2016年01月19日
・雪が降った昨日より冷え込んで、地面が凍り付いてカラカラしてます。風も強いし日照もなく、温度以上に寒く感じます。台所で薪ストーブで紅茶のみのみ読書してますが、コタツのような接触暖房と違ってストーブだとどこか寒い。特に床。
・山辺ワイナリー メルロ ライトボディー 2014
2014のワインがもうリリースされるようになりました。多分醸造専用種の赤だと初リリースじゃないかな?それでも2014と言えば2年前になりますから、ワインという農産物がいかに気長な物か分かります。ミディアムボディーのメルロ・樽熟は今2012年が出て半年ぐらいなので、2014が出るのは順調にいって2年先になるでしょう(HPだと2013出てないのでそう思ったけど、2013試飲したような気もするので不確かだけど。2012はNACでいい賞取ったはず)。ライトボディーは軽い分早くリリースされるので全く同じ原料と言う訳ではありませんが、2014年のこの後のワインの味を予想する上でも一つの目安になります。樽熟なり畑の番人が真打ちと言う気はありませんが、それらがリリースされたとき「ああ、ライトボディーはああだったよね」と思い出したりする訳です。まあ、そんなに私も経験長く無いのでアレですが、ワインというのは「そのビンテージごとの違い」というのが結構あるので、特級畑でも普通畑でも「その年の味」というのが存在しますし。
さて、2014のライトボディーですが、キレイでした。リリース直後は酸っぱくて酸っぱくてとか、香と味がちぐはぐという事がなく、何より雑味というか嫌な味ってのが全くしません。衛生管理をきちっとして、原料の選別をライトボディーであってもしっかりやっているのでしょう。だから山辺のブドウの素性の良さがはっきり出ています。色もライトボディーですが年々濃くなっているような気がします。
試しに2012の樽熟と比較して飲んで見ると、方向性は驚くほどそっくりです。2012あたりは「ちょっとこれリリース直後、開栓直後からこんな飲みやすくて大丈夫か?」って思ったほどの出来なんですが、2014ライトボディーはほんのわずかにインクの匂い・プルーンの煮詰め具合が足りないかな?って思う程度です。車で言えばプリウスとアクアみたいなもんで、知らない人からみると分からないかも。聞いた話だと2012はグレートビンテージだったようなので、2014(悪い年では決してないけど、2012よりは劣るはず)でここまでつめてるのは、樹齢や栽培技術もさることながら醸造の力もあるのだろうと感じます。
ただ、塩尻のメルロは温暖化でさらに品質が向上しており、桔梗ヶ原メルローをはじめエキゾチックなスモーキーさすら感じるフルボディーの日本のメルロがある中で、ライトボディーのメルロは何を表現しているのか分かりづらい。メルローに関して良く言われるのですが、これだけメジャーな品種にも関わらず、決して単純なキャラクターではないですし、最適地のメルローがコレってのが分かりづらい。ピノみたいに適地以外が外れって感じではないのですが、メジャーなラインを外れた所の個性を上手く評価しきれない感じがします。うーん、たとえばイチローは打撃も走りも守備も超一流ですが、ゆえにイチローかくあるべしってのが分かりづらい。彼をセカンドに据えても良い仕事してくれると思いますが、なんか想像しづらいと思います。そういう感じです。その点、カベソーやネッビオーロ、シラーなんかは四番打者みたいなもんで、ホームラン飛ばしてナンボ、守備なんかしらねえ!ホームランなんか歩いてベースランすりゃいいんじゃ!って感じなので、ある意味単純です。ステをパワーに全フリしているので、飲んべえからは絶大な支持がありますが・・
あ、ライトボディーのメルローの話ですが、これだけ味がしっかりしていればそこそこの料理に合わせて飲むのもいいんじゃないかと思います。単純なパワーだとチリあたりの安いのと同等かも知れませんが、このエレガンスは繊細な和食など整った味に良く合いそうです。多くの日本酒よりスッキリしていて懐石っぽいのに合いそうですが、果実味が結構するので、これって食べ物と合わせた時どうなるのかな?
