2014年10月31日
なぜバルカンは当たらないのか?
・F4の話でコメントを頂いて、M61A1,通称バルカンの命中精度が低いというお話があったので、どういう物なのか調べてみた。バルカンは20㎜のガトリング砲であり、F104以降の米軍機の基本兵装になっている他、CIWS(ファランクス)なんかにも使われている。で、こいつの命中精度は1000フィートで8フィートという情報があった(その円内に8割が当たる)。300メートルで2.4メートルって、それマジで酷いな・・・これ以前は米軍はブローニングM2という50口径の傑作機関銃を搭載していた訳ですが、こいつはアルゼンチン紛争以降遠距離精密射撃に用いられるほど命中精度が良く、同じ弾を使うバーレットだの対物ライフルは記録的な命中度を誇ります(たとえば1000ヤードで4インチだから900mで10cm程度ですね)。単純計算だとバルカンだと3倍だから7.2m円内に当たるかどうか・・・
さらに、バルカン砲ってのは銃身が回転してますんで、弾丸がそのズレを受けながら飛んでいきます。銃振り回して当たるはずないですよね。それを見越した照準をすればいいかと言うと、今度バルカン砲はスイッチ押してから規定の回転数にあがるまで物理的なロスが0.5秒ほどあるそうで、その間は弾数が減りますし、ズレもまた違ってくるそうです。もうね、どう考えても空戦向きの銃には思えないです。一瞬しか射撃のチャンスがない空戦で、トリガー引いたら最初はチョロチョロ、しかもバラバラに飛び出す弾。
また弾速は物理的な限界があるので知れてます。初速は900m程度と20㎜としては頑張ってますが、M2なんかも似たような数字です。あと、恐らくですが、弾道がたれるんじゃないかなと。零戦のパイロットなんかも空中戦での20㎜の使いずらさを書いてますが、威力があっって当たれば強いが、弾道が弓なりで遅く当たらないと。発射速度はバルカンは4000~6000発/分で使っていると思われますが、M2が700発前後ですから確かに速い。ただ、米軍機は翼内に4丁なり6丁を並べて配置しているので、6丁積んでるF4F(ワイルドキャット、WW2のプロペラ機ね)とかと似たような物かなと。射程は3kmほどと、50口径の2kmあたりと比べると遠くまで飛びますが、計算だと3km先だと24mの円内に、3秒後に当たるんで、当てられたらエスパーです。まあ米軍機ならその距離はミサイルの交戦距離でしょうけどね。
じゃ、バルカンでドッグファイトはダメなのかと言うと、この予測命中円がでっかい事、機首なんかに積んでて弾のゼロインは考えなくていい事なんかはメリットでもあるんですね。一種の散弾みたいな使い方なんだと思われます。さらに20㎜の場合、弾頭が選べます。12.7㎜だとりゅう弾は仮に作れても威力不足なので、せいぜい焼夷徹甲弾らしいのですが(対空でFSDS使うかな?CIWSはコレ)、バルカンはりゅう弾がデフォで使えます。近接信管のりゅう弾をばらまけば、一種の対空砲火的な当たり方をする訳で、直撃させる必要はないわけです。ま、これはミサイルも同じで、あれも近接信管とかのはず。
他にF4ファントムの弾が当たらなかったと言われる原因で「そういえば」と思って出てきたのがバルカンポッド問題。いやね、F4に固定武装がないと言ってもバルカンポッドで外部のハードポイントにその手の物付けて色々使えたはずだよな?と思って調べたら、固定武装が付いたのは空軍型のF4E以降で海軍型のF4Jとかはバルカンポッドを使ってました。F4は当時としてもかなり大型の機体でした。ミサイル8発積めて強力なレーダーの複座型で2発でマッハ2が出せる、マルチロールのヘビーファイターな訳です。その性能は優秀だったので海軍も空軍も使った訳ですが、海軍の場合空母に搭載するのにスペースの限界があります。あんまり長いとエレベーターに乗らないとか出てくる訳です。なので空軍型はノーズ伸ばしてそこにバルカン積んだみたいですが、海軍はそれが出来なかったんですね。んで、外部にのっけたバルカンポッドは案の定弾がぶれまくるわけです、機体のロール軸から遠い場所にありますし、あんま無茶は発射速度出すとぶれますし(反動が2tだとか)。
そういう事もあったのか、F4はすごい長命な機体ですが、海軍が一番先にF14とFA18に切り替えて1986年に退役してます。一方空軍は1996年までアイダホ州で使っていたそうですが(てか、州に軍隊あるの!?)、一般には1991年で終わっていたようなので、言うほど差はないかも知れません。つうか、日本はまだ使ってるんだよな・・・そうそう、F4は元が海軍型で、空軍型は当初F110と呼ばれていたそうです。もちろん、センチュリーシリーズには普通は含めません。
そうそう、目視レンジでの発射という政治的制約がスパローの戦果を落としたと先日書きました。具体的にはスパローのベトナム戦争初期の撃墜率は7%ちょいだったそうで、そりゃ駄作って言われるよな・・・では、なぜ目視してから撃つようになったかと言うと・・・やっちゃったんですよ、フレンドリーファイヤー。IFF自体は第二次大戦時にもうあったようにWikiには書いてあるんで、ベトナム戦争時にも当然あったと考えるのが自然ですが、まあファントムがファントム墜としてしまったんで、IFFあるけど目視もやろうねって事になったようです。ちなみに、現在の米軍の交戦規定ではIFFの確認だけでミサイル発射出来るように改まっているそうなので、ワンサイドゲームが復活しています。また、F22などステルスのIFFは当然ながらトランスポンダーの返答やっちゃうと意味ないので、データーリンクシステムでやってますから、同士討ち対策に関しては米軍も色々考慮しているんでしょう。
逆に言うなら、IFFなり戦術データーリンクはステルスやミサイルキャリアーのアキレス腱だと思われます。大規模侵攻で自軍の連携も諦めるならジャミングしまくれば肉弾戦、少なくともIRミサイルのレンジまでは接近出来ちゃうかも知れません。そしてF22はステルスながらF15以上の機動性を持つという変態なんですが、模擬戦では撃墜判定をもらっているのがこの手の格闘戦という話もあります。一つはEF2000(ユーロファイター)なんで、まあ分からないでもないですが、もう一つがT38タロンという高等練習機だそうで。これは西側同盟国向けの供与機のF5の練習型ですね。
他にちらっと聞くのはデコイ兼キャリアーであるドローンを戦闘機に混ぜるってな計画もあるみたいです。実際、エースコンバット6でそういう敵が出てきますが、本体はステルスに近くロックオンするとすぐにドローンが割り込んでくるし、ドローンは無人機なので変態機動するしで、かなり厄介な敵でした。全てのドローンに音速性能とか持たせると、もうそれ単体で使えばいいんじゃね?って事になると思うので、あくまで戦闘機に随伴させるって考え方にはなりますが(そういやマクロスFでも御曹司がドローン運用してましたね。あれのAIはX9ゴーストの機能限定版って事が分かる描写がありました)。
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2014/10/31 09:31:45
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