2019年06月10日
F35A墜落の原因について
・先日、青森県沖で墜落した自衛隊のF35Aパイロットの方の死亡が確認されたという事で、ご冥福をお祈りしたいと思います。捜索も打ち切りで事故原因究明に結びつく物証が何も出なかった事は残念です。さて、捜索打ち切りとほぼ同時にF35Aの墜落原因が人的原因であるという見解とF35Aの飛行禁止措置の解除が行われたのですが、私は防衛省の見解に無理があるように思いました。
まず問題のF35Aは演習中止を宣言してから墜落しており、その因果関係は気になる所ですが防衛省は交信情報をほとんど出していません。にも関わらず、パイロットが1万メートルを30秒でほぼ垂直に落下している間に無線交信して脱出もしてないので空間失調だと結論づけています。その交信内容は公開できないのかも知れませんが、本当に何の異常もなければもっと早期に人的エラー説が出ているのではないでしょうか。また本当に垂直に1万メートルを30秒で落ちてれば速度はたった200kmで、F35Aならストールスピードのはずです。パイロットがストールスピードで降下していて気がつかないなんて事の方が信じがたいですし、統合情報投影型ヘルメットにその手の情報が出ているはずでしょう。30秒間もバーティゴでベテランがなんの計器の異常(計器は正常で異常なのは感覚な訳ですが)に気がつかないというのがあるのかなと。まして訓練中止の宣言後ですよ。また4.5世代機以降はパニックスイッチが標準化しているとあるのでF35A(5世代機)は当然積んでいるはずです。計器も見ないでまっすぐ進んでいるつもりだったとしたら今度逆に200km程度じゃない速度で落ちているはずです。
ともかく、人的エラーというには謎が多く、また断定して言えるとも思いません。仮に人的エラー要素があったとしても、それにF35Aの設計等が影響している可能性もあります。司法制度ではありませんが、疑わしい程度の要素を断定的に犯人にしてしまうのは、パイロットに対してあまりに失礼というか尊厳を踏みにじる行為にすら感じます。少なくとも「機体か人間か分からないけれど」というべきですが、あまりに早く非情な判断がされた背景はむしろ「F35Aは欠陥機」というレッテルを貼られたくなかったという事情があったように思います。
理由は言うまでもありませんが、まず国防の要になる次期主力戦闘攻撃機に欠陥機を選んだという事があってはなりませんし、実際遅れている配備スケジュールからしてもさっさと運用再開しないと防衛力に支障が出ます。またトランプ政権に政治的配慮で爆買いした形の機体の納入スケジュールにケチがつく訳にもいきません。つまり、F35A無謬説は政治的な要請がそうさせた面があるのではないかと。そうするとパイロット一人に責任をなすりつけてしまった方がいいのです。
私は個人的にはF35Aが欠陥機とは思いません、事故率や開発経緯を見てもむしろF22の失敗をフィードバックされてより改良されている。それでも欠陥やトラブルが全くない機械もまた存在しないのです。これからF35Aのパイロットになる自衛官のためにも、国民のためにも、真摯に説明をはたすべきではないでしょうか。ちょっと「かたい」話で、また左巻きっぽい事言ってると思うかも知れませんが、これとそっくりな事がかつてドイツ(当時の西ドイツ)でF104が配備された時におこっています。その時もF104の安定性だったか何かに問題があり墜落事故で亡くなったパイロットのミスという事にされていましたが、パイロットの妻が機体の欠陥を指摘。同様の事故で夫をなくしたが操縦ミスと片付けられた未亡人達で集団訴訟をして勝利した事件があった。その時も政府は結局誰も責任は取らなかったが、少なくとも操縦ミスではなく機体の欠陥であった事実は認めた訳だ。ただ西ドイツのF104の事故損耗率は916機中292機って話があって、31%にもなるので、「F35がF104並の駄作」と言いたい訳ではない。ただ「国防のためリスクがあるポジションにある人、その家族に対して日本政府は無神経すぎんじゃないの?」って。
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2019/06/10 16:04:14
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