・「ワインとパンに恋して」(大和田聡子)
ちょっとキャッチーすぎて、文体もいかにも女性向けという感じで敬遠していましたが、借りて来て読んだら意外と面白かった。パンも私は大好きなのでとっても面白い提言が出てきます。特に「1CWに極端に依存している日本のパン業界は、あまりに砂糖や油で柔らかく甘く軽い事に重きをおきすぎている。世界的に見ればもっと重くてリーン(痩せた・砂糖や油が少ないパン)な物が地のパンとしてあるのに、1CW的な小麦が取れない事を嘆いているなんておかしい」というのはまさにその通り!と思います。私も1年ほどパン食してましたが、ともかく油脂コストがすごいんですよ。そして中力粉とかだとピザベース程度にしかならないのですが、地粉がない。地元のパン屋さんに週一でルヴァンを焼いてくれる所があるのですが、重くて天然酵母で酸味タップリなパンは日持ちして本当に美味しい。チーズと合わせるのに最高です。日本もパン食文化になったと言いつつ、結局世界的に見ると特殊なホワイトブレッドだけ強いってのはヘンだと感じます。まあ、自分で天然酵母と地小麦で作れって言われるとほんと大変なんで商売にはならないんですけどね。
ワインの方もタケダワイナリーの取材とか面白かったです。値段感覚が主婦のそれなので、べらぼうに高いワインが美味いって話もしませんし、むしろ「ソムリエが業界用語をワイン語る時点で使いすぎてワインから一般人を遠ざけている」というのは耳が痛い話です。たとえば赤ワイン(とくにカベソー)ではカシスの香りというのがテイスティングで良く出てきますが、アメリカだと「カシスってなんだ?」って言われるので使えないのだそうです。というのは、カシスは松と相性が悪いらしくてアメリカでは栽培を制限していて、あまり食べる習慣がない。日本人もクレームドカシスのようなカクテルとかリキュールで知っているだけで、そんなマイナーなのを引っ張り出されても頭に浮かんできませんよね。私も自分の経験でワインの味を語れるようになり、逆に日常の中にその要素を見つけるようにしたい所です。カシスとかは難しいでしょうが、実際テイスティング用語はヘンな物ありますから、線香花火とか4Bの鉛筆とか・・・そんなん食わないだろうけど。
・自室の障子はポリプロピレンのプラダンを貼ってありましたが、紫外線で二年目でアウトでした。ほんと弱いというか、ガラスってかなり紫外線をカットすると聞いていたので、もしかしたら熱劣化とか加水分解とかあるのかも知れません。最近障子の太鼓張りというのを知りました。障子というと断熱性は相当低いと思っていたのですが、なんだか数字的にはカーテンより良いのだそうで、気密とかあるのでしょうね。どうも空気層を断熱層と捉えるのは色々違う気もするんですが。
太鼓張りですが、そもそもは障子は桟は細くて落とし込んであるので、片側しか張れません。太鼓張りする奴は専用の桟の設計をしています。もちろん紙なんで無理して張っている人も沢山いるようですけれど、反対側はやっぱりプラダンとかの方が収まりはいい感じです。出来れば枠に嵌め込み用の枠を取り付けて貼れれば完璧だと思います。収差があるので、どうしても周囲に隙間が出来て仕舞いますから。
その反対側ですが、うちは猫がいるのでよく破かれます。出入り口としてだけではなく、窓と障子の間でターンする時にバリバリと全部穴あけたりします。で、そういう人用にはプラスチックや合成繊維補強タイプの障子紙もありますが、かなり高い上に一枚張りで、しかも両面接着剤で貼ってました。まあ、代用なのでしょうがないのですが、両面テープで張り、なおかつ裏側には透けて見えないプラダンやらポリカ板を張るのであれば、前面はビニールテープでやってしまおうかな?というのが今の予定です。PAフィルムだと、軽く5年ぐらいは使ってられますから。
・納豆屋がツイッターで経営難をつぶやいてファンが買って持ち直したなんて話題が今日も出てましたが、この手の美談もいい加減批判的に見るべきのような気がします。三セク鉄道などが頑張って話題作りをしてますが、結局の所地元民が日常的に使ってくれないと、イベントなどのカンフル剤は効果が短期的です。その間に設備投資して経営体質を良くするのなら分かりますが、どうもこの手の企業はすべてギリギリの採算ラインでやってきていて、過去にも何度も公金注入なんかで糊口を凌いでいるんですよね。
良い納豆で高コスト体質になっているのも分かりますし、生産規模が小さくなって家族経営になってさらにコスト高になっているのも分かります。あるいは単純にアピール力不足であれば、SNSでの拡散は有効でしょうが、実際の所リツイートした人が過去にプロモ活動した芸術関係の人だったりするので、決してやってなかったとは思えません。地道な生産活動の見直しが出来てなかった面もあるんじゃないのかなぁ?いっそ、有力納豆企業に買い取ってもらって、技術だけでも残していくとか生産工程の見直しやってもらって立て直せないかな?と思ったりします。
