2007年07月26日
A7000番台のT6処理とA2000番台の硬化
先日手に入れたジュラルミンのラグナットのパケを見たら「ジュラルミンの時効硬化が云々」と書いてあった。あまり耳慣れない事なので調べた結果の覚書。
A2000番台はジュラルミンと呼ばれる銅をメインとした合金で非常に強度が高い反面銅により腐食性が高い。で、どうやらいわゆる析出硬化タイプの性質変化が自然に進むようなのだ。一応「個溶化」と言うプロセスを経た物がそうなるそうだが、鋳物にしたなら自然にそうなっているはず。析出硬化はステンレス鋼の600番台を調べた時に知った現象で、この合金もいわゆる刃物のような「焼き入れ」は出来なかったのだが(そこまで硬くないし)、冷却していくと硬くなる性質があるそうな。この析出硬化が自然に起こるタイプを「時効硬化」と呼び、人工的に促進(あるいは全く自然状態では進まないのかも)する場合を「析出硬化処理」「人工析出」と呼ぶそうな。A7075にあるT6処理なんかは後者で、A2000番台でもT4とか言う人工析出方法がある。
難しいのはT6処理なんか1100度とかに過熱するみたいで、そうすると焼き入れ温度と変わらない(てか、アルミ溶けない?)。焼き入れできる鋼と言うのは、代表的なのは炭素と混ぜる事で鉄の組織をオーステナイトからマルテンサイトに変態して硬化させている。実際には合金化した鉄も析出が起きていて、セメンタイト中に炭化物を作るとある。つまり外見上は鉄もアルミも同じような現象が見られるが、実際にはアルミの硬化は合金の析出であり鉄の硬化は組成の違いである点が違う。
もう一つ気になったのはこのラグナットの性質。結構古い物だから、多分時効硬化は結構進んでいるはずで、まあ安心して使えるとは思うが、新品を使うと強度が低い可能性がある。更にA7075なんかのラグナットがあったら、熱処理してない物の強度は割合低いんじゃないかと言う危険性も感じる。また熱処理の温度も問題で、アルミそれ自体の耐熱性の問題もあるが、熱処理が狂ってしまう可能性も感じる。時効硬化の時間は明記されてないが、ジュラだと2日後にはもう発現していたと言う話があるので、その位のタイムスパンでええのかも分からない。
では鉄合金では上記のような個溶化は無理なのか?アルミより鉄の方が個体の保持力が大きくて上手く分散しない可能性が考えられる。でも最近は粉末鋼が出ているから、それらが結局同じ効果を狙っている可能性は高い。顕微鏡写真で見ると粉末ハイスは組織が著しく均一になっているし。
もう一つ、これらを見ていると無重力で合金を作ったら自然に個溶化が進む気がする。そうすれば粉末にしないでも強度が高い鋼や、合金化が難しかった元素同士を、地上では無理な配合で作る事が出来るかも知れない。ま、逆に言えばわざわざ宇宙に行かなくても同様の効果を得られる生産方法がもうあるのかも知れないが。
・工作機械のことを海外でマザーマシンと呼ぶそうな。浅い理解としては工作機械が製品を産む事を指しているともあるが、深く読めばマザーマシンからマザーマシンが出来て産業が成り立つ訳なので、私はむしろルートマシンとかシードマシンと呼ぶのが良いのではないかと思う。Wikiで面白かったのは、このマザーマシンはメートル原器であるから本来であればある精度のマザーマシンからは、その精度内の製品しか出ないので、その製品や工作機械もマザーを超えられないと言う命題への答え。皆さんは分かるだろうか?
答えは「同一製品内でも精度内のばらつきがあるから、その中から精度の高いのを組めば精度は更に上げられる」と言う物。まるほどなぁ。確かにスナイパーライフルなど、専用の高精度設計を施された専用タイプがある一方、ある程度量産しなければならない軍用では、精度が高かった量産小銃をピックアップして使っているなんて話を聞く。ただ、ライフルの場合バレルは消耗品だろうし、そうすると高精度を維持する事に関して疑問は出る。また精度チェックをどの段階で行っているかが問題で、完成試射でグルーピングを計っていた場合、それは精度が高いんじゃなくて「偶然の組み合わせが良かった」、諺で言えば割れ鍋に綴じ蓋なんかも知れない。不思議な話だが、あるN1相当のレースで、メーカー系ワークスがベースエンジンを選ぶべくベンチに掛けたら、優劣がちゃんと出て、しかも最優秀のエンジンが精度的に最も良かった訳ではなかったそうな。
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Posted at
2007/07/26 22:14:43
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