるのに似ている。
・昨日は稽古で自由技を沢山かけてもらってカンを取り戻そうとしたら、階段も上れないような様に。膝が抜けるってこの事だな。
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Posted at
2012/12/12 17:28:52
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