・あの後、「技術大国という幻想の終わり」とか「日経中国企業作業員観察記」など読みましたが、一つ分かった事は「今後どうするのかが正しい」という事は誰も分からないって事でした。ほんとケースバイケースで一般論はないし、ステレオタイプな民族観も間違いが多いって事でした、悪い意味で。中国人労働者は反日とか言う前に教育とか道徳とか獣だろ・・・って話もある。外国人排斥とか言いますが、「こいつら一番憎んでるのは隣人だろーなー」ってエピソードもちらほら。私なら知らない先祖の代の仇より、今の町内会のヤクザモドキの方が嫌いですけどねぇ。でも、1度工場進出をしたら、そういう人達でも使っていかなければならないんですよね、中国政府ってあくどい契約やってますから。爆買いやってる人達も1割の上級国民なんでしょうが、それですらあれだけの購買力になるという訳で、逆を返せば9割は・・・って事です。
さて、畑村さんは、そういう安い労働力を狙って海外進出していく事で日本の企業は生きていけないだろうと書いています。実際問題進出して合弁会社化して残っている企業もいるので何言ってるんだという話ですが、畑村さんが想定している読者は中小企業の幹部なので、まあ当たっているでしょう(私を含め一般人に海外進出の話は関係ないですし、大企業はそんなもん人に言われて影響受けるような人がトップ立っちゃダメです、きっとグローバル研究所が色々やってます)。そして、どのみち現地人に技術移転して文化も似合った人達が管理するのが一番です。
縦軸に「技術の鮮鋭度」横軸に「発想の鮮鋭度」を取ってプロットすると、「地味な技術を手堅くやる」、左下の部分が今中国や台湾で40万人規模の工場都市になってるEMS(electronics manufacturing service )です。デジタルパーツはモジュール化が進んでいるので、そこで手堅く安く、ファブレス企業の注文を受けて作る所ですね。日本でそんな規模の事をやったらこけたら大変ですし人権的にも色々無理。移民が日本でそれやる意味もないです。
技術は最新だが発想がお粗末というのが日本の家電とか衰退産業なんですが、地味に改良は進んでおり新興国GDPが増えてその手の需要が増えると売れるかも知れません。逆に今の国内市場はここから外れつつありますけどね。
技術は稚拙だが発想がすごいというのは日本の不得意分野だと畑村さんは指摘しています。実際、こういう分野は一種のアイデア商品みたいな物なので、ヒットの余地は大きいですし、日本の大企業は外れるのが怖くて冒険してこなかった分野らしいですが、同時に簡単に模倣され優位性が保てない一発屋みたいな所があります。我々DIY好きにとっても一番工夫があって楽しい所ですね、高度な加工とか制御なんていらないけど面白い。つまり、「有益な活動であればあるほど企業なんかがやる意義が薄れる」という感じを受けます。
最後、「発想も技術も高度」という右上、まあ、こういうプロット付けも私は分かりやすいだけに問題がある分け方だと思いますが、畑村さんはアップルを据えています。実際アップルが技術的にすごい優秀かと言うと批判もあると思いますし、ファブレス企業だから必然的にEMSを必要とします。ただ、アップルは生産技術を製造設計含めて幹部がかなり分かっている。先日筐体の磨き技術が盗まれた話をしましたが、あの筐体も転造雌ねじとか削りだし加工とか、普通ならキャストで造るような所を頑張ってる。また、EMSに供給されているパーツの多くが実は日本企業の物だったと、リバースエンジニアリング的手法でばらしていて分かったそうです。そして、モデュール化の信頼性が高く、ばらして再組み立てすれば、問題なく動いたと。
つまり、「技術の高度さ」というのが日本だと「精度の高さ」「性能の高さ」「メンテが必要で繊細で壊れやすい」と同義ですが、グローバル企業の考える「技術の高度さ」は「すり合わせしないでも動く共通フォーマット推進」「大量生産などを可能にするための投資」って感じなのです。あれ?これって第二次大戦の零戦とF6Fあたりの関係に似てますね。ただ、日本はあれから「基礎研究の大切さ」を痛感して、ベース技術も磨いてますから、素材技術や応用技術で切り売りしたり最先端を走り続ける可能性もあるのでは?というのが畑村さんの指摘です。たとえば鉄鋼なんかは、組成は分析出来ますが、熱処理のタイミングや方法などはリバースエンジニアリング出来ませんので、場数が物を言います。
さて、最後に果樹のブドウでこの分類を当てはめてみましょう。技術の高度さと発想の新しさで見ると、こんな感じになるんじゃないかと思います。
高い 種無しデラウェア 三色詰め合わせ贈答箱
↑ 有核巨峰 パープル
技術 種無し巨峰 シャインマスカット
観光農場
↓ 在来品種有機栽培
低い 自然樹形ナイア・ポート 加工ブドウ?
