2011年03月02日
・新聞で読んでびっくりしたのだが、そもそもの契約の時から驚きだったので、最初はそういう意味で当たり前だったのかと思ったが、読んでいくと変な事件だった。あらましはベンチャー企業であるゼロスポーツのコンバートEVが郵便用として大量に契約されたが、今年1、2月に納入分の30台が納入されずに、契約解除→違約金支払い請求→資金繰りが悪化して破産、という事だった。ここまでは多くのメディアで報じられている。
・もう少し詳しい記事を読むと、ゼロスポーツの言い分として「ベース車両の変更を求められ、納入時期が遅れると郵政の間で合意があった」といい、郵政の言い分として「車両変更はこっちの意思ではないし、納期以外の性能等も契約内容と違っていた」と言っている。どっちが本当だろうか?
・ゼロスポーツが1から新規開発なら、郵政の言い分も分からないでもないが、ゼロスポーツがこのトライアルで勝った背景には、すでにサンバーベースのEVを何台も納入実績があったという事だろう。そういう意味では細かい仕様の違いはあったかも知れないが、ほとんど購入契約と同じで、開発契約と言うほどの物ではなかったのではないかと思われる。性能に関してもそれなりの物が見えていたはずだ。つまり、「メーカー変更を求められた」という部分が今回のキーになってくると思われる。
・EVに関してはユニットをそのまま仕込む事が多いので、ドンガラのメーカーにはあまりこだわりはないと思われるが、サンバーは形状が特殊だから問題はあったかも知れない。さらにサンバーは一部用途で生産は続くとは言われているが、ディスコンがいずれ決まるモデルであり、メーカー変更は考えられない問題ではない。その場合、スバル系のゼロであれば、今度OEになるハイゼットカーゴをベースにしようとしたのではないかと思われる。
・ただハイゼットは当然ダイハツの車体であり、そこらへんの供給に関してスバル系列の独断がどの程度通ったのか分からないし、言ってみれば1000台のガソリン車の納入は1000台の販売減というメーカー側の思惑もあったかも知れない。またハイゼットはハイブリッド展開もしているので(てか、ずっと昔にはEVもあった)、ゼロスポーツの契約破棄で再びEV系のトライアルがあった時にベンチャーをつぶす良い機会だったのではないか?とも勘ぐれる。
・さらに疑問なのは日本郵政の姿勢だ。確かに納入遅れはあったろうが、ベース車両変更があったのに、納期や仕様の合意を最初のまま押し通して、しかも試験採用に近い30台の納入遅れを1000台の納入遅れと同じ感覚で違約金請求する感覚は、まるでベンチャーを釣って破産させる手口のようではないか?またEVによる省エネ効果を考えると率先して取り組むべきなのに、以前もEVの郵政バイクの話を立ち上げてはぶちこわすという事を繰り返している。郵政のお偉いさんには、自動車とか工業製品に対する馬鹿みたいなカタログ信仰があるんじゃないかと思ったりもする。あるいは、天下りとか癒着とか。
・この問題が深刻なのは、これで日本のEVの火が大きくゆらぎ消えてしまうという事だ。将来的にはEV化は避けて通れない問題だが、今の自動車産業が大きく構造変革してしまうという見方が多い。ベンチャーとしてはシェアに食い込めばいいから楽だが、既存メーカーとしては自社内での食い合いになるという問題があり、その価格維持に神経をとがらせている。ユーザーとしては、もう簡単にできるはずの物が、いつまでたっても実用化されないとなる訳だ。ただ、私は結構楽観してもいる。
・なぜなら、こういうEVの逆風で日本市場を冷遇し続けても、世界市場をどうこうは出来ないからだ。またベンチャーはぶっつぶしても技術者は流動するので、日本を空洞化したって別にかまわない。そう、かつてのビッグ3が省燃費車を生産する技術を作りながら、燃費が悪い車を作り続けて自滅したのと同じ事が日本でも起これば、その時にアジアカーでもオセアニアカーでも燃費が良いEVを買えばいい。そして、メーカー再建に税金なんか投入しなければいい。
・一義的には、ともかく日本郵政のケツの穴の小ささには失望したよ。小泉の時にさんざ分社化されて国民を恨む気持ちは分からないでもないが、もう日本郵政は使いたくないな。
Posted at 2011/03/02 08:32:35 | |
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