2014年12月02日
・ファンでフォローしている方のブログで、無加工写真ってのは本質的には無いのに喧伝してるのは定義を欠いているというエントリーがあったので、昔のプリント屋のバイト小僧のお話でも。まず、街のプリント屋(DPE屋)が出来るのはカラーネガ写真だけです。ポジやモノクロは東京現像とかの大きい工場に出します。なので補正は正直知らないのですが、以前ちょっと聞いた話では配送の関係で工場は割と夜中動かしていてスタッフもバイトっぽかったような。プロのカメラマンが記念撮影のような大事な写真をポジで撮る場合、フィルムの乳剤ナンバーを揃えて試験的にホワイトボードみたいなのを撮って、仕上がりをカラースケールボードの薄いような奴で見比べてカメラのフィルターの色の番手を調整してました。私はそういうのの受付はしてないですし、結局大抵の記念撮影はネガで撮ってプリント頼まれるので、通常はそんな事しないと思われます。逆に言うとポジの場合は工場に補正をお願いしないで素のプリントが出てくるという認識があります。
・ネガの場合は各ラボの現像機で現像するので、多少はばらついているはずですが、コンタミ(薬液の異常、希に海水に浸かったフィルムなんかを入れるとなるらしい)を起こさない限りあんまり気にしません。というのはプリントの段階で補正は「入れる物」だからです。カラーのネガってもう見たことない人が多いでしょうが、あれって決してネガポジ反転だけではないですよね。ベースの茶色っぽい色が存在してます。んで、ラボにあるプリンターはまずネガのベースの色を抜いたら白はこんな感じにすれば出るんじゃないかな?という光源のバランスを自動的に調整してくれます。正確にどうやって算出しているのか知らないのですが、まずフィルムを現像して一本24コマなり36コマの長い状態のまま機械に読ませるのです。その生データーを元に機械が「こんな位の色じゃないっすかねー?」って感じで補正したのを仕上がり予想として画面に表示します。恐らく大手の安いプリンターはこの自動調整機能のまま印刷してよこしていると思います。
・しかし、写真撮影時に大抵の人は状況を100%揃えた、プロ並の撮影技術では撮ってません。露出もばらつくし、レンズだって色の偏りとかハレーションとかあります。機械君の判断も逆光の記念撮影でも夕焼けの風景写真でも同じように捉えてしまいます。なので人間が「ここの露光は人だから周囲が若干白飛びしても明るくするか」とか「曇天で色味が青いけど気持ち悪いから、若干シアン抜くか」みたいなマニュアル調整を加えます。私はペーペーだったので正直自分の補正に自信はなかったのですが、メーカー系列のコンテストで入賞しているバイトの先輩なんかは一味違った補正だったと思います。しかし、プロからすると「俺は陰影を深くしたくて露光低くしてるのに、なんで白く明るくするんだ!」ってな事になるので、ポジが好まれる訳です。
・もう一つ、極個人的な感覚ですが、ネガってラチュード(感度)の幅が広いので、ブラックをブラックに飛ばせないのが嫌いでした。当時で「写るんです」みたいなISO800のピンホールカメラで上下8段ぐらいは露光幅がありました。考えて見れば恐ろしい話です。一方ネガは1/3段でも変化し、写るのは2段か甘くて3段って感じです。さらに色が鮮やかでした。この話すると、お店によってはフィルムを透過光で見ているからじゃない?とも言われたんですが(ポジはスライドフィルムと同じなので投影もできるし直でも見える)、今考えると印画紙とラチュードの問題だったと思います。ネガはラチュードが広いという事は、印画紙に明確に出ない影みたいな物が闇の中にも隠れている訳です。そしてカラーネガの印画紙は再度ネガポジ変換を行っているので、その影はうっすらとした靄のような痕跡になります。なので、どうもプリントの味が薄いというか純度が足りないような不満がありました。ベースの色の分もあったのかも知れません。
・モノクロはもっと手作業で加工するのが当たり前な分野で、暗室でフィルムの小さい埃を取ったり露出を紙なんか切り取って部分的に替える、複数のフィルムを組み合わせて合成写真を作るなんてのが出来ました。突き詰めるとファインプリントのようなアートの分野に入っていくのですが、当時は合成写真は一般的ではなかったのでインパクトは大きかったですねぇ。学芸祭でもあんまり発表する人はいませんでしたが。というのは、暗室作業はかなり手間なのです。各々の適正露光を2Lあたりで計って試し焼きをし、そんでもって合成をして、再び何段か比較しなければならない。それで適当なプリント時間が出来たらやっと本番用の4つ切りで焼くわけです。暗室は空調もなく夏は暑く、一枚焼くのに5分ぐらい掛かるので上をやると順調にやっても2時間ぐらいかかるでしょう。一応赤いライトは感光しないので作業時に手元真っ暗ではありませんが、テストプリントを比較するには明るくしなければならず、目の順応にも時間がかかります。お金が潤沢にあれば一度に数枚現像してベスト探せますが、貧乏学生は大まかに探ってヤマカンです。
・畑では粉雪がぱらつきだした。風が強いと寒くて顔面が寒い。感覚というのは冷たくなると一般には鈍くなるのだが、皮膚の痛覚だけはものすごく鋭敏になる。剪定なんかでも顔面を枝でぶつと飛び上がるほど痛い。量がまだ3日はありそうな感じ。リンゴを割ると素の果肉より蜜の方が多いんじゃないのか?ってのもある。蜜はあれそのものは甘くなくて、甘くなる物の前駆物質のソルビトールといい、甘さは糖の5,6割だそうだ。糖を蓄えきれなくなった果肉に蓄積するので、あれが入っていると完熟の証拠にはなるのだが、貯蔵性は良く無くなる。んでも、「もう入らないって」って所にさらにドカドカと甘み材料を押し込んでいる訳で、味自体はすごい濃くなる。
Posted at 2014/12/02 23:29:53 | |
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