低い ← 発想 → 高い
先に書いたように、技術の軸も発想の軸も絶対的な物ではありませんし、意味する所が違うのも含まれるので、これが絶対と言う訳ではありません。さて、種無しデラは日本企業が得意としつつ負け続けているのと全く同じジャンルに入ります。技術的には高いけれど、発想は保守的です。競合はまずないので細く続けられますが、ヒットもしない。まあ、技術も難しいけれど保守的にしか伝えられないので、低い面もあります。
両方低いのは旧世代品種ですね。これで生きていくにはEMSのように大規模に行うとか、リードタイムを短くして需要に一瞬で応えるとかになりそう。ジュース材料なんかは今ちょうど海外とTPPでバッティングするので、「日本でそれを真似るのは・・・」って分野です。
技術も発想も高いのは皮ごと品種3色詰め合わせを直売みたいな奴でしょうか。品質が良い物で組むのではありますが、それぞれ単品の物に比べると2倍ぐらいの値段がついたりしますが、それでも品切れ起こしたりするほど好評だったりします。ただ、一つの農家さんが同じ時期に三色を持つってのは非常に難しいです。白のシャインはいいとして、黒のパープルと赤のサニールージュあたりは栽培も難しければ出荷時期が重ならない。パープルは極早生で裂果が怖いので樹上貯蔵やりたくないし、赤は逆に気温が下がる頃まで待たないと普通着色しない。となると、標高高い所でパープル作ってもらい、低いけれど山際で赤つくってもらい、それを持ち寄って三色つめるみたいな生産委託も必要になってきます。農家同士で生産物融通というのは、かなり難しいですよ・・・
最後、発想の新しさで在来技術で高付加価値な物が出来るかですね。一応加工を入れて置きましたが、これは微妙です。一番多いワインで見れば、技術的には病気対策はかなり難しいですし、醸造はとんでもなく難しい。発想はまあ新しい方だと思いますが・・・ともかく、まだワインという物を良く分かってなかった頃に地元民が夢見たワイナリーってのはジャンル分けではココでしたが、現実には右上で、しかも収益性は左下という最悪な投資ですね(笑)。そうそう、品種面だけで中庸を見るなら無核巨峰やシャインはそこらへんですので、単純にプロットした真ん中が現実でのボリュームゾーンになりやすいのは、工業の世界と違うかも知れません。
有機栽培は技術的には木村秋則さんあたりに言わせると「難しくない」となります。自然に任せて行うし、農薬の散布はしませんから。農薬はこのラインだと左上、技術は高く発想は古いになると思います。我々農家はそれを混ぜて散布するだけなのでボルドー液でもディアナWDGでも同じですが、実際に農薬製造開発は大変でしょう。でも、そういう技術のパッケージ化による移動は自然農法だと出来ないので、逆に高度な技術になっている面もあります。じゃあ、ビジネスとして有機ブドウがどんだけ需要があるかですけどねぇ。たとえば加工と有機を組み合わせるなどすると商品も思いつくんですが。
観光は技術は幅があるので「高度な多品種摘み取り園」から「農業体験ホームステー」のような素人技術(ただし接客技術は高い必要がある)まで含まれます。あるいは外国人観光客か、日本人ツアー客か、みたいなのも違いますね。発想は新しいですが、果たしてコストメリットがあるのかは不明です。うへえ、今日も日記が長すぎる・
Posted at 2016/01/19 19:47:35 | |
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